MONO NO AWAREの玉置周啓と加藤成順の2人によるアコースティックユニット、MIZの1stアルバムが完成した。その名は『Ninh Binh Brother’s Homestay』。ベトナムの田舎町にあるゲストハウスの名が冠されている。そこは彼らが本作を録音した特別な場所だ。2人は2本のアコースティックギターと2本の声をもってふくよかな想像力を駆り立てる装飾をまとわないミニマムな歌と、現地に息づく生活音を天衣無縫な様相でここに閉じ込めた。

2020年、春。得体のしれないウイルスによって街の喧騒がかき消され、ネット上には魑魅魍魎が跋扈する混沌の時代の中で、このアルバムはどのように受け止められるのだろう? 東京に史上初の緊急事態宣言が発令された夜、MIZの2人にオンラインインタビューを実施した。

MIZがアコースティックギターで織りなすベトナムの情景―玉置周啓と加藤成順のロードムービを辿る interview_miz_01

INTERVIEW:MIZ

過去に見た風景と、そのとき聴いた音楽がリンクする

玉置周啓(以下、玉置) どうも、MIZといいます。よろしくお願いします。

加藤成順(以下、加藤) よろしくお願いします。

──このご時世にあって、部屋にいる生活時間もナチュラルに彩ってくれるような音楽が鳴っていて。シンプルにすごく心地いい音楽作品だと思います。

玉置・加藤 ありがとうございます。

──時系列を追って訊いていきたいんですけど、MONO NO AWAREとは別軸でMIZというユニットが立ち上がったのはどういう経緯なんですか?

加藤 最初は4年前の10月ですね。僕が八丈島の写真をモノクロで撮ってそれを渋谷のダイトカイという場所で展示する機会があったんですけど。八丈島に行ったことのある人はその人の中でモノクロ写真に色をつけたり、行ったことがない人も何か自分の思い出が喚起されるようなことがあればいいなと思ったんです。で、そこに音楽もつけたいと思ったんですよね。

玉置 俺も島で育ったからそのモノクロ写真を観て実際の色を思い浮かべられるんだけど、島に行ったことのない人は実際の色はわからないじゃないですか。島に行ったことがある人もない人もそれぞれで普遍的な捉え方ができるなと思って。

──それはモノクロ写真の特性でもあるし。

玉置 あとは前にフランスへ旅行に行ったときにTGV(高速鉄道)の車窓からスイスの景色を見たことがあって。まさに「アルプスの少女ハイジ」みたいなその風景を、旅行に行った2年後くらいにキングス・オブ・コンビニエンス(Kings of Convenience)の曲を聴いたときに想起したんですよね。

──ああ、キングス・オブ・コンビニエンスのムードはまさにMIZに通じるものがありますね。

玉置 そうそう。そうやって過去に見た風景と、そのとき聴いた音楽がリンクすることが起きたのって人生で初めての経験で。そのことを成順にMIZを始める前に伝えていたんですよね。「すごいことが起きた!」って。

加藤 そう。そのエピソードがめちゃくちゃおもしろいなと思って。そういう音楽を2人でやってみたいなって。

玉置 で、実際に曲を作り始めたのが4年前の11月ですね。

加藤 周啓の家に行ってアコギをちょろちょろ鳴らすことから始めました。最初にできた曲が“パジャマでハイウェイ”と“君に会った日は”ですね。

──最初に曲を作ったときの感触は?

加藤 とにかくユルかったです(笑)。僕がリード(ギターのフレーズ)をつけるのも初めてだったんですけど、本当に気がラクでしたね。

玉置 途中でバンドのほうが忙しくなったので、2人で集まってデモを作ることを徐々にしなくなって。なので、会ったときに「今日やるか」みたいな感じでどちらかの家に行ってiPhoneのボイスメモでデモを録った曲も多いですね。

