トラックメイカーのSHINTAとトップライナーのyaccoによるプロデュースデュオtee teaが、韓国人シンガーbakuとともに昨年結成したばかりの新ユニット、DURDN(ダーダン)。映画『ファイトクラブ』の登場人物テイラー・ダーデンが由来だというこの変わった名を持つ3人組が、6曲入りのニューEP『306』をリリースした。

昨年、連続配信されたシングルを中心に、新曲“ミアネ”を収録した本作は、SHINTAによる洗練されたトラックと、yaccoが綴る若者の等身大を描いた歌詞世界、そしてbakuによるスモーキーな歌声が三位一体となって心地よいグルーブを生み出している。結成して約1年の新人は思えぬほど完成された楽曲のクオリティは、stellafiaのボーカリスト・花森りえと結成したユニット「ひみつのネリネ」としての活動や、IZ*ONE乃木坂46への楽曲提供など、tee teaのこれまでのキャリアに裏打ちされた強みと言えよう。今年1月には、サポートメンバーを迎えて初のライブを成功させた彼らに話を聞いた。これが3人揃っての記念すべき初インタビューとなる。

INTERVIEW:DURDN

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それぞれの出会いからDURDN結成まで

──まずはDURDN結成の経緯から教えてもらえますか?

yacco(Topliner) 私とSHINTAは同じ専門学校出身で、18歳の頃からの知り合いでした。今はtee teaというプロデュースユニットを一緒にやっているのですが、bakuは知り合いから「ちょっといい声の男の子がいるんだけど、一度デモを聴いてみてくれない?」と連絡が来て、それでコンタクトを取ったところ5曲分くらいの動画が送られてきたんです。それを聴いて、一緒にやりたいと思ったのがそもそもの経緯ですね。

──プロデュースユニットtee teaは、そもそもどんなふうに始まったのですか?

SHINTA(Trackmaker) DURDNを結成する2年くらい前、yaccoは当初シンガーソングライターとして活動していて、僕はそのサポートメンバーとしてギターを弾いていたんです。しばらくの間はそのかたちで続けていたのですが、途中から僕が作曲や編曲に仕事をシフトしていったんです。その頃からyaccoの曲のアレンジなども僕が手がけるようになりました。トラックメイキングが好きで得意だし、yaccoはトップノート(メロディ)と歌詞を書くのが得意なので、コライトチームとして一緒にやった方が早いんじゃないかと。そこからtee tea名義で活動することになりました。

──bakuさんはDURDN結成前、ソロで活動していたのですか?

baku(Vocal) 「活動」というほどのことは特にしていないんですよ。GarageBand(Appleコンピューターにバンドルされている音楽制作ソフト)でトラックを作り、そこに自分の歌をのせたデータを動画サイトに上げるなど、ほとんど趣味の延長でやっていたのですが、2人に出会ったのがきっかけとなり本格的に音楽活動をスタートしました。なので、人前で歌ったのはDURDNとしてのライブが初めてでした。

──なるほど。bakuさんは韓国にルーツがあるそうですね。

baku はい。生まれも育ちも韓国なのですが、一度留学をしてみようと思ってギターとアンプを抱えて3年前に日本にやってきました。しばらくは路上ライブを観たり、やったりしていました。

──どんな音楽が好きですか?

baku 一番好きなのはバスカー・バスカー(Busker Busker)で、高校に入ってすぐにライブを見て「いいな」と思ってそこからギターを始めました。特にボーカルの声が好きでしたね。今はいろんな音楽を聴いています。ダニエル・シーザー(Daniel Caesar)やハー(H.E.R)、ジャスティン・ビーバー(Justin Bieber)など海外のR&Bが好きです。DURDNを結成してからは、自分もステージに立つ人間として参考になりそうなライブ映像を探してよく観ていますね。

