レコードやカセット制作など、ミュージシャンのためのプラットフォーム「Qrates」より、Ginger Root(Cameron Lewのソロ・プロジェクト)のインタビューが到着。インタビュアーは音楽フリーライターのDr.ファンクシッテルー氏が務め、Ginger Rootの仕事術などを聞きながら、実際に使用していた「Qrates」の魅力について語ってもらっている。
本インタビューでは、彼のプロフェッショナルな姿勢はもちろん、様々なクリエイティブを生み出すプロダクション・チームの背景や、成功の影にある「好きを追求すること」など、ミュージシャンでなくともヒントになるような言葉がたくさん溢れていた。
Ginger Root |Interviewer:Dr.ファンクシッテルー by Qrates
大成功の初来日ツアーから
3ヵ月の日本滞在生活
──まず、先日の来日について。Cameronさん(Ginger Root)の日本ツアーは大成功でしたね。他にもJ-WAVEでラジオ番組を持ったり、撮影をしたり、大忙しでした。日本で過ごした3カ月はどうでしたか?
忙しかったですけど、全部が楽しかったです。MVを撮ったり、ツアーをやったり、ちょっと遊びに行ったり。ラジオ番組を持つ機会をいただけたこともすごく感謝してますし……。最初は旅行のつもりでしたけど、気づいたら(筆者注:忙しくて)出張みたいな感じでした(笑)。でもすごく良い時間でした。いろんな素敵な人に出会って、みんな優しかったです。
──来日中は、“Nisemono”のMV撮影などで、京都をはじめ、いろんなところに行ったと仰っていましたね。どこが一番印象に残っていますか?
そうですね……やっぱり東京ですね。東京は見たいものがすごく多くて。浅草、池袋などいろんな場所に泊まったんですけど、浅草が一番好きだったかも。浅草の下町がすごく穏やかな雰囲気で、大好きでした。
──日本の食事はどうでした? 来日されてすぐ、ファミチキを食べてる姿をInstagramにアップしていましたね。誰かにあれがおいしいと教えてもらったのですか?
そうです。Twitterで「おいしいものを教えて」、って言ったら、誰かが「ファミチキが一番おいしいコンビニチキンだよ」って教えてくれたんです。それで、「ファミチキ、食べたいな」って(笑)。
日本の食事はどれも美味しかったです。僕はカツカレーが一番好きで……特に今回、“Nisemono”のMV撮影でたまたま入ったカレー屋さんで食べたカツカレーが、一番美味しかったです。シンプルな、家庭料理みたいなカツカレーでした。
Ginger Root – “Nisemono” (Official Music Video)
──私もツアーを観に行きましたが、ライブではカメラマンのDavidさんが面白いパフォーマンスをしていましたね。カメラマンがステージ上を歩き回って、演奏している様子をステージ後方に映し出すというのはとても斬新だと思いました。あれはどうやって思いついたアイデアだったのですか?
「ジンジャールート・シネマティック・ユニバース(筆者注:Ginger RootのMVにおける世界観)」を、どうすれば演奏している時にファンに見せることができるか? を考えていて、思いつきました。みんなが一緒にGinger Rootの番組、MVに入っているような感じにさせられるかも、って。Davidが僕の演奏しているところを撮って、それをステージに映す。コロナ禍の真ん中くらいにYouTubeライブでそれを試してみて、次にそれを実際のライブでもやってみたんです。
MVの世界観を表現するために、ステージに小道具や背景を用意したかったんですけど、ツアー中ではそれも難しい。荷物が多くなりすぎるから。でも、Davidと、カメラと、プロジェクターだけならコンパクト(笑)。
──では、ライブでCameronさんがコンパクトなキーボードばかり使っていたのも、持ち運びしやすいからですか?
そうです(笑)。
Ginger Root – “Over The Hill” (LIVE from Tokyo 2023/01/12 HQ VHS RIP)
独学で覚えた日本語
自分らしく「好き」を追求する姿勢
──ラジオなどでいろんな方が仰っていましたが、私も、Cameronさんの日本語の上手さに本当に驚きました。ゆとたわ(ポッドキャスト番組『ゆとりっ娘たちのたわごと』)など、日本のポッドキャストなどに日本語でフル出演して、あんなに面白い会話が続けられるのは誰にでもできることじゃありません。わずか約2年半の独学だけでここまで喋れるようになったというのも、とても素晴らしいことだと思います。勉強にあたってアニメや音楽番組を沢山観たということですが、『エヴァンゲリオン』や『セーラームーン』の他に、例えばジブリ作品はご覧になりましたか?
