––––以前『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』の脚本を手掛けていらしたと思うのですが、原作を映画の形にする脚本家としてやるってことに今回、何か変化はありましたか。
『東京タワー』はなにしろ長かったんでねぇ。そこを二時間何分にするのは難行苦行で。そんな想い出しかなかったんですけど。今回はいがらしさんが持ってる世界観に自分がシンクロする部分がいっぱいあるので、四巻を一本にするっていう苦労はありましたけど、ギャグとかはいがらしさんのものを使っていて。実際に原作のままを演じてみるっていうのが楽しくてよかったですね。
––––実際にやってみるっていうことですかね。
そうですね。ココには間を入れるとオチるのかなとか考えたり。いがらしさんの漫画のギャグを文字に起こして、それを体現する楽しみはありましたね。
––––原作に忠実な東北の田舎をロケ地にした撮影でしたが、苦労したことなど記憶にあることは何かありましたか。
東北の田舎でやったということは得したことの方が多いんですけどね。美術セットが無料で、どこを撮っても画になるし。あと村の人たちがすごく協力的で「ばぁちゃん、こっち来て、立って」っていう風に、みんなエキストラで参加してくれて。人間もタダで手にはいるっていう(笑)。そういうところではよかったですけど、ほんとに辺鄙なところなんで四時すぎになると店が閉まっちゃうんですよ。だから一ヶ月分のお金を持ってきても逆に使えるところがなかった(笑)。それはきつかったですね。
(C)2015 いがらしみきお・小学館/『ジヌよさらば~かむろば村へ~』製作委員会
––––原作だと多治見は悪い奴でしたが、映画の中ですと「どこか憎めない奴」だと思いました。松尾さんはどのように多治見をイメージして演じられたのでしょうか。
なんですかねぇ、僕の人柄ですかねぇ、出ちゃったのかなぁ(笑)。
––––(笑)。わりとイメージなどは固めずに演じてたということですかね。
アドリブも多かったし、「やるからには笑いをとりたい」っていうスケベ心があったかな。そこに凝縮されちゃったって感じがしますね。