gatoが昨年リリースした『BEUCUL』が様々なジャンルを横断したエレクトロニックなサウンドでシーンを驚かせたことは記憶に新しいが、彼らの最新作『U+H(ユース)』はその横断性をさらに煮詰めながら、時代の空気を目一杯に吸い込み、gatoという身体を巡らせて吐き出したかのような、濃密でアクチュアルな、えもいわれぬ凄みがある。
そんな『U+H』に先駆けてリリースされていた“high range”は、挑戦的な彼ららしくシンガーソングライターであり、美術作家やフラダンサー、フォトグラファーなどマルチに活躍するさらさと、ラッパーでありジャンルレスな活動を展開するコレクティブ・DENYEN都市のメンバーでもあるwho28という意外なゲストを招いて制作された。アルバムに違和感なく溶け込みながらも全体にやわらかな風を吹き込む異質な1曲はどのように誕生したのか。
今回はgatoのフロントマンであり、楽曲制作の核を担うageに加え“high range”に参加したさらさとwho28を招いて話を聞いた。この暗い時代に輝きを放ち、三者三様、自然体でいてお互いを尊重し合う3人の言葉をたっぷりとお届けしよう。
gato – high range(feat. who28,さらさ)【Music Video】
鼎談:age(gato)× who28 × さらさ
バンド、ラッパー、シンガー
垣間見えるバックグラウンド
──まず共作することになったきっかけを教えてください。
age これまでkyazmとのスプリットをやったことはあったんですけど、gatoがゲストを迎えるのは初めてです。バンド内でラッパーかシンガーがいいと話していたとき、たまたま2人と話す機会があったり、ライブも観てかっこいいなと思っていたんです。さらさちゃんは、gatoのリミックスアルバムに参加してくれていたSPENSRとコラボしていて「共作もできるんだ、一緒にやりたいな」と。who28くんは、自分がDJをやっている周りで話をよく聞いていて。初めて会ったときに、who28くんから「gato知ってます!」ってすごく慕ってくれて。せっかく一緒にやるのならお互いにリスペクトできる方がいいなと思い、2人に声をかけたんです。
──声をかけられる前にgatoへ持っていた印象はいかがでしたか?
who28 僕はもともとgatoの楽曲が好きですごい聴いていて、YouTubeにあるライブ動画も何十回もフルで観ていたんです。そんなタイミングで声をかけてくれたんで純粋に嬉しくて、「やりたいです」って即答でした。
さらさ 私はちょうど1年前くらいに知り合ってから聴くようになりました。いつもテンション上げなきゃいけない、ガッツが必要だなっていうときにはgatoの“DADA”を聴いて「よっしゃ!」みたいな(笑)。SPENSRくんとの曲が出た時にライブに来てくれて、そのとき会うのも2回目ですごい久しぶりだったのに「ワー!」みたいになって(笑)。そのままお話いただいて、めちゃめちゃいいバイブスの人だし、もちろん曲もいいし、「やりたい!」って。
──あまり交わるイメージがなかったので驚きました。
age もともと仲良いやつと曲を作るとなると、そこは自分の守備範囲で終わってしまうというか。そうではなく、新しいことをどんどんやっていきたいのがgatoなので、せっかくの出会いを生かして、それぞれのエッセンスを取り入れたかったんです。バンドとしてはチャレンジだったけど、それも楽しみながらやりたい。だから関係値のある人と一緒にやりたいという思いもありました。
──前作のリミックスアルバム『BAECUL REMIXIES』は今回のフィーチャリングに繋がっているのかなと、個人的に感じていたんですがいかがですか?
age そうですね。リミックスアルバムは自分の解釈とは違う、各々の美学を反映してもらうことがすごく面白いなと。自分たちはバンドだけど、参加してくれたアーティストは普段クラブでやっているような人たちなので、そういうカルチャーに繋がる意味もあります。今回の2人もシンガー、ラッパーで歌う場所が違うし、その繋がりについては意識的です。
──“high range”はどういう流れでできた曲ですか?
age 元々は前作の“ame”という曲のテイストに似た、ヒップホップを自分たちなりに解釈した曲を出そうと思っていて。それで、ビートを作ってメロを入れてみたけど、ちょっと思いつかないなと感じて。思いつかないんだったら逆に誰かにお願いしちゃえとゲストを呼んで、もう1回構想を作り直してから仕立ててみようと投げていったら、トントン進んで。アルバム曲にしようしていたけど、それならシングルにしようと、バンド内で動きが変わっていきました。
──制作のプロセスはどのようなものでしたか?
