古今東西のダンスミュージックを基軸としたバンド・アンサンブルと、独特のユーモアを内包する歌詞世界、そして一度聴いたら病みつきになる繰り返しのフレーズによって、「
中毒者」を続々と生み出してきた4人組バンド、フレデリック。彼らによる前作から実に2年4ヶ月ぶりのセカンド・フルアルバム『フレデリズム2』が、2月20日にリリースされた。
フレデリック 2nd Full Album「フレデリズム2」全曲トレーラー
前作『フレデリズム』では、「プレイリストのようなヴァラエティ豊かな内容」を目指した彼らだが、その振り幅の大きさは前作以上。モータウン・ビートからカントリー、ファンク、そしてEDMまで様々なジャンルのイディオムを取り入れながら、「フレデリック流」ともいうべき独自のフィルターを通した「歌ものポップス」に昇華させる力技は、あっぱれというほかない。「繰り返しのフレーズ」などの必殺技を、最小限にとどめてもなお「フレデリックらしさ」に溢れているのは、デビューから4年の間に様々なライブやフェスを通じて積み上げてきた「自信」があってこそだろう。
本作をひっさげた全国ツアーや、夏フェスへの参加も控えている彼ら。そこで今回Qeticは、アルバム『フレデリズム2』の魅力について改めて検証すべく、三原健司(Vo、Gt)と康司(Ba、Ch)の兄弟に話を聞いた。
Interview:フレデリック(三原健司/康司)
──『フレデリズム2』のリリースから2ヶ月が経とうとしていますが、改めて本作はお2人にとってどんなアルバムだったと思いますか?
康司 バンドの関係性みたいなものを、改めて考えさせられたアルバムだったと思います。僕と健司は双子なんですけど、僕自身に足りないことを、いつも補ってくれているのが健司だと思っていて。そういう意味では、自分のコンプレックスについて気付かされると同時に、それを埋めてくれる存在でもあるわけです。2人で「完全体」というか(笑)。そんなイメージが昔からあったんですね。
でもそれって、双子同士の関係性だけじゃないっていうことを、最近はよく思うんです。例えば僕らとお客さんとの関係もそう。僕らが楽曲を作って、それを受け取ってもらうことで初めてその音楽は成立するというか。今回のアルバムを作りながら、そんなことに思いを巡らせることが出来たのは、とても貴重な体験でした。
──楽曲が、誰かのものになって初めて「一人歩き」するというか。
康司 まさに。色んな人たちが、色んな解釈で聞いてくれたことによって、音楽そのものが育っていく。そういう感動を、今回は教えてもらったような気がします。
──ちなみに康司さんは、どんなことにコンプレックスを感じるんですか?
康司 基本的に僕、運動音痴だし、前に立つことよりも後ろで支える方が好きなんです。逆に健司は勉強も運動も出来るし、前に立つことも厭わない。でも、こうやって一緒にバンドをやっていると、そういうお互いの持ち味を活かすことが出来るんだなっていうことに改めて気づいて。それは僕ら兄弟だけじゃなくて、ドラムの(高橋)武くんも、ギターの(赤頭)隆児もそう。4人で長所を活かしあい、短所を補い合いながら、バンドそのものをソリッドにしていけたというか。その先に作り上げられたのが、今回の『フレデリズム2』なんですよね。
──健司さんは、今作についてどんな風に感じていますか?
