2022年7月29日(金)〜31(日)にかけて開催された<FUJI ROCK FESTIVAL ’22(以下、フジロック)>。Qeticでは、<フジロック>現地にて、出演したアーティストのインタビューを実施。今回は、29日に出演したハイエイタス・カイヨーテHiatus Kaiyote)のインタビューをお届けする。

バンドは前作からじつに6年ぶりのアルバム『Mood Valiant』を2021年に〈Brainfeeder〉からリリース。今年4月には〈Brainfeeder〉の影響を伺えるリミックスアルバム『Mood Variant(The Remixes)』を発表した。

<フジロック>出演はバンドにとって3年ぶり、2度目のこと。初日のGREEN STAGEに登場し、強烈な陽を射していた太陽が沈んでいくなか、真夏にピッタリのグルーヴを奏でて、オーディエンスを魅了。ボーカル/ギターのネイ・パーム(Nai Palm)は、翌日のFIELD OF HEAVENのトリとして急遽出演し、バックボーカルとともに弾き語りを披露した。

バンドでのライブの翌日、インタビューに応えてくれたのはベースのポール・ベンダー(Paul Bender)、キーボードのサイモン・マーヴィン(Simon Mavin)、ドラムのペリン・モス(Perrin Moss)の3名。彼らはどう旅を楽しんでいるのか。ツアー中の彼らに、ざっくばらんに語ってもらった。

HIATUS KAIYOTE – Get Sun(FUJI ROCK 22)

INTERVIEW@FUJI ROCK:
Paul Bender、Simon Mavin、Perrin Moss
from Hiatus Kaiyote

バンドが見てきた景色、見ている展望──Hiatus Kaiyote、フジロック現地インタビュー interview2209-hiatuskaiyote-fujirock-6
左からペリン・モス、ポール・ベンダー、サイモン・マーヴィン

──昨日のライブはどうでしたか?

ポール・ベンダー(以下、ポール) とても楽しかったよ。

──2回目の<フジロック>ですが、いかがでしたか?

ポール 最高だよ。オーディエンスも素敵だった。今回はバックボーカルも一緒に来られたし、すごく良かった。それに自然と景色も素晴らしい。バックステージエリアに川が流れてて、足を入れたりとかね。本当に綺麗だよね。

──<フジロック>を終えたら次はUS、イギリスなどを回っていくツアーが続きます。今回のツアーで起こった印象的なお話などを教えていただけますか?また、バンドなりのツアー、旅の楽しみ方を教えてください。

ペリン・モス(以下、ペリン) ドイツのケルンにAQUALANDっていう、巨大なウォーターパークがあるんだ。まあ子供用の場所ではあるんだけど、僕たち子供だから楽しんじゃって(笑)。それに十数個もサウナもあって、めちゃくちゃ楽しくてさ。ヨーロッパ、ドイツではそういう楽しみ方もあるよ……(笑)。

サイモン・マーヴィン(以下、サイモン) いろんなツアーをして、いろんなところへ行けるのはとても貴重だよね。南アフリカ、ケープタウンの<Cape Town International Jazz Festival>にも行ったときはすごく良い経験をした。はじめてヨーロッパに行ったときは、南フランスに行ったんだけど、本当に美しいビーチがあったな。スイスの<Montreux Jazz Festival>に行ったときもすごく良かった。ライブも最高だったよ。自然が大好きだし、素晴らしい景色はもちろんみんな好きだよね。どこに行っても世界には綺麗な場所がある。日本の自然の景色も素晴らしいよね。日本は火山の活動状況が活発でしょ。ドライブするだけでも刺激的なんだ。オーストラリアは平坦だからね。

ポール これまで行ったなかで面白かったのは、ニューカレドニアのサンゴ礁があるような島に行ったとき。楽園が実在したんだよ。それにどこか奇妙で印象的だった。その土地のみんなが聴いてるのは島の伝統的な音楽で、レゲエに近かった。ライブをやるときも、ステージは原っぱみたいで、地元の人たち──おじいちゃんおばあちゃんたちが座ってご飯を食べてるような場所だった。そこには犬や鳥とか動物もいて、子供たちが走り回ってた。ライブを観てる人たちも、誰も自分たちのことを知らない様子だったんだけど、僕たちはすごく楽しかった。たぶん「このバンドなに?」「この音楽なに?」って感じで観られてたと思うけどね(笑)。

ビーチには誰もいなくて、海もとにかく綺麗だった。ココナッツとかアボカドとかがあらゆる場所に自然に生えててね。そこにホテルはないから、地元の知り合いの家族の家に泊まったんだけど、「おはよう」「ココナッツ食べるかい?」みたいな感じなんだ。ココナッツを拾って、割ってくれて、「はい、どうぞ。新鮮なココナッツウォーターです」って(笑)。まったく違う世界にいるみたいだったよ。

バンドが見てきた景色、見ている展望──Hiatus Kaiyote、フジロック現地インタビュー interview2209-hiatuskaiyote-fujirock

──ツアー中にはたくさんの出会いがあると思います。最新作『Mood Valiant』のリミックス・アルバムが4月にリリースされていますが、LAビート・シーン的な文脈の方が多く参加していますよね。

