『セクシーコマンドー外伝 すごいよ!!マサルさん』、『ピューと吹く!ジャガー』を筆頭に人気ギャグ漫画作品を多数世に送りだしてきたうすた京介氏と、京都を拠点に活動するシンガーソングライター/バンド、ハンサムケンヤ氏&その所属レーベル・〈古都レコード〉がタッグを組み、京都を拠点に全国で活動するアイドルを生み出すプロジェクトをご存じだろうか?

それが「うすた京介×ハンサムケンヤ \勢い/アイドルプロジェクト」だ。

このプロジェクトでは、現実でのアイドル活動と、うすた氏によるマンガ作品とを同時並行で展開。「マンガ×音楽×アイドル」という、これまでにない組み合わせで新しいアイドル像を生み出していくという。現在のところ、4月15日にオーディション受付が終了し、最終選考を5月中旬に実施予定。早くて夏頃の活動開始を視野に入れているそうだ。

異色のプロジェクト立ち上げの経緯はどんなものだったのか。また、現在までに感じているこのプロジェクトならではの魅力や楽しさとは、どんなものなのか。うすた京介さんと、ハンサムケンヤさん、そしてハンサムケンヤさんが所属する古都レコードの代表で、このプロジェクトのプロデューサーも務める新井ポテトさんに話を聞いた。

なお、鼎談の進行は、自身もプロジェクトにサポーターとしてかかわっている、「世界ゆるスポーツ協会」の代表理事としても知られる澤田智洋さんが担当してくれた。

座談会:
うすた京介×ハンサムケンヤ×新井ポテト

「最初はマンガの要素を持ち込みたくなかった」

澤田 まずは今回の「\勢い/アイドルプロジェクト」が立ち上がった経緯からお聞かせいただけますか?

うすた 元々、僕が今住んでいる北海道での別のアイドルプロジェクトの運営に関わりかけた機会があって。結局そのプロジェクトからは、僕は退くことになったんですけど、そのときに一度、ケンヤくんや新井さんと仕事をする予定だったんですよね。

新井 そうですね。ただ、うすたさんと僕らが知り合ったのは、もっと前のことでした。

ハンサムケンヤ 確か9年ほど前ですが、僕があるメディアの対談企画、「対談したい人」として、同郷出身でもあるうすたさんの名前を挙げたんです。夢が叶ってその対談が実現したことが僕らの最初の接点でした。

澤田 じゃあ、(ハンサムケンヤのマネージメントを担当している)ポテトさんもそのときうすたさんと初対面したんですか?

新井ポテト そうですね。ただ、そのときはハンサムケンヤのマネージャーという立ち位置だったので、僕は「よろしくお願いします」くらいしか話をしていなかったと思います。

うすた そうでしたね。

澤田 じゃあ、うすたさんが関わりかけていたというアイドルプロジェクトをきっかけに、今度はうすたさんからケンヤさんと新井さんに連絡を取ることになった、と。

新井ポテト そうですね。うすたさんから「ケンヤくんに曲を書いてもらえないかな?」と連絡をいただいたので、北海道でのアイドルプロジェクトのオーディションの日に、僕がひとまず札幌に飛んで、人生で初めてアイドルオーディションの様子を見させてもらいました。それが、去年の2月のはじめ、ちょうど「さっぽろ雪まつり」の頃でした。

澤田 うすたさんが、そのときケンヤさんに声をかけたのはなぜだったんですか?

うすた 当時、グループのイメージを考えていく中で、アイドル界にあまりなさそうな曲にしたいと思っていたんです。ありきたりなアイドルグループにはしたくないと思っていたので。そこで探している中、僕自身、対談以降ケンヤくんの曲を聴くようになっていたこともあって、「彼ならいいんじゃないか?」と思うようになりました。ケンヤくんの楽曲のような曲調を歌うアイドルって、今あまりいないと思いますし、ケンヤくんの曲ありきで考えると、グループのイメージもバーッと広がっていったので。

澤田 「アイドル界になさそう」というのは、どういう部分なんでしょうね?

