INTERVIEW

Jordan Rakei

     

ロンドンを拠点に活動するオーストラリア出身のマルチ・プレイヤー、ジョーダン・ラカイ(Jordan Rakei)。

トム・ミッシュ(Tom Misch)やロイル・カーナー(Royle Carner)など、ロンドンの現行ブラック・ミュージック・シーンを牽引するアーティストたちと並んで、目を見張る活躍を見せる彼が6月14日(金)に待望の最新作『Origin』を世界同時リリースする。本作では、ネオ・ソウル、R&B、ファンクといった要素に、エクスペリメンタルなアレンジを施すなかで彼らしさを生み出すという音楽性に新たな変化が。

そんな新作の制作過程や制作の経緯、またダンス・ミュージックを主とした音楽を提供する別名義ダン・カイ(Dan Kye)としての活動など、彼の“今”を捉えるためにインタビューを敢行した。

Jordan Rakei – ‘Mind’s Eye’

Jordan Rakei – ‘Say Something’

Interview:Jordan Rakei

ーー今回のアートワークのコンセプトは?

アートワークのコンセプトは、アルバムのメインテーマでもある人類。そして、人類の起源を忘れないということ。人類は水から生まれたという進化論の一つを僕は信じているし、生まれる前は羊水の中で育つし、それをイメージしてこのアートワークにしたんだ。デザインを担当したのは、ロンドン在住の素晴らしいデザイナー、マット・デ・ヨング。

ーーあなたからアプローチしたのですか?

そう。彼にアルバムのコンセプトを伝えて、それを基にデザインを考えてもらったら、あの素晴らしいアイディアを持ってきてくれたんだ。すごく気に入って、あのデザインで進めることにしたんだよ。

ーー随所に手拍子などの自然発生的な音が盛り込まれていて、これまでのエクスペリメンタルな印象より一層ファンクネスが感じられる内容になっているのはどういう理由で?

前回のアルバムをライブでプレイしていた時、アルバムの音楽のほとんどがダウンテンポで静かだったから、オーディエンスがそこまで楽しめてないような気がしたんだ。あのアルバムは、どちらかと言えば一人でいるときに聴き込むタイプの作品だったからね。だから今回はもっと人々が楽しめるようなサウンドを作りたかった。もっとカラフルで生き生きとした、これまでよりもエネルギーに満ちた作品にしたかったんだ。それでそうなったんだ。リファレンスは、結構昔の作品を聴いていたな。曲の構成的には、スティーリー・ダン(Steely Dan)とか、ジョニ・ミッチェル(Joni Mitchell)、スティーヴィー・ワンダー(Stevie Wonder)。でもそこにもう少しモダンな要素、プロダクションを加えたかったから、エレクトロニック・ミュージックも聞いていたよ。歌詞的には、AIやテクノロジーに関して書くのが新しい挑戦で、ポッドキャストなんかをよく聴いていた。サム・ハリスがAIに関して色々な人たちにインタビューするポッドキャストがあるんだけど、あれは沢山聴いていたね。彼のポッドキャストの影響はかなり大きい。

ーーチャーリー・ブルッカーの『ブラック・ミラー』や、マーガレット・アトウッドの『侍女の物語』、デヴィッド・リンチの『ツイン・ピークス』 にインスパイアされたと書かれていますが、最近のお気に入りの映画は?

そうそう。そういった作品のエピソードに影響を受けて、その自分バージョンを作っていった感じ。最近のお気に入りは、まずは『ブレード・ランナー』。クローンやロボットの会話がすごく興味深いんだ。サウンドトラックも素晴らしいしね。

ーー「AIシステムに立ち向かう人間の未来」が主題ですが、AIシステムに立ち向かう人間にはどんな未来が待ってると思いますか?

悲しいけど、デバイスに支配される時が来るんじゃないかと思う。すっごく進化した携帯とかコンピューター、脳内にチップが埋め込んで何かできるようになったり、テクノロジーに今以上に頼る時代。50年くらいで、ハイブリッドな人類がコンピューターシステムで作られていくんじゃないかな。それは可能性の広がる明るい未来にもなりうるし、暗い未来にもなりうると思う。

Tom Misch & Jordan Rakei – Valley

ーーダン・カイ名義とジョーダン・ラカイ名義での明確な区別はある?(ex.制作方法、制作に向かう気持ちなど) その区別の仕方は?

ダン・カイでは、もっとダンスミュージックよりの音楽を作ってるんだ。そして、自分のエネルギーが湧くままに自然に音楽を作っているのがジョーダン・ラカイ。ダン・カイの音楽を作る時は、ナイトクラブのことを意識している。オーディエンスがどんなリアクションをとるかとか、盛り上がるベースラインはどんなのだろうとか。もっと、皆を喜ばせようと意識して音楽を作るのがダン・カイだね。ジョーダンのプロジェクトでは、もっと音楽的にリスクを冒す。そして、自分の境界線を広げるんだ。歌詞的にももっと深いしね。

ーーそれぞれの名義での活動頻度のバランスは?

ほとんどの時間とエネルギーはジョーダン・ラカイのプロジェクトに費やしているよ。で、自由時間がある時とか、飛行機に乗っている時なんかにダン・カイの音楽を作ったりする。ジョーダンとしてツアーをやって、ダン・カイとしてそのショーのアフターパーティーをするくらいが理想(笑)。それが出来たらクールだな。

ーー音楽活動をする上で、あなたに影響を与えているアートや音楽は?

