Qeticでの連載コラム「FAKYのちょっと聞いて」も大好評の5人組ガールズユニオン・FAKY。「フェイクなフリしてとことんリアルに」をコンセプトに掲げ、スタイルもルーツも異なる5人が魅せる圧倒的なパフォーマンスと高いクリエイティビティ、そして個性溢れるメンバーのパーソナリティについても、国内外から熱い視線が送られています。
これまでにブラジルやカナダといった海外での公演で成功を納め、世界規模でのブレイク必至のアーティストとして注目される彼女たち。そんななか、リリースされた最新曲“ダーリン(Prod. GeG)”は、変態紳士クラブのプロデューサー/トラックメイカーであるGeGが手がけた“エモチル系ラブソング”。
夏の終わりを感じさせるメロウなトラックと、シンガーソングライター・HiplinとShoki Kitauraによる共作。少しほろ苦い歌詞とがリンクした、夏の終わりのミドルチューン。
今回は、FAKYの近況やレコーディング・振付の裏話、歌詞に重なるメンバーのプライベートエピソードなどを散りばめながら、“ダーリン(Prod. GeG)”の魅力に迫ります!
INTERVIEW:FAKY
この状況下でどれだけみんなと繋がれるか
会えないけど伝えたいことは音楽で届けたい
━━今年は新型コロナウィルスの影響で公演が中止になったり、これまでとは活動ペースが変わってしまったかと思いますが、みなさん自粛期間中などはどう過ごされていましたか?
Mikako 私は、どうなるのかわからないという不安の中でも、いつなにが来てもいいように、トレーニングや自分がやるべきことを常にやっていました。プライベートだと、自宅のバルコニーをゆっくり過ごせるスペースに改造したので、朝起きてそこでコーヒーを飲むことが増えました。
Akina 私は、前まで一人でいることが寂しいタイプでしたが、自粛期間中にマインドセットが一気に変わって。Mikakoと同じく朝早く起きて散歩したり、壁に雑誌の切り抜きを貼って部屋を自分らしい感じに模様替えしたり。一人でも楽しく過ごせるんだって思えるようになりました。
Lil’ Fang FAKY全体の活動でいうとワンマンライブが無くなってしまって、周りから「残念だね、大丈夫?」って声をかけられることも多かったんですけど、そう言ってもらうのが申し訳ないくらいに自分たちの中では切り替えが出来ていました。この状況下でどれだけみんなと繋がれるかっていうことをみんなで考えたし、会えないけど伝えたいことは音楽で届けたいっていう気持ちが全員共通でありました。
━━自粛期間中の6月に配信リリースされた『Re:wrapped』には、そんな想いも込められていたんですね。活動に制限のある状況でも『FAKY WORLD』や各メンバーのSNSを通じて、ペースを落とさずファンと近い距離感で活動している印象です。
Lil’ Fang そうですね。これまで配信でのコミュニーケーションはなにか特別なときにしかしてこなかったんですけど、『FAKY WORLD』だったり「#WeAreAllHereTogether ―独りになんてさせないよ」っていうハッシュタグをつくってキャンペーンをしたり、私たちからの発信でファンの方といかにコミュニケーションをとれるかっていうのは制限があったからこそ得られた力だと思うし、私たちにしてみれば準備期間くらいの感じでポジティブに捉えるようにしていました。
━━素晴らしいですね。自粛期間中はメンバー同士のコミュニケーションも主にオンライン上だったそうですが、いつもより少し距離が離れたことでメンバーに対して感じたことはありましたか? たとえば、魅力的なところだったり、最近変わったなと思うことだったり。
Hina Mikakoはメンバーのなかで一番ファッションが優れているんですけど、外に出られない期間もずっとInstagramに私服を投稿し続けていたのが本当すごい!って思ってました。私1日パジャマだったもん……。さすがです!(拍手)
Taki Mikakoが変わったと思うところがひとつあります。個人的なことですが、私がリハーサルの時にすごく騒いでいると、Mikakoはいつも「うん、はいはい」って感じだったけど、自粛期間が終わったあとは前よりも話してくれるようになった!(笑)
Lil’ Fang 話してくれるようになった(笑)。
Mikako それは自分で気づいてなかったかも(笑)。
Taki なんでも話してくれるようになったから、すごく打ち解けた感じがします!
Lil’ Fang Takiは4月が20歳の誕生日だったんですけど、緊急事態宣言があけてから私とMikakoの3人でご飯に行って、そこで初めてお酒を嗜んで。というのが、プライベートな話をするキッカケにもなったんじゃないかな。
━━Takiさん、初めてのお酒どうでしたか?
