東京の愛染 eyezenと大分のケンチンミン。別々の街で活動する二人のラッパーが手を取り合い、愛染珍民として『江戸豊後』という作品をリリースした。
作品のアートワークは遊び心あふれる。昭和な映画のポスターを下地に、2人は学ランを着て下手な青春を送る。そして「ゆ」という温泉の看板。舞台となる大分は温泉の名地だ。本作にも温泉にまつわる楽曲がある。タイトルは“onsen u know saying”。今作の最大のテーマは「ふざけたことを真面目にやる」ことだとケンチンミンは語る。
両者の共通点には、突出したバランス感覚とユーモアセンス、直感に従い行動に移すスピード感、そして音楽への愛がある。そして旅の達人であり、2人ともパパだ。愛染 eyezenが大分で生活していたわずか3ヶ月の間に完成したというこの作品には、プロデューサーとしてIRONSTONE、ne4r、Karinga、906が参加。ドリルやトラップ、トライバルに生音のテクスチャーなど多様なジャンルが織り込まれ、全国各地で培ってきたユーモアで、大分のストリートから新たな物語とスラングを発信している。
愛染 eyezenは東京都江古田出身のラッパー。近年では¥ØU$UK€ ¥UK1MAT$UやYELLOWUHURUなどオルタナティブなダンスミュージックの最前線に立つDJたちとパフォーマンスを行いながら、自身も別名義DJ PELOとして活躍するなど、多角的に独自の音楽性を追求。ヒップホップからレイヴシーンを横断しながら活動する新しいシーンの渦の中心に立つ。
ケンチンミンは大分県出身のラッパー。ギターから音楽にのめり込み、NYでヒップホップに出会いラッパーを志すことに。重厚なメロウサウンドが特徴的な同郷のプロデューサーillmoreや唾奇、GADORO、BASIら人気ラッパーとの共演するなど注目を集め、2022年にはトランペット奏者のRyumei Edatsugiとともに生音テクスチャーの作品をリリース。現在、大分拠点で活動しながら、様々なジャンル/シーンの波を乗りこなす。
O.C.B – 愛染珍民(Prod.by IRONSTONE)
端的に表現すると、アンダーグラウンドの愛染 eyezenとメインストリームのケンチンミン、この2人がコラボすることにはかなりの意外性がある。このコラボについてまるっと話を伺うべく、空港からオーストラリアに飛ぶ直前のケンチンミンを愛染 eyezenとともにキャッチした。
インタビューにはとんでもなく個性的で強烈なキャラクターたちの名前が大量に出てきましたが、諸事情でカットさせていただきました。それでは2人のインタビューをお届けします。
INTERVIEW:
ケンチンミン&愛染 eyezen
──愛染さんと大分の関係はどこから始まったんですか?