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──yaccoさんは小学校の頃から吹奏楽部に所属していたそうですね。

yacco はい。クラリネットを吹いていました。高校生になってからは、父にアコギを買ってもらってギター教室に通っていました。でも、卒業間際になって「進路どうしよう?」と(笑)。周りの友人たちが大学進学に向けて勉強を始めるようになっても、私は全くやる気が起きず……。ただ、友人とカラオケなど行くと「いいじゃん!」みたいに褒めてもらえたことがあって「もしかしたら自分は音楽が好きなのかもなあ」と漠然と思うようになったんです。そんな曖昧な理由から、音楽学校への進学を視野に入れるようになりました。一人暮らしはどうしてもしたかったので、実家から通うのが難しそうなところばかり調べていましたね(笑)。

──そこでSHINTAさんと出会ったわけですね。シンガーソングライターとして活動を始めたのは、どんな経緯だったのでしょうか。

yacco 音楽学校には「バンドボーカルコース」などさまざまな学科があり、その中で「シンガーソングライターコース」を選んだのですが、それが大きなきっかけだったと思います。サポートメンバーを募ってフルバンド編成で、ライブハウスに出演していました。

SHINTA 結構、ユニークな曲を作っていたんですよ(笑)。最初は普通のポップスだったのが、途中からUKインディーみたいな感じになっていって。

yacco ガブリエル・アプリン(Gabrielle Aplin )やルーシー・ローズ(Lucy Rose)が好きだった時期があって、それに影響を受けたオリジナル曲を披露していましたね。

──では、SHINTAさんはどんなきっかけで音楽に目覚めたのですか?

SHIDA 中学生の頃に、ウルフルズのライブを観たのがかなり大きかったですね。「あんなふうにギターが弾きたい!」と思い、最初は父が持っていたアコギを使って練習して、高校進学とほぼ同時にエレキギターを買ってもらいました。

──ダンスもやっていたんですよね?

SHINTA はい。小二から高三までやっていました。ダンスする時に聴いている曲と、自分がギタリストとして弾きたい曲はジャンル的にかけ離れていたので、最初はダンスと音楽は全くの別物でした。当時はハードロックやヘビーメタル、邦楽だとB’zなどをよく聴いていましたね。でも、DURDNを始めるちょっと前くらいからダンスミュージックもよく聴くようになり、だんだんそこもつながっていって。

──マイケル・ジャクソン(Michael Jackson)が好きなんですよね。それも結構大きいのでは?

SHINTA 確かに! マイケルが大好きで、ニュージャックスウィング的なサウンドとかはかなり研究しました。それこそダンスがきっかけで好きになったマイケルは、音楽面でも影響が大きかったと思います。

──ちなみにSHINTAさんは専門学校で何を専攻していたのですか?

SHINTA 僕はプロミュージシャンコースのギター科だったので、ギターを中心に学んでいました。なのでトラックメイキングは完全に独学なんです。当時はゼッド(Zedd)が大好きだったので、彼をリファレンスにしながらスキルを磨いていました。それ以降はずっとメインストリームの洋楽アーティストの楽曲、サウンド的にはザ・ウィークエンド(The Weeknd)とかチャーリー・ブース(Charlie Puth)が好きで参考にしていましたね。トラックメイキングに関しては、ギターに比べてわからないことだらけなので、偉い人に教えてもらいたいくらいです(笑)。

──tee teaでの活動は主にどんなことをしていましたか?

SHINTA ひたすらコンペに応募する日々でした。あとは身内のアーティストや、声をかけてくださった人への楽曲提供などがメインでしたね。そうしていく中でコンペに通るような楽曲がだんだん絞り込まれてきて。それが自分の得意とする音楽でもあるし、DURDNでやりたいことともだんだん結びつくようになっていきました。例えば、ちょっとエモいバラードやシティポップよりのグルーヴィーな曲、あるいは個人的に好きなK-POPよりの、フューチャーベースやハウスっぽいアレンジなどですね。

──IZ*ONEや、乃木坂46の楽曲提供もしているとか。

SHINTA IZ*ONEの“猫になりたい”は、出来上がってコンペに出す時に「この曲、自分でもやりたいな」と思えた曲で、それが採用されたことは自分にとって大きな出来事でしたね。乃木坂46の“Hard to say”に関しては、アイドルポップに正面から取り組もうと思い、その上で自分が好きなハウスミュージックの要素も取り入れることができたので、また一つ得意分野を広げられたかなと思っています。

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宇多田ヒカルに影響を受けた、等身大のリリック

──DURDNを結成したとき、音楽的なコンセプトについて話し合いもしたのですか?