Taki ずっと笑っていたような……、楽しかった感じがします(笑)。
Mikako 変わったといえば、Akinaがそうかもしれないですね。見た目も中身もいろんな意味で大人になったし、自分の思っていることや感じていることを伝えられるようになったと思います。本当に気が使える子なので遠慮しちゃう部分もあるのかなと思っていたけど、今は自分から考えていることを話してくれるようになりました。
Lil’ Fang 私はAkinaと一緒にラジオをやっているっていうのもあって、よく2人でご飯に行ったりするんですけど、彼女の場合、すごくクリエイティブなアイデアはあるのに発言しようとすると日本語でどう伝えようか、すごく考えてしまっていたと思うので、どんどん日本語もうまくなってきて、やっと言葉が追いついてきたんだろうなって思います。
Akina 日本語が上手くなってきていることもあるかもしれないけど、それよりこの5人がどんどん仲良くなってきたから伝えやすくなってきたんだと思います。……あっ、勝手にそう思ってるんだけど(笑)。
Lil’ Fang いいよ、一回聴くわ!
Mikako (笑) 大丈夫、大丈夫!
━━変わったといえば、Hinaさんの場合ABEMA『月とオオカミちゃんには騙されない』出演の前後で大きな変化があったのでは?
Hina そうですね。一番変化があったのは生活リズムかもしれないです。寝るのが早くなりました。
Lil’ Fang 物理的にすごく忙しくなって、大丈夫かな? と心配にはなりました。ひとつひとつに真摯に向き合う繊細さがあるので、キャパオーバーにならないかなって親心的な感じで見守っていたんですけど、意外とそんなことはなく、かといって調子に乗るわけでもなく(笑)。状況は変わったけど、スタンスは変えずにこの量の仕事をこなせているっていうのは、尊敬できるし、素晴らしいなって思いますね。
Mikako/Akina/Taki うんうん。
━━では最後、Lil’ Fangさんについてはどうでしょう。
Akina 自粛期間中はいろいろまとめる必要があることとか、私たちのすごく強い意見とか一人一人の気持ちと想いをLilが全部まとめてくれて。前からリーダーシップはあったけど、今回のことでレベルアップしていましたね。
Mikako 仕事もプライベートも色々な意味ですごく落ち着いたというか。だからこそ、Akinaが言ったようにまとめることが上手になってきたし、Lilはこっちが「大丈夫?」って思うくらいすごく周りを見てくれています。これだけバラバラの5人がひとつにまとまるためには、Lilがいないと。
Lil’ Fang ……うっす。
Mikako/Akina/Taki/Hina あはははは!
Lil’ Fang あんまりこの話を広げたくないですけど(笑)。私、4人を輝かせることに一生を使いたいんです。本当にそう思っているし、おそらく私が一番のファンなんです。このメンバーが集結するって奇跡だと思っているので、その魅力を伝えて行きたいって想いがすごくあります。
Akina あなたもね!
Mikako Lilは、こういうことを言いながら自分のこともちゃんとわかっているから。そういうところが天才なんです。
Lil’ Fang それ私、自分で自分の株上げにいってるじゃん!(笑)
どんなジャンルの音楽を聴いている人にも
好きになってもらえる自信は、聴いた瞬間に感じた
━━最新曲“ダーリン(Prod. GeG)”のお話を。変態紳士クラブのGeGさんプロデュースの楽曲ですが、これまでとはまた一味違ったFAKYの魅力が垣間見える素敵な曲だと感じました。
一同 ありがとうございます!
━━Lil’ FangさんとHinaさんにとって、GeGさんのプロデュースは念願だったそうですね。
Lil’ Fang 『Re:wrapped』を出したあとの展開をどうするか? という話を今年の初めにしていたときに倖田來未さんやAwichさんとご一緒させて頂いたのがとても刺激的だったので、また新たなコラボもしてみようってなり、スタッフの方と話し合う中で変態紳士クラブさんにぜひお願いしてみたいってなりました。それとは別に、HinaもTikTokでGeGさんと繋がっていたり。
Hina 今回ご一緒したGeGさんとHiplinさんの楽曲“I Gotta Go feat. kojikoji, WILYWNKA & Hiplin”を使ってTikTokを撮ったりしていて、それをたまたまGeGさんが観てくださっていて。「いつかご一緒できるといいですね」みたいなメッセージのやり取りをしていました。それが、まさかこんなに早く実現するとは思ってなかったので、すっごく嬉しかったです。
━━この曲を最初に聴いたときの印象は?
