広告会社/レコード会社/楽器屋/美術館とそれぞれ働く先が違うけれど、大学卒業間際に結成したバンドを働きながらも続け、精力的に活動しているバンド・Group2。1月25日(火)に公開となった最新MV『MILK』が早くも話題を呼んでいる。
Group2 – MILK Music Video
インディポップやレトロ・サイケ、シューゲイザーなどの要素が混ざった癖になるスルメ曲に合わせ、繰り広げられるシュールな映像はコミカル且つ、どこか不気味。隙のないMVや楽曲のクオリティの高さは、一目置かれる存在であるのではないのだろうか?
そんな社会人バンド・Gropu2のメンバーは、ヴォーカル/シンセサイザーとして紅一点のフロントマンを担当する山口風花、Helsinki Lambda Clubのメンバーでもあるギターの熊谷太起、個人で制作をした楽曲が注目を集めるなど、多彩な活動が目を引くベースの上田真平、学生時代から自主イベントを開催し、DJ活動も精力的に行うドラム・石井優樹の4人だ。
平均年齢25歳、社会では若手と言われ働き盛りで忙しい時期だが、遠征や月に1回以上のライブ、週1回のスタジオ練習をしている彼ら。 一体どうやって仕事とバンド活動を両立しているのだろう?
最新MV『MILK』の制作過程から、Group2のD.I.Y精神と社会とバンドを両立する秘訣について探ってみた。
ちょっと不気味なMVの制作秘話から読み解く、Group2のクオリティ
——最新MV『MILK』の完成度はいかがですか?
熊谷太起(Gt) 完成度は納得しています。
石井優樹(Dr) 実は去年の夏から『MILK』のMVは作ってて、ある程度できあがってたんですけど、全部ボツにしたんです。今のMVが完成系。
——完成間際のMVをボツにした理由はなんですか?
山口風花(Vo/Syn) 曲が頭に入ってこないぐらい、映像にしか目がいかなくて。
上田真平(Ba) 僕らの中で“MILK”は“きもい曲”って呼んでいて、気持ち悪いんですよね。で、映像も気持ち悪かったんです。だから“きもい”が重なり合って……。
熊谷 重くなっちゃったんだよね。
石井 もし“MILK”が、例えば透明感のある楽曲だったら、逆にそういう映像でもいいんだけど、我が強くてサイケデリックだから、映像も強いと胸焼けみたいになっちゃって。
——MVの制作はどんな風に進めていったんですか?
石井 お客さんの紹介で、映像制作をしている大学生がライブを観にきてくれていて。僕らを気に入ってくれたみたいだったので、その子にお願いをしました。“MILK”って映画の『エレファント』(※)からインスピレーションを受けている部分があるんですけど、何も言わなくてもそれに気付いてくれて、良いのができそうだと思いました。
※2003年公開。1999年4月にコロラド州コロンバイン高校で実際に起こった銃の乱射事件を題材にしたガス・ヴァン・サント監督の映画。
——じゃあ、その子のイメージで作られたMVなんですね。
石井 そうですね。グロテスクにならないようにしてほしいっていうのは伝えて、あとはお任せしてます。
——今までのMVも誰かに任せて作っているんですか?
上田 普段は何通も制作してくれる人とやり取りをして、みんなで作り上げていくっていう感じです。でも“Y.M.C.K.”はそうじゃなかったね。
石井 “Y.M.C.K.”は素材だけ自分たちで撮影をして、CGの部分は制作してくれる人にお任せで詳細を聞いていなかったです。
Group2 – Y.M.C.K. Music Video
——制作者のイメージとバンドの世界観がずれていないということは、Group2のことをよく理解しているんですね。
山口 でも、ある程度は選んでるよね。自分たちに近くて、カッコイイって思える人にお願いをしています。
石井 いいって思う人はみんな一緒かもね。
——楽曲へのこだわりはどうですか?
熊谷 それはもう上田が……。
上田 まぁ、自分たちが同じことをやり続けるのを避けるとか、他のバンドがやっていないことをするとかは意識しています。“Group2っぽい”っていうのを押さえて作ってますね。
石井 あとは、一瞬でも気持ち悪くして、きれいな曲で終わらせないっていうのは共通して意識しています。
上田 楽曲は僕がDTMで作ったものをみんなで合わせて、カタチにしていくっていう感じです。
熊谷 しんちゃん(上田真平)は大学院生で岐阜に住んでて、去年、社会人になってから、こっちに出てきたんです。
石井 遠距離バンドだったんですよ(笑)。岐阜から音源が送られてきてて。
——なるほど。距離が近い方がディスカッションもしやくなると思うのですが、楽曲の方向性は始めた頃と変わりましたか?
石井 変わった変わった。
熊谷 昔はもっと素直だったよね。
石井 素直シューゲイザーって感じ。風花がシューゲババアだから(笑)。
山口 サークルで石井とバンドやりないねって話しはしてたんですけど、ずっと出来てなくて。就活が終わってやっと「やるか!」ってなったんです。で、シューゲババア(笑)だったから、シューゲにいきかけたけど……。
熊谷 風花以外がそんなにシューゲが好きな訳じゃなくて(笑)。
石井 しんちゃんが作るきれいなシティポップっぽさのある音楽と、基盤にあったシューゲが合わさって今のGroup2だよね。
——MVやグッズのデザイン、楽曲の統一性を持たせる為に、何か共通で持ってるイメージや、メンバー内の共通点はありますか?
