INTERVIEW

I’m a HERO Program

photo by 山本春花

     

楽器を持てば、ヒーローになる

世界の貧困地域の子供達を非行や犯罪ではなく、音楽に夢中になり努力することで自信と尊厳を持たせ、生き方をポジティヴに転換する。なんだか硬い話題? もしくは高邁な精神論だと感じる人もいるだろう。しかし実際にこの理念をプロジェクトとして駆動させている事実がある。

極論、サッカー選手になるか、非行に走るか? と言われる中南米の子供達。だが、厳しい現実があるからこそ、子供たちが無償で音楽教育を受けられる公的融資による音楽教育プログラム「エル・システマ」というオーケストラの国民的音楽的教育が長年育まれてきた。

ベネズエラの奇跡:エル・システマ EL SISTEMA 2015

世界中にネットワークのあるヤマハ、その中でも中南米では楽器分野のサポート体制である「AMIGO Project」を立ち上げ、その一環として、壊れにくい新たな管楽器ヴェノーヴァを作り出した。だが、実際に現地でのこの活動は発信源である日本で知る人は少ないだろう。

今回、コロンビアのメデジンを「I’m HERO Program」の舞台に選び、広告業界の第一線で活躍するクリエーターが現地に長期滞在し、撮影、編集した映像「I’m HERO Program」の映像が公開された。

I’m a HERO Program – Trailer

主軸となったクリエーターは山中雄介、北田一真、近藤亮介の3名。

山中雄介

プランニングからエグゼキューションまでの制作物のプランニング・ディレクションを担当

統合的な広告案件を手がけながら、水曜日のカンパネラのMVやオフィシャルサイトなどで知られるクリエイティブディレクター。

デザイナー、プランナーを経験後、2012年にAID-DCCに入社。デジタルを軸足にイベント/映像を含めたプロジェクトのプロデュースからディレクションまでを担当。カンヌライオンズ2015,2016年ゴールド受賞、ADFEST2017,2018年GRANDE、その他受賞歴多数。

北田一真

映像のプランニング・ディレクションを担当

カンヌライオンズゴールド受賞など、数々のTVCMや最近ではKOJOE「Day n Nite」MVなどで知られるフィルムディレクター。

2012年にTOKYOのディレクターとして活動を開始。 不変の感情を映し出す演出とストーリーテリング、映像のダイナミズムが国内外で高く評価されている。 カンヌライオンズ ゴールド受賞、One Show ゴールド受賞、D&AD Film/White Pencil受賞、その他受賞歴多数。

近藤亮介

映像からグラフィック、イベントまでの制作進行を担当

GoogleのWEBムービーなどを手がけるプロダクションマネージャー。

大学卒業後、2014年に太陽企画に入社。映像制作の経験を積み2015年からschoolに配属。 映像をメインにしながらインタラクティブやイベントも絡んだ案件の制作も担当。

彼らにドキュメンタリーフィルムを切り口に、フランクに今回のプロジェクトの「思想」「現実」「クリエイティブ」「未来」を語ってもらった。

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R→L:北田一真、近藤亮介、山中雄介

Section 1:思想

——今回の「I’m a HERO Program」のメインのスタッフとしてみなさんは召喚されたわけですが、クライアントさんからのミッションはどういうものだったんですか?

山中雄介(以下、山中) 去年、僕がヤマハさんとカンヌライオンズ国際クリエイティブ・フェスティバルでお会いして関係性がスタートしています。ただその時はコロンビアでの実施が特に決まっていたわけではなくて。グローバルに向けて何かできないか? みたいなところがざっくりあって、ヤマハのリソースを活用した新しいブランディングって何かできないですか? というお話だったんです。それから去年の10月に何度かご提案とヒアリングを行なっていく中で、どうやら中南米でヤマハさんが「AMIGO Project」というのをやっていると。その「AMIGO Project」っていうのが何かっていうと、ベネズエラから始まったエル・システマっていう青少年オーケストラの音楽教育プログラムがあるんですけど、要は貧困層や恵まれない子供達が非行や犯罪に走らないように音楽の力を使って、エデュケーションしていくっていうプロジェクトなんですね。それをヤマハさんとしては15年以上前からサポートしていて、「AMIGO Project」では中南米に存在する同様の青少年オーケストラをサポートしている事実を知りました。

——具体的にはどんなサポートを?