愛染 eyezen 初めて行ったのは4年ぐらい前。22歳ぐらいの時にインドから帰ってきて福岡に3ヶ月住んでたことがあって、そこで友達の家に住んでた。その友達の地元が大分なのは知ってたんだけど、そいつはずっと福岡にいたから、遊びに行ったことがなくて。そのあと俺は帰京してラップを頑張ってたら、その友達が呼んでくれた。彼は福岡から大分に帰っていて、初めて大分に行くことになって、AZUL(アスール)という箱に出会う事になる。各地でライブをやる時、リハーサルをしてから飯を食いに行くんだけど、その時AZULでリハをやってから行ったのが「いりぐち」というお店で、それがケンタさん(ケンチンミン)がやってる場所だった。そんなこんなで何度も大分に行くたびにいろんなメンバーと仲良くなっていく。
初めて大分でライブやった時は50人くらいしかお客さんが入らなかったけど、重ねるにつれてどんどん増えてきた。4回目くらいから自分のパーティーと半々でやるくらいになって、これだけ人が入るんだったら拠点を大分に移しても生活できるんじゃないかなと思った。そんな中で宿も決まったり、イズミさんという方と仲良くなって、イズミさんの洋服屋さん「ファウンテン」で週4〜5くらいで働かせてもらうようにもなる。それから3ヶ月住んでた。夜も好きに遊ばせてくれて、毎週クラブに遊びに行ったりして「DJやらせてくれない?」って聞くと、結構やらせてくれた。そこにCDをしれっと置いておいたら、なぜか売れるのよ。
ケンチンミン 「おま○こポリス」だよね(※CDのタイトル)。CR-Rがあんなに高値で売れてるの初めて見たもん。
愛染 eyezen 2,000円だね。あれがすごい売れた。しかも一時期ケースもなくて、ラップに包んで置いたりしてたのに。たぶんみんな車だから、CDは入れるだけでいいから。
ケンチンミン しかも一回CD入れたら、取り出すの面倒だから何ヶ月も聴いたりするじゃん。それで、愛染が大分に来るたびにお客さんの反応が良くなる。それは「おま○こポリス」を車で聞き続けた結果だと思うんだよ。
愛染 eyezen 俺の音楽は歌える音楽ではあると思うけど、お客さんに口ずさんでお客さんに口ずさんでもらうより体感してもらって、踊ったりする方が多い。だけど、大分には歌えるやつがいるんだよね。
ケンチンミン CD-Rに黒いマジックで「おま○こポリス」って書いただけの作品を2,000円で買ったら、せめてちゃんと聴こうと思うよね(笑)。ちゃんと値段をつけることで売る大切さがここにあるのかもしれないね。
──「おま○こポリス」を作ったきっかけは?
愛染 eyezen 「おま○こポリス」を作ったのは、コロナがライブがなくなっちゃった時。その直前でライブがすごい増えてきて、しかも自分のリリースパーティーもあったし、ちゃんとお金をもらえるようになってきたタイミングだったから、かなり損失があった。それでどうにかできないかと思ってた。それでマスクが配られたりしてる時だったから、俺はステッカーを作った。安倍さんの顔に俺の刺青が入ってて、目と口にマスク2枚着けてるというデザイン。そのステッカーとマスク2枚、CDをパケに入れて売ってたんだ。CDは『BlueTrust』(2019)や『DANCING OJISAN』(2021)からの曲が入ってるベスト盤みたいな内容だった。
“Feltover “ Meta Flower & 愛染(eyezen)Prod by Billa Qause Directed by Yuta Koga
──なるほどです。そして、いつから2人で作品を作ろうということになったんですか?
愛染 eyezen パーティーも盛り上がってきて、5回目に大分に来たタイミング……でもなく、大分に来てからどんな人たちがレコーディングできるのかとか、プレイヤーのフットワークの軽さとかを調査するようになった時があった。そこでケンタさんはやり取りする時間軸も変わらないし、馬が合った。
ケンチンミン 大分に拠点に活動しながら全国に行って感じたのは、自分の周りにいるプレイヤーたちは作品リリースにエネルギーを注ぐことが苦手なんだよね。自分が愛染とやろうと思ったきっかけも、愛染のようなスピード感で作品をパッケージングする、速度の基準をシーンに見せたかったから。それで曲だけはすごく早くできたんだけど、リリースまでに1年かかっちゃった(笑)。何も言えない……けど、愛染が大分にいた3ヶ月で4曲を作って、ビデオも2本撮影した、あのスピード感はすごかったと思う。
愛染 eyezen みんな見てくれたんじゃないかな。しかも仕事しながらやってたから。ケンタさんも経営者で子供が2人いるし。そんな中で毎晩遊んで、作品を作る。そこについてきたのがHAGANEというラッパーで、いま21歳くらいだけど、ラップも渋くてセンスが良い。そしていまHAGANEはLAにいる。大分から出て活発に動くのは良い動きだし、LAから大分に良いものを持って帰って、面白い動きをしてくれるんじゃないかと思ってる。
──外に出るという話でいうと、愛染さんは東京を拠点にヒップホップ以外のフィールドのパーティーやレイブに数多出演していました。ケンチンミンさんは大分の外に出て、全国で活発に活動されていた印象があります。近年はどういう活動をされたんですか?