ペリン バンドのファンが一番多いのがアメリカということもある。バンドの初期の音楽もLAビートシーンにインスピレーションを受けていたし、かなりバンドのやっている音楽と近い。だから、それから知り合って仲良くなったり、コネクションが作られていったんだ。

ポール そういう流れだったり、〈Brainfeeder〉の繋がりだね。

サイモン リミックスアルバムのリリースは2作品目なんだ。デビュー作の『Tawk Tomahawk』のリミックスアルバムで『TAWK TAKEOUT』という作品を出してる。でも、あの作品はほとんどメルボルンの知り合いにお願いしたんだ。それにbandcampでしかリリースしてないから、大々的には知られてないかもね。

──リミックスアルバムでのコラボレーションなどを通じて得たインスピレーションだったり、新しい発見はありましたか?

ペリン うーん、インスピレーションとは違うんだけど、彼らとコラボできたことへの感謝は大きい。僕たちは自分たちのやりたい事が見えていて、バンドでもその展望は一貫してるよね。

ポール  好きなことをやっていきたいんだ。インスピレーションをどこから得ているか、ピンポイントで語るのは難しいかな。

──ありがとうございます。いま見えている展望を少しだけ教えてもらえたりしますか?

ポール オーケストラと一緒に2つのショーをやるんだ。36人編成でかなり大所帯だよ。アレンジメントはミゲル・アトウッド・ファーガソン(Miguel Atwood-Ferguson)と、いくつかをアルトゥール・ヴェロカイ(Arthur Verocai)が担当する。そういう壮大なオーケストラと一緒にライブをしたことはないから、すごく楽しみだよ。

サイモン すごい楽しみだけど、ちょっと緊張するよね。

ペリン リハーサルが1時間しかないんだ。

サイモン だからプロ意識を持ってやらなきゃいけないんだけど、あんまりそういうの得意じゃないんだよね(笑)。

──楽しみにしています(笑)。つぎに、この箱に入ってる質問を引いていただけますか?全員に引いていただきたいので、一人一問ずつでお願いします。最初は「泣きたい夜に聴く曲は?」です。

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ポール  リー・ヘイズルウッド(Lee Hazlewood)の“My Autumn’s Done Come”かな。

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──つぎは「もし自分が書いていたらと思う曲は?」。

サイモン うーん……。悩むな。ビートルズ(The Beatles)の曲かなぁ。

ペリン 儲かるからね。

──(笑)。

サイモン 悩む。悩ましいな。やっぱり、“Julia”かな。何度も聴いてるし、常に聴いてるよ。

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──ありがとうございます。最後は「完璧な日を過ごしたことはありますか?」です。

ペリン 友達がシドニーのアバロン・ビーチに平家を借りていたんだ。そこに住んでいるわけではないんだけど、家賃が1週間で50ドルとかすごく安いところだった。すごく狭い場所なんだけどね。毎年、その友達はそこに行ってた。そこに遊びに行って、アシッドをやりながら、絵を描いたり、ジャムしたりしてたんだよ。それまでパーカッションは少しやったことはあったけど、ドラムをやったことはなかった。ただ、それは、僕がはじめてアシッドをやったときだった。そのとき、解放されたんだ。思い出せるのは、はじめてのトリップのなかで「リズムとは何か?」「ドラムをすればいいのか?」みたいなことがはっきりとわかったんだ。それがいまの自分に至る旅路のスタート地点になった。だから、これが完璧な1日だよ。

──すごい話ですね(笑)。

ペリン まだ5回しかやっていないんだ。片方の手に収まる(笑)。

一同 (笑)

ペリン 僕はその経験に感謝してるから、たくさんやってるわけではないんだ。本当にレベルアップしたいときだけ、大切にやってる(笑)。やりすぎは良くないからね。

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Photo by 横山マサト
Interview, Text by 船津晃一朗

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INFORMATION

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Mood Variant(The Remixes)

2022年4月8日(金)
Hiatus Kaiyote
label:Brainfeeder

Disc 1
01. Blood And Marrow(Stro Elliot Remix)
02. Get Sun(Georgia Anne Muldrow Remix)
03. Chivalry Is Not Dead(Salami Rose Joe Louis Remix)
04. And We Go Gentle(DJ Khalil Remix)
05. Sparkle Tape Break Up(Mndsgn Remix)
06. All The Words We Don’t Say(Omari Jazz Remix)
07. Rose Water(Silentjay Remix)
08. Sip Into Something Soft(Teebs Remix)
09. Red Room(Ki Pharaoh Basement Edit)
10. Red Room(Nick Hakim Remix)

Disc 2
01. Flight Of The Tiger Lily
02. Sip Into Something Soft
03. Chivalry Is Not Dead
04. And We Go Gentle
05. Get Sun(feat. Arthur Verocai)
06. All The Words We Don’t Say
07. Hush Rattle
08. Rose Water
09. Red Room
10. Sparkle Tape Break Up
11. Stone Or Lavender
12. Blood And Marrow

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FUJI ROCK FESTIVAL ’22

2022年7月29日(金)30日(土)31日(日)
新潟県 湯沢町 苗場スキー場