age ミックス/マスタリング・エンジニアのKuromakuと一緒にトラックを作っていて。音色を入れるというよりかは、左右に振るなどのアレンジメントを彼にやってもらいました。2人には「このセクションを歌って欲しいんだよね」っていうのを投げました。
──そのとき何かオーダーはあったんですか?
age イメージは伝えたんですけど、やっぱり“らしさ”がないと一緒にやる意味ないから、「自分全開でいいよ」と伝えました。
──ちなみにどういったイメージを伝えたんでしょう?
age 「あー、昨日文化祭楽しかったな」って思いながら片付けしているときとか、そういった物事が終わったときの余韻のようなものを表現したいんだよねって。
──そのイメージを受け取っていかがでしたか?
who28 僕はそれを聞いて、そのことを歌詞に入れたいなって思って。実はageくん、僕、さらさちゃんの順番で声を録っていったんですけど、さらさちゃんのバース聴いて「ちょっとすみません、もう一回録らせてください」って言って(笑)。別に前のテイクに自信がなかったわけではないんですけど、もっと良くできるなって。だから今リリースされてる楽曲は2テイク目なんです。結果的にそっちのほうが自分らしさが出たかな。
さらさ 私が普段歌詞を書くときは頭の中に情景とか風景があって、それを手繰り寄せながら言葉にしていくという方法が多くて。ageくんに貰った、こういう曲ですっていう文章には「遊んだり、何かイベントのようなものが終わって次の日の夕方とかに想いを馳せてる」みたいなことが書いてあったのでとても想像しやすくて、自分の歌詞の書き方にマッチしましたね。
──先ほどおっしゃっていたようにgatoとしてフィーチャリングを迎えるのは初ということで、これまでになかった感覚などはありましたか?
age 勢いでパスしちゃったけど「これでわかるかな?」みたいな(笑)。話してはいたけど2人で飲みに行く関係とかではなかったし、シーンが違っている分、身内だったら伝わりやすいコンテキストとか、このバンドのこういう曲っぽくて、というのが通じない中でどう伝えたらいいかなと。
──じゃあ特定のバンド名や曲名は出さなかったんですね。
age そうですね。文章と、あと画像もあったかな。
──MVはオーガニックな印象でしたが、そのとき送られてきた画像も近いものだったんですか?
who28 写真には、夕暮れ時の部屋のソファに1人で座ってる女の人が写ってて。
さらさ あんまり自然の中って感じではなかったよね。
age そうそう、ベッドルームっぽい感じで。なるべく自然光、光が入ってても光源は写らずに窓から射しているようなものを送った気がしますね。逆にMVに関しては、イタル(Itaru Sawada、今作の映像監督)とすごく仲が良いのもあってイメージが共有しやすいから、「こういう感じでやりたいんだよね」とだけ伝えました。そこから先は彼のセンスに任せようと思い、曲を彼なりに昇華して貰ってできたMVです。
──“high range”はアルバムにも収録されています。シームレスな流れの中にありながらも異彩を放つ1曲ですよね。
age そうですね。たぶんこの曲がアルバムの中で1番ポップなトラックになるなと思ったし、2人に参加してもらうからには、広がりが欲しかったので、なるべく棘のないものにというのは意識したかな。
──共作を経てお互いの印象は変わりましたか?
who28 制作する前にいろいろ知りたくて話に行ったんですけど、そのとき結構イメージが変わって。もともと見た目怖いなって思ってたんですけど(笑)。喋り方も含めてお兄さんみたいに優しくて。
さらさ 性格が良いです2人とも! すごく。
──ちなみに年齢って?
age 僕が28で。
who28 僕が23ですね。
さらさ 私も同い年で23です。
──じゃあageさんは良きお兄さんですね(笑)。
who28 制作のときに僕が「こうした方がいいですか?」と聞いてもちゃんと答えてくれて。それに、最終的に僕が納得できるように「自分らしさを出していいよ」ってageくんが言ってくれたから、自由に作れました。
──連絡は頻繁に取っていたんですね。
age わからないことがあればすぐに聞いてくれるし、こっちからも言うし、そのレスポンスも早かったですね。
──アーティストによって共作でのやりとりは様々ですよね。
who28 僕は他のラッパーの曲の作り方とちょっと違うと思っていて。どちらかと言うとバンドと似ているというか、gatoの制作の仕方と似ているのかな。トラックから作ってそのあと宇宙語でメロを入れて歌詞を付ける流れなので、制作のやり方はむしろ自分のスタイルと合いましたね。
──さらささんはいかがでしたか?
