不定期にいま気になるレコードショップへお邪魔し、店主へ直接はなしを聞きにいく新企画「Get To Know」がスタート。第二回目は大阪のAlffo Recordsへ。

インディーロックやダンスミュージックの新譜、独自のセンスで買い付けたレコードなどが、セレクトショップのようなムードの中で選べるAlffo Records。しかし、こちらの特徴はなんと言ってもバーカウンター越しに代表のナカシマセイジさんと話しながら、新しい1枚に出会えるということ。

また、店舗内で様々なDJイベントを開催したり、Isolation Berlin(アイソレーションベルリン)や、MOURN(モーン)の大阪公演(※)を主催するなど、ナカシマさん自身の活動の幅も広く、お店自体のファンも増えている。
※MOURNはDJイベント<SCHOOL IN LONDON>と共同主催

他のレコードショップにはない角度からアナログレコードの魅力に気づき、日常的に店舗に通うようになったという人も多い様子。“まずは会話から……”そんなAlffo Recordsの始まりと今後をナカシマさんに聞いてみた。

Interview:ナカシマセイジ
(Alffo Records)

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──Alffo Recordsを始めたきっかけを教えてもらえますか?

18歳からレコードを買い始めて、そこからずっとDJをやっていて今年で20年目なんですけど、それが動機になっています。当時から、今でもレコードが好きなテンションは変わってないですね。色々なきっかけがあって、それを話すと5時間くらいになっちゃうんですけど、今でも僕はレコードも買うしDJもやるし、若い子とかもずっと連綿と続いてレコードを買ってくれているのを見てきて、「そういう子たちにいいものを提供できる場所っていいな」っていうのが根底にあります。

──Alffo Recordsは元々、通販だけでレコードの販売をしていましたよね。実際に直接お客さんと触れ合うようになって、どんなことを感じましたか?

前の店舗にも来てもらっているんでわかると思うんですけど(以前は雑居ビルの6畳程度の部屋に店舗を構えていた)、あんな雑居ビルでも足繁く通ってくれる人たちを見てきて「やってて楽しいなぁ」っていうのはあります。通販のみでやってた時はそういう出会いってほぼなかったので、やっぱり店舗に来てくれるのは嬉しいですね。

──直接顔を見てお話をしたり、コミュニケーションをしっかり取れるのはいいですよね。

そうなんですよ。話しているうちにこっちの熱量とかが伝わったんだろうなぁっていう時に、「これ買おうと思って来たんですけど、やっぱりこっちにしますわ」みたいなことがたまにあるんですよ。思っていたものと違うものを買って帰ってくれるとすごく嬉しいです。

──お客さんにはどんな風におすすめをしてるんですか?

単刀直入に「どんな音楽好きですか?」とか「一番好きなアーティストは?」って聞きます。でも、大抵は「色々ですね」っていう答えが返ってくるので、そこからは自分がその時に推してる人から始まって、それが全然違うんだったら「だったら、こっちどうですか?」みたいな、結構探り探りですね。診断していくって感じに近いかな。

──そうやってナカシマさんのおすすめでレコードを購入してくださった方から、実際に「よかったです」みたいな反応もらったりとかも?

後日、そういうフィードバックがあると「そやろ」って思いますね(笑)。シメシメみたいな(笑)。そういう風にして常連さんの好みが分かってくると、「あ、これあの子好きそうやな」って思って、仕入れが変わってきたりもします。それはやっぱりネットだけじゃ分からないですね。

──お客さんと親密な関係が築けそうですね。

はい、喋るのは前の店舗の癖なんですけどね。前の事務所はいまの3分の1くらいの広さで、喋らないとどうしようもない空間だったので。

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──店舗をここに移転してから、レコードの販売と合わせて、バーを始めた理由やきっかけはありますか?

僕がDJをやっていて、クラブも含めて「ベストな場所が無い」っていう思いがあったんです。入りづらかったり敷居が高かったり。それで1年半くらいずっと場所を探していたんですけど、懇意にしてる不動産屋が「やっと出てきました!」って条件の合う場所を見つけてくれたので、見て即決しました。

──そうだったんですね。

やっぱり「集まれる場所」が欲しかったんです。僕自身がインディーミュージックに特化しているというか……ダンスミュージックとかも大好きなんですけど、レコ屋だけをやってるとコミュニティが固まってきてしまうので、もっと幅広く色んな人と交わりたいなっていうのがありました。

──店舗内でイベントもやってらっしゃいますもんね。

おかげさまで週末は結構イベントが入ってますね。イベントに遊びに来るついでにレコードを見て買ってくれたり、お酒飲んでくれたりとかしたら、すごく有難いです。

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──今後、イベント以外で何か新しくやってみたいことはありますか?