新井 ケンヤの曲は、たとえるなら、古くささ7割、新しさ3割という雰囲気を感じていて。歌謡曲っぽいけれども歌謡曲では終わらないし、歌詞も前向きなように聞こえるけど、実は逆にも聞こえて、人によって捉え方が変わるような、解釈がすごく広い音楽をつくるアーティストだと思っているんです。今どきの曲は「こういう人に聴いてほしい」というターゲットが決まっていることが多いと思うんですけど、ケンヤの場合はそうでもないというか。

澤田 なかなか一言では定義できないような音楽性ですよね。確かに、ケンヤさんの楽曲とアイドルが合わさると、既存のアイドルの枠には捉われないものになるかもしれません。

うすた ただ、そのアイドルプロジェクトについては、最初に言った通り、僕が運営メンバーから外されることになってしまいました。

新井 その時は、僕が北海道から京都に帰ってきてすぐに、うすたさんから「プロジェクト自体から自分が外れそうなので、ケンヤさんへの依頼もなくなってしまうと思います。わざわざ札幌まで来ていただいたのにすみません」と連絡をいただきました。

でも、僕はうすたさんがアイドルに関わるなら、うすたさんのマンガを生かしたプロジェクトにできたら面白そうだと考えたりしていて、「すごくもったいないな」と思っていたんですよ。なので、その時点で今のプロジェクトを考えていて。同時に、「ごめんね」と言ってくれているうすたさんに、「じゃあ、代わりにTシャツ用のイラストを描いてください!」と伝えて、僕が古都レコードとは別に経営しているPIZZA MONSTARというピザ屋さんのTシャツ用イラストを描いてもらったりもしました。

そういうやりとりを続けていく中で、ジャブを打つように何度か話していって。最終的に僕の方からうすたさんにお声がけをした形でした。それで……僕がもう一回札幌に行ったんでしたっけ?

うすた うん。僕も一度京都に一度行って、新井さんも札幌に来てくれて。

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インタビュアー なるほど。お互いに行き来する形で。

新井 その中で、「一緒に京都発のアイドルプロジェクトができたらきっと面白いと思うんです」とお話しました。ただ、うすたさんは、アイドルの運営には興味を示していたものの、「マンガを描く」ということに対しては……最初は乗り気じゃなかったですよね(笑)?

うすた 僕としては、普段と違うことをやって、そこで得たものをマンガに活かそう、という気持ちだったので、「マンガの要素をこっちに持ち込みたくない」と思っていたんです(笑)。マンガを描くとなると、アイドルプロジェクトでも結局やることが同じになってしまうので。

澤田 なるほど。でも、徐々にポテトさんのジャブが効いてきたわけですね(笑)。

新井 京都でうすたさんとケンヤと僕の3人で飲みながら話していたときも、僕はずっと「マンガを描いてもらった方が絶対に面白いと思うんです」とうすたさんを必死に説得していて、でもうすたさんは「いやぁ、マンガは……」という感じだったのを覚えています(笑)。そういうやりとりを経て、最終的には描いてもらえることになりました。

うすた 最終的に、仕方ないのかなぁと思ったんです。これもマンガ家の宿命なのかな、と。

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クリエイターが得意分野で考えたものが、
プロジェクトにとっての正解

澤田 そもそも、うすたさんがアイドル運営に興味を持った理由はどんなものだったんでしょう?

うすた やっぱり、アイドルファンなら、「自分の理想のアイドルを世に出したい」と思うじゃないですか。もちろん、既に世の中にいるアイドルの中から、自分の好みに合う人たちを探すのも楽しいですけど、やっぱり「自分だったらもっとこうしたい」と思うことはありますし。

それに、僕はもともと観るのも好きだけれど、やる方がより好きなタイプの人間なので、好きなことはやりたくなってしまうんです。アイドル好きなら、そういう気持ちってみんな多少はありますよね。

澤田 一方で、ケンヤさんやポテトさんのアイドルとの関わりと言うと?

