いよいよやってきたワールドカップ・シーズンはもちろんのこと、16年にはリオデジャネイロでの夏季五輪も決定して俄然注目を浴びる“太陽の国”ブラジル。このまたとないタイミングで、世界的DJジャイルス・ピーターソンが、ブラジル音楽をテーマにした新たなカヴァー・プロジェクト、ソンゼイラを立ち上げた。
ポルトガル語で「キラー・サウンド(=最高にかっこいい音)」を意味するこのプロジェクトでは、これまでかの地の音楽を見守り続けてきたジャイルスが、フローティング・ポインツやトゥ・バンクス・オブ・フォーの2人といったUKのトラックメイカー/プロデューサーと現地に向かい、10人を超える新旧の地元ミュージシャンたちとコラボレーション。『ソンゼイラ:ブラジル・バン・バン・バン』というアルバム・タイトルそのまま、マルコス・ヴァーリやエルザ・ソアレス、セウ・ジョルジといった錚々たる面々とともにブラジル音楽の名曲からUKジャズ・ファンク、サラ・ヴォーンまでを再解釈して、DJ的な手法を使ったモダンで刺激的な「もうひとつのブラジル」を全編に閉じ込めている。
『ソンゼイラ:ブラジル・バン・バン・バン』
そして何より素晴らしいのは、この作品に音楽を越えた、ブラジルの人々の力強い生命力や街の活気がぎっしりと詰まっていること。全編はまるで、ジャイルス・ピーターソンからのブラジルへのラヴレターとも言えそうな雰囲気だ。そこで今回は新プロジェクトの成り立ちや制作風景、ブラジル音楽の魅力についてジャイルスを直撃! ロンドンで異国を夢見て過ごした幼少期を経て、10代で海賊ラジオを開始。現在ではブラジル関連のコンピレーションにも多数関わる彼に、ブラジルへの愛を語ってもらいました。
Interview:Giles Peterson
––––あなたのブラジル音楽への造詣の深さは多くの人が知るところですが、いつ頃からソンゼイラのアイディアを考えていたのでしょうか。長年温めていたものだったんですか?
最近になって具現化したものではあるんだけど、そこに行き着くまでの布石はあったと思うよ。僕はこれまで数多くのブラジル音楽のコンピレーションを出してきたけど、それはあくまでも選曲者という立場だった。でも、3年前にキューバに実際行ってアルバムをプロデュースする機会があってね。それが凄く楽しかったんだ。だから同じようなことをブラジルでやるのは自然な流れだったよ。僕はラテンやキューバ音楽よりもブラジル音楽に精通しているから、より「ホーム・グラウンド」という感覚だしね。実際にアイディアが出てきたのは6ヶ月程前だった。やると決めてからは凄く速く物事が進んだよ。実は他の案件で〈ユニバーサル〉に話をしに行った時に、ついでに「実はブラジル音楽のアルバムを作ろうと思っている」と話したら、彼らが凄く乗ってくれたんだ。こういう作品を作ることが出来て本当に嬉しいよ。