伊藤 客観的な部分とのバランスを取っていく事だよね。走っているように魅せる感覚。
YOHEI 冷静な自分を置いておかないとね。そういう事をここ数年は考えるようにしているかな。ドラムってメンバーや周りの事、お客さんもちゃんと見えるから、そこを見ないといけない楽器だなと思う。
伊藤 メンバーとお客さんが全員見えているのはドラムしかいないからね。そこにいる1対全員みたいな感覚になれるのはドラムだけ。フロントマンは周りを感じる事ができる人が優れた人だと思う。後ろから来るエネルギーを歌に変える事ができる人。そこで共鳴しているから、背中だけ見ても「この人は歌で聴かせたいんだな」。そういう発信ができるフロントマンと出会うのって一番楽しいよね。
YOHEI そういうのを汲み取るのも含めて冷静な自分を保たないといけない。一番ダメなのはドラムだけを見て、フロントや周りも見ないでやる事だね。
伊藤 ミュージカルの仕事でドラムを担当していた時は、俺らは舞台の下のオーケストラピットにいて、逆に舞台は自分達の後ろにあるから俺らが感じなくちゃいけない。視覚じゃなくて、「もっと前に行きたいのかな?それとも落ち着いて欲しいのかな?」それを全て聴覚で理解しないといけない。目を閉じながらライブをやっているような感覚だったけど本当に良い経験になったよ。
YOHEI 皆バンド以外でもそれぞれ色々な活動しているよね。
伊藤 レコーディング系のものもあるね。
YOHEI そういえば、トライフォースは今年で結成10周年だね!
一同 おめでとうございます!
伊藤 ありがとう! 一応リーダーなんだけど、皆の個性が強いから10年経ってもなかなかまとまらないよ(笑)。皆器用で上手だし、なんでもできるメンバーなんだけど、だからこそ指針となる人間は必要だと思うよね。俺は人数が多ければ多いほど、そういうバンドの背骨になる人がいて、その人に信頼を置いてユニオンができ上がっていくのもひとつの形だと思う。信頼しているからこそ、「コイツと一緒にやっていれば間違いない!」そういう気持ちになる。やっぱりまとめる人にはそういう役割もある気がする。
YOHEI ジャバはリーダーがいないから5人それぞれが平等。それぞれに発言権があって、曲のアレンジも1曲に対して何パターンもあるけど、それを全部試してみてから「良いか、悪いか」を判断する。特にインストはそれぞれのパートが主役になる時があるから、メンバーは俺の事をリスペクトしてくれているし、俺も皆をリスペクトしている。
PiRO TPCはこの中で1番メンバーが少ない(Gt.Key.Dr)ので、その分、それぞれの役目がハッキリしている。音数をなんとか埋めたり、インストだからといってバックミュージックにならない様に。そういう事に気を付けていた時期もありましたが、今はそれぞれがその曲が求める音を素直に埋めている。音で歌い、踊る感覚。皆、歌モノが好きだし。
伊藤 バンドの編成や音楽によって求められるものも変わってくるしね。ひとつのスタイルを他の編成に当てはめても、求められているものが違うから音楽もライブも成立しない。だからフレキシブルにいけるドラマーはすごいなって思います(笑)!
一同 (笑)。
YOHEI お客さんにはあまり考えすぎずに聴いて欲しいですね。フラットというか……ブルース・リーで言うなら「考えるな、感じろ」的な。気付いたらお客さんも高揚している。
伊藤 それが1番最高だよね。
YOHEI 心拍数を操っているのを自然に感じ取ってくれればいいね。「実はドラムに関係して、この音が出ているんだよ。」そこに気付くのも楽しいかもしれないけど、単純に全てを感じて欲しい。「気になったらドラムも聴いてみて!」そんな感じでいいです。
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