ハンサムケンヤ 僕はアイドル文化にはこれまでほぼ触れたことがなくて、今回のプロジェクトは、まさに「勢い」でこの形になりました。僕はアーティストとしてうすたさんの作品に影響を受けて「一緒に何かしてみたい」と思っていたので、それが今回「アイドルだった」という感覚でした。僕の楽曲スタイルを選んでくれたことも嬉しかったので、「じゃあやりましょう!」と、本当に勢いのまま進んできたような感覚ですね。

澤田 そうして3人が集まることになったんですね。ちなみに、ポテトさんは立ち上げの際、プロジェクトの方向性についてどんなことを考えていたんですか?

新井 このプロジェクトは、うすた京介さんというマンガ家と、ハンサムケンヤというミュージシャン、その2人の掛け算によって生まれるものを大切にしたいと思っていました。ハンサムケンヤがつくる曲は「こういうテンポとテーマで、こんな曲を書いてくれ」と伝えても全然解釈が違うものができたりするし、うすたさんのマンガも「うすたワールド」が確実に存在しているので、僕としては、自分で方向性を決めるようなことはしないで、むしろその2つを掛け合わせて出来たものがすべてだというスタンスでいようと思いました。

なので、僕が「こういうストーリーや衣装で、こうしよう」と考えるのではなくて、2人をはじめ、関わるクリエイターそれぞれの得意分野で考えてくれたものが、このプロジェクトにとっての正解だと思っているんです。素晴らしいアーティストが集まっているので、僕が知名度のあるプロデューサーではないからこそ、自分に合った方法でいい仕事をしたいと思っています。

ハンサムケンヤ プロジェクト自体もすごく温かい雰囲気で、「これが正解だ」ということを決めきらないまま進んでいる感覚です。同時に、指揮自体はポテトが執ってくれているので、「僕らが何をしても、彼が上手くまとめてくれるだろう」という謎の安心感も生まれています。僕らに好き勝手やらせてくれる環境を、彼が整えてくれているという感じです。

澤田 実際、LINEなどのプロジェクトの普段のやりとりを見ていても、すごくほっこりした雰囲気ですよね。また、このプロジェクトの場合は、3次元のアイドルとマンガが組み合わさるという方向性もとてもユニークです。

うすた 「\勢い/アイドルプロジェクト」では、僕が描くマンガと、実際のアイドル活動が並行して進んでいきます。僕はマンガや世界観に関わり、他のことは、新井さんをはじめそれぞれの得意な領域を分担しあっている、という形です。

でも、じゃあ自分の役割が何かというとはっきりと決まっているわけではなく、正直よく分からないんですよ(笑)。あまりきっちりと決まっていなかったりするので。とにかく、それぞれのジャンルのすごい人たちが集まっているところが魅力的なプロジェクトだと思っています。

澤田 「本人たちも役割がよく分かっていない」というのは面白いですよね(笑)。

新井 そもそも、まだアイドルたちが揃っていない状態ですから、まだまだこれから、という部分もありますしね。

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結末を目指すと
自由度が失われてしまう

インタビュアー 現時点で「こういうグループになったらいいな」と思っていることはありますか?

ハンサムケンヤ 僕はもともとアイドルには詳しくないので、その楽しみ方も分からない状態でプロジェクトに参加させてもらったんですけど、その中でも、自分のアーティストとしての欲をしっかりと昇華させられるように力を注いでいきたいと思っています。

そして、かわいいアイドルたちに自分がつくった曲を歌ってほしいな、と。その結果、それが大きな舞台で歌われるようになってくれたら嬉しいですね。

うすた やっぱり、メンバーもそうですし、運営である僕たち制作陣も含めて、「みんなが面白がってやっている」ということが伝わるようなグループになったらいいな、と思います。言葉で伝えなくても、「見ている人がそう感じてくれるグループになればいいな」と。

インタビュアー かかわっているみなさんの遊び心が伝わるようなものにしたい、ということですね。

うすた そうですね。そういうものが伝わると、「面白そうだな」と思ってもらえるはずですし、せっかく色んな人たちが集まってくれるなら、そういうものを目指したいですね。

