カコアバンドも四つ打ちダンスロックも真っ青な高速BPMで煽りまくるジプシー・ブラス・バンド、ファンファーレ・チォカリーア。先日の<FUJI ROCK FESTIVAL’14(以下、フジロック)>でトリコになった人もきっと少なくないのでは? 現在のジプシー音楽を演奏するバンドの中でも管楽器だけでビートからベース音、コードから主旋律までカバーする編成は稀有。人間の呼吸が生む爆発力は、冒頭の高速BPMに顕著だが、彼らの魅力はそれだけじゃない。ジプシーという出自に基づく哀感や人生を生き抜く力に満ちた歌モノナンバーもまた素晴らしい。今回は再び10月に単独公演やジプシー・バンドが複数出演する<ジプシー・オリエンタル・エクスプレス!!>に先駆け、ファンファーレ・チォカリーアを見出し、作品制作やツアーの舵を取るマネージャー、ヘンリー・エルンストを<フジロック’14>終了翌日の東京でキャッチ。彼らの音楽や人柄の魅力や、入門編にうってつけの曲などを聞いてみた。

FANFARE CIOCARLIA – “BORN TO BE WILD”

Profile:ファンファーレ・チォカリーア

現在のジプシー音楽を代表し、絶大な人気を誇る、世界最速最強のジプシー・ブラス・バンド。ルーマニア北東部の寒村ゼチェ・プラジーニ出身。バンド名は「ヒバリのブラス・バンド」を意味する。1998年にアルバム・デビュー。初の欧州~日本ツアーを追ったドキュメンタリー『炎のジプシー・ブラス』(04年)が作られ、さらなる人気を獲得。2006年に栄誉ある英国BBC Radio 3の「ワールドミュージック賞」を受賞、世界的に大ヒットした映画『ボラット』(07年)では、彼らがカバーしたステッペン・ウルフの“ワイルドで行こう”がエンディング曲に使用された。00、04、05、08年の来日公演は、いずれも大成功を収め、05&08年の公演では、渋さ知らズオーケストラとも共演し話題となった。今年3月に新作アルバム『悪魔の物語』をリリース、7月には満を持してフジロックフェスティバルに登場、10月には6年ぶり5度目となる来日ツアーが全国7カ所で予定されている。

ジプシー・ブラス・サウンドとは?

映画『アンダーグラウンド』(1995年カンヌ映画祭グランプリ)や『黒猫・白猫』で注目され、いまだにファンを増やし続けるジプシー・ブラス・サウンド。16世紀頃からバルカン半島を支配したオスマン帝国の軍楽がこの音楽のルーツであり、その軍楽隊は太鼓と大量の笛で構成されていた。それが19世紀頃には当地のジプシーたちによりトルコの笛からヨーロッパのブラスへと持ち替えられ、バルカン半島の様々な民族の伝統音楽のメロディ、リズムが混ざりあう中で形作られた。また同時に音楽の意味も軍楽から冠婚葬祭という日常性の中へと変化していった。

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