音楽のイベント問わず、ファッション系のポップアップとか、フリーマーケットとかもやりたいですね。それもレコードだけじゃなくていいし。

──なるほど。普段レコードに興味がない人がお店に訪れることによって、レコードに興味を持ったり、自分の知らない音楽を聴くきっかけにもなりそうですね。お店に立っていて、一番楽しいと思う瞬間はどんな時ですか?

全然知らない人がカウンターで隣同士に座って、盛り上がった瞬間ですかね。そこを上手く繋げるのがカウンター内の人間の役割だと思っていて。そういう繋がりが連鎖していけば、より輪が大きくなるんじゃないかなと。いまだに「緊張する」っていう人もたくさんいるので、そういう「圧」はなるべく取っ払いたいと思っています。

──改めて、「レコードの魅力」はどんなところだと思いますか?

「大きさ」。たぶん音楽ソフトとしては一番大きいですよね。あとはやっぱり、レコードに針を落としてそこから音が流れるって、一番ライブに近い感覚というか。DJとしてこんなこと言っていいか分かんないですけど、いちDJとしては「モノ」というか「ツール」としか思ってないんですよ。でも、安心感はある。そこに「モノ」としてあるっていうことは消えることはないし、触っていると可愛くなるし、磨けば綺麗な音が出るし、逆に雑に扱うと傷ついちゃう。やっぱり「モノ」としてあるっていうのは、良いですよね。しかも、好きな「モノ」に囲まれるとなおさら良いですよね。

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──確かに。新作、新譜も扱っていると思うんですけど、扱う上で心がけている事とかありますか?

もちろん音源は聞くんですけど、MVの作り方とライブは絶対見るようにはしてます。音源だけ聞いても分からないポイント、どれだけ本気でどのくらいパッションがあってやっているのかとかが、パフォーマンスで見えてきたりするんです。それを見た上で「これは推したい」っていうのを決めています。そういう意味では、もちろんルックスもすごく大事ですね。アーティストのパッションが高いと、こっちもパッション高くお客さんに伝えられるので、生の映像とか、どれくらい美意識もってやってるのかとか、どのくらいコンセプトもってやってるのかとか、色んな動画を見たりしますね。音だけ聞いても分からないことって、たくさんあるんですよ。

──ナカシマさんが音楽に夢中になる瞬間ってどういう時ですか?

例えば本とか小説とか映画とかにも言えると思うんですけど、「これ聴いた事ないけどヤバいな」みたいな時ですね。映画だと観た事ないようなショッキングなシーンとかありますけど、それって「アイデア」だと思うんです。そういうのが盛り込まれてるとテンション上がりますよね。逆にいうと、毎日の様に音源をチェックしていると色んな音楽に対して不感症になってくるんです。そんな中で、どこの国か分からないけど「やたらカッコいいな」って人が出て来たりすると、どうしたらこれを売れるんだっていうのは調べて、そのカッコよさがお客さんに伝わると、嬉しさが倍増します。

──DJとして現場に立つ事もすごく多いから、感覚も磨かれてきますよね。

確かに。自分ももっと、自分の周りのイベントだけじゃなくて、メインストリームのヒップホップのパーティーとか行かないとダメなんですけどね。若い時とかは、それで感覚を磨いて来たので。もうちょっと余裕できたら人雇って遊びに行く様にします(笑)。

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──今後どんな風に発信をしていきたいですか?

やっぱり人により多く集まってもらうっていうのが一番大事なので、食事も出したり、もうちょっとレコードを見やすくするとか。難しいですよね、「発信」って。俺が教えて欲しいですもん(笑)。あ、グッズ作りたいですね。色んな人に知って貰えるきっかけにもなるので。それが今一番やりたい事かなぁ。

──海外だとレコーショップがオリジナルのトートバッグを作ってたりしてますよね。

そういうロゴがメインのデザインのグッズも、もちろんいいんですけど、もうちょっとデザイン性の高いものも作ってみたいですね。映画もすごく好きなので、とあるワンシーンをオマージュしたようなデザインとか、他でやってないようなことを、頭を使って色々やりたいなとは思っています。

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Text by mao oya
Photo by Kazma Kobayashi

SHOP INFOMATION

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Alffo Records

〒550-0013 大阪府大阪市西区新町1-2-6
ニュー新町ビル 3F
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