オルタナティヴ・シティ・サイケ・バンドGroup2の2ndアルバム『Group2Ⅱ』がリリースされた。リズムをグッとタテからヨコに、グルーヴが新たなモードに移行。インディーR&Bの持つアンビエンスともどこか共通する。そして描出される情景はただシニカルなだけじゃなく、リアルな並行世界を感じさせつつ、どこかSF的な側面もある。

リードトラックの“Easy feat. BUGS”には福岡を中心に活動するヒップホップグループ・週末CITY PLAY BOYZからゲストにBUGSを迎え、前作でmaco maretsを迎えたコラボとはまた違う側面を聴かせる。収録曲は『New Music Wednesday』『Tokyo Rising』『Edge!』『Monday Spin』『キラキラポップ:ジャパン』などSpotifyの人気プレイリスト入りも果たし楽曲を耳にする機会も幅も増えている。

今回はインタビュー初登場から約2年の月日を経過した社会人バンドとしての変化や成長を自身のバンド活動やジャンルを越境したラインナップがユニークな主宰イベント<的>などを通して振り返りつつ、なぜGroup2がいつまでも(いい意味で)正体不明なのかを探ろうと試みた。

Interview:Group2

インタビュー|自分の感情から社会へ、Group2が新作『Group2Ⅱ』で表現した新たな情景 interview0924_group2_01-1440x2062

━━前回のインタビューから約2年を経て、仕事とバンドの関わり方の変化を、今この新型コロナウイルス下の状況も含めて聞かせてもらえますか。

石井優樹(Dr. 以下、石井) これは人それぞれ違うと思うんですけど、自分の場合、2年経って会社でも責任や立ち位置の変化はあります。でも、コロナウイルス対策で在宅ワークなので、バンドに関しては忙しいけど、少しこの状況はむしろやりやすいっていうのが正直なところです。個人的には、仕事をしているからこそバンドができていると思っているので、そこの考え方自体は変わっていないです。

上田真平(Ba. 以下、上田) 単純に家にいる時間が増えたので、制作や楽器を触る時間が増えました。ちょうど制作とコロナによる自粛のタイミングが重なって、家で宅録して曲を作るっていう時間が増えたのが結果的に良かったです。仕事とバンドの両立に関しては僕も石井ちゃんと一緒で、そんなに価値観が変わったってことはないですかね。

━━山口さんはいかがでしたか?

山口風花(Vo.&Syn. 以下、山口) 私は在宅ワークがほとんどないので自分自身の生活という意味ではそんなに変化はないんです。でも、アルバムの曲を作る上ではリモートがやりやすかったです。BUGSさんと曲調のミーティングをするのもリモートで音源をやり取りして、歌詞も伝えていって。

熊谷太起(Gt. 以下、熊谷) 僕も在宅ワークなので、作業する時間とか音楽を聴く時間がすごく増えました。僕はコロナになって逆に漠然と音楽だけでいけたら嬉しいなっていう感覚が芽生えたかもしれないです。

━━このタイミングでアルバムを作ることになったのは偶然なんですね。

石井 そうですね。もともとオリンピック開催の前までにリリースしたいと思っていたんですけど、コロナのタイミングになってしまい、レコーディング自体も予定していた日から数回延期してるんです。それで、やっと人が集まれるみたいなムードになった時からレコーディングをやり始めたので、制作も遅れましたし、リリースタイミングも想定してたものより結構遅れました。

上田 補足すると、ポストプロダクションの時に音をどんどん足していく作業をしていました。要するに生で弾いてない音をどんどん足していったんですね。それって、もともと僕らの音源って、ライブで再現できる前提で制作していく感じがなんとなくあって。けど、今の状況の中でそういう意識が変わって、ライブで再現できる前提より、制作で面白い音源作ろうという意識にどんどんなっていきました。以前はパーカッションの音を入れたりしなかったんですけど、そういう工夫を意欲的にやったりして。そういう意味では音に対するスタンスが少し変わったのかなと思いました。

━━なるほど。現状が反映されていると。ところでGroup2の主催イベント<的>は他で見られないような組み合わせで回を重ねています。それはGroup2だからできるという意識はありますか?

