Bimiが最新作となるEP『新作EP『【人】/INORI』をリリースした。作詞/作曲を自ら行い、俳優としての顔も併せ持つ多才なBimiが新たに掲げるのは「オリエンタル・ポップス」というテーマだ。

現代社会の閉塞感をスピットするアーティスト/ラッパーとしてバラエティ豊かなトラックを乗りこなしてきたBimi。今回はアジアン・サウンドへの興味を前面に押し出したサウンドを展開し、これまでにも追求してきた和ネタをDJ dipと共に掘り下げる。同時に、本作ではBimiによる「祈り」という行為への洞察も込められている。「自問自答でもあり他問他答でもある」と語るタイトルトラックをはじめ、射程の広いポップスの意匠を借りて哲学を放出するBimiの脳内に迫った。

INTERVIEW:Bimi

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「日本人として鳴らすポップス」を掲げた新章

──前作『R』が集大成のような内容であったのに対し、『【人】/INORI』は明確なコンセプトを立てた意欲作であるように感じました。

『R』ではこれまでの人間関係やルーツを清算できたので、それを踏まえた上でアップデートされた自分のアイデンティティを出す方法について考えたんです。将来的には世界のハコも周りたいですし、新しい作品に自分が生まれ育った日本のサウンドを取り入れるっていうのは一種の義務というか。その中で現代社会を過ごして感じた価値観を自分なりに出すことにしました。

──『【人】/INORI』では「オリエンタル・ポップス」をテーマに掲げていますね。以前から抱いていた日本のカルチャーへの興味が前面に出たような。

はい。インディーズ時代から考えていましたし、メジャーになってからも「軽トラで轢く」や「博徒街道」って曲で和を取り入れていました。USやUSのサウンドを参考にしたものが飽和している状態で、「これが日本人です」っていうので海外へ出て台頭できる音楽を考えていたんです。それも昔の音楽をなぞるんじゃなくて、今の感覚でそれをアップデートするための曲。それでヨナ抜き(注:日本の歌謡曲や演歌に特有の音階)とかを試していました。

僕は演歌も聴けばロックも聴くし、ヒップホップも聴くんです。まぁ全部好きなんですけど、前回までは「こういうのも出来ますよ」みたいなフレックスとして色んなジャンルをまとめていたんです。その先で見えた景色として、「オリエンタル・ポップス」を軸に据えるのが改めて重要だなって実感したんです。他のアーティストさんは一つのことを突き詰めた後に色んなジャンルに手を出すんですけど、僕は色んなジャンルに手を出した後に一つへ絞るっていう(笑)。

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──Bimiさん自身が最初に演歌や歌謡曲の魅力に気づいたのはいつですか?

祖父母が氷川きよしさんを聴いていたんです。当時は演歌界の新星で、よく一緒に聴いていました。あと八代亜紀さんとか石川さゆりさんも聴いていましたね。演歌って耳に残るじゃないですか? それって僕らのライフスタイルに寄り添っていることを示していて、そういう要素をうまく取り入れるのは重要だなって常々思っていたんです。

──どのような着想から「オリエンタル・ポップス」というフレーズを作ったのですか?

自分の感覚の通りに作ったんです。「ポップス」というのは何も考えなくても聴ける音楽ですし、深読みしようと思えばいくらでも考察できるものなんです。さっきの話にも通じていますけど、生活に寄り添うことを考えたんです。今回も歌詞自体は難しく書いちゃってますけど、サウンドは軽めにして聴きやすくしているんです。そうやって生活に溶け込むというか。それで日本のイメージに沿ったので「オリエンタル」という。

──確かに。溶け込んだ後によく考えるとゾっとするというか、演歌もよく聴けば逆恨みばかりですもんね(笑)。

そうなんです、恨み節か情景に思いを馳せるかっていう。「軽トラで轢く」も男女の愛憎劇なので演歌とテーマは近いんですよ、僕はそういう風に曲を作っていくことが多いです。

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“俺が勝つ”じゃなく、“みんなで上がる”

──『【人】/INORI』ではどのように恨み節や愛憎入り混じるテーマを取り入れたのでしょうか?

今回は恨み節という「祈り」というテーマが強調されているかもしれません。例えば、僕はギャンブルをするんですけど、「これ頼むから当たって!」って軽薄に祈ったりするんです(笑)。かと思えば、誰かに生きながらえてほしいとか、あの人が無事に帰ってきてほしいとか、そういう重い祈りもある。今回の曲は「祈り」のバリエーションについて表現しているんです。

ただ、「オリエンタル・ポップス」の要素を意識したものとして最初の「ガラポン」は作りました。今のリスナーって最初の15秒しか聴いてくれないと思っていて、そこに強い言葉をぶつけたかったんです。

──「ガラポン」の歌詞は親ガチャを絡めた内容ですよね。

現代の歪みってルッキズムとその僻みだと思うんですよ。「自分はこうなのにあの子は違う」っていう悩みが蔓延しているというか。そこで僕は「自分の価値を高めればみんな一等級だよ」っていう戦いの歌を作ったんです。この世に産み落とされた時点ですごい確率なんだから、もうやるしかなくない? そんな歌です。

