Interview:John Grant

――ジョン・グラントの音楽を三つの言葉で表現してください。

必要不可欠。多角面。楽観的。

――最近注目しているアーティストはいますか?

ノルウェイのスザンヌ・サンドフォーというアーティスト。クラシカルな要素とシンセサイザーを合わせた荘厳なポップミュージックをやっているんだ。オルタナティブでかなりダイナミック。すごく気に入っているんだ。

――去年の10月に新作『グレイ・ティックルズ、ブラック・プレッシャーズ』がリリースされました。この作品についてご自身ではどのように評価していますか?

いつもよりもっと遊び心を出せたよ。同時に怒りやダークな部分もたくさん表されている。でも、かなりポジティブな作品だと思う。カタツムリが殻から出てくるような、長い時間のかかるプロセスだったんだけど、いままでよりもっと自分自身を見せることができた。分厚いレイヤーを脱ぎ捨てて、僕だけのサウンドをより表現できていると思う。何でもかんでも入れたがる性格だから、かなり難しい作業にはなったんだけどね(笑)。僕自身のパーソナリティーを今までで一番、正直に反映することができたアルバムであることは確かだよ。

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『グレイ・ティックルズ、ブラック・プレッシャーズ』 ジャケット写真

――新作のタイトル『ブラック・プレッシャーズ』はトルコ語で悪夢を意味しているそうですね。最近みた悪夢があれば教えてください。

夢の中で元彼に出会ったんだ。いつまでも続くような、終わりが見えない悪夢だったよ。彼は元気でやっていて、何の問題もなさそうだった。もう乗り越えたはずなのに、それを見て苦しくなったんだ。彼を見た途端に、全てがまた嫌な気持ちで蘇ってきた。えらくハンサムで、なぜだかアイスランド語をしゃべっていたんだ。それだけじゃなくて、僕がいままでやってきたことを、彼がやって見せるんだ。変だよね。ニューヨークでウェイターをしている悪夢も見た。僕は失敗ばかりしていてね、何もうまくできないんだ。みんな怒っていたし、あまりのひどさに帰る客もいた。

――アルバムのアートワークには、血を被ったポートレイトがあります。ホラー映画がお好きとのことですが、日本のホラー映画を見ますか?

三池崇史の『オーディション』は最高だったよ。最近の映画はゴア表現だったり、とにかく血しぶきばっかりで全然面白くないんだけど、あの映画には驚かされた。サプライズが僕は好きなんだ。

John Grant – Grey Tickles, Black Pressure (Album Trailer)

――あなたが一番恐れることはなんですか?

愛している人たちを、死によってなくしてしまうこと。

――はじめて弾けるようになった曲はなんですか?

ちゃんとは思い出せないけど、小さい頃から学んでいたピアノ曲だったはず。スコット・ジャプリンの”Maple Leaf Rug”だったかな。ラグタイムってわかるよね。(机を叩いて弾いて見せる)こんな感じの曲。

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