DJという職業、クラブDJのプレイスタイルの移り変わり。

日本DJ界のパイオニア。KO KIMURAが見てきた国内外クラブシーン30年史 kk30_q_1_1

毎週金曜、そしてたまには火、土曜もDJしていた芝浦GOLDにて。

――現在のクラブシーンは2時間でもロングセットとも言われますが、少し前まではひとりのDJが一晩をかけて物語を作ることが、DJとしての実力や格好良さでしたよね。

GOLDでは夜の8時頃から朝まで一人でプレイして、一晩の間でも終電で帰る一般の方たちに楽しく帰ってもらうための流れを作って、12時過ぎの通なクラバーの為のアンダーグラウンドタイムでの2回目のピークタイムにも、またしっかりと上げていくけど朝方にはお客さんのテンションを見ながら少しずつ落とす。それから終わるまでの1時間ぐらいでキレイに締めるようにしていましたね。1人で9時頃から5時頃まで仕事をして、いつもキッチリ終了時間を守って終えるので、従業員で彼女を待たせていたりしている人にも帰りの時間が見えるので評判が良く「9to5のサラリーマンDJのKO君は有り難い!」と冗談で言われたくらいです(笑)。

日本DJ界のパイオニア。KO KIMURAが見てきた国内外クラブシーン30年史 kk30_q_1_8

MID90’S。NYハードハウス全盛期頃から無精髭が定番に

――現在だと、例えば60分単位でひとりのDJがその時間を担当して、タイプで別れて時間ごとの流れを作っていくのが主流ですよね。

現在は、「この人はダークなDJをするから早い時間」、「この人は上げていくDJだからピークタイムに」。それで盛り上がり過ぎだけなのも内容が薄くなってダメだから、「ダレることがないような選曲が出来るのはこのDJだな」。そうゆう風に、ブッキングマンやオーガナイザーの人ががタイムテーブルを決めていかないといけない時代ですよね。そして本当はそれぞれの時間を任されているDJも、しっかりと「なんでこの時間を任されているのか?」という理由や役割を理解しないといけない。

でも実際は人気で集客はあるけれど、その個々の役割を理解していないDJばかりが集まったり、有名な曲だけしか流さないイベントが多くなったりして盛り上がっているけど、どこも同じで個性が無い感じの所が増えましたね。逆にDJの自己満足だけで全く盛り上がる事がなく、ラウンジで飲んでいる人ばかりでダンスフロアーはダラダラしてつまらないまま終わるパーティーとか。

僕がDJを始めた頃は「盛り上げ過ぎているからドリンクが売れなくて困る。お客を帰らさない様にしながらもうちょっと落とせ。」とか「バーが行列で大変だから、もっと盛り上げてバーから人をダンスフロアーに寄せろ。」なんていうとんでもない指令が上の人から突然来たりして、大変だったんですが、それで随分と鍛えられつつもいい勉強が出来ました。DJがアーティストとして認められた今はそこ迄しなくてもいいですが、でも自分が好き勝手やるのではなく、目の前にお客さんが居て、また自分をサポートして、DJをやらせて頂いているお店の人が居るという意識は持たないといけないと思います。

そしてどの曲もそうですが、特に有名な曲はかける順番を考えて、ちゃんとその良さを引き出すというか、組み立てにより、その威力をもっと大きくしないといけない。それを出来るのがDJの魅力のひとつでもあるので。それを理解しないで、ただ有名な曲ばかりてんこ盛りにして盛り上げる事だけを続けていたり、自己満足で地味な曲ばかりかけていたら、俗に言う「激盛り」はしても、DJやパーティシーンには興味を持って、音を掘ってみようとは思わないですよね。いい曲をもっとよく聴かせたり、知らない曲を「あの曲はなんだ?」と興味を持ってもらって、お客さんがその日、現場に来た時よりも、帰る時に何かプラスになる物を持って帰って頂くのもDJの役割だと思います。

特に、全体の流れや役割を考えて、未来に流行ってヒットチャートを賑わすであろう、今は誰も知らない曲を自分自身で聴いて探してプレイして、自分自身の力で流行らせる。そうゆう努力はいわゆるセレブDJ系の台頭により希有になってきました。DJをやっていたら「俺がこの曲を見つけてきて流行らせた!」なんて言えるのはカッコいいですよね。そうゆうのを今のDJにはあまり感じません。これは否定ではなく、ただただ、残念に思いますね。

日本DJ界のパイオニア。KO KIMURAが見てきた国内外クラブシーン30年史 後編に続く

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