山中 例えば楽器の修理職人を育成するワークショップをやったり、メンテナンスの方法を教えてあげたり地道な活動をしていたんですけど、だったらヤマハさんで壊れにくくてメンテナンスフリーな楽器を作っちゃえばいいじゃんという話も加わり、今回使ってるヴェノーヴァという楽器が開発されました。もともとヴェノーヴァ自体もずっと研究されていたんですけど、商品化するきっかけは「AMIGO Project」の課題から生まれた楽器なんだという内容がヤマハさんから伺って。そんな素晴らしいことやってんなら、その資産を軸に世の中にPRすると同時に、それをヤマハのブランドに還元する取り組みをしっかりやりましょうという提案をしました。それが「I’m a HERO Program」。格差や貧困、それらから生まれる差別意識や偏見といった「見えない壁」が存在してて、子どもたちの 未来を狭めてしまっている現実があります。こうした「見えない壁」に立ち向かう子どもたちが今回の主役です。貧困地域に住む子どもたちにヴェノーヴァを提供し、約半年間の教育を経て、コロンビアのヒーローであるプロサッカー選手とともに憧れの舞台であるピッチに上がり国歌を演奏するプログラムです。

——なるほど。それが企業として今アピールすべき点ということと、映像としても成立しそうだと?

山中 そうですね。企画自体がすごくピュアでシンプルな企画なので、この内容をちゃんと嘘なく届けるためのムービーが必要だということは当初から共有してましたね。で、じゃあ国を決めましょうとなって、中南米の方でこの「AMIGO Project」っていうのをやっていました、と。で、少しでも現地の人の協力体制がある国じゃないとできない。打ち上げ花火ではなく継続的に「I’m a HERO Program」を行っていこうと想定したときに「AMIGO Project」を通して現地との関係値が強いのがコロンビアのメデジンって街でした。その街には青少年オーケストラを行政がやってるものもあれば民間企業がやってるものもあって、ヤマハの販売代理店も青少年オーケストラのチームを持っていたりしたので、じゃこの企画をちゃんと向こうに持って行っても僕らがいなくなってからもワークするような環境はできているよね、だからコロンビアだね、メデジンだねっていうことになりました。

Section 2:現実

——メデジンはどんな街なんですか?

山中 盆地になっていて、いわゆる底の平坦なところがシティで、いわゆるスラムと呼ばれる貧困層の人々が山の上に住んでる感じになっていて。課題として言っていたのは、貧困だったり格差からくる差別意識とか偏見とか、シティから見たスラムとかそういう部分に実は見えない心の壁みたいなものがあって。この見えない壁っていうのを取っ払っていきたいっていうのが、根底にはあって。そういう目線で色々言葉選びやクリエイティブを作っています。

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——“見えない壁”というとメデジンと外の世界みたいに思いますけど、その中に住んでる人同士にすらあると。

山中 両方ありますね。

北田一真(以下、北田) 僕らのところに話が来た時はもうコロンビアに行くって話が決まった段階で。でも僕らコロンビアのことを何も知らないんです。そこで僕らが行って、何を撮れるんだろう?って思った時に、「知らない」ってこと自体が壁だと思ったんですね。コロンビアに撮影に行くっていうと「危険なんじゃないの?」とか(笑)、言われるんですけど、実際に行くと、以前は麻薬戦争もあった場所ですけど、今は住んでいる人の力も政府の人の力もあって、どんどんどんどん良くなって、変化している最中の場所になっていて、行かなきゃわかんないことだらけでした。

——行って初めて具体的なクリエイティブが起動すると?

北田 ある程度こういう風なものは撮りたいな、こういうテーマでっていうのはあったんですけど、やっぱり行って知って教えてもらうっていう、知らないから撮れるものを撮ろうみたいな。メデジンの拡声器的な役割の映像になったらいいな、それが国の中での壁を越えることでもあるし、貧困層の街に住んでる人たちがどういう暮らしをしているか、どういう人たちがいるのか、それをシティの人たちが知るだけでも壁を取っ払うことになるし。だから僕らはできるだけありのままを届けたい、でもそれを届けるにはどれだけ中に入っていけるかが重要だったかなと思います。

——映像全体のニュアンスに悲惨さみたいなものはないじゃないですか。そういう全体のトーンはいつ頃決められました?