さらさ 私はもう真逆で、納品データを突然渡すっていう(笑)。納品データ録りましたって渡してから1回も確認取らなかったことに気づいて、なんかごめんなさいっていう感じでした。自分の作るほうにばかり集中しちゃっていて。ただ完成したものを聴いてみたらそれぞれの色が本当に出ているなと思って、すごく面白い曲になったなって。
──ageさんは振り返ってみていかがですか?
age やっぱり各々メロディーを持っているのがすごくいいなと思いました。このラインのなぞり方が、who28くんぽい、さらさちゃんぽいというところがしっかり出ていたし。自分も決まりネタじゃないけど王道の近くで、宇宙語で作る自分の癖が良いように働いたから。それもあって3人のパートを通して良く聴こえるのかなって思います。
──リリース後のリアクションはどうでしたか?
age 「who28くんとgato意外!」とか、さらさちゃんのライブに行っていたのを知っていた方が「伏線回収」とか書いてくれていて、gatoのお客さんも2人を知れたと思うしコミュニティがお互いのところで広がっているなって感触はありましたね。何より楽曲のことを良く言ってくれてたのが嬉しかったですね。
初期衝動と現在の心境の変化
──新作のアルバムタイトル『U+H(ユース)』はどのような意味を込めたんですか?
age 音楽をやってないとき、自分が表現する前の状態の気持ちってすごくピュアだったと思っていて。今は例えばマネジメントが付いたり、いろんなイベントを精査しなきゃいけないという状況があって、有難いことではありつつ音楽は純粋にアートだから、悩ましいというか、どこに基準をおくか選んでいかなきゃいけない。前の自分は音楽がやれればOKだった。でも今、そういうマインドでいれてないかもしれないと感じたんです。そういう自分を奮い立たせるために『U+H』というタイトルにして、自分がもっとピュアだったときのことを考えて、若いときに思っていたことや置かれていた状況をアルバムを通して歌いました。今回の“high range”もそのときの元カノが囁いていた声っていう意味で、若かったときの歌と自分は解釈しています。
──そのフラストレーションはいつごろから?
age 応援に応えていかなきゃいけない、バンドメンバーを引っ張っていかないといけない。それに対して自分の好きなことだけをやって達成できるものなのかと考えたりしながら今回のアルバムまで作っていたので、そういう意味ではずっと悩んでいたというか。あとひとつはアマチュアからインディになったときかな。今一度修正していかないといけないというか、自戒的な意味も込めて。
who28 その『U+H』の話は初めて聞きました。めちゃくちゃ共感します。正直今自分もそういう状況だったので。初期衝動って本当にピュアだし、取り戻したくても取り戻せない感覚だったりするから、その初心を忘れないためにどうすればいいんだろうって僕も考えていて。そんな中で一緒に“high range”を作れて、今の話も聞けて、すごいスッキリしました。
さらさ 私はデビューシングル(“ネイルの島”)を作ったのが2年くらい前なんですけど、そのときと今を比べると、コロナ禍を経ているのもあってかなり気持ちは変わってきていて。フラストレーションを感じたりもしていたんですけど、結局その変化を受け入れる、ただ受け入れて曲を作らなきゃいけないんだろうなと考えて、実際にもそう作っていて。11月に出る3rdシングルは変わることをそのまま受け入れるっていう風に作った曲だったので、ageくんの話を聞いて、「ああ、みんなそういうこと考えてるんだ!」と。
さらさ – ネイルの島【Official Music Video】
──さらささんからコロナの話もありましたがコロナ禍もだいぶ長くなって現状はいかがですか?
