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[Interview:石橋英子]通算5枚目のソロ作となる『car and freezer』は、石橋自身による英語詞と、全く異なる解釈で書き上げられた前野健太による日本語詞というユニークな2枚組でのリリース。この実に興味深い新作について石橋英子がたっぷりと語ってくれた。

──歌作りって、言葉と歌と自分、その関係性を探す旅のようなものだなって──

材中に言っていた石橋英子のその言葉がとても印象的だった。ミュージシャンの創作や人生が旅のようなものであるとしたら、こうして僕たちに届く作品というのはそんな果てなき旅の途中で送られてくる手紙のようなものなのかもしれない。そんなことを思いながら封をあけた石橋英子の最新作『car and freezer』。そこには過去に聴いた彼女のどの作品とも違う新たなサウンドスケープが広がっていた。

シンガーソングライター、プロデューサー、マルチ・プレイヤーなど、いくつもの顔を持ち、最近ではジム・オルークのバンド・メンバーをはじめ、前野健太、OGRE YOU ASSHOLE、七尾旅人など数々のアーティストのレコーディングやライヴにも参加、また2012年に発表した『imitation of life』は米国の名門レーベル〈ドラッグ・シティ〉からリリースされワールド・デビューを果たすなど、いま石橋英子という稀有なる才能は国内だけに留まらず、ワールドワイド・レベルで高い評価を獲得している。

彼女にとって通算5枚目のソロ作となる『car and freezer』は、石橋自身による英語詞と、全く異なる解釈で書き上げられた前野健太による日本語詞というユニークな2枚組でのリリースとなる(この2枚組は楽器編成やミックスなども異なっている)。英語で歌われる石橋サイドは、これまでの石橋の楽曲にはない新しい表情を見せているし、前野健太によるあの独特の歌詞の世界観は石橋の楽曲と混じり合いとても面白い化学反応を起こしている。プロデュースは彼女の近年の作品や活動には欠かせない男、ジム・オルーク。さらにそのジム・オルークを筆頭に、須藤俊明、山本達久、波多野敦子といった超実力派ミュージシャンが集うバンド、「もう死んだ人たち」も全面参加し、鉄壁とも言うべき素晴らしいアンサンブルを披露している。この実に興味深い新作について石橋英子がたっぷりと語ってくれた。

Interview:石橋英子

石橋英子 / Eiko Ishibashi “幼い頃、遊んだ海は / tonight”
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――前作『I’m armed』を発表したのが2012年の秋頃です。その後もライヴにレコーディングにと様々な活動があり、お忙しくされていたと思いますが、新しいアルバムのことはいつ頃から考えはじめたんですか?

ピアノのアルバム(『I’m armed』)の前に『imitation of life』というアルバムを出していて。実はその『imitation of life』を発売する時には、もう『I’m armed』もほぼ完成していたんですよ。

――そうだったんですね。

で、その頃に次のアルバムも構想も練っていて。

――それが本作になるわけですね。ということは、着想自体は2年以上前からあったんですね。

はい。で、その頃に漠然と考えていたのは、シンプルだけど貧乏臭くないアルバムにしたいって。

――貧乏臭くない感じというのは(笑)?

必要最小限の要素で構成されているんだけど、華やかさを持った作品というか。その作品を手にしてから何回も聴いているうちにだんだん作品そのものが聴く人によって変化して行くようなアルバムにしたいと思いました。

――それはサウンド的な部分だけではなく、パッケージ全体としてヴァリューのある作品ということでしょうか?

そうですね。それで日本語と英語の歌詞の2つのヴァージョンを作ってみようかなと。その時は本当に思いつきみたいなレベルだったんですけど。それがちょうど2012年の夏くらい。

――英語の歌詞というのは石橋さんにとってこれまでにない新しい試みになりましたね。なぜ英語で歌おうと?

これまで自分が聴いてきた音楽は日本語よりも英語の歌詞のもののほうが多くて。それなのに自分はなんで日本語の歌詞で歌っているんだろうなって問いが自分の中にはずっとありました。日常生活で英語で話しているわけではないので、勉強は必要だったんですけど、挑戦してみたら面白いかなって。

――すぐに曲作りもはじめたんですか?

はい。2013年の5月ころには全曲デモができて、それからバンドでベーシックで録音して、その後にお芝居の音楽の仕事が2本あったのでそれをやって、秋くらいからオーヴァーダビングと歌入れをやってというような流れでした。

――日本語ヴァージョンの歌詞はレーベルメイトでもあり、ステージを共にすることも多い前野健太さんが手掛けられていますが、日本語の歌詞を付けようというアイディアが生まれた時に、すぐに彼に依頼しようという選択肢が思いついたのですか?

前野さんは彼の“ファック・ミー”という曲で一緒に歌わせてもらってからのお付き合いで。それから前野さんのアルバムで一緒にレコーディングをしたり、ライブに参加させて頂いて行く中で。前野さんの独特な歌詞に触れる機械が多くなりました。私では絶対に書けない、思いつかない歌詞を書く。視点は日常に端を発していたりするんですけれど、その後の展開というか、広がりというか、宇宙というか、世界観のようなものに、いつも驚かされるんですよね。

――わかります(笑)。

ちょっと歪んでいるというか。でもすごくユーモアもあって。で、誰でもないことを歌ってないし。リスナーが共有できるようなものがある。“共有”って言葉では表せないような、もっと皮膚感覚で「あ、それわかる」みたいなものがあるんですよね。皮膚感覚で感じることができる言葉。そういう前野さんの言葉が私には違和感でもあり、同時に驚きをくれる不思議なものだったので、是非前野さんにお願いしたいと思いました。自分の曲に前野さんの言葉がどうぶつかるのかが楽しみでした。

次ページ:【英語の歌詞について、前野健太の歌詞について】

Qetic編集部

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