山中 それは現地に行く前に不必要に“闇” “暗い” “ダーク”、そういう描き方はしない、さっき北田監督が言ってた通りありのままを撮りたいというのがあったんですね。それって企画をした段階ではちらっとコロンビアの子供達は非行に走るかサッカー選手を目指すかどっちかしかないみたいな極論を現地に行った人たちから聞いていたんですけど、実際さすがにそこまでではないだろうと、でもそういう側面もあるのかなと思いながら行って。日本って先進国って言われてますけど、でも実はもう遅れてるじゃないですか。そんな国にいる僕らがちょっと上から目線で地球の反対側のコロンビアに行ってどや!って撮って、不必要にいらない演出をして暗く撮ってもそれって嘘だし。

北田 環境としては悪い部分もあるんですけど、そこで生活してる人の心の豊かさみたいなのは下手したら日本より豊かで強い。

——確かに。スタジアムでの試合の際に国歌を演奏することをクラスメートに伝えた時のみんなの反応が人間性が素晴らしくて驚きました(笑)。

北田 そうそう(笑)。フアンって男の子にヒーロー像みたいなものを聞いた時も、“自分がいくら辛い思いをしたり金銭的に貧困であったりしても、もっとひどい状況の人は絶対いるからそういう人たちにどれだけ自分の持ってるものをシェアできるか、そういうことをできる人がヒーローだ”と言ってて。13歳の時、俺、そんなこと言えなかったなみたいな。それってやっぱり現実として、変えたい状況があって、変えようとして来た人たちがいるから変わってきたんだけど、その精神性っていうのは日本よりも圧倒的に進んでいて、すごく感銘を受けるというか。

——豊かですよね。

北田 音楽を子供達に教えてる人たちも“知識をシェアしてる”っていう考え方ですよね。この映像でもその部分を伝えられたらいいなと思ってはいるんですけど。

近藤亮介(以下、近藤) しかも生活の大変さで言うと僕はロケハンに一回行った時に山間に住んでる子供に色々話も聞いたりしてて、シティに降りる、街に行くのが夢だと。で、普通にバスとか使って行くとしたら1時間ぐらいかかる、しかも金銭的にバスに乗ることも難しい人もいるので、その子たちが“街に行くのが夢だ”って話してた時に生活の大変さを実感した部分はありましたね。

——みんな伸びやかで感性や人間性が素晴らしいなと感じたんですけど、率直な感想として居心地はいかがでしたか?

北田 めちゃくちゃ良かったです、もう住みたいぐらい(笑)。

Section 3:クリエイティブ

——そんなに居心地いいんですね(笑)。現地の家族に入り込まないと撮れないような場面が多いのも頷けます。家族や子供たちはどういう観点で選ばれたんですか?

北田 現地のプロダクションにお願いして、彼らが門を叩いて色々お話しして、特に興味がある子だったり。そもそも音楽のレッスンに普通に行ける子にこのプロジェクトに参加してもらってもアレなんで、やりたいけど行けないんだって子、その子たちがどういう風に音楽の力で変わって行くんだろう?っていうーー未知ではありますけど、そういう子供達を4人、ヒーローにフューチャーさせてもらった感じです。

——ラップをしていたフアンはすごい才能ありますね。

北田 フアンはリリックを書き溜めてるけど、それをちゃんと曲にしたことはないって話をしてて。それで書いた内容とか話を聞くとすごいいいというか、それもやっぱ日本人のそれぐらいの歳の子が書いたとしたらこんなこと語らないだろうなってこともあったりして、じゃ今回楽器も手にするし、音楽も習うし一回、一緒に曲にしてみない?みたいなことからあの映像にあるように曲作りが始まったり。

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——そういう経緯だったんですね。他にも“ヒーロー”で印象的だったのは?