ケンチンミン コロナになってからブッキングがなくなって、もちろん大分でもイベントは開催されにくくなったんですよ。自分は元々バンドをやっていて、コロナ前からバンドでのライブを構想していて、そのバンドメンバーのトランペット(枝次 竜明|Ryumei Edatsugi)がビートを作り始めたりしていたんで、そいつとのEPを1年かけて作りました。がっつりヒップホップというよりは、ジャズ寄りのサウンドでラップした。2021年にはそのEPのリリースをもとに、フルバンドセットでのワンマンライブをホールで開催した。そのすぐ後に愛染が大分に来たから、振り返るとかなり制作してますね。
ケンチンミン STUDIO LIVE – LAID BACK
──ケンチンミンさんは音楽性の振り幅がかなり広いですよね。メロウなビートからフルバンド、そして愛染さんの極彩色のハイブリッドなサウンドまで。
ケンチンミン そうですね。愛染と作る時は、愛染の世界観に入り込みたいなと思って。音的にも言葉的な部分もそう。“onsen u know saying”の906さんのトラックだけ俺が用意して、それ以外は愛染が持ってた。“onsen u know saying”はタイトル通りの曲で、大分はだいたい車を走らせたら目指すところ15分で温泉に着く。だから“onsen u know saying”を聴き切らないまでで風呂場に着いて、ちょっとゆっくりして最後まで聴いてから風呂に入る、みたいな。そういうEPですね。
愛染 eyezen 作品のコンパクトさもそうだけど、俺にとって曲のバリエーションはかなりチャレンジングだった。曲を作る時はライブでどう見えるかを考えるけど、どの曲もクラブで聴いて申し分ないレベルまで持って行けたかなって。
ケンチンミン 最初に作ったのは“O.C.B”なんですけど、俺はトラップやドリルにラップを乗せることをあんまり考えられなかったんですよ。でも愛染が乗ってるドリルはオーガニックで、自分も想像できる。スワッグな感じじゃなくて、スムーズなサンプリングが原曲の良さも出てる。こういうドリルはあまりないよね。
愛染 eyezen ビートだけで聴いても気持ち良いし楽しめるもの。ラップ抜いちゃうとただのワンループのものが多くて、そうじゃない展開のある曲選びを意識してる。ワンループだとラッパーは展開つけやすいと思うけど、俺はビートにストーリーがある方が好き。それと、一人でもヒーローになれるというか、友達と聞いてなくても大丈夫な感じにしてる。イカつすぎないもの。
ケンチンミン サグじゃなくてバッドボーイみたいな感じ。我々、どちらかと言うと悪ガキ、アホやなっていう方。そのスタンスが出てると思う。
──感覚はすごくわかります。ちなみに“O.C.B”って何の略なんですか?
愛染 eyezen Ooita City Boys(笑)。友達がずっと言ってて……ってことは、“O.C.B”という曲があれば大分の友達には反応が良いんじゃないかって思った。
ケンチンミン 反応良かったね。“O.C.B”はライブで1回しかやってないし、音源を3人くらいにしか渡してないのに、あれよあれよという間に勝手にプレイされてた(笑)。
愛染 eyezen 今はマスタリングした音源があるから、一回消して欲しい(笑)。
──反応はバッチリですね。ジャケットでは2人が学ランを着てますけど、学ランが関係ありそうな“school life”という曲にはどういうストーリーがあるんですか?