健司 僕らデビューして4年が経っていて、ファースト・アルバムを出してからもシングルやEP、ミニ・アルバムなど、様々なフォーマットで作品は出し続けてはいたので、今までフレデリックを追いかけてくれている人の中には、「フレデリックってこういう音」みたいなイメージは出来ていると思うんです。『フレデリズム2』は、そこを超えるような楽曲も作りたいと思う一方で、そんな冒険的な曲ばかりになってしまい、これまでの路線を期待していた人たちを置いてけぼりにしてしまうのも嫌だなと思ったんですよね。そういう意味で、これまでの延長線上にありつつも、ちゃんと進化しているアルバムが作りたかったんです。いざリリースして、お客さんの反応を見ると「新しいのにフレデリックっぽい」という、僕らが一番欲しかった声が多かったのでホッとしました(笑)。
──期待に応えつつ、予想を裏切ることも出来たと。
健司 もう一つファーストの時と違うのは、「しみる」とか「ちょっと泣けてきた」という感想が多くなったことなんです。「歌」を前面にフィーチャーした曲とか、「音楽好きだったらここは絶対に刺さって欲しいな」という歌詞とか、そういう要素をちりばめたので、そこがちゃんとピンポイントで刺さったというのも達成感もありますね。
──前作『フレデリズム』の時は、「プレイリストを聴いているような、ヴァラエティ豊かなアルバムを目指した」とおっしゃっていましたが、今作もさらに振り幅が大きくなっていますよね。“飄々とエモーション”は構成がEDMっぽかったり、かと思えば“LIGHT”はファンクっぽかったり。リズムのヴァリエーションが豊富な上に、“かなしいうれしい”や“他所のピラニア”のトリッキーなギターソロなど、ギターのアプローチも非常に印象的です。
康司 嬉しいです。今回、ギターは色んなことを試しました。まず作曲の段階で、「これはギターで弾くべきか、それともシンセで弾くべきか?」みたいな、狹間のフレーズが結構多くて。それを隆児と話し合いながら「ここはシンセっぽい音でギターを弾いてみよう」とか、「シンセとギターをユニゾンさせたらどうか?」とか、今までやっていなかったアプローチでも積極的に試しながらアレンジを組んでいきました。
フレデリック「飄々とエモーション」Music Video -2nd Full Album「フレデリズム2」2019/2/20 Release-
フレデリック「LIGHT」Music Video / frederic “LIGHT” -2nd Full Album「フレデリズム2」2019/2/20 Release-
<TVアニメ「恋と嘘」OPテーマ>フレデリック「かなしいうれしい」Music Video -2nd Full Album「フレデリズム2」2019/2/20 Release-
──例えば“対価”や“逃避行”など、シンセの音色はちょっと懐かしい80年代風で。
康司 そうなんです。以前から、ちょっとキッチュでレトロなシンセ・サウンドには惹かれていて。それを今の音像の中でどう蘇らせるか? みたいなことは考えましたね。例えば“夜にロックを聴いてしまったら”のシンセは、YMOを意識しつつ、MGMTの最新作『Little Dark Age』みたいな世界観に落とし込むにはどうしたらいいか?とか。MGMTの最新作は、アルバム制作の合間に聴きまくっていました。
フレデリック「逃避行」Music Video / frederic “Tohiko” -2nd Full Album「フレデリズム2」2019/2/20 Release-
──ああ、なるほど。構成や音像感は現代のフォーマットなのに、そこに懐かしい音色を混ぜたり、J-popっぽいメロディを載せたりすることで、フレデリックらしいテクスチャが生み出されている。
康司 そうなんです。ダンスミュージックのフォーマットを、あえてバンド・アンサンブルにしたり、逆に歌を前面に出した楽曲は、エレクトロっぽいアレンジにしてみたり、そういう融合感、違和感を楽しんでいるところがあるかもしれない。
──“CLIMAX NUMBER”も、リズムはモータウンなのに音色はキラキラしていて。おまけにギターソロはカントリー風なんですよね。
健司 モータウン・ビートはJ-popでも割と使い古されているし、どんな角度から取り入れるのがいいか、散々迷った末に、こういう形になりました(笑)。おそらく、今まであまり聞いたことがないような組み合わせだと思います。
──“スキライズム”はメロディラインが「和」なテイストで、フレデリックがフェイヴァリットに挙げているフジファブリックの影響を、今作で最も強く受けている楽曲なのかなと思いました。
康司 この曲の、特にイントロの部分は“オドループ”や“オワラセナイト”を踏襲しているんですけど、シンセの感じは「プリンス(Prince)っぽくしよう」みたいな話をしていました。プリンスの曲って大抵はBPM130くらいで超盛り上がるんですけど(笑)、もっと速い曲はないのかと思って探したら“デリリアス(Delirious)”という曲があって。“スキライズム”はもろ、この曲の影響を受けていますね。
フレデリック「スキライズム」Music Video / frederic “Sukiraism” -2nd Full Album「フレデリズム2」2019/2/20 Release-
健司 ミュージック・ビデオを見た人からは、「スミス(The Smiths)っぽいね」と言われたことはありますけど、この曲でフジファブリックの影響を指摘されたのは、今回が初めてなのでちょっと新鮮です(笑)。
──“他所のピラニア”や“逃避行”では、途中にサイケっぽい展開が挿入されます。あれは、どのようなイメージだったのでしょう。
康司 このサイケっぽさは、僕らが大好きだったたまからの影響が大きいと思いますね。僕らインディーズの頃に、たまからの影響をダイレクトに受けた『うちゅうにむちゅう』というミニ・アルバムを出したんですけど、そこでやっていたアプローチをもう一度試してみたのが“他所のピラニア”なんです。
──SEの入れ方などコミカルな要素もふんだんに散りばめていますけど、そのあたりもたまの影響?