北田 撮影初期にマークって火事に遭った子は、どんな風だったか説明してくれたんですけど、僕らはスペイン語がわからなかったんで、“じゃ言葉なしで教えるよ”って、身振り手振りでやってくれたんですよ。で、その感じが指揮者みたいな感じに見えてたんですね。全体のストーリーがどうなるかわかんないけど、指揮者のような感じで彼の話で始められたらなと。それで場所を決めて、最初のシーンを撮ったんです。ある意味彼らの才能を目の当たりにして、僕が思ってるーーそれもみんなから影響受けてるけど、シェアできる力を映像にすることができたので、彼らとの“セッション”を楽しんで色々出来上がって行った感じですね。

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——ヴェノーヴァの練習だけでなく、フアンのラップなど現地のユースカルチャーが観れたのも興味深いです。

北田 ほぼ予想だにしないことばかりでした(笑)。僕ら「革命軍」と呼んでるんですけど、8人組のヒップホップをベースにしたアーティストグループがいて。僕は子供達にプロのライブだったり演奏だったりっていうものを体感してもらいたいなと思ってたんです。心から憧れるとかすげえ!ってなることって重要だったりするじゃないですか。そういう体験はどこかでできないかな?と思ってた時に、コロンビア全体でも有名な方達がいて、会わせてもらえるっていうんで行ったら、彼ら「革命軍」が、学校で20年間無償で毎日ああやって教えてるんですよ、すごくないですか?

山中 今回の「I’m a HERO Program」を通して音楽の力で変化、成長していく中で、多くの音楽にふれてほしい、音楽を媒介して社会にふれてほしいという想いで、ユースカルチャーにふれてもらっています。

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——ビジネスじゃないんですよね。

北田 ビジネスじゃないんです。アートをやってて感じるのは家族みたいな関係で、だから子供達には自分たちが持てる知識をシェアしたいって言うんですね。で、子供達はやりたいと思ったことは勝手に学ぶし、どんどんどんどん成長して行って、アーティストは子供達に教える立場だけど、上とか下とかそんなことはなくて、“アーティストっていうのは誰かに自分を超えてもらいたいと思うべきだ”って言ってて、もう、「カッケー!」って。尊敬するしかないみたいな(笑)。

——作中にミュージック・ビデオ的な映像も出て来てさすがだなと(笑)。

北田 あの曲はコミュニティに住んでるフアンが「高台に住んでる僕から下の街のみんなに捧げる」って曲なんで、ある意味、文化祭的なノリでみんなで作ったミュージックビデオだし、そこには師匠的な地元のスティーヴっていうコミュニティのリーダーで、ラッパーがいて。で、彼が教えながらフアンは教わりながら二人で曲にして行って。

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——日本だとなかなかありえないけど、コミュニティのアンセムみたいに感じで。

北田 ああ、そう! そうですね。

山中 エキストラの子達も団地で声かけて「ちょっと来て来て!」って(笑)。
まぁ僕らは「なんだあいつら、アジア人」って見られてるし、でも声かけたら全然仲良くなれるし。で、協力してもらえる?って言って音楽を聴かせたら協力してもらえて。

——日本の住宅街は外に人いないですもんね。

北田 いないですね。ま、ちょっとどのぐらい使えるかわからないですけど、ドローンでマンションの窓を上がってって、下がってを繰り返して、そこでフアンとスティーヴがラップしてる時に、外で過ごしてる女性達のシーンがあるんですけど、それも「こういうの撮りたい」って頼んだら、その場で人んちに聞きに行ってくれて、「ああ、いいよいいよ〜」みたいな感じで(笑)。なんて楽しい撮影なんだっていう。

Section 4:未来

——すごく楽しそうです(笑)。膨大な素材が撮れたと思うんですが、最終的に見た後にどういう感覚が残ればいいなと思われましたか?