──今作にはベトナムでフィールドレコーディングした自然や生活の音も随所に入ってますけど、それもMIZの成り立ちと同一線上にある感覚なんでしょうね。

加藤 そうですね。僕が海外でレコーディングしたいと思ってたんですけど、エンジニアの奥田(泰次)さんがフィールドレコーディングのアイデアを出してくれて。そもそもレコーディングスタジオで録ってもMIZのアコースティックな感じが活かされるかというのは疑問に思ってたし、自然な環境でレコーディングすることを極端にやりたかったんですよね。ライブ自体も最初からライブハウスではやりたくないと思っていて。美容院から居酒屋までその空間ごと感じて、聴いてもらえるような場所でやってるんですけど。レコーディングもその延長線上でしたね。

「あ、これ気持ちいいな」という方向にただただ流れていく

──当然、(玉置)周啓くんも曲作りとレコーディングとライブの感覚はMONO NO AWAREとはまったくベクトルが違うでしょう。

玉置 違いますね。ライブハウスではない場所でやるライブもそうだし、MONO NO AWAREの制作中にやけにMIZの曲ができたりしたこともあって。MONO NO AWAREが去年リリースした『かけがえのないもの』というアルバムは自分的にもけっこう難産だった曲もあったので。行き詰まったらMIZの曲を作ったりしてましたね。そういう意味でも心の支えになってた部分もありました。

──『かけがえのないもの』はMONO NO AWAREの音楽性の核心をいかに凝縮しながら拡張できるかというチャレンジをし、実際にそれを形象化した素晴らしいアルバムだったと思うけど、MIZの場合は自分から出てくるものをあくまで素直にキャッチするということなんだろうなって。蛇口をひねって水を出して、そのままコップに入れて飲むみたいな。

玉置 そうっすね。だってノリでベトナムに行ってレコーディングするくらいですから(笑)。MONO NO AWAREほど考えなくてもいいし、音の重なりも最小限だし、歌詞を書くときのマインドも違う。MIZは部屋の中で2人で生のギターと鳴らして、歌って、なんの加工もせず、「あ、これ気持ちいいな」という方向にただただ流れていくみたいな感じで作ってるから。浄化されながら作ってる感じがあります。

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──歌詞の文量も全然違う。

玉置 極端に言えば、MIZのアルバム全曲で、MONO NO AWAREの1曲分くらいですよね(笑)。

──あとはサビの概念とかにも縛られてないしね。人によってはAメロをサビに感じてもらってもいいくらいメロディがシームレスで。

加藤 そういう余裕がありますよね。

玉置 僕の生活自体がそもそもそんなにサビがあるものじゃないというか。

──(笑)。

玉置 笑うところじゃないんですけど(笑)。むしろJ-POPが背負ってる宿命って、サビのある生活をしてない人にとって爆発的な瞬間を提供するようなものだと思うし、ライブハウスの音のデカさにテンションが上ったりすることもそういうことだと思うんですよね。人生ってグーッとアウトフォーカスしていったらめっちゃ平坦だと思うので。MIZの曲は自然とそういうふうになると思うんですよね。

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──最初の話に戻るけど、今、部屋にいていろんな情報を見聞きして気持ちが疲弊したり、あるいは情報量の多い音楽を聴くのもしんどいという精神状態の人もいると思うんですよね。そういう人にもこのアルバムはたとえば食事したり家事をしながらでもスッと入ってくるような性格を持ってるかもしれないなと

玉置 だとしたらうれしいですね。ネットニュースで見たんですけど、この状況だからサブスク全体の再生回数が上がってると思いきや、新型コロナウイルスの影響を強く被ってる国ではヒットチャートに上がるような曲の再生回数はかなり下がってるという数字が出ているらしくて。代わりにクラシックやフォークの再生回数はコロナ以前より上がってるらしいんですけど。それを考えると今メッセージ性のある音楽自体も厳しいというか、それどころじゃない状態に陥ってる人も多いのかなと思いましたね。それを考えたらこのアルバムのレコーディングもギリギリだったんですよね。1月頭にベトナムでレコーディングしたので。その1 、2ヶ月後くらいには各国がロックダウンしたり、ベトナムにも3月下旬には入国できない状態になったので(一方で、ベトナムは本稿を書いている現在、新型コロナウィルス感染による死者数ゼロをキープしている)。今回アルバムタイトルにもなっているNinh Binh Brother’s Homestayというゲストハウスがあって。そこにいる人たちが今どんな暮らしをしているか気になるというか。個人的にはそういうことを考えるきっかけ──海外に友だちがいる人のほうが、今の海外の状況を気にかけたりするのかなって思ったし。

