好奇心は止まらない。グローバルスタンダードなDJになるということとは。

――プロDJとして30年を超えた今、これまでの道のりを振り返って感じる事があったら教えてください。

DJを始めた頃から頭の固い人や面倒な説教臭い先輩が周りにいましたが、僕が年齢やキャリアを重ねてベテランと呼ばれる時期になれば、やっている事を認めてもらえると思っていたのに、未だに変わらないままです(笑)。新しい音源を探す事や、最新のツールを使う事に反対される事も多いんです。どうしてもそういう保守的な人達に対して、自分がアンチにもなってしまうし、僕自身も一般の方に流れたくないからしょうがないんですけど。それでもDJを始めてからずっと落ち着かない状態が続いているから、自分の言いたい事が好き勝手言える、もう少し楽なポジションになりたいですかね(笑)。

――私は今回のインタビューで、ずっと落ち着かないKOさんだからこそ、皆の憧れとなり、長いキャリアを築き、いつまでもワクワクさせてくれる魅力があるのでは、と感じましたが……。

僕はずっとストリート系の立ち位置で現場に居たいですね。そして新しい音楽を誰よりも沢山、誰よりも早く見つけて聴いてそれをフロアでプレイしたい。特に今はデジタル技術の進歩がすごくて、レコード盤よりもそっちが面白い。20年以上使ったツールだし、物珍しさも無い。デジタル技術が進歩した事によって、アナログでは絶対無理だった自分が夢に描く様な、完璧で格好良いいミックス出来るようになったし、それ以上の事も出来る様になりました。それに、まだまだ僕が知らない面白い事は沢山あるだろうと思いますしね。新しい事を始める時はだいたい周りには認めてもらえない。これは30数年前にDJを始めた時も「DJにでもなるつもり?」って小バカにされたし、新しい機材やPC等に手を出してきた度に、そういう目で見られたし、言われてきましたからね。でもまあ、先ほど言った様にそれを使命感でやっているというより、新しい事が面白いから、それをどんどん追求してしまう……というのが一番大きいですね。

――最後となりますが、30周年を終えたKO KIMURAの今後のさらなる展望をお伺いさせていただけますでしょうか。

今はアルバム制作と同期しつつ、制作活動を沢山していきたいと取り組んでいます。後は、ナイトクラブのサウンドシステム系のプロデュースを特にしたいです。これは前からずっと思っているので、クラブを作ろうと思っていてアイデアを募集している人はご相談ください(笑)。

DJとして30年、音楽の最前線で生きる。KO KIMURAが歩む軌跡 kk30_q_1_6-1

アジアを頻繁に廻っている時のクアラルンプールでのひとコマ。

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やはり海外では日本を意識したポスターのデザインが多い。

選曲とミックスでは表現したい音が出せるようになったのですが、やっぱり自分が表現したいアンダーグラウンドな音を表現出来る場所を提供する方にまわらないと、本当に自分が出したい音は出せない。海外にあるアンダーグラウンド感溢れるクラブの「音質」を表現出来ている所は国内には皆無だから、そういうクラブを作れば、本来のダンスミュージックの楽しみ方が出来て、アンダーグラウンド感の良さを知って頂けるきっかけになると思います。しっかりとしたハウス・テクノ系の音に特化したクラブだと音の響きが全く違うんですよね。僕が初めてN.Yに行った時に聴いたTRACKSやサウンドファクトリーにトワイロー。ロンドンではターンミルズで行なわれていたTRADEなど、全部その特徴ある音が出ていましたし、よく行く東欧のベラルーシやロシアの◯◯スクみたいな名前が思い出せない様な田舎の小都市の小さいクラブでもその音が出せている。それは設備ではなくエンジニアのセンスの問題だということが解りました。そういう音が出せるクラブが出来たら、明らかに他の国内のクラブとも一線を期したカラーのあるものになると思います。ハイ、ミッド、ロウレンジの音がダンスフロア向きで分離が良くて、空間に映えるような曲も沢山あるけど、それは良いサウンドシステムのクラブで照明とリンクしてこそ効力を発揮出来て、インターネットで最新のミックスを聴いているだけじゃ解らないと思います。

10年程前のロシアでのひとコマ。この位の盛り上がりは無理が無くて僕向き。

例えば、ハウス・テクノだけでなく、EDMにもとても空間に映える曲が多くあります。でも、その本来の特性を生かす箱がない。最初にその辺りにフォーカスしたワンランク上の基地が出来れば、そこでDJも育てられて、そこで流すための曲作りも出来て、「日本にもこんなにやばいクラブがあるのか!」って、海外のDJが来日した時にも、「タダでも是非この箱でプレイしたい!」そう思えるような場所になるはず。実際本当に格好いいから(笑)。

……最高のDJになるために。

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自分がパーティーで体験した素晴らしい事を、自分のDJを通して伝えるのは難しい事ではないですが、そんな体験をしていない人が、どうやってそれをゼロから生み出す事が出来るのか? よっぽどの天才でもない限り難しいと思います。「書を捨て街に出よう」なんて便利な言葉があるように、DJを目指すのであれば、先ずはひと一倍クラブで遊んで、いいDJを聴いたり、感動したりして経験を積んで欲しいです。そうすれば、それを人に伝えたいと思うようになり、再現しようと技術も伴ってくると思います。

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