SHINTA いえ、最初から漠然と「DURDNはこんな音楽性でいこう」みたいな構想があったわけではないんです。DURDNとして最初に書いた曲は、昨年リリースした5曲入りEP『Vacation』に収録されている“Conflict”なのですが、bakuが作ったこの曲からスタートしたのはかなり大きいですね。ミニマムな感じのR&Bがベースにありつつ、日本のシティポップっぽさもあって。「じゃあ、次はどんな曲を作ろうか?」みたいな感じでDURDNの音楽性が定まっていきました。

DURDN – Conflict | LIVE “IN”

──なるほど。では、最新EP『306』の冒頭曲“イカしてる”はどんなふうに生まれたのでしょうか。

SHINTA この曲は、僕のトラックが出来上がった段階ではまだコンセプトはなかったのですが、歌詞を書く段階になってyaccoが「ライブの雰囲気をテーマにしよう」と提案してくれて。ライブで演奏したときに映える曲、というイメージでアレンジも修正していきました。DURDNのレパートリーの中では、この曲だけテンポは速めだし、ロックやジャズの要素もありつつエレクトロが軸になっているという、ちょっと異質な雰囲気に仕上がりましたね。

DURDN – イカしてる | LIVE “IN”

──この曲の歌詞は、独特の節回しや言葉遣いがユニークでした。

yacco 私は小さい頃から宇多田ヒカルさんがすごく好きで、わかりやすい言葉を使っているのに深みがある彼女のバランス感覚にかなり影響を受けているのだと思います。

──歌詞に登場する主人公は、bakuさんをイメージして描いているんですか?

yacco そうですね。今どきの男の子というか……チャラくはないけどだらしないところもあり、頑張っているけど人生なかなかうまくいかない感じとか、DURDNの全曲に共通する設定だと思います。

──“LIFE”の歌詞にある、《言い訳なら天才 そればっか浮かんでる》とか 《ギリギリなの毎回 やらない理由探す》も、そういうキャラ設定ですよね(笑)。

yacco はい(笑)。私自身、休みの日とか家から一歩も出ずにUverEatsを頼んで過ごすこととか普通にあって(笑)。結構、今の子たちってそういうライフスタイルを送っている人が多いんじゃないかと思うんですよ。自分のことを否定されるのがすごく嫌だったり、「いろんな考え方があるよね」というふうに多様性を重んじていたり。

もちろん、bakuのキャラにもちゃんと合っているというか、歌ってて違和感が出ないようには気をつけました。実際にbakuと話しても、ちょっと寡黙でシャイなところとかかなりシンクロしているんじゃないかと思っていますね。

DURDN – LIFE (Official Lyric Video)

──“くすぶってばっかいられない”の、《苦手なもの苦手なまま 得意なやつに任せて ご褒美みんなで山分け》という歌詞もいいですよね。

yacco ありがとうございます(笑)。そこは、私たち3人の関係性にも当てはまるなと。それぞれの強みを生かしつつ、足りないところは補い合いながら分担で曲を作っているので。

DURDN – くすぶってばっかいられない (Official Lyric Video)

yacco 実は、3人が直接会ったのが去年の6月くらいだから、結成して半年以上はLINEでのやり取りしかなかったんですよ(笑)。お互い顔も見たことないのに一緒にやっているという。

SHINTA 逆に、それだけでも大丈夫なくらい意思疎通は出来ていたし、必要以上にお互いを干渉しない距離感も、僕らにとってはちょうどいいのかもしれないですね。

──サウンドはスタイリッシュだけど、歌詞はすごく「ありのまま」の等身大を歌っていて。そのギャップもDURDNの魅力なのでしょうね。

SHINTA そう思います。あとは、さっきも言ったように3人で役割を分担しているところにもギャップやコントラストが生まれているのかなと。僕がやりたいこと、yaccoがやりたいこと、bakuがやりたいことはちょっとずつズレているんだけど、そこがDURDNの魅力にもつながっているのかなと最近は思っています。

