2022年7月29日(金)〜31(日)にかけて開催された<FUJI ROCK FESTIVAL ’22(以下、フジロック)>。Qeticでは、<フジロック>現地にて、出演したアーティストのインタビューを実施。今回は、29日に出演した食品まつり a.k.a foodman(以下、食品まつり)のインタビューをお届けする。
名古屋在住のエレクトロニック・ミュージック・プロデューサー、食品まつりは昨年7月に最新作『Yasuragi Land』を、Kode9主宰の名門〈Hyperdub〉からリリース。彼の根幹にあるジュークを軸に「やすらぎ」を漂わせながら、アンビエント・ミュージックとも、ダンス・ミュージックとも取れるような、食品まつりらしい創作的な音楽を発表した。
初登場となる<フジロック>では、初日のRED MARQUEEの夜間帯、PLANET GROOVEに出演。「見た目よりもさっぱりしたラーメン」のようなセットをプレイしたいとインタビューで語った食品まつりは、高速で跳ねるようなパーカッションが心地良いジュークとエレクトロニック・ミュージックでオーディエンスを病みつきにさせた。
食品まつりの特異なバランス感は、彼自身が発信しているSNSなどからも、極めてゆるく伝わってくる。アジフライ、ボラ、銭湯、サウナについて……食品まつりが語ってくれた。
INTERVIEW@FUJI ROCK:
食品まつり a.k.a foodman
──<フジロック>にまつわるお仕事ですと、エチケットやルールをまとめた「OSAHO」という動画の音楽を担当されてましたよね。
OSAHOのビデオは元々、1980円(イチキュッパ)っていうユニットをやってて、そのメンバーのくろやなぎてっぺいくんっていう映像作家と一緒に作ったんです。
FUJI ROCK FESTIVAL《 OSAHO 》- Festival Etiquette –
──NHKの『デデデデザインて何?!』という番組などでも、音楽を担当されていたりもしますよね。
そうですね。昔からテレビ、CMの曲はちょくちょく作ってて、その流れで依頼をいただいたりしてます。
──映像がある場合、ふだん音楽を作るときは別の視点で作っていくんですか?
映像がまずあって、そこに合わせていく感じ。あとは向こうから、テーマをもらって作るってパターンもあります。「このテーマで」「自然っぽい感じで」って、お題をもらって作るのが昔から結構好きなんですよね。
──クラブでプレイされることも多いと思いますが、VJの方とコラボすることもあったり。
VJとして出演している方がやってくれたりとか。アート系のイベントで、VJの方と一緒にライブしたり、DJしたことは何回かあります。
──食品まつりさんがBOILER ROOMに出演されたときのVJのインパクトがすごくて、とても印象に残ってます。
あれは2016年にアメリカで撮影したんですよ。BOILER ROOMのスタッフの方から、撮影の前に「FOODMAN(食品まつり)の好きなものはあるか」って聞かれて(笑)。うどんやラーメン、銭湯とか、色々言ったら、それを向こうが汲んでくれて、日本のCMとかをサンプリングしてくれたんですよ。
食品まつり a.k.a foodman Boiler Room New York Live Set
──それがあの混沌とした映像に繋がったんですね。最近だと、アルバム『YASURAGI LAND』を<Hyperdub>さんからリリースされました。いろんな表情のある、すてきな作品だなと思うと同時に、やはり食品まつりさんのジュークを強く感じました。そこでふと、<フジロック>でジュークのアーティストが登場するのは初めてなんじゃないかと思いまして。今回はどういったセットになるのでしょう?
