『オールド・ボーイ』(03年)で<カンヌ国際映画祭>の審査員特別グランプリを受賞、『渇き』(09年)では同映画祭審査員賞を受賞したパク・チャヌク監督。あらゆるタブーとバイオレンスを描きながら、抒情的な美しさをもたらす作品を作り続け、全世界で高い評価を受けている韓国映画界の奇才が、遂にハリウッドに進出となった。作品は『イノセント・ガーデン』。本作の脚本はドラマ『プリズン・ブレイク』主演のウェントワース・ミラーが、自身の名を隠して執筆し、8年の歳月をかけて完成させたものである。パク・チャヌク監督は本作の脚本を一読するなり心を奪われ、ハリウッド進出を決心したそうだ。

物語の主人公は、外部と遮断された大きな屋敷で暮らし、繊細で研ぎ澄まされた感覚を持つ一人の少女、インディア・ストーカー。誕生日に唯一の理解者だった大好きな父を交通事故で亡くしてしまうところから始まる。父の葬儀に母親と参列したが、長年行方不明になっていた叔父のチャーリーが突然姿を現し、一緒に暮らすことになるが、彼が来てからインディアの周りで次々と奇妙な事件が起こり始める…。

【インタビュー】パク・チャヌク監督とクリント・マンセルが語る、映画『イノセント・ガーデン』音楽について。 feature130530_innocent-garden_2

キャストには豪華実力派キャストが集結。『アリス・イン・ワンダーランド』(10年)のミア・ワシコウスカが主人公インディアを演じ、『シングルマン』(09年)のマシュー・グードが謎めいた叔父チャ―リー、そして<アカデミー賞>女優のニコール・キッドマンが麗しい未亡人を演じる。また、美術と音楽には『ブラック・スワン』(10年)のスタッフが名を連ね、美しくも危険なミステリーを醸し出す。幾重にも仕掛けられた謎が、一つずつ明かされるたびに駆け抜ける衝撃――やがて導かれる戦慄と陶酔の結末で魂が惑わされる極上のエンターテインメントがここに誕生。一瞬たりとも見逃してはならない。

Interview:Park Chan-wook、Clinton Darryl Mansell

本作の音楽を手掛けたのは作曲家のクリント・マンセル。マンセルは今までに『レクイエム・フォー・ドリーム』(00年)等ダーレン・アロノフスキー監督の音楽を手掛けている他、クセのある作品からロマンチックなラブストーリーまで、様々な作品の音楽を作曲し続けてきたハリウッドの重要人物だ。そんなマンセルが今回挑んだ『イノセント・ガーデン』では、主人公インディアと叔父のチャーリーがピアノを連弾するシーンなど、スリリングだが美しい音楽の旋律も印象深い作品となっている。そんなクリント・マンセルがパク・チャヌク監督と共に、本作の音楽について語ったインタビューがアメリカにて行われた。その一部をQeticでは特別に入手したので、是非ご一読いただきたい。

【インタビュー】パク・チャヌク監督とクリント・マンセルが語る、映画『イノセント・ガーデン』音楽について。 feature130530_innocent-garden_4-1

【インタビュー】パク・チャヌク監督とクリント・マンセルが語る、映画『イノセント・ガーデン』音楽について。 feature130530_innocent-garden_5-1

――本作の音楽を担当することになった経緯を教えてください。

クリント・マンセル 私は他の誰とも異なる感性を持った監督と組んでみたいと前から思っていたんだ。だから、パク・チャヌク監督が商業的に成功していたことについては興味はなかったんだけど、彼の芸術的な面やプロジェクトそのものに大きな関心があってね。もしかすると変わった観点で描かれた作品があるかもしれない、と、監督が以前に作った作品を探して観たよ。それから、彼と一緒にやってみたいと思ったんだ。

――映像に入った音楽を聴いた感想は?

パク・チャヌク 『イノセント・ガーデン』の音楽には古典主義の雰囲気が感じられて、クラシック音楽の優雅さや美しさも兼ね備えている。クリントはそんな本作の音楽に、現代のポピュラー音楽が持っているようなパワーやエネルギーを組み合わせているよね。

クリント・マンセル そうですね。結局は、監督が求めているものがどんなものか、それを見極めることが肝心だと思ったんだ。だから、どんなサウンドがいいのか、展開はどうするか、メロディや楽器には何がふさわしいか――本作にぴったりハマるもの、つまり、本作と一体化した感じがするものを求めたよ。中には、まるでこの映画のために作られたように思える、ごくごくシンプルな音からはじまる場合もあった。その時は、そのシンプルな音に自分の感覚を合わせることで、作品に必要なのがどんなものなのか段々と分かるようになるんだ。そして、それを作品に詰め込んでみたんだよ。

――監督が持っていた音楽に対するビジョンとは?

パク・チャヌク サウンドの全体像と、映像を一つのものとして考えたんだ。その時にはじめて、それら2つの融合によって生まれる効果が発揮され、相乗効果を生かすことができるんだよ。

――今回のプロジェクトに参加してみての感想を教えてください。

クリント・マンセル 監督と言葉によるコミュニケーションができないとしたら、悪夢になるんじゃないかと思っていたよ。でも、監督は最高の形で手を加えるし、とんでもない高いレベルのものに変化させることができる。ほんのちょっとキューを変えるとか、一つの要素を除くとか、逆に一つの要素を強めるといった変更だけでも、すばらしい効果をあげていたんだ。自分の作品をよく理解し、欲しいものが何かを分かっている監督と組んだおかげで、本作は私が手がけた中でも最高にスムーズに進んだプロジェクトの一つになったよ。

text&edit by Yuka Yamane

『イノセント・ガーデン』

2013.05.31(金)TOHOシネマズ シャンテ、シネマカリテ他 全国ロードショー

2012年/アメリカ映画/99分/PG12
配給:20世紀フォックス映画
監督:パク・チャヌク(『JSA』、『オールド・ボーイ』、『親切なクムジャさん』)
脚本:ウェントワース・ミラー(『プリズン・ブレイク』シリーズ<出演>)
製作:リドリー・スコット/トニー・スコット/マイケル・コスティガン
出演:ミア・ワシコウスカ(『アリス・イン・ワンダーランド』、『ジェーン・エア』、『永遠の僕たち』)、ニコール・キッドマン(『めぐりあう時間たち』、『ラビット・ホール』)、マシュー・グード(『ウォッチメン』、『シングルマン』)
©2012 Twentieth Century Fox. All Rights Reserved.