上田 結構、それは意識してますね。

石井 バンド自体、オルタナティブというかジャンルレスだというのは全員が共通意識として持っているので、一緒にやるアクトも意識していろんな畑から呼んでますね。そこにハマれるGroup2を見せたいという面も。

━━オファーの基準ってあるんですか?g

石井 基準なんておこがましいんですけど(笑)、リスナーとして普段聴いてて、めちゃくちゃかっこいい! となったらどこでも行くみたいなところはあるかも。

上田 会ったことないのにいきなりオファーもしたり。

山口 その時に好きで、ジャンル的にも雑多かつ自分たちが好きな音楽っていうのがまず根底にあって。その中にラッパーを1人ぐらい入れた方がいいとか、バランスをその後に考えています。その後に予算ですかね(笑)。

━━最も挑戦的だったオファーは誰でしたか。

上田 バンド初期が尖っていたなと思うんですけど、エレファントノイズカシマシ(現ELEPH/ANT)とか。ノイズバンドを僕らみたいないわゆるインディ/オルタナバンドの中に混ぜるっていうのは結構面白いなっていう自覚があってやってましたね。

石井 さとうもかちゃんみたいなシンガーソングライターとか、今や有名人ですけど初期のVaVaくんみたいなラッパーとか。そういうのもありますね。あとはTsudoi Studioさんとかも面白かったですね。

━━自分のお気に入りのプレイリストの中では存在するかもしれないけど、現実のライブでは見られないような人たちが一緒に出演しているという。

石井 確かに出演しているアーティストをみるとプレイリストっぽいですよね。

熊谷 僕らの場合、平日は働いているので誘いにくいのか、そんなにイベントに呼ばれないのもあると思います。

石井 今、それ言うか迷った(笑)。

━━(笑)。でも、逆にGroup2がオーガナイズすることで、早い時期に知ることができたアーティストもいるんです。例えばmaco maretsとか。

石井 このあいだリリースされた『Waterslide Ⅲ』はとても良かったですね。

Group2 – PEAK TIME feat. maco marets

━━色々出会いをもたらしているなと。

石井 そういえば、2回目の<的>のときに、真ちゃん(上田)が長谷川白紙を呼びたいって言っていて。その時、全然誰も知らなかったんですけど。

上田 いや、でもMaltine(Records)から『アイフォーン・シックス・プラス』出した直後かな…。

石井 今考えると、長谷川白紙に声かければ良かった。

━━また呼べるかもしれないじゃないですか。

石井 目標が決まったかも。「長谷川白紙を呼ぶ」。

一同 ははは!

Group2 New Album『Group2 Ⅱ』Trailer

━━肝心のアルバムについて伺いたいと思います。個人的な印象としては「チルでメロウ」とかシティポップのカウンターですらないというか。

石井 それ見出しにしていただけると(笑)。

━━シティポップとは違う世界線で鳴ってるようで、でも気持ちの中には同時代性もあるようで、余計にザワザワしました。何か大本のビジョンはあったんですか?

上田 大本のビジョンは、えーと……基本的には…ないですね。

━━できた曲の傾向はあるのでは?

上田 後付けすると必然的に自分たちのテンションだったり、ある一貫したムードを生んでいったのかなという感じはあります。そのムードっていうのが、やっぱりオリンピックが結構、影響していると思います。

━━オリンピックが開催されることへのネガティブな感情ですか?

上田 個人的にはネガティブでしたね。オリンピックだけじゃないですけど、この社会のムードが明らかによくない方向に向いている実感はあって。そういうことをなんとなく感じていた時に、最初にできた曲が“Wonder”と“Internet”の2曲だったんですけど、メッセージ性が結構強かったんですよ(笑)。これまでの歌詞の内容って自意識だったり、自分の感情が生み出したシュールな世界みたいなものだったというのが、“Wonder”と“Internet”については完全に社会についてのテーマになっていました。意識的なのか無意識なのかわからなかったんですけど、そういった曲が生まれて、社会とか世界についての歌詞を書くようにシフトして、アルバムの世界観が構想されて行ったっていう感じだと思います。

━━今回は上田さんが歌詞にしたいことがあったんですか?

上田 歌詞は基本、山口が担当しているんですけど、最初に“Wonder”を作曲したのは熊谷なんです。熊谷からこの曲のモチーフを映画『フルメタル・ジャケット』にしたいという話があって。

━━イメージとしてはどんな?