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──具体的に知っている人の顔が浮かぶのは大きいよね。

玉置 たぶん1月にベトナムに行ってなかったら、この状況でベトナムがどうなってるんだろう?って考えなかっただろうし。このアルバムを作って気にかけたい人が増えたという事実があるなって思いましたね。

加藤 だから、それこそこのアルバムを聴いて地元を思い出したりしてくれたらうれしくて。実際にその道を散歩しなくても思い出せる風景を浮かべられる余白のある曲たちができたと思ってるので。小さなスピーカーで全然いいし、このアルバムを流しながら一息ついてもらえればいいかなって。

わかりやすく情景が理解できるような言葉よりは、音が気持ちよくて、意味もギリギリわかる言葉

──作曲クレジットはMIZ名義のものが多いんですけど、(加藤)成順くんが作曲でクレジットされてる曲も2曲あって。M4の“パレード”とM9の“舟”。両方とも独特のエトランゼ感というか、異国情緒のある曲だなと思いました。

加藤 “パレード”は最初に一人で作っていて、ハタチとか21歳くらいのときに最初のリフができたんですけど。アコギを持って八丈島に帰ったことがあって。夜一人で部屋の窓を開けて庭のほうに向かってギターを鳴らしながら〈ヤンヤンヤヤーン〉って歌いながらできた曲なんです。そのデモを周啓に送ったときに何も言ってないのに島言葉の歌詞を乗っけてきて。

──この歌詞、すごいと思った。

加藤 僕もマジですごいと思ってビックリしました。僕が島でギターを弾いてるときの空気感を感覚的に察知したのかなって。一人寂しく〈ヤンヤンヤヤーン〉って歌っていたのは、山の奥のほうから誰も知らない祭りの音や声が聴こえてくるみたいなイメージだったので。それをまさに周啓が感じ取って〈祭りだら〉というワードを乗っけてきたから。それってなかなかない経験だし、本当にこういうことってあるんだなと思いました。

──周啓くんはこの曲を成順くんから受け取ったときのことを覚えてますか?

玉置 細かくは覚えてないんですけど、MIZとも関係なく成順はちょくちょく弾き語りで曲を録って、それをたまにSoundCloudに上げていたときもあって。この曲を聴いたときに「孤独なやつだな」って思ったというか。普段は社交的だし友だちも多いんだけど、本質的には孤独なやつだなと思って。でも、誰しも孤独な瞬間って絶対にあって。(加藤)成順はそれをギターのフレーズに乗せるのが上手いなと思ったんですよね。ギターを聴いてるだけで成順が一人でつまんなそうにギターを弾いてるのがすごく伝わってくるというか。その感じがいいなと思って。

──うん。

玉置 僕は常々──これはMIZに限らずMONO NO AWAREでも表現したいと思ってますけど──人は孤独な生き物であるということをすごく感じていて。さっきのモノクロ写真の話もそうですけど、自分が見た景色や感覚、その色味とかも100%人に共感してもらうことって不可能じゃないですか。同じ現実に対しても人の数だけ受け止め方があって。MIZは音数も少ないし、リスナー側の主体性がかなり大きくある音楽なんじゃないかと思って。やり始めたときはそんなこと考えてなかったけど、徐々にそう思うようになったんですよね。それもあって成順のデモに歌詞をつけるってなったときに普通じゃちょっと理解できない言葉を使うのは面白そうだなと思って。

──なるほど。

玉置 わかりやすく情景が理解できるような言葉よりは、音が気持ちよくて、意味もギリギリわかる言葉はないかなって考えたときに──僕の中での祭りの原体験は小さいころの島の盆踊りとかなので、そこがつながって島言葉がいいなってなったんです。響きがちょっとフランス語っぽいなと思っていたりもして。

