interview:Låpsley
――ステージ衣装はいつもどこで用意するんですか。
最近は「ASOS」から新しく出たラインの「ASOS White」。「COS」みたいな雰囲気なの。「Maison Margiela」も好き。前からよく着ているのは「ACNE」ね。うん、いつもそればっかり(笑)。ちなみに、今履いているシューズは「Christian Louboutin」。
――オフの時も「ACNE」をよく着ているんですか?
「ACNE」は私が働いている時に着る“お洒落着”ね。働いてない時は、黒いジーンズと「COMME des GARÇONS」のトップスなんかを着ている。
――今は音楽漬けの生活だと思いますが、大学に行くのを直前でやめたそうですね。改めて、自分の選択に誤りはなかったと思いますか。
学歴は将来いつでも得られるものだと思っているから、大丈夫。
――あなたのバックボーンについて聞かせてください。子供の頃はレイブシーンにハマっていましたよね。それは周りの友達や家庭環境に影響されたものなんでしょうか。
いいえ、私の友達にはそういう音楽が好きな子はいなかったから、自分からシーンに入っていって輪を広げていった。テクノ、ジャングル・ポップ、ガレージ・ロック、エレクトロニックが好きだけど、なぜかは分からない。ちょっと男の子っぽいところがあったのかも。ライブに通っているうちに新しい友だちができていったわ。
――今考えると、何を求めてそういう場所に通っていたんですか?
わからない。踊るのが好きだったし、ドレスアップするのが好きだったし、お酒を飲んで酔っぱらうのも好きだったから(笑)? 若かったのよ。何となく自由になれたような気がしていた。でも、「なんでこのDJが好きなの?」って聞かれたら、「彼の感覚が好きだから」って答えるでしょう? それと同じことかな。
――当時のミュージックアイコンは誰でしたか。
たくさんいた。ジョイ・オービソン、バンコク、あとはミスター・カーマックにもハマったわ。
――はじめに音楽を教えてくれていた人は誰でしたか?
親が躾に厳しくて、ピアノ、ギター、ドラム……色んな楽器を習わされた。正直言うとレッスンが大嫌いで(笑)。スポーツのほうが好きだったかも。
――ヴォーカルは誰かに習ったんですか。
いいえ。
――誰かイメージした人はいなかったんですか。
どうやって歌えるようになったか自分でもわからない。でも、歌えるの。ほら、学校でも歌う子と歌わない子がいるでしょう。私はよく歌っていたのよ。そういう意味でラッキーだった。もし歌が下手だったら、他の人に歌ってもらっていただろうから。でも、私の場合は作曲のほうが大切かな。
――音楽以外では当時どんなものにのめり込んでいましたか?
スポーツね。セーリングとか、ホッケー。
――運動のセンスはあった?
あったんじゃないかな。ホッケーは州の大会で上位までいったこともあったし。あとはなんだろう、スピーチとか、ディベートをするクラブにも入っていたことがあるわね。とにかく、暇を埋めるために常に何かしていた(笑)。
――人生ではじめて“Station”という曲を書いた経緯について教えて下さい。
さあ、それって、なんで人は曲を書くのかって普遍的な問題だと思っていて、つまり自分が置かれている状況を楽天的に捉えて、問題を乗り越えるためじゃない? もともと“Station”は誰のためでもなくて、自分のために書いた曲だった。
Låpsley – Station (OFFICIAL VIDEO)
――今回のアルバムに収録されている“Operator(He Doesn’t Call Me)”という曲なんて、あまりに率直なタイトルですよね。ご自身で同世代の声を代表しているという意識はありますか?
ええ、嘘はナシよ! 今の私は、政治を語るアーティストじゃないの。フェミニズムのような要素を音楽に取り込むアーティストもいるけど、私は活動家になるために音楽を使うんじゃなくて、自分自身のために使うの。セラピーみたいな感じ。
――ティーンの普遍的な問題を歌うという点ではロード、自身でプロデュースを行うという点ではグライムスを思い出したのですが、彼女たちにシンパシーを覚えることはある?
ロードはまだ聴いていないわね。グライムスの新しいアルバムは好きじゃないけど、『Oblivion』とか、デビュー当時の作品は好き。でも、私は音楽よりも人に対して共感を感じるかな。グライムスも、ライターやプロデューサーとしての側面がすごく好きで。ロードも自分で作曲やプロデュースをしていて、すごくクールだと思う。そういう意味では似た思想を持っていると思うわ。
――グライムスのニューアルバムはポップすぎる?
いや、ポップでもないと思うの。ヨーロッパやアメリカで浸透しているポップじゃなくて、JポップとかKポップっぽい。ポップ・ミュージック自体は大好きなのよ。
――今回のアルバム制作であなたのことを最も助けてくれた人は?
プロデューサーのロディじゃないかな。いちばん一緒にいてくれた人だから。クリエイティブというよりも技術的な面ですごく動いてくれた。私のアイデアを元にして、何をすればいいか教えてくれた。あれほど長い時間を同じ人と過ごすのって、すごく濃厚な体験だったわ。結婚したような気分(笑)。
――はじめにサウンドクラウドにアップしていた曲とアルバムの曲はまるで質感が違うのも、彼のおかげ?
それはロディがいたからじゃない。私がベッドルームのプロデューサーからプロのプロデューサーになったから。
『ロング・ウェイ・ホーム』ジャケット写真
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