熊谷 映画『フルメタル・ジャケット』のラストシーンが戦争の中、軍人たちが集まって歌いながら歩くんですけど、そういうカオスの中にポップみたいな、というイメージを山口に伝えました。戦争映画から着想を得たっていうのを伝えて、書いたらああなったという(笑)。

上田 奇しくもアルバムの方向性がそうやって決まっていきましたね。裏話ですけど、なんで”Internet”ていう曲名になったかというと、ジ・インターネット(The Internet)ってアメリカのバンドっぽかったから最初そういう風に言ってて。

一同 ははは!

上田 なんですけど(笑)、“Internet”って曲名になって、テーマもインターネットでいこうと思って、インターネットに対するエッジの効いた皮肉が歌詞として出来上がってきました。そういう皮肉と戦争っていうテーマがまさに社会についての歌になったんですよ。

━━これまでにないぐらいズバリ、SNSうんざりっていう歌詞ですね。

山口 あ、よかったです。嬉しい(笑)。

Group2 – Internet

━━“めまい”は曲調が新しく感じて。何か影響はありましたか?

上田 でも、割と最近の何系っていうんだろう……。イエロー・デイズ(Yellow Days)といったインディR&Bっていわれている人たちのことを真似ようとしたっていうイメージはがあったんですけど。コード感とかもちょっとブラジル音楽っぽいものを意識したりとか。それを最終的にサイケに落とし込んだというイメージですかね。

━━“めまい”はリリックもグッときました。退屈するほど人間って色々考えるし、そこにドラッギーな匂いもあって。〈肺に咲くロータスブロッサム〉というフレーズとか。

上田 それは、ボリス・ヴィアン(Boris Vian)の『うたかたの日々』が元ネタですね。この曲は割と他の曲に躁的なエネルギーがあるのに対して、もっと日常とかダラダラとした感じをアルバムの途中に入れてみようっていう意識が少しあって、歌詞もそういう世界観にしました。

Group2 – めまい

━━その“めまい”から音像がシャキッとする“Easy feat. BUGS”への跳躍も効いてますね。BUGSさんとはどういう経緯で?

石井 前回、maco maretsとコラボしてすごく面白くていい曲ができたので、そういうコラボをまたやりたいっていうのはメンバー内でありました。結構、誰とやるかの議論は難航したんですよ。色々調べて聴いて、あまり怖い肉体的なラッパーは違うのかなっていう中で、色気があって男らしいーー僕的には(山口)風花の女性らしい部分を出してくれるんじゃないかなと思って、BUGSさんを提案しました。最終的には風花が決めたよね。

━━山口さんのイメージとしては交互にラップすることでどういう効果が出ればと?

山口 今回BUGSさんを選んだ理由を音的な意味でいうと、前回、maco maretsさんとコラボしてるんですけど、maco maretsさんはメロウな感じでゆったり聴けるんです。その中にもうちょっと力強くて、いい意味で落ち着いていないラッパーの人とコラボしたいなっていうのがあって。私もラップする時の声的な意味で、テンションというのは結構気にするところではあるんです。そのテンションをレコーディングでBUGSさんに合わせようと気に留めていた部分はありました。そういう意味ではうまいこと絡み合えたのかなと思っています。

石井 僕が歌詞を7割ぐらい書いて風花に渡して、BUGSさんとどう構成していくかを話しました。歌詞の内容的には、この混沌とした社会があるけれども、「まぁやるしかないよな」みたいなテンションなんですけど、その内容にちゃんと風花が応えてくれて、タイトルの“Easy”という意味も読みとってくれた感じですね。

Group2、BUGS – Easy

━━今回、山口さんのトーキング的なボーカルも歌メロもどちらも明快になりましたね。

熊谷 今回、歌はエンジニアに入ってくれた向(啓介)さんがディレクションしてくれて、より際立たせてくれました。

石井 歌詞に線を引いて、どこで切るかとかすごく細かいところまで。それで音にマッチングしました。

━━どういうアーティストを担当している方なんですか?

熊谷 向さんは君島大空くんとか、showmoreだったりのR&B系とか。maco maretsの新譜も担当されていますね。

━━“新しい夢”は酩酊しきれない、Group2の素面な部分が出ているのでは?