ケンチンミン 僕がこれまでやってきた音楽で「skrr skrr」(※スクースクーと発するスラング)が使われることはなかったんですけど、愛染が初めて大分きた時にスクスクやっているのを見て、面白いなって思ったんですよ。渋谷のHARLEMでキャピキャピしてる人たちのスクスクではなくて、ヒッピー系のスクスクなんですよ。完全に後乗りなんですけど、世界中みんな飽きてきたくらいの時に好きになってきて。
愛染 eyezen 大分の街中、やたらスクスク言うようになってたよね(笑)。
ケンチンミン 「何してるの?」って聞くと、「スクー」って返ってくるみたいな。変なスラングになった。完全に別物のスクーになったところで、「スクールライフってどうなの?」ということになった(笑)。このストリートを学校として、愛染が転校生としてやってきてスクスクするライフを送る、というのを考えた。
愛染 eyezen 学校にこういうハイなボーイズもいても良いよなと。感覚は冴えてるけど、おっちょこちょいみたいな。
ケンチンミン 学校には超良い奴らもいれば超悪い奴らもいて、その全員が同じ建物にいたりするじゃないですか。それは結構ストリートや社会の縮図でもあるなって。愛染を見てても、転校生なのに大分の地元の先輩後輩達をロックしてる。そういうことを歌った曲ですね(笑)。なのでフックとバースはまず最初に僕が書いて送りました。
──ケンチンミンさんは“UEO”のリミックスに参加されていかがでしたか?
ケンチンミン あの曲は元々愛染の作品で一番好きな曲だったんですよ。別にヒップホップのビートでもないし、トラップでもない。「なんだこのビートは!?」というのが第一印象だけど、ラップが乗っかるとすごい収まりが良い。イメージはすごい大自然に裸で放り出されて、L〇Dを食ってるRIP SLYMEみたいな感じ。
愛染 eyezen (笑)
ケンチンミン 愛染の世界観に飛び込みたいっていうのは“UEO”の影響が多くて、同じく曲に参加しているMOMOくん(LafLife)が普段やってることはかなりブーンバップ・スタイルじゃないですか。でも“UEO”で見つけたMOMOくんの新しいキャラクターもすごい好きで、自分もその方向に乗せていきたいと思った。
愛染 eyezen そう考えると確かに、MOMOくんが参加してるのは意外性があるかもしれないですね。俺にとっては仲の良い友達のような先輩で、MOMOくんとやるのは必然的だった。作ってる音楽と聴く音楽は違ったりすると思うんですけど、それを正直に反映させただけなんですよ。自分にとって何か変化が欲しくて、そういう中でビートを募集したら、KARINGAさんからビートが届いた。KARINGAさんはトラックメイカーというよりDJの印象の方が強くて、ラッパーにトラックを提供したことはほぼないと思う。KARINGAさんは音楽どうこうの前に、喋ってて楽しくて好きな人で、何を喋っているかはほぼ理解不能なんだけど、そういうのに対して「えっ?」ってなるのがすごい好きなの(笑)。それで、届いたビートもすごい良くて、たまたまその時MOMOくんと遊んでたから、一緒にやってみようということになった。“UEO”を作ったあたりから新しい扉が開いたと思う。みんなそう言ってくれるし、ちょうどそのタイミングで俺はダンスミュージックにどっぷりハマった。
ケンチンミン ダンスミュージックとかに落とし込むのが難しいもんね。
愛染 eyezen そう。元々好きなんだけど、自分が実際作ってそのフィールドの人たちを満足させるのはまた別の話だから。ただ、そのフィールドでアウトプットを続けた結果、そのおかげで今がある。制作はやってるけど、そこまで作品を出してないのに、なんとかなってる。でも同じことを続けてると飽きるからDJをやるようになったんだよね。それで今はDJとライブを混ぜ込んだ1時間くらいのセットをやってる。
