ダフト・パンクが最新アルバム『ランダム・アクセス・メモリーズ』において、ディスコ・ミュージック復権を高らか告げた2013年。そんな絶好のタイミングで、リスナーの間では伝説化しつつあったディスコ・パンク・バンド=Gramme(グラム)が完全復活を遂げた。しかも、10数年越しとなる幻の1stアルバム『ファッシネイション』を引っさげて――。
おそらく多くの読者が、グラムの名前を初めて聞いたに違いない。ロンドン出身の彼らは、97年にトレヴァー・ジャクソンのレーベル〈アウトプット〉よりシングル「Mine」でデビュー。99年には6曲入りのEP「Pre Release」を発表し、ESG、リキッド・リキッド、パブリック・イメージ・リミテッド、マキシマム・ジョイといった80年代のポスト・パンク~ニューウェイヴ・アクトを引き合いに出されながらカルト的な人気を誇るも、その後1枚のリリースも無いままバンドは自然消滅。直後にNYのザ・ラプチャーや〈DFA 〉周辺を筆頭にディスコ・パンク/エレクトロクラッシュのムーヴメントが巻き起こったことを思えば、グラムは少しばかり時代を先取りし過ぎてしまったのかもしれない。
ところが、近年になって〈DFA〉の総帥=LCDサウンドシステムことジェームス・マーフィーやティム・ゴールズワージーらがグラムからの影響を公言したり、ホット・チップのジョー・ゴッダードがDJミックス・アルバム『DJ-Kicks』(07年)でグラムの名曲“Like You”をピックアップし、さらにはゴッダードがエディットした同曲の超希少な12インチの海賊盤まで出回るなど、グラム再評価の機運はジワジワと高まりつつあった。いや、むしろ彼らに背中を押されたからこそ、グラムは再結成の決意を固めたのだろう。
あまりにも先鋭的だったゆえに、(たぶん)世界一遅いデビュー・アルバムとなってしまった『ファッシネイション』には、時の流れに風化されないトラックの強度と、ディスコ・シーンを静観してきた者たちならではのクールな視点、そしてマグマのように煮えたぎるグルーヴがある。バンドの活動休止期間中もメンバーは音楽業界で着実にキャリアを築いていたようで、そのエッジと輝きは1ミリも失われていない。大袈裟に言えば、グラムが存在しなければラプチャーも、LCDも、ホット・チップも、TV オン・ザ・レディオも、CSSも、チック・チック・チックも、つまらないバンドになっていたかもしれないのだ。謎多きグラムの中心人物、ルークにインタビューを試みた。