上田 ああ、確かに。

━━それはバンドの個性なのかなと思いました。

上田 個人的にはもっと酩酊したらよかったと思ってます(笑)。リファレンスとしてはMild High ClubとかMac DeMarcoとか、よれよれなテープで聴いているような音をイメージしていたんですけど、なんでこうなったんだろう(笑)。

石井 確かになってないね。

━━酩酊しきれないものがリリックの中に含まれているからかもしれないですね。

山口 リリック的な意味では最後ぐらい綺麗ごとを言っとおこうという意思はありますよ(笑)。

石井 ちなみにどういう綺麗ごと?

山口 なんだろう…わたし的にはラブソングなんですけど。まず「ラブ」がもう綺麗じゃない?

石井 確かに(笑)。

上田 歌詞のテーマや世界観は僕が伝えたんですけど、その時に言ったのが、ディストピア的なものと……。

山口 サイバーパンク的。

上田 SFにおけるダークな感じ。だけどちょっとこう、ほの明るいようなものっていうイメージがありました。あと、『ブレードランナー』とか、そういうイメージを歌詞として作ってって伝えて、アンドロイドと人間の愛がテーマみたいになりました。

山口 そういうようなMVがあって、それを見つつ自分の中で話を膨らませていきました。アンドロイドの気持ちを書いている意識はあります(笑)。たぶん、もう人間はいないんですけどっていうイメージですね。でも最終的にはそれに気付いて終わる感じがいいかなと思って。

━━今年は例年と同じ活動は難しいとは思いますが、アルバム・リリース後、バンドはどこに向かおうと思っていますか?

石井 以前より、作品を作ることに重きが置かれている感じがして。僕らはもともとみんな社会人でライブをたくさんやるバンドじゃなかったので、作品をちゃんと作って世に出して。最終的に<フジロック>に出たいです。

━━配信ライブという手段もあると思いますが。

上田 個人的には配信ライブって、あまりしっくりきていないんです。ライブである必要があるのかという疑問があって。生であるかどうかっていうのは結局わからないじゃないですか? なので、制作やスタジオワークをどんどんやっていきたいなっていう感じです。

━━ところでリモートでの作業になりがちな今、磨きたいスキルとかありますか?

熊谷 石井ちゃん、料理めっちゃしてる。

石井 納豆を食べれるようになったんですよ。今まで絶対無理だったのに。

一同 (笑)。

石井 こういう世の中になって色々変わって。

山口 その筆頭が納豆だったの?(笑)

━━免疫強化とか?

石井 それもあるのかもしれない。

熊谷 僕もサプリ飲むようになりました(笑)。

━━自然な欲求としてサバイブするぞと?

石井 や、もう価値観が変わってるので、バンドのやり方もめちゃめちゃ変わるかもしれないし。逆に今、Group2が「がんばろうぜ」みたいな感じになれたらいいかもしれない。

━━確かに今の状況で弱るアーティストはあまり信じられないです(笑)。ただ、その筆頭が納豆とサプリなのかというと……。

石井 ごめん、納得いかないよね、納豆じゃ。

上田 無理でしょ。

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Text by 石角 友香
Photo by MIRAI

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Group2
東京を拠点に活動する“”オルタナティヴ・シティ・サイケ・バンド2014年結成~活動開始。

2015年7月インディーバンドの登竜門としても著名なMiles Apart RecordsからカセットEPをリリースし即完売。2016年末に初流通作品であるEP『Like A』をリリースし、DJパーティ「New Action!」との合同イベント「Coming Age」にて新宿MARZ,Marble,Motion3会場往来型のリリースパーティを開催。バンド勢から、ヒップホップ、クラブシーンでも活躍するアクトを集めた当イベントは盛況を博した。

以降、「SYNCHRONICITY’17」に出演、2018年11月には初フルアルバム『Group2』をリリースし、12月には東阪にて「的 vol.2」と称したリリースパーティを開催した。2019年3月には東阪で活動するインディーバンド5バンドによる共同企画、「ZONE2」をclubasia,LOUNGE NEOで開催するなど、独自の活動スタイルで着実にシーンを横断している。2020年5月にリリースした初期ニューウェイヴを思わせる最新シングル「Wonfer」は「New Music Wednesday」「Tokyo Rising」「Edge!」などのSpotify人気プレイリスト入りも果たし、話題となった。

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RELEASE INFORMATION

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Group2 Ⅱ

2020.09.02(月)
Group2
PCD-22426
P-VINE inc,
¥2,200(+tax)

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