かもしれないですね! 今回は真夜中のダンスの時間なので、ジュークを結構やろうかなと思ってます。ライブでしかやったことない、まだリリースしてないのをやろうかなと。高速のやつです。
──高速(笑)。作品のリリースパーティーでは、水風呂とサウナという、ふたつのテーマでそれぞれ違うテーマのフロアがありましたよね。食品まつりさんは高速もやる一方で、ハウスセットだったり、アンビエントもやる。その振り幅がすごいなと。
水風呂フロアとサウナフロアを作りました(笑)。水風呂フロアはアンビエント系の方にやってもらったり、サウナフロアはテンション高めなアーティストに出演してもらって、自分もそのときは速いセットでした。
──音楽的には遠くて近いような、一見極端なところを行ってますよね。だけど、食品まつりさんのTwitterを見ると、すごく日常的だと思うんです。アジフライやボラについてツイートしたり、いちファンとして降神の“帰り道”のライブ動画について「超気合い入る」的なことを呟いていたり……。
そうですね(笑)。降神はやっぱりもう……好きで。志人くんとかは昔からちょくちょく交流はあったりもするんですよ。あの方のスタイルはすごくて。
──最近の志人さんのアルバム(『心眼銀河-SHINGANGINGA-』)は買われましたか?ビートはすべてYAMAHAで作っていることと、「山の葉」という言葉をかけていて、CDなどを山の葉で包んだパッケージングで、衝撃的な作品でした。
送っていただいたんですよ。一枚一枚手作りで、衝撃を受けましたね。匂いもすごいんですよ。その感じもまたリアルだなって。あれはくらいましたね。
──今回リリースされた作品はCDとレコードも作られたと思うのですが、手に取れるプロダクションだからこそのこだわりはありますか?
アルバムはなるべくレコードで出したい気持ちがあるんですけど、なかでもジャケットを音のイメージと合わせたくて。今回は<Hyperdub>の方が紹介してくれたデザイナーの人と作りました。こっちもアジフライとか銭湯の写真とかを送って、イメージを共有しました。前作のアルバムは自分で全部ジャケを書いたりとかもして。
──絵もすごい描かれてますよね。
そうなんです。最近、なかなか絵を描く時間がないんですけど。2019年に個展をやったことがあって、近いうちまたやりたいです。
──食品まつりさんが描く絵はすごく綺麗だけど、暴力的でもあってすごく魅力的です。話を戻すのですが、<フジロック>は今回初出演とのことで。
今回、遊びに行くのも、会場に来るのもはじめてです。今日ライブしている幾何学模様さんは、一回共演したことがあるんですよ。2017年に仙台でツーマンをやったことがあって。あとはラッパーのJPEGMAFIAさんもすごく気になりますね。
──さきほど幾何学模様のGoさん、Tomoさんにインタビューしてたのですが、TomoさんがいまDJもやられているそうで。「DJでプレイしたい曲はなんですか?」と聞いたら、ルパンのテーマの7インチを33回転で再生するとめっちゃカッコいいという話を伺いました。
ヤバそうですね(笑)。 ルパンのテーマの33回転はぜんぜんイメージが湧かないですけど、すごそう(笑)。やっぱりサイケ感がありますね。
──ですよね(笑)。食品まつりさんも、サイケだったり、トランスっぽいイメージがあります。
そうですね。ふわっとした感じでトランス感を入れてみたりとか。あとアンビエントも好きなので、そのフィーリングも入れてみたり。今回のライブはハードなんですけど、イメージ的には「見た目よりもさっぱりしたラーメン」みたいな。「このラーメン、見た目よりもイケる」みたいな感じです。普通にばくばく食べられる、スッって入ってくる感じ。
──去年掲載されたインタビュー(エレキング)でアフリカのシーンに注目してると話されてましたよね。アフリカ以外で、いま注目してるシーンはありますか?
今日のライブに関していうと、シンゲリっていうアフリカ発祥のジャンルもやろうかなって。速くて軽いやつですね。あとは他の国だと、ポルトガルのリスボンにもちょっとアフロハウスっぽい感じのシーンがあるんですよ。パーカッションも結構入ってて、シンパシーを感じるというか。自分もパーカッションを結構使うので「なんかすごいわかるな」って。好きになりました。あとは中国とかも……面白いアーティストはいっぱいいますよね。
──食品まつりさんの作品やDJ、ライブを聴いてると、パーカッションへのこだわりが垣間見えますよね。「速くて軽い」音の主軸にパーカッションがありつつ、芯にはジュークのバイブスがあって。
ジュークは最初に聴いて衝撃を受けたから作り出したってのもあって、ジュークは基本にあるんです。でも、ジュークにないような、パーカッションを使った音楽も好きなんですよ。いろんな国のパーカッションの音楽、ブラジル音楽だったり、アフリカのジャンベ、日本の太鼓とか中国の銅鑼など、パーカッションにすごい興味があって。
──太鼓とジュークのセッションなんてあったら、とんでもない高揚感が生まれそうですね。ちなみにいま、食品まつりさんの興味という話だと、音楽以外ではアジフライとかサウナ……最近はボラの写真をよくツイートしてますよね。
ボラにハマってたときがあって。ボラがどうというより、ボラの顔が面白いんですよ(笑)。ボラって釣り人に嫌われてるというか、汚い川や海にいて、臭いんですよね。あと、大量にいるからレアでもないし、釣りたくないのに群れでくるから針に引っ掛かっちゃったりして、結構嫌われてるんですよ。それで、ちょっと大人になってからボラの顔を見たら、やっぱり変な顔してるんですよ(笑)。それからちょっと調べていくと、結構おいしいらしい。白身がおいしいって。それで興味持ったからといって、追求するとかはないんですけど。それからしばらくして、アジフライ。
──いまもアジフライは絶賛推してますよね。
アジフライのことをTwitterで呟いたり曲も作ったりしてたんですけど、よく行ってたアジフライの店があったんですよ。そのアジフライがなくなっちゃって。
──よくインタビューで話されてる、パーキングエリアのアジフライですか?
