カナトは1984年生まれ、東京都出身のイラストレーターである。
これまでに都内パーティーのフライヤー製作、アパレル製作、CDジャケットへのイラスト提供などの活動を行う。
2011年<大カナト展 at PUBLIC/IMAGE.3D>、2017年<大阪カナト博’17 at studio SLAP>の個展を開催している彼が4月20日から5月5日(日)の間、LAID BUGにて3度目の個展を開催中。展示を見ながら話を訊きにいった。
Interview:カナト
--もともと絵を描くようになった経緯を教えてください
ずっと趣味で絵は描いていましたがきっかけは旅先での体験が大きかったです。
ガバが好きだったのもあり、二十歳くらいの頃DJをしている友達に誘われてオランダに行きました。
そのとき日本の企業の保養施設をスクワットしている人達にお世話になり、お礼のつもりで絵を描いたら、すごく喜ばれたんです。滅茶滅茶大きなリアクションをくれてそれが一つの成功体験になっていると思います。
また日本に帰ってきてからその友達がDJをするパーティのフライヤーを頼んでくれる様になりました。
そのフライヤーを見たアーティストやDJが色んなイラスト製作を頼んでくれるという流れができて今に至っています。
--手書きで書いていると聞きました。どんな風に制作してるのでしょう?
最初はエンピツを使ってました。
ただ、エンピツで描く人みたいなイメージが出来てしまって正直製作がキツくなってしまいました。
筆圧が調整できないので腕が痺れてきたり、エンピツだけになると長くは続けられないなと思いました。
それからエンピツで描いていると描いたり消したりがほぼ無限に出来てしまうので、キリがないというか際限なく製作に没頭してしまうので、最近はペンを使って製作しています。
ライブペイントの時は乾くのが早いのでポスカをよく使います。
--個人的にはサバーバンベースやムービングシャドウなど、90年代のUKレイブカルチャーのアートワークからも影響を受けてる感じがするのですがどうなんでしょうか? 影響受けたアーティストや好きなミュージシャンなどいれば教えてください。
レイブカルチャーのグラフィックはあまりよく知りらなくて、フライヤーを描き始めた頃、参考にしていたのはサンタクルーズのスクリーミングハンドで有名なジム・フィリップスです。
線が太く、激しい色使いにも影響を受けたし、画集のフライヤーやポスターをよく見て参考にしていまいた。
もっと振り返るとビックリマンシールのイラストがあって、正方形の中にキャラクターがドーン!と載るバランス感は子供の頃に完全に刷り込まれました。
あとレイブカルチャーで言えばnendo graphixxの影響がかなりデカイと思います。
中高生の頃、東京堂やshop33に行って、買えないけど色んなテクノっぽいデザインを眺めるのが好きで、その中でもnendoはダントツに格好良かったし、今も憧れの存在です。
あとは漫画が大好きで、最近は花輪和一を集めていてよく読んでいます。
--作品に昭和っぽさが出る時があるのはガロ周辺の漫画家さんやビックリマンの影響だったのですね。今後の活動予定ややりたいことを教えてください。
新宿ドゥースラーというバーで毎月第1水曜日に「実録!!カナト漫画道場」というラウンジで漫画を描く修行をしています。毎月自分の聴きたいDJにお願いし、その人の選曲をBGMにお客さんの出すお題に合わせて即興で漫画を描くというラウンジです。
これまで自分の描きたいものしか描いてこなかったのと、一枚の絵に集中しすぎて力を抜いた動きのある線を描けなくなってきたので、リハビリの為に始めて今年で3年目に入りました。
ーーストーリーを描きたいのですか? 絵を描きたいのですか? 漫画を描きたいのですか? どこに興味があるのでしょうか?
全部です。
1枚のイラストや絵画じゃ伝えきれない事も、漫画で誰かの琴線に触れる事ができるかもしれないし、絵や美術にそれほど興味がなくても、漫画が好きな人は多いじゃないですか。
元々自分も漫画が大好きで漫画家という職業を神格化して、俺なんかには到底無理だとずっと敬遠してきました。
ただ、だんだん歳をとってきて、このまま漫画を描けないまま死んだら本当に後悔するだろうなと思い、だからこそチャレンジしたいという気持ちがあります。
--個展を開催にあたってコメントを最後にお願いします。
フライヤーや、ジャケットの原画やライブペイント等、自分のこれまで描いてきた絵をいっぺんに並べました。
展示のスペースはそんなに大きくないですが、LAID BUGは雰囲気の良い所で椅子もあってゆっくり出来るので、是非家族や友達も連れて遊びに来てください。
俺のことを知らない人にも気軽に来てもらえたら嬉しいです。よろしくお願いします。
近代カナト展
OPENING: 4.20SAT 16:00-22:00
EXHIBITION: 4.21-5/5 14:00-20:00 MON,TUE CLOSE
PLACE
LAID BUG
KANATO NAOMASA
ライター・白石健二郎
自営業者。西東京市で鍼灸院運営。音楽誌エレキングに寄稿経験あり。ゲーム音楽への楽曲提供を経てメジャーレコード会社から3枚アルバムをリリースした経験もある。趣味は読書(毎月十冊程度)ロスジェネ世代の中年。