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──アートワークやリリックビデオには、STRANGERSONLYが手がけたイラストが起用されています。ちょっと平成レトロっぽい雰囲気がDURDNのサウンドに合っていますね。

yacco 彼からInstagramのDMで「ぜひ一緒にやりませんか?」と連絡が来て。それで過去の作品などネットで拝見して「これはぜひ一緒にやりたい」と思ってオファーしました。

SHINTA リリックビデオも、出来上がったものを見るたびに「これだ!」と思うくらい、僕らの価値観とすごく似ていて。この間初めてお会いしたんですけど、すごくいい感じの方でしたね(笑)。

──ところで、1月23日に東京WALL&WALL、2月7日に大阪Zeelaにてキャリア初となる有観客ライブを行ったそうですが、手応えはいかがでしたか?

SHINTA 自分が思い描いていた通りのサウンドになったし、やっていてすごく楽しかったです。

baku これだけの大人数の前で歌うのは初めてだったのですが、割といい感じで歌えたなと思いました。

SHINTA bakuの動きがあるからこそバンドの躍動感もお客さんに届けることができたし大成功だったと思います。

baku ホッとしたと同時に「もっとうまく歌わなければ」という気持ちも生まれました。

SHINTA 今回のサポートメンバーはほとんど友達なんですけど、すごくクリエイティブにやってくれたなと思っています。これからはもっと楽曲も考えていきたいですね。“イカしてる”みたいな、ライブ映えする曲がもっとあったら楽しいですし、僕自身がもっとできることを増やして、今よりももっと「いいサウンド」で聴かせられるようにしたい。「ライブ観たけど、DURDNってこんな感じだったんだ!」と驚いてもらえるように、サウンド面の精度をもっと上げていきたいです。

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──ちなみにyaccoさんはライブに出演していました?

yacco いえ、私は物販コーナーにいました(笑)。今後もライブに参加する予定はないです。みんなほど楽器が弾けないので、出る幕がないんですよ(笑)。

──では最後に、今度の夢や目標を聞かせてください。

SHINTA 自分たちのスタジオが欲しいですね。今回のレコーディングをリモートでやってみたからこそ、その場にいてコミュニケーションを取りながら作業することの大切さを改めて強く感じたので。特に歌録りではいつもそれを感じるし、一緒に録れるような環境を作っていくのが目標です。みんなが自由にフラッと立ち寄って、軽くセッションをしたり、そこから楽曲が生まれたり、そういう環境が持てたらすごくいいなと。近いうちに実現できるよう、これからも頑張ります。

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Text:黒田隆憲
Photo:Sab! Ryuse!

PROFILE

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DURDN(ダーダン)

韓国をルーツとするシンガーソングライターのBakuと、韓国アイドルグループ=IZ*ONEへの楽曲提供や、自身のユニット“ひみつのネリネ”でも、その多彩な楽曲スタイルを披露するトラックメイカーのSHINTA、トップライナーのyaccoによるプロデュースデュオ=tee tea (SHINTA & yacco)によるプロジェクト=DURDN。グループ名は映画「ファイト・クラブ」の主人公でブラッド・ピット演じる、タイラー・ダーデンからきており、2021年1月16日にリリースしたシングル「Conflict」で活動を本格的にスタート。 当時全くの無名ながらその洗練されたクオリティの高いサウンドと、ボーカルワークでSpotifyを中心に多くのプレイリストにピックアップされ注目を集めている。これまでに毎月リリースを重ねており、4月にリリースした「忘れたいね」では多数のラジオ局でOAを獲得。J-WAVE TOKIO HOT 100でも最高位38位を記録した。8/25(水)にはシングル「イカしてる」でソニーミュージックジャパンインターナショナルよりメジャーデビュー。ノープロモーションながら、楽曲の口コミだけで着々とキャリアを積み上げており、今後も日韓を股にかけ活躍が期待される注目のアーティストだ。

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RELEASE INFO

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306

2021年12月17日(金)
DURDN

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