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──話を聞いていて思ったのは周啓くんの根底にあるのは、自分と他者の感覚を100%は共有できないけど、互いの想像力でその差異や距離を縮めたい、それが音楽、歌の面白味であり醍醐味であるということだと思うんですね。その視座はMONO NO AWAREにもMIZにも共通しているんだけど、アウトプットの仕方が違う。MONO NO AWAREは文学的な言葉の筆致とオルタナティブな音楽性で、MIZはそれこそモノクロ写真的なミニマムなサウンドスケープとどこまでもシンプルな歌で伝えようとしているなって。

玉置 MIZの場合は歌詞も考え込んで伝えたいことを伝えきるために躍起になるというよりは、ちょっと脳内に浮かんだ映像を写真的に切り取って平面で見せられたらいいなという感覚で書いてるから。

──成順くん、さっき周啓くんが「孤独な人だなと思った」と言ってましたが、それを受けてどうですか?

加藤 みんなそうっすよね。酒を飲んでベロベロになって夜に一人で音楽を聴くときは暗い曲ばかりだし(笑)、インストも多いし。

──今の東京に対す(し)る違和感みたいなものが“空砲”という曲に顕著に表れていると思うんですけど、この曲は成順くんも歌っていて。周啓くんが成順くんにこの曲の言葉を預けてる感じもすごくいいなって。

加藤 ありがとうございます。

玉置 あの曲はMONO NO AWAREでも一時期ちょっとアコギで曲を作っていて、そのときにできた曲で。4年くらい前の曲なんです。だから今よりももっと自分の中で東京と八丈島との対比が明瞭にあった時期で。あえて言うなら、“空砲”は他の曲に比べて際立って文学的だと思います。

──《構えた銃には的が無かったの(と)さ》というフレーズは今このときもリアルに響くなと。

玉置 このフレーズは4年経っても色あせないと自分でも思っていて。もはや都会の対比を超えて普遍的に感じるじゃないかという。それこそ、今の世の中の状況的に《構えた銃には的が無かったの(と)さ》という無力感をいろんな場所でいろんな人が感じてるのかなとも思うし。成順が歌うのも成順が提案してくれたんですよね。

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レコーディングも「この時間帯になったら録ろうか」って生活の一部という感じ

──資料には周啓くんがかつてベトナムに旅をしたときに、一昔前の日本にあった情景をシンクロしたというようなことが書かれてあって。あらためて、そのことについても聞かせてください。

玉置 5年前、21歳のときに東南アジアを旅したことがあって。そのときはベトナムではハノイとホーチミンとホイアンに行ったんですね。今回、どこでレコーディングするかってなったときにベトナムに日本の昔の姿を感じたので提案したんです。たとえば漫画や映画で観たような、戦前から50年代とか60年代くらいまでの日本のイメージ。トタン屋根で造られた家と、簡易的なコンクリートで造られた街が広がってるみたいな。完成しきったとは言えないくらいの街の空気感。そして、湿度が高くて都会なんだけど街路樹が鬱蒼と生えてる感じ。ハノイに行ったときにそれを感じて。

──意図的な整備がされすぎていない感じ。

玉置 そうですね。ヘタなことは言えないですけど、僕の感覚ではおそらくハノイの街は日本の東京のような大都市ほど成熟しないまま機能する社会になったんじゃないかなと思って。日本は建物が古くなったらバンバン取り壊して立て直すけど、ハノイはお店一つとっても外装はそのままで内装を上手く改装したりしていて。1曲目に吹いてる笛もハノイで買ったんですけど。日本の楽器屋よりも雑多に楽器が置かれていて、どの店も直接的で開放的なんですよね。5年前にもそこに感動して。情景としてわかりやすいメッセージがある。あとは、僕は小さいころ島にあるひいばあちゃんの家によく遊びに行っていたんですけど、そこは森の中に建てられた木造建築の家で、苔が生えてる井戸があったりしたんですね。明治時代初期に建てられたらしいんですけど。そこで遊んでいた記憶が強く残っていて。ベトナムに行ったときに泊まったホテルの近くの家を見ると、そのひいばあちゃんの家にそっくりで。