ケンチンミン なるほど。今回のEPを作るにあたって、ふざけたことを真面目にやるというのが最大のテーマとしてあった。本当は他にも「まわりを確認 ク○ニ」というタイトルの曲とかもあったんですよね。
愛染 eyezen あった。ビートが難しかった(笑)。
ケンチンミン “school life”も“onsen u know saying”もまさしくそうで、たぶん俺一人でやっちゃうとギャグで終わっちゃんだけど、愛染とやると遊びの説得力が出る。やっぱり「スクスク」を「救う」に変えた愛染がすごいよ。相当の覚悟がないとこんなおふざけできない。しかも愛染のことを見たら、一瞬で「この人は覚悟決まってるな」って分かるじゃないですか。だから、EPも愛染がいるから絶妙な塩梅になる。普段は絶対に書かないようなリリックを書いた。小学校でも一緒にいるとカッコつけなくてもいい気の合う奴らみたいなのいるじゃないですか。側から見たらちょっとダサいけど、羨ましかったりもするような。EPでそういう部分も感じてほしいですね。「イースタンブール 飛び込むプール」みたいな歌詞は絶対ふだん書けないから。
愛染 eyezen “O.C.B”のMVを出した後にいろんな人から連絡をもらったんだけど、ケンタさんのファンからめっちゃ意外だったっていう声もあった。意外性はかなりある組み合わせだと思う。俺らのリスナーを混ぜたかったのが一番だから、多分だけど、俺のリスナーもケンタさんのリスナーもめっちゃいいやつばかりだと思う。その意外性を裏切らない、いろんな振り幅のあるEPだと思う。
──“onsen u know saying”をはじめ、この作品には「大分ならではの遊び方」が散りばめられてると思います。そこで大分の遊び方を知りたくて。
愛染 eyezen お昼に職場に行く。お店の外は通りになってて、外にテーブルが置いてある。そこでイズミさんが座ってビールとか飲みはじめてて、俺も誘われて飲みはじめて、仕事が終わる19時頃にはベロベロの一歩手前になってる。そこで何も用事はないんだけど、近くにケンタさんのお店があるから、そこに行って作戦会議をする。そこでまずニカソを頼む。
──リリックにも「ニカソ」という単語が出てきますが、「ニカソ」ってなんですか?
愛染 eyezen 二階堂のソーダ割りのこと。大分の二階堂は他と違ってアルコール度数が20度なんですよね。
ケンチンミン そう。他は25度。元々、宮崎と大分は基本20度の焼酎を使っていて。それは元々大分も宮崎もケチな土地で、焼酎は全部25度だけど売る時に水混ぜて売ってたんですよ。
愛染 eyezen ヤバい!(笑)
ケンチンミン だから25度だと思ってるけど20度の酒になってる。そこから「水商売」という言葉ができたくらいで、酒を売ってるのに「酒商売」じゃなくて「水商売」って言ってるのは、水の分で上がりを出してるから。
愛染 eyezen ケンタさんはマジでこういううんちく知ってるんだよね。たまに嘘とか混じってるから気をつけた方がいい。
ケンチンミン これは本当です(笑)。ニカソ飲んでどうするんだっけ。
愛染 eyezen それからケンタさんがやってるピザ屋さんに行くか、「チャカチャカ」というジャークチキンのお店に行く。これを真昼間にやることもある。
ケンチンミン もうこれで全部言ってる(笑)。幅はめちゃくちゃあるけど、ストリートの攻め方としては「いりぐち」か「チャカチャカ」に行くのが王道。それだったり、愛染がいた「ファウンテン」や「BANDIERA」というストリートのお店がある。大分の良いところは、コンビニと同じくらい温泉があるから、飲みの締めだったり、昼間に二日酔いの酒を抜くために一発温泉に行ける。それが“onsen u know saying”。朝方に行ける温泉も全然ある。
愛染 eyezen 大分の温泉は熱いんだよね。何度でしたっけ?