age 自分は根っからポジティブだし、コロナ禍でもリリースしてきたから、この状況が明けたときに1番強い状態というか。精神的にもアーティスト活動においても、未曾有の事態をどう切り抜けるか考えたアーティストって、それが終わった後に絶対1個抜けると思うんです。ライブがなくなってもリリースし続けなくちゃいけない。それだけじゃなく、何かプラスをのっけなきゃいけない状況で何ができるのかを考えてきたので。それに、周りでも辞めていく人とか解散するバンドもあったので、アーティスト活動を続ける意志の強さがわかったかな。コロナ禍だからこそ、自分の気持ちは変わらないことがわかった。
who28 8月の最後の方にソロでEP『REVENGE!!』を出したんです。ちなみにロックテープを作ろうと思って作ったのでロックのジャンルで出てはいるんですけど。そのときは特にヒップホップのシーンはあんまりいいニュースが流れていなくて、企画していたリリースパーティーもコロナで延期して。正直、本当にちょっと前までは無理矢理にでもポシティブに捉えていました。例えば今のTwitterはすごい暗いから、DENYEN都市でやるときはものすごい明るい曲作ろうよって、ちょっと無理してた部分もあったんです。ただ、少し落ち着いてみて、そのときのままの感情で曲を作っていきたいなと思っています。最近はどちらかと言うとちゃんとネガティブに捉えているんですけど、決して精神的に嫌な方に流れているわけじゃなく、無理せずその感情も利用して曲を作っている感覚ですね。もちろんコロナとかなくなって、早くライブでみんなと一緒に歌いたいなという思いもあります。
さらさ 私はバチボコにくらった人で、もう曲を作れないくらい。でも曲作れない状態になりながらも「くたばらねえぞ」って気持ちもずっとあって。自分はすごく変化に弱いことと同時に、俯瞰して自分の強さが両方が見えた。以前は聴いてくれている人の救いになる曲が書きたいと思っていたんですけど、どうしてもコロナ禍で考えていることが曲になったりするし、そもそも音楽は自分への救済の部分でもあったんですけど、それがさらに強くなっている感じはします。それはコロナ禍関係なく、曲を作れなくても自然体でいられたらいいな、と。あと、ライブの母数が減っているのはもちろんなんですけど、良いアーティストはライブも呼ばれているので。自分のライブや仕事が減ったのをコロナ禍のせいにしないようにと思っています。
──すごく俯瞰していますね。
さらさ コロナ禍のせいでって最初は思っていたんですけど、コロナ禍のせいにしている自分に気がついて。もちろん関係はあるんですけど、「いやいや、そうじゃねえな」ってなりました。本当に最近ですけど(笑)。
──原点回帰というか自分を見つめるタイミングになっているかもしれないですね。
who28 みんなそういうタイミングなのかな
age ライブやYouTubeを観てくれる人たちにどう伝えるかがこれまでは主だったんですけど、その対象を自分に向ける人が多くなったのかな。料理やゲームが流行っているのはそういうことなのかも。自分たちも、音源を聴き返したりとか、ライブ後も弱点を見つけたり修正していく作業が多くなりましたね。
三者三様の異なるルーツ
──共作を経て得たものはありましたか?
age たくさんありますね。2人とも普段周りにいない人たちなので、視点の違う、新しいボキャブラリーをたくさんくれました。もちろん話し方や曲の作り方、マインドの在り方で自分と同じ部分もあるけど、それから違う部分が浮き彫りになったりする。あと自分はバンドのボーカルですけど、2人はシンガーでラッパーなんで、ボーカルという「自分の声で表現する」という部分ですごく、ストレートだなと思いました。
──2人はいかがですか?
who28 今さらさちゃんのことを知れたのはすごいデカいですね。撮影の合間にお話ししたりしていて、さらさちゃんの音楽の入りがジャズだと知って。僕はヒップホップがめちゃくちゃ好きで、ヒップホップからいろんなジャンルの音楽が好きになっていったタイプなんで……。
──それぞれにルーツの違いを感じます。普段聴いてる音楽の話とかはするんですか?
さらさ したっけ? してないよね(笑)。
age してないね(笑)。現状の話というか。単純に「家で何してんの?」みたいな(笑)。
さらさ 「寝てる~」とか言って(笑)。
age 教室で休み時間とかに隣の席になった人と話すくらいの、いい意味でラフに敷居が低い話を2人ともできたかな。ちなみに最近は何聴くの?
who28 でもageくんと曲作る前に2時間くらい、お互いの好きな曲流したりしていて。それでオルタナティブバンドとか「俺も好き!」みたいな曲が結構あって、やっぱそこ好きだから、こうなるよなーという感じはなんとなくありました。
さらさ ageくんはすごい幅広そうだよね、聴いてる音楽も。
age うん、めっちゃ広い。広い分まとまってないことが多いんだけど。
さらさ いやー、gatoのどの曲を聴いても完成度が高いというか、全部違う雰囲気なのに。
──gatoの楽曲には様々な要素を感じますよね。さらささんが最近よく聴いている曲はなんですか?
