今や至るところで見かける「コラボレーション」。その特徴としては、アニメと異ジャンルの掛け合わせが多く、ファッション、音楽、食品など、その勢いは留まることをしらない。ただ、ひとえにコラボレーションといっても、その言葉の響きだけが先行した、中身を伴っていないものもあるのが事実。相思相愛の協業、それこそがコラボレーションの真の姿である。
今年も開催される<FUJI ROCK FESTIVAL(以下、フジロック)>でも、コラボレーションは様々なところで行なわれている。その最たる例は、なんといってもTシャツだ。<フジロック>のオフィシャルショップであるGAN-BANでは、早くもウェブストアにて色とりどりのオフィシャルグッズを販売中。なかでもひと際注目を集めているのは、GAN-BANと「タツノコプロ(以下、タツノコプロ)」と<フジロック>とのコラボTシャツだ。タツノコプロといえば、日本アニメーション界きっての老舗プロダクションである。現在販売されているTシャツもチーフとなっている『科学忍者隊ガッチャマン』と『マッハ GoGoGo』をはじめ、『ハクション大魔王』、『昆虫物語みなしごハッチ』、『タイムボカンシリーズ ヤッターマン』など、幾つかのラインナップ並べてみても、知らないという作品はほとんどないだろう。世代を超えて愛される名作アニメとして、祖父母から孫の世代まで受け継がれている。
日本を代表する音楽フェスティバルに日本を代表するアニメプロダクションが参戦するということで、コラボTシャツの企画・販売を手掛けるGAN-BANの代表 豊間根聡氏、クリエイティブディレクターの小川泰志氏、そしてタツノコプロからライツ事業部MD部 部長の松田琢摩氏、同部門の栁澤かえ氏を招き、今回のコラボレーションについてその背景から今後の展望までを語ってもらった。理想ともいうべきコラボレーションの形が此処に。
Interview:GAN-BAN×タツノコプロ
(L→R:小川泰志氏、栁澤かえ氏、松田琢摩氏、豊間根聡氏)
──まずはGAN-BANとタツノコプロがコラボレートすることになった背景から伺えますか?
小川 お話がスタートしたのは昨年の夏ぐらいですね。ウチは<フジロック>でディズニーさんなどのキャラクターもののTシャツをコラボレーションしていた経緯があったので、新しいキャラクターを模索しているところだったんです。僕と豊間根の友人からタツノコさんの仕事に携わっているという話を聞き、それは聞き捨てならないなということで(笑)、やはりタツノコプロといえば日本を代表するアニメのプロダクションですから、<フジロック>とGAN-BANとのコラボレーションで何か出来ないかなと相談したんです。その後、11月に直接お会いする機会を設けていただいて、僕と豊間根はタツノコプロのアニメがドンズバの世代なので、是非やりたいという話をしたところ、一度持ち帰っていただいた後に、やりましょうという嬉しいお返事をいただいて。
松田 当然<フジロック>は知っていましたし、GAN-BANさんのショップも見させていただいていたので、二つ返事で是非という感じでした。僕の琴線に触れた有り難い話だなと思うのは、GAN-BANさんはディズニーさんなどの海外アニメとのコラボレーションをやってきた中で、今回は日本国内の認知度のあるキャラクターとタッグを組んで発信していきたいと話してくださったことなんです。それは僕らにとって願ってもいないことですし、ましてや<フジロック>ファンの人たちにウチのキャラクターたちを見ていただけることは、すごく喜ばしいことですから。
栁澤 <フジロック>のような大きなイベントとのコラボレーションは今までウチの作品ではなかったので、大変光栄なことでしたね。今や日本国内ではいろいろな音楽フェスがありますけど、<フジロック>はその先駆けであり大きなお祭りですし。
松田 <フジロック>は老舗中の老舗のフェスですよね。44歳になる僕の世代を含めて、まず<フジロック>という名前を知らない人はいません。その中でウチのキャラクターが登場することは、幅広いターゲットにアプローチできることだと思いますし。
フジロック’14×岩盤 A Mountain of Love Tシャツ ©Disney
フジロック’14×岩盤 A Mountain of Love Tシャツ ©Disney
──<フジロック>に通っている僕からすれば、客層の特徴は音楽と隣り合わせにあるカルチャーに対して、高いアンテナ感度を持っている人たちが多いという印象がありますね。それこそタツノコプロのアニメに触れてきたお客さんも多いと思います。
小川 僕が小学生の頃に触れたアニメは、振り返るとほとんどがタツノコプロの作品なんですね。『いなかっぺ大将』、『ハクション大魔王』、もちろんTシャツのモチーフになった『ガッチャマン』、『マッハ GoGoGo』も。アニメのエンディングには必ずと言っていいほど、あのタツノオトシゴのロゴマークを見かけました。それこそ、「日本のアニメはこのマークのところが全部作っているんだ」と思っていたぐらいに。だから、今回のコラボは本当にやりがいがあります。
小川泰志氏
豊間根 <フジロック>におけるGAN-BANの立ち位置はすごく難しくて、<フジロック>を主催しているわけではなく、オフィシャルショップという名前が付いている組織であって。つまり、GAN-BANの根本的な役割は発信なんです。出来る限り、<フジロック>を外に向けて広く発信するというか。<フジロック>ファンだけではなく、いろんなカルチャーと一緒に<フジロック>を発信していく。オフィシャルショップであるGAN-BANは、開催前からウェブストアで商品を販売しながら発信していくという役割の中から、コラボレーションTシャツの企画を始めたんです。今やアニメはサブカルチャーと言えないぐらいの勢いがありますから、僕らとしてもより広い層に対してのプロモーションを含めたチャレンジなんです。
松田 お互いが求めていることが合致して、世の中に掛け算の理論で広がっていく。そんなイメージが出来ましたよね。タツノコプロは1962年に創立して52年が経つんですが、ウチの作品のコアファンは30歳後半から50歳前半くらいの年齢層なんです。さらに上の世代は虫プロ(虫プロダクション)さんとか東アニ(東映アニメーション)さんだったりするんですが。そのコアターゲットに向けて、ウチは結構な量の作品を世の中に向けて出してきました。安い制作予算の中で自社制作のアニメを作り、テレビ局に売り込みを掛けてきたんですね。なので、その当時の作品の7、8割方は自社作品であって、タツノコプロのワンクレジットの作品ばかりなんですよ。これだけの作品を自社でコントロールできる会社はかなり少ないと思います。
松田琢摩氏
──今回は日本最大規模の音楽フェスが舞台ということで、コアファンよりも下の層へのリーチを考えなければなりませんよね。
松田 仰るとおりです。決して認知度がないわけではなくて、その都度リメイクをかけたり映画化したりを経ることで、幅広いターゲット層に2、3世代のキャラクターとして認知されていると自負しています。