世界で一番有名なハリネズミのDarcy(ダーシー)を、あなたは知っていますか? コロコロとして愛くるしい表情とポーズ、小物や雑貨を使ったスタイリッシュなアングル。2011年より飼い主の塚本翔太氏によってInstagramにアップロードされ、たちまち人気アカウントに。過去には42万人ものフォロワーを持ち、ハリネズミ・ブームの火付け役として世界中から注目されたダーシー。2014年、ダーシーは天国へと旅だってしまい、それでも様々な国のファンから今でも愛されるスーパー・ハリネズミなのです。
今回、そんなダーシーが一冊の絵本になりました。タイトルは『ぼくのかわいいハリネズミ、ダーシー』! 本書のイラスト/ストーリーを手がけたのは、アーティストでイラストレーター、作家のD[diː](ディー)。2000年に作家デビューをして以降、「ノベルコミック」という独創性の高い文学スタイルを生みだすなど数々の著作を出版してきた。動物をモチーフとしたイラストレーション作品を多く発表していることでも有名なD[diː]。彼女が以前プロダクトデザイン用に描いたハリネズミのイラストによってダーシーの飼い主、塚本氏との接点が生まれる——。
『ぼくのかわいいハリネズミ、ダーシー』
本書では、ダーシーの秘蔵写真をはじめ、D[diː]の世界観が全開に表現された構成に注目。可愛くてちょっぴり切なさを感じるダーシーのストーリーに合わせて、様々な手法・タッチで描かれています。
今回、このスペシャルなコラボレーションを記念して、作家D[diː]とダーシーの飼い主である塚本氏の対談を決行。『ぼくのかわいいハリネズミ、ダーシー』は、どのようにして生まれたのか? 本書への想いなど、お二人に語っていただきました。さらに、2代目ハリネズミ・マシュー君も登場します!
Interview:D[diː] × 塚本翔太
ーー今回は、マシューくんも同席いただいた上で、絵本『ぼくのかわいいハリネズミ、ダーシー』について伺いたいと思います。
D[diː] わー、可愛い! でも、怒ってる(笑)。こんなに丸まっちゃうんだ。
マシュー、フシューフシューと威嚇の音を出し続ける
ーーハリネズミ同席の取材……これはレアですね(笑)。まずは、このコラボレーションにつながる、お二人の出会いについて伺いたいんですが。
塚本 以前、D[diː]さんが描かれたハリネズミの絵を見ていて「素敵だな」とは思っていたんですね。D[diː]さんのInstagramを見ていたらダーシーの写真を載せてもらっていたのを見つけて。「個展をやります」と書かれていたので、会場にお邪魔してご挨拶させていただいた感じですね。
D[diː] ダーシーって“D”からはじまるじゃないですか? 私、“D”って書かれているものをいっぱい集めているんですね。塚本さんが撮られた写真の中に“D”のアルファベットとダーシーが一緒に写っている写真があって、それがとにかく可愛くて、写真集のなかのページの写真を撮ってinstagramに載せたんです。実際に塚本さんにお会いした時は「お互い“D”からはじまるし、なんかやれたらいいですね」っていう、最初は軽い会話からでした。
ーーダーシーは、その時にはもう亡くなっていたんですよね。
D[diː] そうです。だから、私、ダーシーには会ったことないんです。今日、マシューに会ったのも初めて。動物園とかでは触ったことあったけど、こんなに長い時間ハリネズミと一緒にいるのも初めて。でもマシュー、まだ全然顔を見せてくれないから寂しいな(笑)。
ーーまず構想として、絵本という形態は決まっていたのですか?
D[diː] 塚本さんから未公開写真や写真集未収録写真が何点かあるとは聞いていて。あ、それ、すごくもったいないな、っていうのと、それと、もともと、塚本さん的にはXmasのストーリーをつくりたいというご希望だったんですよ。でも、その未収録や未公開写真を見させていただいたら、Xmas限定のお話にするのはもったいないな、って思って、そこからお話があふれだしました。
ーー『ぼくのかわいいハリネズミ、ダーシー』は、ハリネズミのダーシーが飼い主に恋しているという設定になっていますが、このユニークなストーリーはなぜ生まれたのでしょうか?
D[diː] ハリネズミにかぎらず、ペットって飼い主に恋しているような印象を受けるんですね。家族っぽい関係性もあるんだけど、やっぱりそれでも誰かにペットの愛情って集中している。うちの犬はやたらお父さんに懐いているのに私には吠える、とかあるじゃないですか(笑)。ハリネズミみたいな変わった動物だと特に仲間がいないから飼い主に信頼が集中するんじゃないかなって。
ーー作中でもダーシーは、飼い主に好かれるために必死でいじらしい努力を重ねます。体を大きくするために、とにかく昼寝をしてみたり……。
D[diː] 塚本さんがダーシーを膝の上に乗せたりしている未公開ショットを見ていたら、恋人同士のように見えてきて。「きっと、ダーシーは塚本さんが大好きだったんだろうな」って。針だらけで、彼氏に常に怒っている必死な彼女(笑)。だから、ちょっとダーシーと塚本さんの生活を妄想して描いたんですよね。
塚本 でも、ハリネズミみたいな女の子実際にいますよね。怒りんぼうででも手のひらでスーッと寝ちゃうような。ひっくり返すと怒るんだけど(笑)。
ーーマシュー君もずっと怒っていますね……。ちなみにダーシーは、どんなハリネズミだったんですか?
D[diː] ダーシーは女の子だけど、マシューは男の子ですよね?
塚本 そうです。それにダーシーはこんなに怒ったりしなかった。針もそんなに立てなかったし、初めから丸まらなかったんですよ。カゴに入れていても「出してよ〜」って感じで暴れてて。ハリネズミ失格って感じのハリネズミでしたね。逆にマシューは、本来のハリネズミ的性格というか。
ーーD[diː]さんはダーシーのInstagramをご覧になっていたかと思うんですが、ダーシーの写真をご覧になっていて、どのように思われていましたか?
D[diː] ダーシーは他のハリネズミとは一線を画していますよね。まずポージングができるハリネズミなんていない。ハリネズミは今までも結構イラストで描いているから、大量に写真を集めたり実際に触れ合ったりもしてきているんだけど、ダーシーみたいなハリネズミはなかなかいないと思う。
次ページ:この本を通じて、ハリネズミに興味をもつ人がもっと増えたらいいな。