––––大人計画も含めて自分の作品に出るときというのは、松尾さんが「俳優・松尾スズキ」をキャスティングするのですか。それとも、作り手として自分をいれておくとスムーズに作りやすいのでしょうか。
劇団は特にそうですよね。1人分キャスティングっていう面倒な作業が減るし、必ずそいつ(自分)のスケジュールは自分に合わせられるんで。僕のいうことは必ず僕は聞くし(笑)。そういう物理的な問題もあるし、自分が監督としての色を出していくのなら、ウディ・アレンとかがそうですけど、監督する人が出演することも含めるっていう売りを自分の中に作っておきたいなっていうのがあるんですよね。
––––今作は、舞台の仕事で長らく一緒にやっていらっしゃる大人計画のキャストも多く揃っていましたが、彼らの舞台と映画での姿勢の違いなど、何か発見はありましたか。
彼らも20何年やってきて、僕が出演してる映画の本数を越えてる人も多くいて、現場の佇まいとか、カメラを前にした演技がどういうものかっていうのを、もう分かってる中堅の俳優たちですよね。彼らがヨソで培ってきた技術で、僕が普段やっている大人計画の演出っぽいことをやって。今までの信頼関係の上に、また新しいものが生まれてきたな、という感じはしてますね。早く阿部(サダヲ)と映画の仕事で“濃い”仕事がしたいな、っていう思いがあったので、そういう意味ではすごい楽しかったし、2人で新しいキャラクターを作れたかなと思ってます。
––––あの阿部さんの役は、相当な信頼関係がないとできないキャラですよね。
いきなり、最初の出番でバスの中に荷物をぶん投げると言う、乱暴な芝居があったんですけど、あれも当日「なんかないかな」と思って決まったという(笑)。でもそういうときに「はい、わかりました!」って言って、ぽいってやる。そういうのを見て、(松田)龍平がビックリしたりとか(笑)。そういう面白さはありますよね、現場で新しく作っていけるっていう。
––––それで成立しちゃうってことですもんね。
うん、僕らは現場主義ですからね。そこにあるもので何か面白いことやっていこう、ってなんとか作ってきた劇団なんで。僕に突然いわれることは皆慣れてるから。
––––今回の作品で、松田龍平さんは「異邦人感があるけど、どこかマイペース、動じない」っていう、珍しいキャラクター設定だったと思いましたが、あのキャラクターと龍平さんの組み合わせっていうのはどう感じていましたか。
でも元々やっぱり、若手俳優の中でも、突出して映画俳優だなって感じているところがあって。独特の異邦人感っていうのは、常にどこでも出してるなと思います。宮藤(官九郎)脚本の『あまちゃん』の「ミズタク」ですら、どことなく異邦人の匂いが漂っていて、何か、ただ者ではない感じがある。ああいう空気は普通の俳優には出せないですから。ありがたい存在だと、僕は思っているんですよね。
––––本質的に異邦人なんですかね。
うーん、本質的にありますよね。普通の日本人じゃないですよね。
––––普通は知らない世界に行ったら、動じたり、スゴく興味をもったり、同化しようとしたりするじゃないですか。それがここでは一切ないというか。
あんなにマイペースな人間いないですからね。人としても。
––––主人公像としても異色ですよね、異世界に行ったときに狂言回しになりそうなのだけれど、ならない。その構造自体がおかしな話しだなと。
そうですよね、普通コメディの主役って、周りにつつかれて、損な立ち回りになることが多い。でも、この主人公はところどころ自分でボケるんで、周りがツッコミ役に回ったりとか、ボケとツッコミが入れ替わる映画だと思うんで、そういう意味では主人公なのに脇役のような美味しさがある、なかなか美味しい役だと思います(笑)。
––––入れ替わるフォーメーションがあるっていうんですかね。
あるときは阿部にバンバンつっこまれるし、でも逆のときは、バンバン龍平が怒鳴ってるわけじゃないですか。おかしいんですよ。だからそういう意味では、両方ボケで両方ツッコミみたいなところがあるんですよね。