――『ヤバ歌謡』はどんな層をターゲットに定めているんですか。
フクタケ クラブミュージックとして今の和物を聴いている人たちにも聴いてもらいたいですけど、せっかくメジャーから出すので、広い層に聴いてもらいたい。選曲を見て、「あ、懐かしいな」っていう方にも手に取っていただきたいですし、若い子が何かの間違いでこれを聴いて「ヤバいな、昭和」って思ってもらえるとすごく嬉しいですね。それこそ音楽通り魔的に、その人の人生が変わったら面白いなって。鈍器で殴られて気付いたら修行が始まっていた。その後遺症で狂った音楽を始めてしまうような人が出てきたら最高ですね。
――お2人の現場には、どんな人たちがお客さんとして来ているんですか。
フクタケ 僕が頻繁にDJをするアシッドパンダカフェは30代以降が多いですね。アンテナを張って、面白いサブカルものを探している人がふらっと来て、衝撃を受ける。通り魔的な感じがありますし、クラブミュージックの中でもあまりジャンルにこだわらない人が多いですかね。耳のレンジが広い人というか、そういう人が面白いものを求めて来た結果、僕のDJも含めた他のクラブミュージックも楽しめる感覚で来てくれている人。そういう人たちに受け入れられるのが『ヤバ歌謡』の特徴だと思います。
ミッツィー <申し訳ないと>は昨年末で16年の歴史を終わりにしてしまいましたけど、ある程度は形になったのかなと。元々はJ-POPをハコで鳴らすのは禁じ手とだったいうか。我々は最初、嫌がらせのようにやっていたんですね。それをどうごまかしてせめぎ合うかというところで、いいメンバーが揃ったので、その人たちのバリューを使いつつ、ちょっとずつ広げていったんです。ただ今はメインストリームのところでもアニソンやJ-POPのイベントが普通になってしまっている。僕としては嫌がらせのつもりでやっていたのに、そういう状態じゃなくなっちゃったので、もうつまらなくなってしまったんですね。だから我々はJ-POPのイベントに切り込まなくてはいけなくて。
――そこで面白い鉱脈として見つけたのがオフィスソウルだったと。
ミッツィー 女性のお客さんがイベントに来なくなってしまったので、その理由を考えたら、アイドルの曲しか流れていないということに気付いて。数えてみたら7割がアニソン、「あれ? ウチはアイドルイベントじゃないんだけどな」と思って皆に言ったんですけど、どうにも直らなかった。だから、やめてしまったという(笑)。
――どうしてアイドルばかりかけてしまうんでしょうね。
ミッツィー すぐ答えが欲しいんでしょう。お客さんが盛り上がってくれるのは、DJとして嬉しいじゃないですか。でも、申し訳は反応があって盛り上がってくれるのが嫌で、「えー? ウケちゃった。じゃあ下げようかな」みたいなスタンスなんです。
フクタケ 嫌がらせ感ありますもんね、申し訳は。
ミッツィー どうしてもウケたいというアプローチが始まると、途端にすごくつまらなくなってしまうのかなと思っていて。手に持っていたものを捨てることはなかなか出来ないと思うけど、僕は捨てるのが好きなので、ばっさりやめてしまえるんです。一度リセットして新しいことをやるには、両手が塞がっている訳にはいかないので。
――合わせてMichelle Sorryに改名もして。
ミッツィー と思ったら、足すならいいけどまだ変えちゃダメだと言われました(笑)。ぽっと出の外人としてやらせてもらいたかったんですよね。我々はお互いに新しいジャンルを作ろうとしていると思うんです。フクタケさんは通り魔系J-POP、僕は結婚詐欺師系J-POPを。
フクタケ リリースパーティーをやろうとなって、同じことをやっている人をゲストで呼ぼうとしても、なかなかいないんですよね。和物をかけている人はいるんですけど、自分と同じような視点の人は本当にいなくて。そういうときに自分の特殊性というか、一般的なことをやってないことに気付くっていう。
ミッツィー 自分が変態だということに気付かなかったんですか?
――(笑)。リリースパーティーでも結果を出さなければいけませんね。
ミッツィー リリパには小西康陽さん、NITRO MICROPHONE UNDERGROUNDからMACKA-CHINさんとかが出てくれます。小西さんは自由度の高い人で、それこそ売れたもの、売れていないもの、レア盤を分け隔てなくかける。フクタケさんはこの2人は「一緒にやってもいいぜ」みたいな感じですか?
フクタケ いやいやいや! 胸を借りるつもり(笑)。
ミッツィー 富樫明生さんはm.c.A・Tとして、しかも元DA PUMPのKENくんをフィーチャリングしてくれますからね。深夜の部には、(((さらうんど)))とか西寺郷太くんとか椎名純平さんとかも出てくれます。スガシカオさんとかファンキー加藤さんの社長とかにも連絡したけどダメでした(笑)。あとはOLが沢山来てくれるように、六本木で「タダ券アルヨー」って女の子だけに撒く黒人をスカウトして、テレビ用に勝地涼さんを呼んで、限定でスイーツを作ってもらって販売もしましょう。
フクタケ 我々、メジャーなんで。ガキの遊びじゃないですからね。