ワールドカップのように大きなイベントが開催される時は、
たいてい安易なことを選択しがちだからね

––––現地のアーティストだけでなく、サム・シェパード(フローティング・ポインツ)などUKのトラックメイカー/プロデューサーたちを相棒にしたのはなぜなんでしょう?

DJを通して影響を受けたブラジルのあらゆる音楽やカルチャーを称賛したいと思ったんだ。これから数年はブラジルにとって大事な時期になる。ワールドカップやオリンピックの開催で、ブラジルの文化や歴史が大きな注目を浴びることになるだろう。だから僕は“外部の人間からの視点”で、通り一辺倒じゃない作品を出したかったのさ。ワールドカップのように大きなイベントが開催される時は、たいてい安易なことを選択しがちだからね。つまり、ブラジルに住んでいない人たちに向けて、“イパネマの娘”以外にも色んな素晴らしいブラジル音楽の歴史が存在するってことを知ってもらいたかったんだよ。

フローティング・ポインツ – “Wires”

––––なるほど、それで彼らに集まってもらったわけなんですね。

サム・シェバードは大のブラジル音楽好きで、DJ出身の素晴らしいプロデューサーなんだ。まずは彼と僕とで、昨年の10月にブラジルに行って、数日の滞在でマルコス・ヴァーリと2曲レコーディングした。サムは彼の大ファンだからね。そして1月にはソングライターも必要だと思って、ロブ・ギャラガー(元ガリアーノ/トゥ・バンクス・オブ・フォー)たちにも同行してもらったよ。ディリップ・ハリス(トゥ・バンクス・オブ・フォー)も僕が最も敬愛するプロデューサーの一人だね。マシュー・ハーバートやマウント・キンビーなどを手がけてきて、彼も今回のアルバムにぴったりだと思った。あと、凄くラッキーだったのは、ブラジル滞在中にリオ出身のアレシャンドリ・カシン(オルケストラ・インペリアル)と会えたこと。面白いことに彼は、10年くらい前に僕がDJするのを日本で見ていたんだよ。だから彼は僕がどんなプロデューサーなのかわかっていたし、このプロジェクトに喜んで手を貸してくれた。当然、彼はリオ在住のミュージシャン達とも密な繫がりを持っていたしね。そうして1月に4人が集まって、意気投合したんだ。限られた時間の中での作業だったから、息の合った連携は不可欠だったよ。

––––結局、ブラジルにはどれくらい滞在したのでしょうか。

去年の10月始めに4日くらい滞在して、今年の1月に10日間掛けてリオデジャネイロでレコーディングしたよ。それから3週間かけてミックスしたんだ。2月には完パケしなきゃいけなかったから、あまり時間はなかった……というか、ほとんどなかったね(笑)。今回はリオの2ヵ所のスタジオを使ったんだ。ひとつはコパカバーナ・ビーチ沿いにある古いRCAのスタジオ。ここはサンバやカーニバルのレコーディングに使われてきた伝説的なスタジオさ。そしてもうひとつは、カシンがリオ郊外のボタフォゴに持っているスタジオ。そこでも数曲レコーディングしたんだ。

––––作品トレイラーを見る限り、リオの街の様々なところにも出歩いたようですね?

そうそう。そうやって1時間の映像作品も作ったんだ。夏の間、何ヵ所かで上映する予定さ。凄くいいものができたんじゃないかな。

Gilles Peterson // Sonzeira // Introduction to Brasil Bam Bam Bam (album trailer)

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