––––監督の作品には一貫して「あるものに執着する」ことによって「人間らしさ」が描かれていると思いました。いがらしみきおさんの原作を踏まえて、何か監督自身が本作に掲げたテーマなどありましたか。
原作以上のテーマは僕はいらないなと思っていましたね。僕は4巻ある原作を2時間のものにするという作業をしなきゃいけない。そのまま切って繋げるだけだと、物語の内容が分断しちゃうから、それらを繋げるために新しいエピソードを入れて。要するに「映画として」見やすい作品にすることに腐心しました。
––––いがらしみきおさんの作品を映画化するって無謀なところがあると思いますが、そこで松尾さんがするべきことってなんだと思っていましたか。
いがらしさんの原作の中のファンタジックな部分を、リアリズムの中にどう落とし込むかっていうことですよね。世界観を早めに作っちゃうことだなと思って。そうすると、早めに西田さんの目が光ったほうがいいなって。
––––ある種の「そういう世界なんだ」っていう提示ですよね。
笑っていい話なんですよ、と最初にまず示しとかなきゃいけないなって。でも自分の中で芝居の血肉のなかに、ファンタジックな部分とリアルな部分とが同居しているって感覚があるんですよね。だからそんなにそこに苦労はしなかったと思うんです。現場のロケーションもよかったし。ほんとに太古からあるんだろうなっていう山とか自然を前にしたときに、クセのある役者をいっぱい放り込んで、その自然の美しさと人間のごちゃごちゃした感じがミックスされた中で、ファンタジックな事が起きてもおかしくないな、という雰囲気を作っていったって感じですかね。
––––「不思議なんだけど、不思議はないな」って。
そこは西田さんのキャラクターによるところがあるんですけど。すごく普通に演じてくださっていて。神様っていう気負いがないというか、神様なのに俗っぽいというところが面白いわけで。しかも目が光るという超常現象も起こすわけじゃないですか。そういう人がぽんと普通にいるということで、日常と非日常がすっと混ざるというか。そんな空間を創れたな、っていう風に思いますね。
(C)2015 いがらしみきお・小学館/『ジヌよさらば~かむろば村へ~』製作委員会