特にアーティストの名前は今思いつかないけど、僕は他のジャンルの音楽をよく聴く。僕が作っている音楽はソウル・ミュージックだと思っているけど、僕自身はソウル・ミュージックは聴かないんだ(笑)。聴くのはエレクトロニック・ミュージックやフォーク。なぜか、そういった音楽に影響されるんだよね。そこからトリックを学んで、自分の作る音楽にその要素を加えて自分独特のものを作るんだ。

ーー聴かないのに、なぜソウル・ミュージックを作るんだと思いますか?

ソウル・ミュージックは、僕が聴いて育ってきた音楽なんだ。だから、DNAの中にソウル・ミュージックが入っているんだよ。20歳くらいまで、アメリカのソウル・ミュージックにどっぷり浸かってきた。だから、それと掛け離れたジャンルを作ろうとすると、自分の中でなんだか無理やりな感じがするんだよね。

ーーダン・カイのサウンドについてはどうですか?

ダン・カイの音楽はもっとエレクトロニックだし、ダンスやハウスっぽいけど、それでもやっぱりソウルの要素が入っているんだ。もし僕がめちゃくちゃダークなテクノ・レコードなんかを作ったら、それはかなりの冒険だけど(笑)。ダン・カイとジョーダン・ラカイは違うプロジェクトだけど、僕の声とソウルの影響で繋がっているんだ。

Loyle Carner – Ottolenghi (Official Video) Ft. Jordan Rakei

ーーロンドンのニューカマー、ロイル・カーナーとのコラボが話題になっていますが、彼との接点は? また共感できる音楽性は?

ロイルとは、トム・ミッシュを介して知り合ったんだ。それから4年くらい友達で、何か一緒にやろうとずっと話していたんだけど、4年越しでやっと一緒にコラボする機会が出来た。今では、彼は良い友達でもあるし、一緒に音楽を作る良き共演者でもある。彼とは本当に作業がしやすいんだ。彼と僕は、二人ともオールドスクール・ヒップホップを聴いて育ってきたから、そこが共通点かな。ア・ドライブ・コールド・クエスト(A Tribe Called Quest)とか。ティーンの時は、90年代のヒップホップを沢山聴いていた。彼と作業している時も、お互いジャズに影響を受けたヒップホップが好きだから、そういった音楽にインスピレーションを受けて曲を書いたんだ。

ーー今後共演したいアーティスト、期待したいアーティストは?

フランク・オーシャン(Frank Ocean)、ボン・ミゲル、H.E.R.、ジェイムズ・ブレイク(James Blake)……沢山いるよ。あと、映画音楽の作曲家とも共演してみたい。期待したいアーティストは、マット・キャルバート(Matt Calvert)かな。ジャズっぽい音楽で、すごく素敵なんだ。僕は普段はあまり新しい音楽は聴かないんだけど、彼の音楽はすごく良い。

ーー最近、アーティストとの交流の中で一番印象的だったことは?

一つの交流ではなくてこれまでの全体的な交流を通しての話だけど、相手のミュージシャンに自由に任せ、そこに自分のサウンドが混ざり合うことによって、レベルアップした新たなサウンドが生まれるということを大きく学んだんだ。それが一番印象的なこと。ロンドンに来て、多くの素晴らしいクリエイティヴィティに出会って、それをすごく感じるようになったね。

ーーアルファ・ミストとはどんな風に生活をしているの?

彼とは同じスタジオをシェアしているんだ。彼は夜型で僕は昼型だから、それがうまく機能してる。ツアーでも一緒だから、しょっちゅう会ってるよ。彼のファンでもあるし。一緒にいるときは、ゲームしたり、音楽の話をしてる。食事にも行くし、彼と会う時はトム・ミッシュも来たりするよ。グループで会うことが多い。皆でモノポリーとかやってる(笑)。

ーー最近のお気に入りの写真をください。

ーー今日はありがとうございました。

ありがとう! またね。

ジョーダン・ラカイが音楽で見据える未来への憂慮と期待 interview190611-jordanrakei-1

Text by Kenji Takeda

『Origin』

ジョーダン・ラカイが音楽で見据える未来への憂慮と期待 interview190611-jordanrakei-2

RELEASE

2019.06.14(金)

LABELS

Ninja Tune

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ジョーダン・ラカイ

2015年に26歳のジョーダンは、オーストラリアのブリスベンからロンドンへ移住し、トム・ミッシュやロイル・カーナーらと親交を深める。2016年に1stアルバム『Cloak』をリリースした後、名門〈Ninja Tune〉と契約。ロバート・グラスパーからサム・スミス、テラス・マーティン、ボノボなど錚々たる面々から賞賛を受ける他、2017年にリリースした2ndアルバム『Wallflower』は、各国のiTunes R&Bチャートで1位を獲得し、Mixmagでは【Top albums of 2017】にもリストイン、さらにジャイルス・ピーターソン【Worldwide Awards 2018】の「Album Of The Year」でも2位となるなど、音楽メディアや早耳リスナーから高い評価を集めている。

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