ケンチンミン 「源泉 湯加減 42°」(“onsen u know saying”)ね。
愛染 eyezen そうだ(笑)。それでだいたい「アツ」と「ヌル」がある。俺は「アツ」が好きで、すごい酒が抜けるんだよね。それと、お風呂の入り方のルールがちゃんとある。
ケンチンミン そう。「お邪魔します!」みたいな感じで、挨拶は絶対。そこは地域の人のマジな風呂だったりするから、大分市内の人でもよそ者だし、郷に従うしかない。
愛染 eyezen お風呂の縁の部分に座っちゃダメとかね。頭をつけるところだから。あと水を入れちゃダメ。マジでキレられる。特に別府は厳しいかも。
ケンチンミン 大分は本当に温泉文化が強い。昔、別府はソープ街が栄えていて、遊んでいた人が温泉に行って体を流すみたいな感じだったと思う。その別府のソープ街で働いてる方々はお客さんの匂いで、どこの温泉に行ってるか分かるっていう逸話があります。
愛染 eyezen 温泉好きだったら最高の街だよね。ご飯も美味しいし。魚と鳥、あと椎茸。椎茸は本当に美味しい。天麩羅が好き。
ケンチンミン 椎茸は何をしても美味しい。椎茸だけのアヒージョとかぶっ飛ぶくらい美味い。なんかビール飲みたくなってきた(笑)。
愛染 eyezen 大分の話をすると酒を飲みたくなりますよね。
──お二人はちゃんと拠点を置きながらも、全国を回る旅の達人ですよね。
ケンチンミン 旅の良いところは絶対に予定通りにいかないから、そのトラブルを楽しめると心に余裕が持てる。だから旅から帰ってくるとちょっと人に優しくできたりすることかな……。それと、外に出るから地元の良さも分かること。逆に自分探しで旅に出るというのもあるけど、地元で自分を見つけられない人が海外に行ったりしても、見失うだけのことも多いと思う。愛染の動きはそれが如実に出てるよね。いろんなところで楽しんでるけど、やっぱり愛染は東京なんだと。その感覚かな。俺は大分を拠点に活動しているけど、どこに行ってもその都市のやつより楽しむ気でいる。
愛染 eyezen 俺も英語の留学でインドに行ってるけど、五ヶ月のカリキュラムがある中で、学校は10日で行かなくなった。その間に東京とほぼ同じレベルで遊べるようになってから、土地の感覚がわかるようになって、遊んでた方が英語の勉強ができるようになった。それで工夫して遊べるようになったりした。
ケンチンミン 愛染も一人でインドに行ったと思うけど、俺も18歳くらいの時に一人でカナダに行ってる。一人で行くと真っ新な状態になるじゃん。でもここで1年住まないといけないから、友達作りから始める。この経験をしておいて良かったとすごく思う。
──愛染さんにとって旅の醍醐味ってなんだと思いますか?
愛染 eyezen 俺は旅自体が目的だから。純粋に旅が好きで、それを続けるためにいろんなツールがある。旅をするためにかかる予算が少なくともプライマゼロになるために自分が何ができるか。0の状態が好きで、自分のことを全く知らないその土地の人たちに自分がどういう人間かを教えて、それからコミュニケーションしてコミュニティーや作品を作っていく。俺にとって消費してるだけは旅ではなくて、何かして旅費くらいは稼ぎたい。だから訳わからないお願いとかはめっちゃする。それでちゃんとすれば、次来たときはまた違う関わりができるかもしれない。そうやって居場所を作って、新しいコミュニティーを繋いでいくような、活性化する動きをしたい。どこに友達が来ても大丈夫なようにする、その土台を作る、俺の場所を作るのが旅の醍醐味(笑)。でも、それは独り占めしたりしないで、みんなで流動していくのが理想かな。
撮影/Itaru Sawada, Koichiro Funatsu
取材・文/Koichiro Funatsu
INFORMATION
愛染珍民(ケンチンミン&愛染 eyezen)『江戸豊後』
Tracklist
1. O.C.B prod. IRONSTONE
2. UEO(feat. MOMO & ケンチンミン)[Remix] prod. Karinga
3. school life prod. ne4r
4. onsen u know saying(feat. HAGANE)prod. 906
配信はこちらからAZUL 大分ケンチンミン Twitterケンチンミン Instagram愛染 eyezen Twitter愛染 eyezen Instagram