加藤 で、今回もハノイでレコーディングするつもりだったんですけど、ハノイに着いて予約していたホテルに行こうとしたら、ホテルのホストの人が逮捕されて泊まれないってなって(笑)。

──マジか(笑)。

玉置 事件だったよね(笑)。

加藤 宿を見つけないとヤバいってなって。でも、そもそもハノイは交通量もめちゃくちゃ多いからとてもフィールドレコーディングできる環境じゃなかったんですよね。それで「もう、田舎のほうに行こう!」ってなって。たまたま「こっちのほうに自然がありそうじゃない?」ってポイントを出したところがニンビンだったんですよね。

──ロードムービーみたいな展開だね。

加藤 まさに(笑)。アルバムのジャットにもなっているNinh Binh Brother’s Homestayというゲストハウスをネットで見つけて、ベトナムに着いた次の日にバスで23時間くらいかけて移動しました。だから、本当に偶然にたどり着いた場所なんですよね。ベトナムには1週間滞在したんですけど、基本的に一発録りだし、曲もできていたんでけっこうゆっくりとレコーディングできました。ゲストハウスの窓を開けたら田んぼがあって、山羊とか牛がいて。めちゃくちゃリラックスできたし、レコーディングも「この時間帯になったら録ろうか」って生活の一部という感じでしたね。

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玉置 ちなみに最後の曲“バイクを飛ばして”だけベトナムで作ったんです。

──この曲でアルバムを閉じることで、次の街に向かう、それこそロードムービーの続きのような画が浮かぶなと思った。

玉置 僕の中でのベトナムは、ニンビンの牧歌的な風景だけじゃなく、湿っぽくて煙たい、湿度を帯びた街──僕の中にあるひいばあちゃんの家みたいなイメージもあったので。だから、ハノイのイメージも曲にしたいと思って。それでこの曲だけは都会の音をフィールドレコーディングして入れたいと奥田さんにお願いしたんです。

──2年後か3年後かわからないけど、MIZが次の街に移動してレコーディングするというライフワークが続くのはロマンがありますよね。

加藤 それはもう、やりたいっすね。

玉置 やりたいね。

加藤 今はコロナでこういう状況ですけど、東京でも空間としていい場所があることも提示していきたいし。そういう場所を求めてる人も多いと思うんですよね。

玉置 僕はプールサイドに監視台を2つ置いてその上でライブしたいですね。

──プールならではのリバーブがかかって面白そう(笑)。

玉置 そうそう(笑)。それ、マジでやりたくて。せっかくアコギ2本でフレキシブルな形態でやってるので。それを生かして今までなかった音楽の聴き方を模索するのはありだなと思います。

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Interview by 三宅正一
Photo byエリザベス宮地

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MIZ
2016年11月結成。MONO NO AWAREの八丈島出身、玉置周啓(Vo.)と加藤成順(Gt.)によるアコースティックユニット。聞き手のある場所の思い出、匂い、音にリンクするような楽曲をコンセプトに制作している。ある音楽を聴いて、風の吹く草原を思い浮かべる人もいれば、かつて住んでいたアパートを思い出す人もいる。それは、耳にした場所が旅先なのか、平日の最終バスなのかというのも関係しているかもしれない。だから、MIZは、さまざまな土地を訪れて写真を撮ってもらったり、もっと誰かの生活に寄り添うような空間で演奏をしてみたりする。そうすれば、僕らの音楽を聴いて思い浮かぶ映像が、めくるめく変わっていくと思うのです。

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Ninh Binh Brother’s Homestay

2020.04.22(水)
MIZ

Track list
01. Afternoon in Ninh Binh
02. 春
03. 君に会った日は
04. パレード
05. 空砲
06. 夏がきたら
07. 夏のおわり
08. パジャマでハイウェイ
09. 舟
10. バイクを飛ばして

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