ジブリ、すごく好きです(『となりのトトロ』のVHSを持ってくる)。僕は魔法少女とか、少女漫画のような作品が好きで……闘いばっかり、叫び声ばっかり、みたいな作品はあまり見ないんです。たぶん、日本語を勉強する時に、ストーリーが理解しやすいシンプルな作品が良かったんだと思います。セーラームーンは音楽もすごい好きだし、キャラの関係なんかもすごく良いですよね。
──なるほど、だから『日常』とか『ぼっち・ざ・ろっく!』とかもお好きなんですね。
そうです(笑)。『ぼっち・ざ・ろっく!』、大好きですね。
──コロナ禍に入ったタイミングで日本語の勉強を始めたと仰っていましたが、そもそもなぜ日本語を勉強されたのでしょう? 日本進出の戦略だったのですか?
いや、そんなつもりではありませんでした。ただ、コロナで他にやることがなかったから、日本のものを聴いたり、日本のものを見たりすることに夢中になっていただけなんです。だから、日本で有名になるためとか、日本でキャリアを積むために日本語を学んだわけではありません。
高校生のときに(筆者注:YMOを皮切りに)日本の音楽を聴き始めてから、ずっとそれらに魅了されていたんです。そして、ツアーに行けず、仕事もできず、とにかく時間があったので……教科書も使わずに、ただいろいろなものを見続けて勉強していたら、今ではなんとなく話せるようになりました。
──なるほど、やっぱり好きだから日本語を勉強されたのですね。以前のインタビューで、音楽と映像の両方を自分で作っているのは、そのやり方が好きだから、と仰っていたと思いますが……Cameronさんの活動は、音楽も、映像も、その「好き」というパワーが原動力になっているように感じます。Ginger Rootは日本のシティポップブームと重なったことで竹内まりやさんのラジオで曲がかかったり、日本でどんどん有名になっていきましたが、それも戦略ではなく、「好き」を追求して辿り着いたものだったのでしょうか?
そうですね。僕は好きなもの、興味があるものを作っているだけです。『Nisemono』(2022)と 『City Slicker』(2021)はもちろんシティポップの影響もありますけど、ヴォルフペック(Vulfpeck)の影響もありますし、アニメや映画、全部好きなものを詰め込んだものが今のGinger Rootになっています。
Ginger Root – “Loretta” (Official Music Video)
──そうなんですね! 私もヴォルフペックが大好きなので……アルバム『Nisemono』と『City Slicker』における、ヴォルフペックからの影響を教えていただけますか?
昔のアルバムから、ずっと影響はあります。ヴォルフペックみたいにGroovyで、シンプルなのに複雑そうに聞こえるアレンジにしたり、ドラムをDinkyな(筆者注:安っぽい)音にしたり。あとはSNSとか……ジャック・ストラットン(Jack Stratton)は天才ですから。同じやり方ではないけど、彼の企画力、DIY精神は僕のプロジェクトに常に影響を与えています。
VULFPECK /// Animal Spirits
──好きなものを追求する、という話で……DIYアーティストとして成功したい人達へのアドバイスとして、「好き」と「戦略」の、どちらを優先するのが良いと思いますか?
そうですね。成功を目指せば……結果に失望することもあります。だから、DIYアーティストになろうとしている人たちは、「どうやって続けていくのか」を考えてみてください。僕はただ、好きだから色々なことをやれています。最も重要なのは、自分が楽しんでいるかどうか、自分が作っているものが好きかどうか。自分が作っているものが好きでなければ、意味がないと思います。
僕は『Nisemono』も『City Slicker』も、他のすべてのレコードも、ただ楽しく作っていただけです。もちろん大変なことは沢山ありましたけど、結局のところ、レコードを作ることも、ライブで曲を演奏することも、MVを作るのもすべてが楽しかったし、それらをとても誇りに思っているんです。だから他のアーティストも、作ることに楽しみを見いだせるなら、有名になれるかどうかということで心配しなくてもいいのではないでしょうか。
──また広い意味で、DIYバンドへのアドバイスはありますか?
