国内のクラブシーンの移り変わり。DJのボーダレス化。
――お話しを伺っていたら、私の世代はDJに限らずバンドでもそういう世代なのかもしれないと感じました。友人や同世代のアーティストが来てくれたから、その人のイベントに行かなくちゃ。そんな風に連鎖のようなものがあるような……。
10人のDJが10人の義理で来てくれるお友達を呼んで100人。その馴れ合いのイベントで、音楽やファッションを表現する場が作れるのか疑問に思うし、収益になってもシーンには確実にいい影響は無いと思います。
富家(TOMIIE)君と。先日お互いにこのTシャツをまだ持っているとの話題に。
30歳位。この黒髪のアー写以降に金髪の時代に突入しました。
また、ファッションと同じように音楽にも波があると感じています。80年代の西麻布文化の盛り上がりが終わり、GOLDが出来て盛り上がって、ピークが見えたら終わりが来た。その頃にはYELLOWやMANIAC LOVEが出来て、その後にWOMBが出来たし、CODEとかも盛り上がっていましたよね。それぞれのクラブが盛り上がっていたし、LIQUIDROOMや恵比寿ガーデンホールみたいな場所でもクラブミュージックのイベントがあって、特に2000年辺りが国内のナイトクラブのひとつの黄金期だったと思っています。外タレも盛り上がっていたけど、なにより国内のDJに勢いがあって、盛り上がっていたのもよかったです。だけど、その盛り上がりが大き過ぎて、この後ひと段落、落ちるなと思ったらやっぱり来ましたよね。僕はDJなので、現場でひしひしと感じていました。イベントひとつをとっても限界まで盛り上げ過ぎたら、下がる時間が必ず来る。それでもその時期が来たら、少し休んで次に備えて準備しつつ耐えなくちゃいけないんです。それを超えたら揺り戻しでまた上がりますしね。
00年代前半に一度シーンが落ちた時に、逆に僕は、よりアーティスティックな活動をする時間と認知して、プログレッシヴハウスやテックハウスに打ち込んで、またシーンが良くなるのを新しい音楽と共に楽しんで待っていました。00年代中頃から後半にかけて国内のボーカルハウスやEDMでパーティーシーンはまた上がってきたけど、今のその波は僕がやりたい事とは違うので、それに乗るような感じにはなりたくないと思っていますけど(笑)。
バルセロナの<Sonar>の時期のパーティーもDJし甲斐があります。
――00年代シーンが下がると感じた時に、KOさんの中で印象に残ったことはありますか?
その時期の僕は、海外のアンダーグラウンドなパーティーシーンの方がしっくり来るので、海外に出て行くようになりました。もちろん初めは僕の事なんて殆どの人が知らない。呼ばれているけど「日本から来たDJのひとり」位にしか認識もされない。それでもプレイが終わったら、「いいプレイだったぜ!」とか、名前を聞かれたり「雑誌の為にインタビューしたいんだけど、何日までいるんだ?」って、色々な人達から声をかけて貰えると「いい仕事したんだな」と思う。そうやって海外でプレイする事で、「自分がやっている事に間違いはない!」と実感出来るようになった事ですね。
だけど、一番大きな出来事は、2003~5年位からデジタル技術の進歩により、DJの方法が一気に変わってきた事。海外のアーティストのプロモーション用のレコードを日本に送る時に、手間とか総合したら2,500円以上かかるし日もかかる。そんな苦労をしても「これ良くない」のひと言で捨てられちゃうし無駄な事が多かったんですが、ダウンロードの時代が来てデータのやり取りがネット上で始まった事で海外とのタイムラグがなくなりました。ひと昔前はレコーディングが終わっても、日本で流通されるまでに半年近くの時間を経て届いていたものは一瞬で届くようになりました。ラグがなくなった事で、「俺もお前と同じ道具と土俵で勝負出来ている。」と、しっかりと思えるし、どこに住んでいてもグローバルスタンダードなDJと同じ事が出来る時代が来たんです。
技術でもPCDJという手法が編み出されて、僕が理想だと思っていた本当に違和感の無い、驚くほどスムーズなミックスとリアルタイムでのリミックス作業が出来る様になった。レコードだと2枚使いでも限界があるけど、デジタルデータでDJすれば、いとも簡単に限界を越える事が出来る。今でもすごく新しい技術がどんどん出てきているので面白いです。
最近のDJブースは基本こんな感じで、機材で場所が足りません。
――ブースに持ち込めるツールが増えてDJのスタイルは多様化されましたが、KOさんは「常に新しいツールでプレイを楽しむ!」というイメージが強くあります。トラクター(Native Instruments社)では雑誌に解説を寄稿していたり、パッチの事で、DJの方が相談なさっているともお伺いしています。
DJは新しいツールが出たら欲しくなると思います。それに男だったらワクワクする興味があるものには手を出したくなると思いますよ。最近だと、皆スターウォーズの予告編が出ただけで速攻食い付いていましたし、iPhoneだって新しい機種が出ると知ったらワクワクしますよね。それと同じです。
――新しいツールはすぐに手に入れて使いこなし、伝えていきたい。それはKOさんが日本を代表するDJという責任感からでしょうか。
いや、面白いから(笑)。後は負けたくない。「KO KIMURAは他のDJよりもっと次元を越えた事をやっている!」とか、「何をやっているのか見ていてもさっぱり判らない!」なんて言って貰えたら嬉しいですし、面白い事は先にやりたくなります。結果的に自分が先にすれば人に教えられます。でも、初めにやるなら教えてくれる人もいないので、全て手探りで失敗は付き物。それら全部ひっくるめて、やっぱりチャレンジする事が面白いからですね。
だけど、ターンテーブルでのスムーズなミックスで自分の腕を魅せるのは視覚的に解り易いので簡単でしたが、PCだとあまりにもスムーズで、やっている事も高度過ぎて、「初めからこんな曲だろう。」って認識されて……PCだとどれだけすごい事をやっているのかを解ってもらえないんです。スキルを伸ばす努力によってスムーズで違和感が無くなっている事を理解してもらうのは難しい。ブース内は以前よりもっと忙しいんですけどね(笑)。
イエローのDJブース。DJするのに快適な空間でした。
MIXCDやネイバーとのコラボCDや教本DVDもリリース。
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