そう。いまアジが獲れないらしくて……ちょっと値段が上がってる。全国的にアジフライをやめてるところが多いという話をちょくちょく聞いてたんですよ。もう自分でアジ買ってきて作るしか……ぶっちゃけそこのパーキングエリアのアジフライが好きで、そこばっか行ってたんですよ。家から近いし、なんか腹減ったらすぐ行ける。そこが無くなっちゃうと、アジフライを食べる理由が……。
──世知辛いですね。『YASURAGI LAND』の曲名を見たら、「Parking Area」や「Michi No Eki」とか、<フジロック>の道中にあるものばかりで。たぶん、アジフライも含めほとんどあったと思います。<フジロック>はもちろんライブもありますが、どういう風に楽しむ予定ですか? ライブで全国各地に行ったり、昨今は少なくなったけど国外に行かれることもあったり、さまざまな場所を回っている食品まつりさんならではのフェスや旅の楽しみ方を教えてほしいです。
フードが気になりますね。<フジロック>がラーメン出してたりするとこあるんですよね。自然の中で食べるラーメンは美味しい。あと、今日人生ではじめて<フジロック>の会場に来て、想像よりも大きいなと。なので、色々歩けるだけ歩いてみて、見て、味わって、お風呂入って、ゆっくりしてライブをしようかなと(笑)。
──ありがとうございます。最後に、この箱に入ってる質問に答えていただきたくて。2つほど引いていただけますか? 最初は…….「好きなラッパーの歌詞」!
おぉ! これはいっぱいありますね。ラップ好きなんで。THA BLUE HERBのファースト・アルバムに入っていて、路上でラップしているような“孤噴”という曲があるんですけど、その中で「お前一人で来いと言ったろ」っていうリリックがあって。ハードボイルドで好きです。
──ありがとうございます。最後の質問は「子供のころの夢」です。
ゲームクリエイターになりたかったですね。ゲームが好きだったんですよ。RPG、『ファイナルファンタジー』とか『クロノ・トリガー』やってて、キャラクターとかを描いたりしてたし、ゲームのストーリーも好きだった。それで、『RPGツクール』って、自分でRPGを作るゲームがあったんですよ。買ってやったんですけど、向いてないなと思って諦めました。
──ゲーム音楽は作られたことはありますか?
2回ありました。スノーボードのゲームとその続編のVRゲームの曲を作りました。BGMなので、ゲームの裏で流れてる感じですよね。ほかにもあればもっとやりたいなって思ってます。
Photo by Kazma Kobayashi
Interview, Text by 船津晃一朗
INFORMATION
Yasuragi Land
2021年7月9日(金)
食品まつり a.k.a foodman
label:BEAT RECORDS/Hyperdub
国内盤特典:ボーナストラック追加収録/解説書封入
Tracklist
01. Omiyage
02. Yasuragi
03. Michi No Eki ft Taigen Kawabe
04. Ari Ari
05. Shiboritate
06. Hoshikuzu Tenboudai
07. Shikaku No Sekai
08. Food Court
09. Gallery Cafe
10. Numachi
11. Parking Area
12. Iriguchi
13. Aji Fly
14. Sanbashi ft Cotto Center
15. Minsyuku
16. Super Real Sentou(Bonus Track)[国内盤CDにのみ収録]
FUJI ROCK FESTIVAL ’22
2022年7月29日(金)30日(土)31日(日)
新潟県 湯沢町 苗場スキー場