そうですね……あなたの最初のプロジェクトや、あなたが最初に組むバンドは、もしかしたらうまく行かないかもしれません。でも頑張って、一生懸命にやっていれば、次のプロジェクト、次のバンドでは、成功するかもしれない。その次は、さらに成功するかも。そうやって次へ次へ……失敗を恐れないで、失敗を成功に変える覚悟を持って、やり続けることが大事だと思います。
Qratesの魅力と
レコード・ブームについて
──では、Qratesについてお聞かせください。Ginger Rootは以前、Qratesを使ってレコードを販売していましたね。他には、ヴォルフペックやスケアリー・ポケッツ(Scary Pockets) なども使っています。CameronさんがQratesを知ったきっかけや、選んだ理由は?
Qratesを知ったきっかけは、ヴォルフペックでした。ヴォルフペックのレコードをQratesで注文したので、そこで知ったんです。ヴォルフペックのレコードはたぶん全部買いました。『Mit Peck』、『Mr.Finish Line』、『The Fearless Flyers』……。だから、Qratesはとても馴染みがあったんです。
それで『City Slicker』のレコードを作りたい、と思った時に、(筆者注:マネージャーの)Danが「やっぱり、Qratesがいいんじゃない?」って言ってきたんです。それで、「よし、やってみよう」って思いました。
──なるほど、そうだったんですね。実際に使ってみて、どうでした?
実際に使ってみたら、Qratesはすごく便利だし、ウェブサイトの機能も良かったです。レコードの色とかも簡単に選べますし。あと、ファンのみんながレコードを買うのも簡単ですしね。
僕はDIYバンドをやっているので、自分だけでレコードを作るということは金銭面で危険を冒す可能性があるんですけど、Qratesならそこについても心配がない。そもそも100%自分でレコードを作ったらすごく面倒だし、自分で郵便局に行って一枚一枚発送するのは時間がもったいない。その時間で演奏したり、撮影したいですから。
時間的にも、金銭的にも、Qratesでレコードを作るとすごくコスパが良かったです。Qratesはフレンドリーに、「何か手伝えることがあったらやるよ?」と言ってくれるような感じがあります。(筆者注:Qratesを使ったことは)ほとんど大成功でした。
※Qrates:レコードとカセットの製造、販売、流通、顧客対応まで含んだ世界初のワンストップサービス。Qratesでは利益の85%をアーティストへ還元。高品質なレコードの製造が100枚からオーダー可能で、3Dシミュレーターで好みのスペックやカラーをデザインでき、製造コストや収益の予想も簡単に行えるサポートも。
他にも、Qratesで作品を販売するためのページ作成やクラウドファンディングモデルでは予約が集まった枚数だけをプレスすることが可能な受注製造のためロスの懸念もなく、発送・在庫管理もカバーしてくれる。
──Qratesはレコードだけでなく、カセットも作れるサービスです(※)。Ginger RootもCDではなくレコードやカセット、VHSなどレトロなメディアを使っています。いまレコード・ブームが続いている状態ですが、こうしたレトロなメディアの人気はまだまだ続くと思いますか?
レコード・ブームはまだまだ続くと思います。僕だけじゃなくて、ジャック・ストラットンや、他のバンドにとっても、レコードはすごくかっこいいし、聴いている時間は特別なものだからです。CDやストリーミングはシャッフルなど現代的な機能を使って聴くけど、レコードは曲を飛ばすことができないし、カセット、VHSとかも、それらを再生している時間は他に代えられないものがありますよね。
※カセットテープは最低ロット50個から低コストで作成可能。3Dシミュレーターでスペックを選んだ後はQrates上ですぐに作品の販売を開始できる。最低ロット50個から低コストで作成可能。3Dシミュレーターでスペックを選んだ後はQrates上ですぐに作品の販売を開始できる。
──では、今後Qratesを利用するようなアーティスト達に対して、アドバイスなどはありますか?
まず、レコードの販売ページに時間をかけて、本当に特別なものにすること。なぜなら、そこはみんながレコードを買うだけでなく、あなたの音楽を知り、アルバムの背景にあるストーリーを知ることができる場所でもあるからです。時間をかけて、あなたのレコード販売ページを本当に特別で、ユニークなものにすることが大切だと思います。
そして、自分のレコードがどれくらい売れるかをよく考え、多く売ろうとせず、ちょっと少なめに枚数を設定しておくこと。設定枚数に届かないのはキツいですからね。この2つがアドバイスです。
Acrophase Recordsとの関係
友情が繋ぐプロダクション・チーム
──では、Ginger Rootが契約しているレーベル、〈Acrophase Records〉との関係について少し聞かせてください。Ginger Rootは映像や音楽などもすべて自分で作り上げていますが、一方でしっかりとレーベルと契約しています。これは同じDIYバンドでも、ヴォルフペックやスケアリー・ポケッツなどとは大きく違う点です。彼らのように、ご自身のレーベルを立ち上げたりはしないのですか?