Hina 最初にGeGさんからデモをいただいたときは、男性の声でオートチューンがかかっていて、曲調も今までのFAKYにはない感じでした。プリプロの日に自分たちが歌うまでは、いい意味で想像がつかなくてすごくワクワクしていました。
Akina とてもわかります。それに加えて、一番最初に聴いたときはトラックがすごく耳に入ってきて。エモい感じで、サビに入ってくるギターがチルなロックっぽさもあって。いろんなサウンドが混ざっているのが印象的でした。どんなジャンルの音楽を聴いている人にも好きになってもらえる自信は、聴いた瞬間に感じました。
Lil’ Fang 私はみんなより一足先に曲を聴かせてもらっていたんですけど、この曲をFAKYが歌うなら、夕日が沈むビーチのステージで歌うイメージがすぐに浮かびました。詞を書いてくださったHiplinさんが「は」とか「が」とか一言にすごくこだわってくださって。「女の子が歌うんだったら、ここの言い回しはどう?」とか。そういったやり取りの中で、これはすごく意味のある作品になるなと思ったし、レコーディングもイメージ通りでした。
━━今回、歌詞もすごく詩的だし、耳元でささやきかけるようなヴォーカルがすごく印象的でした。レコーディングのときは、どんなことを工夫しましたか?
Lil’ Fang 一番のポイントはGeGさんから「歌うんじゃなくて、語るように」とディレクションしていただいたので、今回は初めて全員が座って歌いました。特に、私は立っているとすごいはって歌っちゃうんです(笑)。それと、一曲を通してオートチューンがかかっているのも初めてですね。オートチューンって、簡単に言うと音程を補正してくれる効果があるんですけど、微妙な音程でいくと生で聴いている分にはズレていない音域でも機械が勝手に判断して音をハズしちゃうんです。だから、いつも以上に神経を尖らせないとニュアンスも出なければ音程もズレて聴こえてしまうっていう難しさがありました。
━━そういったことを知って聴くと、また違った魅力も感じられそうですね。そして、FAKYの特色でもある衣装やダンスについてもぜひ教えてください。
Mikako 衣装については、スタイリストのさんとじっくり話し合いました。今季のトレンドカラーっていうこととあわせて、楽曲のエモーショナルな雰囲気を表現しようということで、オレンジをキーカラーにしています。今回、衣装が2パターンあって、もうひとつがデニムをメインとしたもの。そっちはいい意味で衣装っぽくない、ほぼ私物っていうくらいの等身大をイメージしています。ひとつひとつの形に結構こだわったので、それぞれのキャラが出ていると思うので、そこは観ていただきたいです。
Lil’ Fang MVも、ヤバイんですよ。みんな可愛いんですよ〜。
Hina ね!私もそう思う!
Lil’ Fang 今回、振り付けは昔からお世話になっているコレオグラファーのCHALIにお願いしたんですけど、こんなにリリカルに踊るのは初めてです。マネしやすいんだけど、HIPHOPが緻密に組み込まれています。
Akina この曲はすごくメリハリがあるんです。ざっくり言うとブリッジ以外は曲に合わせた雰囲気でずっとゆるく感じなんですが、ブリッジのところはリリカルとHIPHOPがいい感じにバランスが取れていて、すごく世界観がでているので、そこも注目してほしいです。
FAKY – ダーリン(Prod. GeG)
自分的に初めて恋愛にフォーカスして、
初恋の人が目の前にいると思って歌いました
━━今回の楽曲には「エモチル系ラブソング」というキャッチがついていますが、みなさん歌詞にリンクするような思い出とかって、ありますか?
Mikako 今回、デモを聴いたときに直感で恋愛ソングだなと感じたので、FAKY史上初めて恋愛にフォーカスして、レコーディングのときは初めて好きになった人が目の前にいると思って歌いました。恋愛経験はあまり多くないんですけど、大事に恋愛をしてきたし、今でも一人一人が大切な人っていう気持ちがあって。今回サビの部分、特に《声を聴かせてよ ダーリン》という歌詞で自立してカッコ良くなった女性が思い浮かんで、そこがすごく自分にもフィットしました。これは大事にしたい曲、大事にしたいラインだなと思いながら、初恋を歌いました。
Lil’ Fang/Akina/Hina/Taki ……………。
Lil’ Fang ギューン……もうキュンは通り越してんよ。ギューンよ。
Mikako/Akina/Hina/Taki あはははは!