さらさ 朝本浩文さんがプロデュースした曲を最近よく漁ってます。特にUAの“悲しみジョニー”や“甘い運命”とか。
──プロデューサーでディグしてるんですね。
さらさ 朝本さんのすごさに気が付いて、今は令和の朝本浩文を探そうと思ってます。とりあえず朝本さんのいろんな曲を聴いて同じバイブスで作れる人いないかなって。見つけて一緒に曲作れたらいいな。
──who28さんはいかがですか?
who28 僕はそれこそ初期衝動というか。さっきageくんが音楽をやってなかったときのピュアさの話をさしていましたが、僕もここ1ヶ月くらいそういうことを思っています。僕が音楽をちゃんとやり始めた当時や10代の頃、音楽をやってなかった頃に自然にいいなと思って何回も聴いていた曲とかです。Apple Musicは2017年のリプレイみたいな、当時よく聴いていた曲をまとめたプレイリストを作ってくれるんですけど、それを改めて聴いていて。今の自分があるのって絶対この人たちのおかげだなっていうか、全然関係ないけど韓国のアイドルやMr.Childrenとか、自分のルーツのようなところをもう1回振り返ってみようと思って。それでまた作る曲の、自分らしさが変わったなと。
──ちなみにトップに出てくる曲はなんでしたか?
who28 絶対ageくんは聴いてたと思うんですけど、GOODMOODGOKU&荒井優作のEP『色』ですね。
──いいですよね!
who28 ゴリゴリのリスナーでした。あとちょうど2017年くらいがエモトラップがすごく世に出てきた時期、SoundCloudで出していたアーティストたちがiTunesでもリリースするようになった時期で。リル・ピープ(Lil Peep)とか少し翳りがあるような音楽が今でも好きなので、それも改めて思いましたね。
──ageさんはどうですか? 最近聞いている曲。
age 基本的にはテクノ、アンビエントしか聴かないんですけど、最近はビルボードとか、がっつりヒットチャートを見ちゃうかな。インディー系も結構聴いてて、ガール・イン・レッド(Girl in Red)とかその周辺を漁ったり、大好きな90sエモを聴き直したりしてましたね。
──エモとアンビエントは今回のアルバムから強く感じた要素だったのでなんだか納得しました。ちなみに今回をきっかけにgatoとして今後も共作はありそうですか?
age めちゃくちゃやりたいですね。
──ちなみに共作の話が来たのをきっかけにgatoの曲を聴き直したりもしたかと思うんですけど、改めてgatoの良さはどういったところなのかを2人にお聞きしたいです。
さらさ 間口が広いというか、この曲好きだなと思って聴いて、別の曲は全然違うけどこういうのも面白いなって思える。さらに他にどういう曲があるんだろうってどんどんディグれたりとか……。ひとつのバンドとして聴く側にいろいろな可能性を提示していて、それがシンプルにすごく面白い。アトラクション感覚というか。すごく羨ましく思います。
who28 僕はgatoの楽曲をめちゃめちゃ聴いています。あんまり深いことは考えてないんですけどね。6月とか少し暑くなってくるとエモーショナルな曲とかあんまり聴きたくなくて、エレクトロとかアンビエントとか涼しく感じる方が好き。だからgatoの曲を聴いててすごく涼しくなっていたんです。だけど、ライブだとまた違うageくん、というかgatoが曲に込めたたくさんのものが視覚的に見える。音源とライブのgatoってまったく別物だからそれが2倍楽しい。2倍っていうと違うか(笑)。
──どうですか、そんな声を聞いてみて。
age 嬉しいです(笑)。who28くんはまっすぐ物事を見られるし、それに対してのパワーがあるので、DENYEN都市を引っ張っていたり、エンジニアさんとかと作業するなかで人を惹きつける能力がすごくある人だなと思いました。カリスマ性がすごくて、そういうまっすぐさは俺も見習いたいなって。さらさちゃんは普通に歌がめちゃくちゃうまい。録ったものを送ってもらったときにwho28くんと2人で聴いていたんですけど「これヤバくね!?」って話していて。それに自分はMCが苦手だからもうしないって決めているんですけど、さらさちゃんが表参道WALL&WALLのライブでしていたMCがナチュラルだけど芯を捉えていて、伝える能力がすごく高い人だなと思うし、立ち振る舞いが美しいなって。自分はヘラヘラしちゃうんで、リスペクトしてます。
──これからライブで“high range”を披露する機会もあると思います。ステージのイメージなどはすでにありますか?
age うーん、どうしよっか?(笑) でもワンマンでは確実に披露しますね。
who28 僕も同じような質問をageくんにしたんですけど、「そのとき考えればいいっしょ!」って結構ラフな感じで(笑)。何度もgatoのライブを観てますが、自分にはできないような、すごく世界観のあるライブがカッコいいなと。
さらさ 私は勝手に想像していて。どういう照明になるかとかまではわからないですけど、gatoとwho28くんと一緒に歌ってる姿は想像していて、全然違和感はない。ただgatoのお客さんがどういう反応するんだろうっていうのはずっと気になってます。gatoのお客さんって私のライブと客層、世代は一緒でもファッションとか違うと思うので、その人たちがどういう反応するのかなって。楽しみですね。
Text:高久 大輝
Photo:Sab! Ryuse!