新井 僕の場合は、このプロジェクト自体がひとつのストーリーになったらいいなと思っていて、ちゃんと完結したい。今から終わりのことを話すのも変ですが、最終的に面白い形で、「本当にいいプロジェクトだね」と言えるようなプロジェクトになったら、それが将来的な成功になるのかなと思います。

僕は個人的に、マンガでも、いつの間にか終わってしまったマンガよりも、ちゃんと終わるマンガが好きで。このプロジェクトの場合、うすたさんのマンガがあることで、「何があっても面白く昇華できそうな感覚」があると思うんです。

色々な物語が考えられますし、「本当に面白かったね」と思ってもらいたい。そもそも、マンガの第0話で、このプロジェクトが生まれたいきさつが描かれている部分も、既にフィクションになっていて。

インタビュアー ポテトさんらしき風貌の、ものすごい人でなしの人物が登場しているプレエピソードですね(笑)。うすたさんは、最終回を既に見越しているんですか?

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うすた 他の作品でもそうなんですけど、だいたい書いている間に、最終回のアイディアを思いつくことが多いですね。個人的には、最初にあまり決めすぎてしまうと、よくないかな、と思うんですよ。

何か結末があって「そこを目指していく」、という形にしてしまうと、自由度が失われてしまうと思うので。今回も、これから進めていく中で結末を考えていくので、結末はいまだ誰も知らない、という状態ですね。

インタビュアー まだオーディション中だとは思いますが、現在までの手応えはいかがですか?

新井 今3人で一次選考をしているところなんですけど(取材当時)、応募者には色々な方がいて、たとえば、うすたさんのマンガが好きだったり、HPのマンガを読んでくれたりして、面白い写真で応募してくれる方もいたりもします。でも、このプロジェクトの本質は「アイドル」なので、もちろん、アイドルらしい、かわいい子も応募してくれています。

インタビュアー 通常のアイドルオーディション以上に、応募する方の幅が広がっていそうですね。

新井 そうですね。中には「アイドルには興味がなかったけれど、このプロジェクトは気になったので応募しました」という子もいたりして。一方で、アイドルになりたくて色々なオーディションを受けているような人もいますし、「一度は夢をあきらめていたんですけど、やっぱり諦められなくて応募しました」という、元アイドルの方からの応募も結構あります。

うすた とにかく、一番は魅力的な、かわいい子が集まってくれたらいいな、ということで。実際にすごくいい子たちが集まってきてくれています。

インタビュアー 選考基準として、何か大切にしているものはあるんでしょうか?

新井 あるにはあるんですけど、決まった「これ!」というものは、ないですよね?

うすた そうですね……。もちろん、ビジュアルと歌唱力、キャラクターのどれかひとつでも抜きんでていたら残したい、と思いますけど、それでなくても、何かひっかかる魅力を持っている子は残しています。面接をして話してみての結果でも、大きく変わるでしょうしね。

ハンサムケンヤ そういう意味では、何か基準を決めているわけではないんですよ。でも、今実際に選考を進める中でも、3人とも「この人がいいね!」という意見が不思議とかぶっていたりもして。すごく面白いです。それ自体を言葉でいい表わすことはできないんですけど……(笑)。

澤田 でも、「一言で表わせない」こと自体が、このプロジェクトの特徴かもしれません。

うすた そうですね。そもそも、僕らの場合、これまでアイドルプロデュースをしてきたわけではないですから、誰も一般的なアイドル採用基準を知らないんです。でも、だからこそ面白いプロジェクトになる可能性があると思っています。

新井 今のところ、5月の中旬に最終面接をしてメンバーを決める予定なので、そのタイミングで、選ばれたメンバーの個性を生かせるように、最終的なグループの方向性を決定しようと思っています。実現するかどうかは分かりませんが、合格したアイドルたちは、可能なら一度共同生活をしてほしいとも思っていますね。

みなさん学校もあったりするので、実現するかどうかは選ばれたメンバー次第ですが。京町家のような場所を借りるアイディアはあります。そこでレッスンや、色々な活動が滞りなくできるようにしたい。メンバーが決まってから、その人たちに合わせて決めようと思います。

澤田 求める理想像があって、それに合う人を選んでいくのではなく、選ばれた人たちの個性を生かせるように方向性を考えていく、ということですね。

新井 そうですね。夏の終わりぐらいには活動をはじめられるように準備する予定です。

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「はんにゅるK-POPアイドル」は、
「京都(=KYOTO)」のK

澤田 曲のストックもできてきているんですか?