康司 あ、それはあると僕は思いますね。コミカルな中にも、ちょっとした毒々しさがあるところとか。
──ボーカル録りをする際にどんなことを心がけましたか?
健司 ちょうどボーカル録りの時期は、歌のレベルを上げたいと思って色んなシンガーのライブに片っ端から行っていたんです。中でもジョン・レジェンド(John Legend)のライブにはメチャメチャ感銘を受けました。もちろん、スタイルは全然違うんですけど、例えば語尾の切り方でグルーヴを出したり、ソウルフルな歌い回しだったり、ちょっとしたニュアンスを参考にしつつ散りばめています。
──そういう意味で、最もチャレンジングだった曲は?
健司 “対価”みたいな楽曲は、今までになかったかも知れない。ちょっとした「切なさ」を織り交ぜつつ、自分の声の「甘さ」みたいなところも引き出したくて。例えば、ファルセットを使って声を裏返したり、本当はまっすぐ伸ばすべき自分の声にビブラートをかけたり。そういう細かいニュアンスを付けるのが、“対価”は難しかったかも知れないです。
それに、そういった自分のこだわりが、独りよがりにはならないよう気をつけました。ちゃんと楽曲が求めている表現じゃないと意味がないというか。単にテクニカルにビブラートをするのではなく、楽曲のムードや歌詞の内容と連動した、必然性があった上でのビブラートというか。
──なるほど。
健司 フレデリックの楽曲は、康司が作詞と作曲を担当しているので、彼の世界観がベースになっているんですけど、そこに僕ら他のメンバーが自分なりの解釈を加えることで、さらにその世界観が広がっているのだなということを、今回は改めて実感しました。今日、インタビューの最初に康司が「4人で長所を活かしあい、短所を補い合いながら、バンドそのものをソリッドにしていけた」と言ってたけど、それはボーカル録りの時にも強く感じましたね。
──ところで、本作には“夜にロックを聴いてしまったら”という曲がありますが、「夜に聴くロック」といって思い浮かぶのは?
康司 えー(笑)。なんだろう……。レディオヘッド(Radiohead)とか、夜に聴いた方が気持ちいいですよね。特に『OK Computer』とか。
健司 僕はフィッシュマンズの“My Life”かな。昼に聴いてももちろん良い曲なんですけど、昼に聴いてから夜に聴いてみると聴こえ方の違いを実感できそう。ちなみに僕らの“幸せっていう怪物”という楽曲は、“My Life”のオマージュなんです。そういう意味で、思い入れも深いんですよ。
康司 そんな話をしていると、いろんな曲を昼と夜とで聴き比べてみたくなりますね(笑)。
RELEASE INFORMATION
『フレデリズム2』 2019年2月20日(水)リリース
初回限定盤(CD+DVD)AZZS-85 / ¥3,200(+tax)
通常盤(CD)AZCS-1079 / ¥2,700(+tax)
FREDERHYTHEM TOUR 2019-2020
SEASON1
<FREDERHYTHM TOUR 2019〜夜にロックを聴いてしまったら編〜>
4月13日(土)
新木場STUDIO COAST
OPEN 17:00 / START 18:00
¥4,500(ドリンク代別)
SEASON2
<FREDERHYTHM TOUR 2019〜リリリピート編〜>
6月4日(火)兵庫 神戸 太陽と虎
6月6日(木)福岡 DRUM Be-1
6月13日(木)宮城 仙台enn 2nd
6月14日(金)新潟 CLUB RIVERST
6月21日(金)香川 高松 DIME
6月22日(土)広島 CAVE-BE
7月2日(火)大阪 BIGCAT
7月3日(水)愛知 名古屋 ElectricLadyLand
7月7日(日)北海道 札幌 COLONY
7月9日(火)東京 恵比寿LIQUIDROOM
SEASON3
<FREDERHYTHM TOUR 2019>
10月11日(金)岡山 CRAZYMAMA KINGDOM
10月12日(土)広島 BLUE LIVE
10月14日(月/祝)高知 キャラバンサライ
10月18日(金)宮城 仙台Rensa
10月20日(日)新潟 LOTS
10月22日(火/祝)石川 金沢 EIGHT HALL
SEASON4
<FREDERHYTHM TOUR 2019>
11月16日(土)北海道 Zepp Sapporo
11月29日(金)愛知 Zepp Nagoya
12月7日(土)福岡 Zepp Fukuoka
12月14日(土)大阪 Zepp Osaka Bayside
FINAL
<FREDERHYTHM ARENA 2020>
2020年2月24日(月/祝)神奈川 横浜アリーナ
フレデリック