PROFILE
gato(ガト)
2018 年、突如インディーシーンに現れたエレクトロバンド。ダンスミュージックを軸に、昨今の海外インディーとの同時代性を強く感じさせるサウンドと日本固有のオリエンタルな空気感をミックスした楽曲は、現行シーンにおいて唯一無二の存在。シームレスに曲を繋いで展開していく DJライクなパフォーマンス、VJ による映像と楽曲がシンクロするライブに定評があり、クラブやギャラリーなどライブハウスの垣根を超え、じわじわとコアファンを増やしている。また、音源制作のみならず、アートワークや Music Video の監修をもメンバー内で担い、随所にクリエイティヴな才能を光らせている。2020 年10月に 1stアルバム『BAECUL』を初の全国流通盤でリリース。収録曲“miss u”が J-WAVE『SONAR TRAX』に選出される。同年11月に渋谷 WWWにてNo Busesをゲストに迎え開催したリリースパーティは、ソールドアウトを果たした。2021年5月、リミキサー陣に 80KIDZ・AmPm・ケンモチヒデフミらを迎えたデジタルアルバム『BAECUL REMIXIES』をリリース。
HP|Instagram|Twitter|Instagram(age)
who28
1998年生まれ。NYでの留学を経て帰国後本格的に音楽活動を開始し様々なラッパーとの共作 ・客演により注目を集める。釈迦坊主が主催する〈TOKIO SHAMAN〉をはじめとした多くのイベントに出演し話題を呼び、2020年に待望の1st ソロEP”THE BENDS”発表後、新鋭コレクティブ”DENYEN都市”に加入。DENYEN都市として2nd ALBUM”Q”をリリースした。HIP-HOPをルーツに持ちながらも様々なカルチャーを落とし込んだ音楽性でリスナーたちの心を鷲掴みにし、2021年8月28日に満を持して2nd ソロEP”REVENGE!!”をリリースした。
さらさ
湘南出身、弱冠23歳のシンガーソングライター。湘南の”海風”を受け自由な発想と着眼点で育ってきた。音楽活動だけに留まらず美術作家、アパレルブランドのバイヤー、フォトグラファー、フラダンサーとマルチに、そして自由に活動の場を広げている。 悲しみや落ち込みから生まれた音楽のジャンル”ブルース”に影響を受けた自身の造語『ブルージーに生きろ』をテーマに、ネガティブな感情や事象をクリエイティブへと転換し肯定する。そこから創り出される楽曲は、ジャジーなテイストを醸し出しソウル、R&B、ROCKあらゆるジャンルを内包しALTERNATIVEな雰囲気を纏い、聴く者を圧倒する。どこかアンニュイなメロディの楽曲と、憂いを帯びた歌声は特にライブ(生演奏)でその力を発揮し、見るものを虜にする。SNSメディアを中心に、書籍・映画等あらゆる展開を続ける体験投稿サービス”純猥談”への楽曲提供や、既存のパッケージに囚われず、完全DIY、完全ハンドメイドで作成したCDは手売りのみという状況の中、音楽関係者や”耳年増”なリスナーの目に留まり、若い世代を中心に注目を浴びている。
RELEASE INFORMATION
U+H
2021年10月13日(水)
¥2,600(+tax)
*CD:チェンジングジェケット仕様 *タワーレコード限定特典:secret link card
GATO-002
Tracklist
01. intro
02. 月兎
03. ××(check, check)
04. high range(feat. who28, さらさ)
05. interlude #1
06. noname
07. teenage club
08. 27’s club
09. 21
10. no local
EVENT INFORMATION
“gato 2nd album U+H release party ONEMAN LIVE”
2021年11月13日(土)
at Shibuya WWWX
open 17:15/start 18:00
adv ¥3,000(1D別)
info:WWWX(03-5458-7688)
▼チケット一般発売
10/13(水)10:00〜11/12(土)23:59