山中 企画としては「I’m a HERO Program」は、“楽器を持てばヒーローになれる”っていうキャッチコピーがあるんですけど、要は音楽の力を使って新しいヒーロー像を育てようというのがあって、裏を返せばそれは子供達を音楽の力を使って成長してもらおう、その成長と変化が描けていると感じてもらえるといいんではないかなというのはあります。というのとヤマハのコーポレートスローガンの“感動を・ともに・創る”って言葉がありまして、それが企画している初期段階から最高だなと思っていて。音楽の力を使って社会を前進させようみたいな、要は音楽ができる環境を作って前進させるっていう解釈を僕はしたんです。楽器メーカーだけど、楽器を作って終わりじゃなくて、楽器を渡してそこで生まれるグルーヴみたいなものから感動が生まれて、それを一緒に作らせてもらうのがヤマハです、みたいな。だからこそ今回の映像を通して僕自身が感じて欲しいのは音楽の力、トリガー自体はもちろんヤマハが提供した「I’m a HERO Program」だったり、ヴェノーヴァだったりっていうのがありますけど、そこから音楽にふれていろんな感動が生まれているんだっていうこと。

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北田 僕はやっぱ“愛”かなと思いますね。現地はほんとに愛に溢れた場所だったし、愛に溢れた時間だったし、さっきの精神性の話で言っても愛だと思うし、音楽を好きになる愛だったり、街のことを思う市長の愛もあったし、家族の愛もあったし、だから住みたい!と思ったぐらい素敵な場所だったし、素敵な人たちだったなっていうことですね。

——そこに暮らしてる人がどういう人なのかが伝わることが一番重要なのかもしれませんね。

山中 そうですね。拡声器って言ってたのは、企画がシンプルでピュアなのでそのピュアなものをそのまま僕らもピュアな気持ちで向こうの人達とコミュニケーションして、向こうも嘘なく返してくれるので、余計な脚色をせずに現地の様子はこれだというのを拡声器として撮る、作る、届ける。変な風に捉えて欲しくないので注意して作ってるという感じですね。

近藤 自分たちが感じたもの、感動したものを見た人が同じように感じてくれるか、感動してくれるか?っていうところを目指して、そのためには今ある素材をどういう風に編集していくかとか、音楽とか色々な要素があると思うんですけど、それを組み合わせて自分たちが感じたように映像を見た人も感じてくれるようなものが目指してる部分ですね。

——現在、鋭意編集中かと思うんですが、なかなかの長尺なので実際にどういう場所でとかメディアで公開されていくのか現段階でどこまで決まっていますか?

山中 現段階では、一回YouTubeに上げます。僕らの気持ちとしては少し残念な気持ちはあるんです(苦笑)。YouTubeってそういうメディアじゃないので。気軽にインスタントにきゃっきゃできるメディアだと思うので。YouTubeがどうこう言ってるわけじゃないんです。今、今後の話をヤマハさんと協議してるところで、この作品をどういう形でお披露目をすれば世の中の人が振り向いてくれるんだろう? とか、ウォッチしてくれるんだろうか? っていうのは最適な場所を探している段階ですね。幸運なことに多くのメディアさんから話を聞かせて! って言われているのでヤマハさんにとってもメデジンのみんなにとっても最適な場所は引き続き探しています。

——願望で構わないんですけど今後このプログラムがどうなっていけばいいと思いますか?

山中 まずは映像作品を見てもらってどう感じるか色々人それぞれだと思うんですけど、その上で少しでもこの取り組みが広がっていくような、また「ええやん」つって隣の国が勝手に始めたりとかしたらいいですね(笑)。

北田 一過性のキャンペーンみたいなことにしたいわけじゃないので、この活動を加速させるものとして、このムービーがあって、ちゃんとそれが継続されていくっていうことにならないとダメかなと思ってますね。

——みなさんのこれまでのお仕事との違いや今回の制作での発見というとどんな部分でしょう?

近藤 それこそ今まで仕事でやってきた細かさとみたいなところも活かすんですけど、逆に今回の仕事をやったからこそ決めすぎないというか、いつもだったら全部のことを決めて行かなきゃいけないんですけど、ある意味、今回は行ってみないとわかんないってところでの、どれだけ余白を持たせられるか、どれだけ起きたことに対するアクションを起こせるかみたいなことが、すごく勉強になったなと思いますね。

——加えて、どういうことが不幸なのか幸福なのか考え直すきっかけになりそうですね。

山中 そうですね、幸せの定義って何だろうな?って撮影が終わって考えました。すごく感じて自分で見つめ直す期間になりましたね。

北田 日本の幸せの価値観みたいなものも、ちょっとずれてるなと僕は感じたし、そういう風に感じる方もいるかもしれないですね。

INFORMATION

text by 石角友香

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