ハンサムケンヤ このプロジェクトのために書き下ろした曲がすでに8曲決まっていて、そこに以前つくってリリースされていない曲などもあるので、曲数としては既に結構あるかもしれないです。

あいみょんさんがデビュー前に300曲ぐらい書いて、周りがいいと思ったものを1曲選んでデビューしたそうなんですけど、このプロジェクトでも、まずは振り幅を広めにしてたくさん曲をつくっておいて、その中から選ばれた曲を歌ってもらおうと思っています。

一番大切なのは、「アイドル個人個人を尊重して、その人たちに合った曲にすること」なので、メンバーが決定するまでは詰めすぎないようにしているところです。

澤田 おぼろげながら、グループのコンセプトのようなものもできつつあるんですよね?

うすた まだ最終的にどうなるかは分からないですけど、京都らしい言葉「はんなり」のような「上品な華やかさ」をテーマにしたいとは思っていて。それに、「ゆるい」を掛け合わせた、「はんにゅる」という造語をつくってみたりもしています。それがK-POP(=韓流)っぽいので、「はんにゅるK-POPアイドル」だとどうかなぁ、と考えたりしていて。ちなみに、K-POPのKは、「京都(=KYOTO)」のKなんですよ(笑)。

インタビュアー なるほど!(笑)。

うすた 衣装のイメージも、徐々に湧いてきているところです。もちろん、まだわかりませんが、どうなるにしても「京都」であることは大切にしたいです。

澤田 現実のアイドル活動とマンガという、3次元と2次元の要素が並行していく活動ならではの面白さについても、何か楽しみにしていることはありますか。

新井 これに関しても、まだまだ方向性が決まっているわけではないんですけど、実際のアイドル活動とマンガとが同時に進んでいくので、パラレルワールドのようにそれぞれ違っていてもいいと思っていて。そのうえで、節目で、その2つが交わるような形になればいいな、と思います。

たとえば、現実で初ライブが決まったとか、新メンバーが加わるとか、そういった節目では現実のアイドルたちとマンガの中のアイドルたちが交わるといいな、と。一方で、普段の内容に関しては、それぞれが結構違っていてもいいのかな、と思っているんです。

あくまでひとつの例ですが、たとえば実際は優しい子だけれど、マンガでは違う面が表現されている、ということでもいいかもしれないですし、マンガの方は創作なので、ライブがモンスター討伐に置き換わっていても別にいいと思うんです。そんなふうに、一緒に走っているけれども別物でもある、というのが理想かもしれませんね。やりながら、面白いなと思ったことは柔軟に取り入れていきたいです。

うすた 現実のアイドルのみんなに起こったことを、僕がマンガの世界にネタ的にちりばめることもできますしね。カチッとしたものを期待してもらうというよりも、偶然生まれる面白さも含めて楽しんでいただけるようなプロジェクトになってくれたら嬉しいですね。

インタビュアー アイドルのみなさんも含めて、みんなで遊んでいくようなイメージですかね?

うすた そうですね。

インタビュアー ちなみに、今回鼎談をすすめてくださった澤田さんは、立場としてはプロジェクトの「サポーター」となっていますが、オブザーバー的な形でかかわっているんですか?