石井 なんだろう、“ひねくれたポップ”みたいな?さっき話した既視感がないものを突き詰めたり、エグさの中にあるポップが積み重なって、いつの間にか“Group2っぽい”ってなってるかもしれない。
上田 好きなバンドも似てるよね。みんな同じバンドをいいって言う。そういう所もあるのかな?
石井 そうかも。あとGroup2はゆるいよね、居心地がいい。
山口 ものすごく大まかに言うと性格があってるんだろうね。
——そうしたら、ライブについてもお伺いできればと思います。山口さんはフロントマンとして意識してることはありますか?
山口 うーん、熊谷を見にくるお客さんが多い気がするから、熊谷のテンションが低かったら私が上げるしかない、とか(笑)? すごく1回テンションが低くて、うんこな時があって。
石井 確かにうんこで“クマガイ元気ないね時期”みたいのあったね。Helsinki Lambda Club(以降、ヘルシンキ)が丁度はじまって忙しかった時期。
上田 メンバーがみんな元気だと上手くいくのはあるよね。誰か1人でもテンションが低いとちょっとミスしたりはあるかも。
——誰かが落ち込んでたら、元気付けようみたいな雰囲気になりますか?
山口 いや、ない。ほっとく。
一同 (笑)。
石井 そういうことがあっても、「なんかウケる~。」みたいなノリ。
山口 「アイツなんか調子悪いぞ、精神の!」みたいな感じだよね。
——干渉しすぎないのもバンドを続けられる秘訣なんですかね。では、日常的なバンドのやり取りは何でしていますか?
石井 普段はLINEでやり取りしてるけど、全然返ってこなくて。僕らは会った時が一番話しが進みます。……やっぱLINEはあんまりよくないよね。しんちゃん、LINEがあんまりよくない話ししておいたら(笑)?
上田 まぁ顔見て話した方が想う事がしっかりと伝わるし、実際に会って話した方がいいねって話しを石井ちゃんにして……。
石井 その話を聞いて僕が感銘を受けて泣くっていう(笑)。
一同 (笑)。
上田 LINEは色々なことを削ぎ落していると思ってて。「髭がはえてるね。」とか、実際に会った時にしか生まれないコミュニケーションを取れている方がいいと思うんですよね。
熊谷 俺たちは練習の時にしっかりとそれができているよね。
「(株)Group2」。気付いたら創立3年目!?
——改めて、Group2が結成されるまでの経緯を教えてもらいたいです。
石井 僕と風花がフォークソングクラブっていう日芸(※)のサークルにいて、趣味が似ていたので「2人でバンドやる?」っていう話をしていたんです。その後、就活先の面接の控え室で僕と熊谷が一緒になったんですけど、そこで童貞の話しをして仲良くなって(笑)。
※日本大学芸術学部の通称
熊谷 そうそう、20歳まで俺も童貞だったって話し(笑)。
石井 その頃に共通の知り合いが何人かいたしんちゃんにアタックしてみようと、何となく風花と話していて……。
上田 大学3年の時にやっていたバンドで、ギターあんまり弾けないなぁって思ってやめたんですよね。それで、暇してて。ちょうど卒業間際ぐらいに風花からLINEで「バンドやらない?」って連絡がきたんですよ。それで暇だったからやりたいってなって。
熊谷 石井がイベントを開催する予定で、それに向けてバンドを組むって感じだったよね?
石井 3年前ぐらい前に南池袋のミュージック・オルグでCairophenomenonsのリードギターとイベントをやる予定だったんですよ。JABBA DA HUTT FOOTBALL CLUBとかBatman Winksも出てて。それがGroup2の初ライブだよね。
——そうだったんですね、イベントに向けて結成をしたバンドだったとは驚きです。
石井 そうなんです。熊谷のギターは聴いたことなかったけど、バンドはバイブスだと思って、熊谷をバンドに誘って風花に紹介をしました。その後にしんちゃんに告白して……。
熊谷 俺、それまでコピーバンドしかしたことなかったんだよね。
山口 けっこう奇跡的に集まったよね。
石井 もう無理(笑)。もう同じ事はやれないし、起きないと思う。
——卒業だし、何か思い出を残そうっていう気持ちもあったんですか?
熊谷 確かにあったかも。
石井 でもこうなるとは思ってなかった。しんちゃんが入る時も岐阜の大学院に行くことが決まってたし、他の3人も就職先が決まってたから、イベントに出たら終わるのかなって思ってた。でも終わらないかもって、どこか思ってたかも(笑)。
熊谷 Group2で初めて発表した曲が“Sugar”っていう曲で、MVも作ったんですけど反響がけっこうあって。大阪のライヴにも呼ばれたりして、そういうのでモチベーションが上がったきがする。
Group2 – Sugar MV
石井 MVを公開した日からSNSも始めたんです。全然それまでは表立って活動してなかったよね。
——なぜイベントが終わったあとも続けようって思ったんですか?
熊谷 思いの外、楽しかったんだと思う。
石井 あと4人でいる時の空気感が無理してなくて、いいのかも。
上田 確かに仲が良いから続けてこれたっていうのはあるね。合宿とか鍋もするしね。
熊谷 社会人ってすることないしね。
石井 そう、バンドなくなると凄い時間が出来て、辛いことになる気がする。かと言って、仕事しないのもキツイかなっていうのがあって。
熊谷 そこは俺らのスタンスだよね。
石井 働きながら両立して、風花が妊娠しても産休制度とかもある。
山口 産休制度……(笑)。
熊谷 産休、育休まである。出演時間固定、20時までには帰りますみたいな(笑)。
一同 (笑)。
——『Group2』っていう会社で副業をしているみたいですね。
熊谷 確かに、『(株)Group2』みたいな。