Mikako さっきMVもヤバイっていう話がありましたけど、一人一人表現が違うし、MVの撮影もその初恋の人を想ってやったので、目の動き方ひとつとってもすごく意識しました。
━━それを知って観ると、また違った深みを感じますね……。
Lil’ Fang 私は、Mikakoと真反対なんですよ。自分で言うのもなんですけど恋多き女だし、別れた方とも全員友達になっちゃう。だからそういう意味では、今回ちょっと難しかったかもしれません。ひとつ言うなら、14歳のときに付き合った人ですかね。本当に好きで、もう泣いちゃうくらい大好きで。その人とは進路とかいろいろな事情があって離れなきゃいけなくなってしまったんですけど、あれだけ好きになったことは後にも先にもなくて、その人と別れたときのことが歌詞に重なったりはしますね。もうすぐ結婚するっぽいんですけど。
Mikako/Akina/Hina/Taki えええええええ〜!
Lil’ Fang でも、今でもその人と仲はいいので!
Hina こんな大恋愛の話のあとに出せるエピソードはないんですけど(笑)。この曲は歌詞がすごく苦しいポイントを突いてくると思っていて。私が一番自分と重なるのが、《ため息の様な独り言に あなたへの想いが零れる》という歌詞で。声にならないか出来ないかはその人次第だと思うけど、私そういうのがすごく多くて。
Lil’ Fang たしかに! 気づくと口パクパクしてるんですよ(笑)。
Hina (笑)。思ってることがいっぱいあっても声にならないときもあるし、できないときもあるし、しないときもあるし。私にとっては《ため息の様な独り言━━》という一文が苦しくなるポイントだったりするし、そういうポイントが聴いてくださっている方にも絶対あると思うので、それを見つけて感じてほしいです。
Taki 私はこの曲を初めて聴いたとき、フィリピンに住んでいた頃に車で海沿いのまっすぐな道を走っているときの風景がフラッシュバックしました。恋愛の曲でもあるけど、まだそういう気持ちになったことがない若い人は、私と同じように思い出とか小さい頃に仲が良かったけど今は遠くにいる人のことと同じように重なるんじゃないかなって思います。この曲を聴いて恋愛の気持ちを探したくなっても、時間はいっぱいあるから大丈夫(笑)。
━━たしかに、恋愛だけじゃなくて聴く人それぞれの大切な感情にそっと触れるような曲だなと改めて感じます。最後に、”ダーリン(Prod. GeG)”でまたひとつ新しい扉を開けたFAKYのこれからについて訊かせてください。
Lil’ Fang 私たちは全員が共通して、同じことはしないっていう意識を持っていて。私たちが一番楽しいって思えるか、私たちがイケてるって思えるかをチーム全体が大事にしているし、そこは絶対変えずに、その時々に「完璧だね」って自分たちが言えることをずっとやっていきたいという想いがあります。今回、新型コロナがあって、初めて世界中が同じ問題に取り組んでいるんですよね。そこで思ったのは、全世界共通で伝えられるのはやっぱり音楽なんだなって。言葉や報道で共通認識を得ることはすごく難しいんですけど、音楽はボーダーレスだから。どんな国にいる、どんなジェンダーの人でも聴いてもらえるような音楽と糧にしてもらえるようなメッセージをずっと発信していけるようになりたいなと思います。
Text by 野中ミサキ(NaNo.works)
Photo by 柴崎まどか
FAKY
J-POP界のニュー・ウェーヴ
“次世代ガールズ・ユニオンFAKY”
ルーツもスタイルも異なる最強の5人が集結(=ユニオン)。
2017年に発表した『Surrender』は「Spotify」Viral Top 50チャートにて日米Top 10入りを果たした。
2019年7月には、ガールズパワーをテーマにしたダンスシングル3部作のリリースを発表し、YouTubeのミュージックビデオが、3作合計で700万回再生を突破。
2020年3月、ABEMA「月とオオカミちゃんには騙されない」に出演したHinaの心情を歌にした「half-moon」、6月には、新体制となって初のリテイクアルバム『Re:wrapped』、七夕には「half-moon feat. Novel Core」をリリース。
ブラジル公演やカナダ、スペイン公演で大成功を収めるなど、世界のトップクリエイターを迎えたクリエイティブの高さと彼女達のパフォーマンス力に各国から注目が集まっている。