澤田 今までのお話を引き継ぐと、僕も自分の役割をよく分かっていないんです……(笑)。

インタビュアー 澤田さんもですか(笑)。

新井 (笑)。澤田さんの場合は、言語化することが苦手な僕らの代わりに、それを言葉にしてくれる方、という感じですね。今日の取材もまさにそうだと思うんですけど。

澤田 とはいえ、このプロジェクトの場合、言語化することで失われてしまうものもあると思うので、ほどよい距離感でかかわっていくつもりです。ちなみに、「プロジェクト名を1秒で決めてください」と言われて、「『\勢い/アイドルプロジェクト』はどうですか?」と提案したのは僕でした(笑)。

僕の場合は、そういうときに言葉にする役目、という感じなのかもしれません。なので、また別の領域でも、僕みたいに部分的にこのプロジェクトに何かかかわるような方が増えていくんじゃないかな、と思っています。

新井 その結果、色々な方が力を貸したがってくれるようなプロジェクトにできたら嬉しいです。振り付けで竹中夏海さんが関わってくれることになったりと、今まさに色々と広がっていて。そうやってかかわる人が増えてくれればくれるほど、「みんなの遊び場」のようなプロジェクトになっていくのかな、と思っています。

澤田 ある意味、まだ完結していないマンガ連載のような雰囲気ですよね。先が分からないことも含めて「エンターテインメント」になっているというか。ちなみに、今回のように「マンガ×音楽×アイドル」という形で異業種コラボをする意義についても、何か感じていることはありますか?

ハンサムケンヤ たとえばアニメと音楽のコラボだと、「アニメの主題歌を担当する」という分かりやすい方法がありますけど、マンガと音楽って、そういう分かりやすい結びつき方がまだ存在しないですよね。なので「大好きな人と、まだ形が分からないコラボレーションを進める」という楽しさを感じているところです。「こうなりたい」じゃなくて「どうなるか楽しみだな」という期待感があるというか。

うすた そのうえで、僕とケンヤくんとがお互いに持っている世界観というのは、それほど遠く離れているわけではないとも感じます。むしろ、どこか共通している部分もあるというか。だからこそ、プロジェクトを通してより一体感が生まれることを楽しみにしていますね。

ハンサムケンヤ 1曲ぐらい、うすたさんにも作詞してほしいですよね(笑)?

新井 ほしいね!

うすた 大事な曲じゃなくて、ファンクラブ限定配信とかなら何とかなるかもしれない……。もし実際にやる場合は、その辺りからはじめさせてください(笑)。

インタビュアー いつかそんな日が来ることを楽しみにしています(笑)。

新井 今日は色々とお話しましたが、僕ら運営側の人間は主役ではなくて、あくまで主役は「アイドル」なので、このプロジェクトにはまだ主役がいません。なので、その主役が決まった段階で、また色々と見えてくることもあるんだと思います。

うすた メンバーが決まったら、僕がメンバーの子たちに嫌われたくないばかりに、マンガのキレがなくなってしまうこともあるかもしれない……。ただただ優しいマンガを描き続けてしまうかもしれない……。

ケンヤ&新井 (笑)。

澤田 とにかく、色んなクリエイター/アイドルの「楽しい」「面白い」が集まるようなプロジェクトになっていくといいですね。

うすた そうですね。「\勢い/アイドルプロジェクト」の場合、僕のマンガだけを楽しみにしてくれる人もいれば、アイドル活動の部分だけを楽しみにしてくれる人も、両方を楽しんでくれる人もいると思います。だからこそ、どの角度からでも楽しんでもらえるようにしたいです。同時に、プロジェクトとして参加型の企画を考えていたりもするので、アイドルをメインに据えつつ、同時にこのプロジェクト全体を面白がってくれたら嬉しいです。

Text by 杉山仁

INFORMATION

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うすた京介×ハンサムケンヤ \勢い/アイドルプロジェクト

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うすた京介

漫画家です。
代表作「セクシーコマンドー外伝 すごいよ!!マサルさん」「ピューと吹く!ジャガー」等、コミック発売中!
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ハンサムケンヤ

京都在住ミュージシャン。甲殻軟体類アレルギー。2012年にビクターエンタテインメントよりメジャーデビュー。MVが国内外の様々な賞を受賞。日常を切り取る歌謡ポップな楽曲で活躍中。
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新井ポテト

株式会社古都レコード代表。京都で同名の音楽レーベルを主催。
その他に飲食店3店舗とTシャツ屋さんを経営。
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澤田智洋

広告とスポーツと福祉が専門。
著書『マイノリティデザイン』
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