──以前と比べてフレックスする対象が変わったようにも感じました。自分ごとから、自分の周囲も丸ごと誇るための言葉というか。

そうですね。今までの曲はもっと攻撃力が高かったんです。 いい意味で若くてイタいというか、 ガツガツしてたというか(笑)。それで28歳になった今は考えが変わったというか、「お前が頑張ってたら俺のことも引っ張り上げてくれるでしょ? それで俺が頑張ってたらお前のことも引っ張り上げられるよね」みたいな相乗効果を狙った方が良いと感じたんですよね。人としてのビジネスマン、みたいな。

それと歳を経て自分に自信が持てたっていうのもあります。これまでは満たされない気持ちをぶつけがちだったんですけど、人生の中で色々と気づくことがあって。『R』でも呂布(カルマ)さんとか新藤(晴一 from ポルノグラフィティ)さんのような大人に触れることでリスペクトする気持ちが湧いたんです。前までは「どこの土俵でも戦えるっしょ」っていうフレックスをどこかでしていたんです、お恥ずかしい話ですけど(笑)。それは僕が勝手に思ってるだけで、向こうからしたら胸を貸しているだけだったりするんです。そういう意味で、寄り添える人こそが本当に強いなって思います。

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──「人」はまさに達観の境地というか、今のお話にも通じる内容かと。

これもテーマは一緒というか、つまり「祈り」なんです。「往来の中で俺は生きるよ」っていう意志表明なんです。ポップスの性質上、当たり障りのないことをキャッチーなメロディーに乗せたら刺さるんです。でもそれってショットガンに近いというか、当たる範囲が広範囲すぎて胸までエグられないんです。やっぱりマグナムじゃないといけない。だからマグナムの威力でどれぐらいショットガンのように届けられるかっていう、そういう挑戦をしています。

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祈りって、自問自答でもあり他問他答でもある

──続く「INORI」はその路線をさらに強調しているように聴こえます。ギャンブルの話も生々しいというか。

はい、本当に負けてるんで(苦笑)。これは自分への内省でもあるんです。ボロボロの状態で頑張る中でも誰かのために祈れることの素晴らしさというか、それが巡り巡って自分にも返って来るだろうっていう祈りなんです。「人」と「INORI」は、自問自答でもあり他問他答でもあるんです。宮崎駿の『君たちはどう生きるか』みたいな、そういう問いかけです。

──「カグツチ」では一転、日本神話のモチーフが登場します。

悲しい神話なんですよね。イザナミが産み落とした時に、火の神であるカグツチはイザナミの身を焼いてしまうんです。だからイザナミは忌み嫌われて、今度はイザナミの夫に恨まれて殺されてしまう。カグツチは破壊と創造の神でもあって、そういう二面性を取り上げたかったんです。不条理に打ちのめされて苛まれていることも歌っているし、「そういう世界も素晴らしいかもね」みたいな歌でもある。サウンドとしても、この曲が最も「オリエンタル・ポップス」らしいかもしれません。

──なるほど。ラストに「exorcist」の味変バージョンを入れたのはなぜですか?

「昔の衝動に戻ったらどうなるんだろう?」っていう挑戦です。3年前の自分は攻撃力が高すぎたというか、それを今回は拡張させようっていう試みで入れました。

それと、音楽を続けるならビジネスのことも考えなくちゃいけないし、アーティストとしての表現と塩梅を取らなきゃいけないですよね。僕の場合、「exorcist」の歌詞だとメディアに出るのも厳しいですけど、「カグツチ」とかなら大丈夫なんです。そういう意味でポップスを作ることは重要というか、広く聴いてもらった上で「exorcist」みたいなものとも出会ってほしいんです。

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──ありがとうございます。最後に、これから始まる二つのツアーについても聞かせてください。

ライブツアーには<SOME MINGLE>というサブタイトルを付けました。普段自分が聴いている人や仲良い人を集めたライブになります。同じ年代のアーティストから受ける刺激が今の僕には足りてないというか、まだ絡みのなかった人たちともこれを機に会いに行こうと思います。

バンドツアーに関しては自分の夢でもあるんです。ルーツがバンドだったので、「生演奏でライブをやる」っていうスタイルを今やろうかと。その先でフロントマンとして見えてくる文書があるんじゃないかっていう挑戦でもあります。インディーズ時代の楽曲をメインに据えることも考えていますし、ライブツアーとはガラッと違う演出になると思います。

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Photo:Itaru Sawada
Text:Ikkei Kazama
Edit:Ranji Tanaka

RELEASE INFORMATION

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New EP『【人】/INORI』(ヨミ:イノリ)

2026年3月18日(水)配信

【ELR Store限定盤】

2026年3月20日(金祝)発売

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早期予約特典「チンチロ祭り【人】/INORI」

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[収録内容]
M1. ガラポン
M2.
M3. INORI
M4. カグツチ
M5. exorcist -味変-
M6. Bonus Inst -【人】/INORI-(Prod. DJ dip)

 

※M.5、6はELR Store限定CD盤収録楽曲

LIVE INFORMATION

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Bimi Live Tour 2026 -SOME MINGLE-

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【INTERVIEW】Bimiが語る新作EP『人/INORI』と“オリエンタル・ポップス” 03_RELEASE
 

Bimi Band Galley Tour 2026 -Dear 28th-

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