自分のレーベルについては、今は興味がないですが、将来的には可能性があります。今一番やりたいことは自分の音楽、映像、ツアーなどですが、いつか時間ができるようになったら、レーベルを作るかもしれませんね。
でも今は、〈Acrophase Records〉と非常に息が合っていて、Dan(筆者注:マネージャーであり、Acrophaseのオーナー)やAcrophaseとも、とても良い関係が築けているんです。例えば彼と仕事の電話をする時も、仕事の話が終わったら後はいろんな話で盛り上がります。本当に友達のような関係。こういうことって、一番大事なことだと思います。ただのスタッフじゃなくて、仲間、家族のような関係でいること。
──ジンジャールート・プロダクション・チームがあるとのことですが、そのメンバーも友人たちなのでしょうか?
はい。Dan以外は、みんな同じ高校に通っていたんです。ドラムのMatt、ベースのDylan、カメラマンのDavid、サウンドエンジニアのJimmy。DavidとJimmyは僕の先輩で、MattとDylanは後輩です。同じ高校で、同じように音楽が好きなんです。最初はただの友達でしたが、Ginger Rootをスタートする時に、(筆者注:MattとDylanに)「一緒にジャムろうよ」と声を掛けました。そこからは本当の友達になり、スタッフでもあります。
──なるほど! やはり友人たちでチームを組むのが良い、ということでしょうか?
そうですね。でも、彼らは音楽に興味や関係がない友達ではなく、みんなが特別な技術を持っている……ベースが上手いし、ドラムが上手いし、みんな音楽が大好きで。だから、半分スタッフ、半分友達、みたいな感じですね。こういった(筆者注:特別な技術を持った友人たちでチームを組む)ことが、本当に大事だと思っています。
──では、どういう経緯で〈Acrophase Records〉と契約することになったのですか?
僕が(筆者注:カルフォルニアの大学に通っていた頃)『Toaster_Music』(2017)を作って、FacebookやYouTubeにアップしていたら、Danと僕の共通の知人が、Danに動画をシェアしてくれました。彼はナッシュビルの大学に通っていたんですが、その動画を観て僕を知って、「何これ!? すごいLofiで、センスもいいし」と言ってきてくれたんです。Danはその頃、Acrophaseを立ち上げたばかりでしたが、「Ginger Rootの音楽を応援したい。何か一緒に作れませんか?」とも言ってくれました。
最初にDanと電話で話したら、いわゆるマネージャーっていう感じではなく、ただの音楽好きな人、みたいな感じでした。僕と好きなものが似ていて、共通点も多かったので、「いい奴じゃない?」って思ったんです。
それからは、Danが僕に仕事のオファーをして成功して、今度は逆に僕からDanにオファーをして成功して……ゆっくり、階段を上るようにやってきました。「これはどう思う?」って相談したり。Danと僕はずっと同じやり方を続けて、今に至ります。
Toaster Music #6 /// September /// 3-6-17
──Ginger Rootはレーベルと契約していますが、実際にはクリエイティブな決定権を保持したまま活動を行っていると思います。では、仕事面で〈Acrophase Records〉からは具体的にどんな事をサポートしてもらっていますか?
最初は宣伝や、相談に乗ってくれる感じでした。あとは、プレイリスト・ピッチング……Spotifyの運営と直接、新曲がどのプレイリストに入るか? という交渉をしてくれたり。そのうち、大学ラジオやテレビ番組への出演などのオファーを持ってきてくれるようになって。今では、ディストリビューション(筆者注:音楽配信など)やスケジュール管理、グッズ販売などもやってくれています。僕は音楽や映像を作って、Acrophaseがビジネスを担当する、みたいな感じです。
──臼井ミトンさんとの対談(TBSラジオ『金曜ボイスログ』)で、「Ginger Rootはパンクな魂、反骨心があると思う」と臼井さんが仰っていました。つまり、メジャーシーンに対して反抗する精神があると思う、とのことでしたが、実際のところはどうなのでしょう? 例えばジャック・ストラットンは、メジャーレーベルがアーティストから搾取する仕組みなどに疑問を持ち、ヴォルフペックの活動をDIYで行っていると思います。Cameronさんはどうですか?
