INFLUENCE, INFINITY, INTERNATIONAL FUCKIN’ AWSOME.
2024年8月1日、音楽シーンに突如現れた謎の音楽プロジェクト“INF(アイエヌエフ)”。その後、8月27日に発表した1stデジタルシングル「DAWN」を皮切りに、5か月連続でシングルをリリース(「GETDOWN LIL’DEVIL」「Hot!!!!!!!!」「CATCH THE MONEY」「HELL BABY」)。その間も素性を一切明かすことはなく、12月13日に東京・TOKIOTOKYOで行われた<1st ONE MAN LIVE>でも、アイコンのヘルメットを着用。純粋にINFの“音楽”のみが、リスナーの耳に届き続けた。
そして、INFの約半年にわたる音楽的実験の産物として、1stアルバム『DAHONDA』が2025年3月26日にリリース。F(エフ)・IVE(イブ)・NAIL(ネイル)から成るINFが提唱する、“エレクトロ・アシッド・ファンク”が凝縮された全10曲が収録されている。今回は改めてINFの全貌と、アルバム『DAHONDA』の全曲解説を、Q&AでINFのコンダクター・Fに訊いた。
INTERVIEW
F(INF)

GET MONEYではなくCATCH MONEY
INFは“潜る”作業ではない
──Fの素性・目的・趣向について。
まず前提として、私は宇宙人でも未来人でもなく、音楽がない廃退した多元宇宙(マルチバース)からやってきた地球人です。私はダンス・ミュージックという音楽に着目し、この次元の未来のために多幸感あふれるダンス・ミュージックを残すべく、INFという音楽プロジェクトを2024年に立ち上げ、東京に拠点を置きました。私はこう見えてティーンエイジャーであり、スケボーが趣味で、ブラック・ミュージックを敬愛しています。アイコンとして被っているヘルメットは、お互いの顔を知らない世界線が広がっている、元々いた次元の名残と言えるでしょう。
──INFのメンバー、ジャンル、演奏形態について。
INFはバンドではなく、私がコンダクターを務める音楽プロジェクトであり、言葉を変えると“運動”なのかもしれません。私とIVEとNAIL。現在の3人のメンバーがいる状態は、第一形態と言えるでしょう。私はブラック・ミュージック、IVEはクラシック・ミュージック、NAILはダンス・ミュージックに源流があり、その三角形の中心に存在する音楽ジャンルがエレクトロ・アシッド・ファンク。そしてINFはPCを使用しない多種多様なアナログ・マシンを用いた、複雑かつ独自の演奏形態を採用しており、ステージ・セッティングを“コックピット”と呼んでいます。
──リリース作品と、1st ONE MAN LIVEについて。
ここまでのリリース(「DAWN」「GETDOWN LIL’DEVIL」「Hot!!!!!!!!」「CATCH THE MONEY」「HELL BABY」)に関しては、INFとして大切にしている、ダンス・ミュージックによってもたらされる“多幸感”というものを、ひとつずつ研究・実験してきた道筋と言えるでしょう。
1st ONE MAN LIVE(12月13日 @東京・TOKIOTOKYO)は、みなさん面食らった部分もあると思いますが、私たちとしてはとても可能性を感じるライブとなりました。何より自分たちが演奏していて面白い。あの場にいた方たちには、その場の音を体感し、純粋に受け取ってもらえたらと。

──アルバム『DAHONDA』の全曲解説
1. ONE
これは私が作った曲で、INF初期のファーストデモです。それをアルバムのイントロとして採用しました。エレクトリックピアノのワンループのリフが巧みに変化しつつ、生音のようなタフなキックとシンセのうねりが、より没入感を増幅するハード目な1曲となっています。
2. FOREVER TEENAGER
これも私の曲で、今回のアルバムのリードトラックです。今まで使っていなかったボコーダーとオートチューンを多用したボーカルと、キャッチーな旋律。生のギターを採用してグルーブを作り、大人になりたくない永遠のTEENAGERを歌うエレクトロのクラシックナンバーです。
FOREVER|TEENAGER / INF (Official Music Video)
3. GROOVE BOY
NAILの曲で、アシッドのベースラインはBEHRINGERのTD-3を使い、トークボックス(トーキング・モジュレーター)を初めて採用しました。あとはロシアの謎のリズムマシンを使うなど、デジタルな印象がありつつ、アナログ機材を多用した曲になっています。「GROOVE BOY」は、クラブなどで端の方にいる子に「それでもいいんじゃない?」というINFのメッセージです。
4. FLYDAY NIGHT
シンセギターで幕を開けるラブソングであり、IVEのコーラスと、ボコーダーのルーティンが続いていくディスコチューンです。私が“ジャリキラ感”と呼んでいる、ジャリジャリしたディストーションだがキラびやかな音をミックスで調整しました。実は私が好きなある曲の構成と同じ進行で、とあるレジェンドユニットへの敬意とオマージュをINF流に表現した曲です。
5. AH!
ミニマルで、エレクトロで、ファンクネスを意識したインストゥルメンタル。ダビーなシンセベースと、Roland の(TR-)909のドラマシーンを駆使したナンバーです。ファンクネスであるが土臭くはなく、コズミックでギャラクティックなヴィンテージシンセを多用しました。私はスケボーが趣味なので、曲の中に、あるスケボーのビデオから抜いた音をハメています。
6. CATCH THE MONEY
NAILによる、2024年にシングルでリリースした曲です。テックハウスとガラージ、その合わせ技のようなトラックに、エフェクティブなラップが走るクラブチューン。今いる、INFの基地であり制作ラボであるCATCH MONEY STUDIOを示唆しつつ、レペゼンしました。
7. ASHWILDERS
IVEの畳み掛けるラップがスピットするファンキーなナンバーです。現在の音楽シーンに対する問いと、ミュージシャンたちを鼓舞するINF的アプローチ。INFの架空のラジオで、パーソナリティーのIVEが語っているようなイメージで、とてもパンクな曲です。タイトルの「ASHWILDERS」は、“カッコいい連中”“カッコよくなろうぜ”という意味を込めた造語です。
8. THE CHOCOLATE MAN
IVEの曲で、実はこの曲に使われている声は、私ではなくIVEです。ピッチベンドしたコーラスワークが光る、アルバムの中でもロックテイストの曲。トラックスはミニマムに作っていますが、IVEはもともとピアニストということもあり、とても精巧な作りになっています。
9. TALKIN WALKIN SMOKIN
私の作曲で、架空のクライム系ブラックミュージックのサウンドトラック挿入曲がテーマ。シネマティックな作り方で、初期のレコードからサンプリングしました。ブラックミュージックへの愛とユーモア、そしてカオス。追いやられている紙タバコ吸いの喫煙者にこの曲を贈ります。
10. CHECK
2025年を意識したドラムサウンドです。シンセとボコーダーボイスのラップ。歌詞にはアルバムの終わりとINFの始まり、レペゼンなどの要素を入れつつ、私が好きなデトロイトテクノの不穏な雰囲気から、最後は多幸感あふれるコズミックなアウトロで終焉を迎えます。
──INFおよびFの今後の動きについて
GET MONEYではなくCATCH MONEY。私にとってINFは、“潜る”作業ではありません。
Interview&Text:ラスカル(NaNo.works)