1995年、ファースト・アルバム『ガービッジ』でデビューし、全世界で500万枚以上のセールスを記録した、アメリカ・スコットランドのロックバンド、ガービッジ。今年でデビュー20周年を迎える。ニルヴァーナの『ネヴァーマインド』やスマッシング・パンプキンズの『サイアミーズ・ドリーム』などを手がけ、ロック界にその名を轟かせたプロデューサー、ブッチ・ヴィグを中心に1994年にガービッジが結成されたことは、言わずもがなのことである。

セカンド・アルバム『Version 2.0』(98年)ではヨーロッパ各地のチャートで初登場1位を記録し、ファースト・アルバムを上回る600万枚以上を売り上げ、同年<フジロック・フェスティバル>に出演を果たす。サードアルバム『Beautiful Garbage』(01年)に続き、フォース・アルバム『Bleed Like Me』(05)をリリースするもツアー終了後、一時活動停止を宣言。しかし、2007年、ベストアルバム『Absolute Garbage』を発売する。そして長期の充電期間を経て、シャーリー・マンソン(Vo)、スティーブ・マーカー(Gt/Ba)、デューク・エリクソン(Gt/Ba/Key)、ブッチ・ヴィグ(Dr. /loops)の4人は再び終結し、2012年に通算5作目となる『Not Your Kind of People』を発売。「本当にガービッジが帰ってきた!」と心の底から喜んだ人は多いはずだ。

デビュー20周年を記念して、デビュー・アルバム『ガービッジ』をリマスターしたデラックス盤をリリースすることが決まっているガービッジ。現在敢行中のツアー<20 Years Queer>前夜に、そのフロントウーマン、シャーリー・マンソンが、デビュー当初から20周年を迎えた今に至るガービッジを語る。

text by Qetic・Ayako Nakanome

Interview:Shirley Manson [Garbage(Vo)]

――今はアルバム『ガービッジ』の再現ツアー<20 Years Queer>のリハーサル中だと思いますが、順調に進んでいますか?

現時点では結構順調に進んでいるわ。私たちはいつも、リハーサルの初期段階であまり自己満足し過ぎないように注意するんだけど、今回はいい感じにアルバムの構成を思い出していて、実際、こんなにスピーディーに記憶が蘇ったことに驚いている。中には20年くらいプレイしていない曲もあるわけだから、もっと苦労するんじゃないかと予測していたのに。どういう状況になるのか想像がつかなかったけど、まあ自転車に乗るようなもので、一旦覚えたら忘れないのね(笑)。

――最近髪をピンクに染めたのは、今回のリイシューを記念して?

ええ! 実はこれまでもずっとピンクにしたかったの(笑)。で、「こんなパーフェクトな機会が巡ってきたのに、私ったら何をグズグズしてるの?」って思った。ピンクにしたいなら、これ以上の好機はないし、さっさと実行しなくちゃって。そしてすっかり惚れ込んじゃったわ。ピンクの髪を持って生まれるべき人間だったと思うくらいに(笑)。

――それにしても、あなたたちは常に未来志向で、ノスタルジックなタイプのバンドではないですよね。デビュー作をリイシューするという話はどんな経緯で生まれたんですか?

最初に提案したのはマネージャーだった気がする。ぶっちゃけ、あまりにも長い間このリイシューに関わってきたから、細かいところは思い出せないんだけど、多分そうだと思うわ。ほら、私たちは独自のレーベルを設立して、今では自分たちのアルバムの権利を持っているから、ここでファーストをリイシューするのも自然に感じられたのよ。話が出た瞬間、みんなすっかり乗り気になったわ。あのアルバムにはすごく深い思い入れがあるし。確かにあなたが言う通り、私たちはまったくもってノスタルジックなバンドじゃない。奇妙なくらいに。と同時にこれまでずっと、自分たちの歴史を誇らしげに掲げているアーティストたちを、羨ましく思ってもいたのよ。特に、1枚のアルバムをそっくり再現するライヴを行なっているバンドに。いつかやりたいと思っていた。それが恐らく、私たちを後押しした最大の要因でしょうね。ノスタルジックなタチじゃないけど、今回の作業は本当に楽しかった。様々な記録を掘り起こす作業は、タイム・カプセルを開けるかのような、興味深いプロセスだったわ。

Garbage – Sex Is Not The Enemy

――本拠地のスマート・スタジオとかメンバーの自宅の屋根裏に、大量の音源や写真なんかがあったんでしょうね。

ええ。それどころか、あちこちにあったわ。困ったことに世界中に散らばっていたから、本当に長い時間をかけて探し出して集めたの。ほら、当時のガービッジはアメリカではアルモ・サウンズと契約していて、その他の地域ではマッシュルーム・レコーズと契約していたから、マスターを探すという単純なことさえややこしくて、オーストラリアにもロンドンにも、もちろんスマート・スタジオでも色々見つかったし、アルモ関連の素材はLAの倉庫から見つかったり、大変な苦労を強いられたわ。まったく行方が分からないものもあって、オリジナルのデータがないから仕方なくアートワークを新たに作り直したりもしたし……うん、情熱あってこそ実現したプロジェクトだと思う。

――最新作『ノット・ユア・カインド・オブ・ピープル』はファーストを思わせるところが多々あるアルバムだったので、タイミング的にもしっくり来るような気がします。ジャケットも然りですし、あなたたちのアウトサイダー的な位置付けを再確認するような作品でしたよね。

そうね。あのアルバムに着手した頃、友人が私に繰り返し言っていたことがあるの。「自分が何者なのか、そして自分が過去にしたことを常に忘れずにいれば、全ては然るべきところに落ち着く」と。いったい何を意味しているのか分からずにいたんだけど、アルバムを作り始めたらふと理解できたのよ。バンドとして私たちは、良くも悪くも、自分たち以外の何者でもなくて、誰とも似ていないんだってことを。ガービッジみたいなバンドはマジな話、ほかに存在しないわ。この世界で字義通りに何百万ものバンドが活動しているにも関わらず、そう迷いなく言えるっていうのは、本当に素晴らしいことだと気付いたの。途方もなく恵まれた立場にあるのよ。思えばこれまでいつも自分たちの欠点にばかりフォーカスしていた。そして確かにアウトサイダーであり続けてきたわけだけど、「それって最高じゃない!」と悟ったのよ。それは大きかったわ。

デビューから20周年。ガービッジの紅一点・シャーリーに直撃 interview151104_garbage_3

『ノット・ユア・カインド・オブ・ピープル』ジャケット

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