そうですね……僕はメジャーレーベルが好きとか嫌いとかいうわけではなく、自分のやり方でやりたいと思っているだけです。もしメジャーレーベルの契約のオファーがあったら、もちろん検討したい。でも、今は自分のやりたいようにやる、DIY精神が自分には一番合っていると感じています。
Ginger Rootの仕事術
SNS、アルゴリズムとの向き合い方
──では最後に、いろんな仕事のやり方について聞かせてください。Cameronさんの膨大な仕事量と、それを完璧にこなしている秘密に、みんなが興味を持っています。すべてを自分で制作するのは非常に大変だと思いますが、やっぱり、好きだから続けていられるのですよね? 実際にどうやってそれらの膨大な仕事を管理していますか?
そうですよね……。どうやって管理しているか、実は分からないです(笑)。毎日ただ忙しく、興味があることを、どうやってやるか考えて……自分がやりたいから、好きなことをとにかくやっているだけです。何か、これはアドバイスにはならないかもしれないですね(笑)。
──いや、でも好きなことをとにかく頑張っていて、それで成功しているのだから、それも素敵な答えだと思います。では、最近ではなぜ一人ですべてのパートをレコーディングしているのですか?
それは時間の短縮のためです。あとは、アイデアが浮かんだタイミングですぐレコーディングしたいから。僕は自分のスタジオを持っているんですけど、作曲やレコーディングをしていると、「これはいい!」「これは良いものになる」というアイデアが沸く瞬間があります。その時に誰か他のミュージシャンが来るのを待っていると、その感覚が失われてしまうかもしれないので、すぐにレコーディングしておきたいんです。
Ginger Root – “Tank!” (Cowboy Bebop Opening Theme Cover)
──なるほど。以前のインタビュー記事で、ライブ・ブッキングもご自身でやられていると読んだことがあります。いまでもそのスタイルを続けていますか?
確かに、昔はすべて自分でやっていました。今はブッキング・エージェントとDanが一緒にやってくれています。今回の来日については、Live Nationというプロモーターさんが僕のブッキング・エージェントにメールをしてくれたことで実現しました。
今は任せていますが、僕が最初のうちに自分だけでブッキングや宣伝をやっていたことは、すごく大事なことだったと思っています。ミュージック・ビジネスの概要を学ぶことができたので、Danや他の色んな人達と仕事の話をする時に、自信を持って会話ができる。一つのアドバイスとして、そういった経験をしておくと、勉強になるので良いと思います。
──Ginger RootはSNSでも成功し、その影響を受けてヴォルフペックがTikTokを始めるなど、CameronさんはSNSの使い方についても最先端を行っていると思います。SNSの使い方で心がけていること、また気を付けていることはありますか?
どんな動画がいいか、どんなタイミングがいいか、ということももちろん考えていますけど……SNSでは、僕の物語、ストーリーをシェアするようにしています。アルバムの設定や、好きなもの、例えば今回の来日で面白かったものなども。SNSはファンとの距離がすごく近いので、友達に接するようにシェアしていますね。
SNSの使い方については、いろいろ考えています。でも、結局は「自分が言いたいことがあるかどうか」だと思います。言いたいことがあれば、人はいずれ耳を傾けてくれるものです。
──Cameronさんは来日ライブで「YouTubeアルゴリズムに感謝する」というMCをしていましたが、例えば秋元薫の“Dress Down”がやはりYouTubeなどのアルゴリズムでアメリカで大ヒットしたように、アルゴリズムはいまやヒットの立役者です。アルゴリズムや、AIといったものをどのように感じていますか?
そうですね。私の短い答えは、「それらはただのツールだ」ということです。AIやアルゴリズムもツールのひとつでしかない。大事なのは、私達がそれらをどう活用するか、です。アルゴリズムはあなたのことを気にしていませんし、AIもあなたのことを気にしていません。
アルゴリズムやAIはチャンスを与えてくれますが、そのチャンスをより大きな成功に導き、プロジェクトを前進させるのは、ミュージシャンやアーティスト自身だと思っています。
Interview&Text:Dr.ファンクシッテルー
企画・制作協力:らいけん