2017年リリースのシングル「I Like Me Better」が世界的なヒットとなって注目を集め、最近ではトロイ・シヴァンとコラボレーションしたシングル「I’M SO TIRED…」が(5月の段階で)2億6千万回再生を突破するヒットに。また、それに続く「Drugs & The Internet」や、つい先頃発表されたばかりの新曲「Sad Forever」で、明らかに次のフェーズに入ったことを感じさせもしたラウヴ(Lauv)。彼が5月下旬に待望のジャパン・ツアーを行なった。

サポートはドラムと鍵盤(時にベースなども兼ねる)のみのミニマルな編成ながら、ラウヴ自身がギターや鍵盤を弾いたりして歌い、観客たちは熱狂しながらほとんどの曲をシンガロング。2018年3月の初来日公演からラウヴがライブ・パフォーマーとして飛躍的な成長を遂げていたのが嬉しかった。そしてその東京公演の翌日、都内でインタビュー。前夜の公演のことから、待ち遠しい1stアルバムの話までを聞いた。

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Lauv & Troye Sivan – i’m so tired… [Official Audio]

Lauv – Sad Forever [Official Video]

Lauv – Drugs & The Internet [Official Video]

Interview:Lauv

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――昨夜(5月30日・マイナビBLITZ赤坂)のライブ、めちゃめちゃよかったです。昨年3月に行なわれた初来日公演から著しい進化が見て取れて驚きましたよ。

ありがとう。そう言ってもらえて嬉しいな。

――代官山UNITで観た1年ちょっと前のライブは終始ステージ狭しと動き回っていて、とにかくパッションが溢れ出ていた。今回はというと、盛り上げるところは盛り上げ、抑えるところは抑えてというふうに、場をコントロールする力がしっかりついていたのを感じました。

自分でもそう思うよ。前は闇雲に頑張りすぎてたところがあったね。なんとしても盛り上げなきゃ、みたいな。あと、みんなからどう見られているのか気にしすぎていたところもあったかもしれない。でもあれからライブを重ねていくなかで、自分らしいやり方がだんだんわかってきたんだ。いまは自分らしいやり方に自信を持てるようにもなった。

――ファンのみんなが、ずっと一緒に歌ってましたね。それにずっと熱い声援を送っていて。“ああ、ラウヴはポップスターなんだな”と改めて思ったんですが、それって自分の目指していたことだったりするんですか? それとも想定外?

ポップスターを目指していたわけではないんだけど、なんかそういう受け入れられ方をしてる感じは確かにあるよね(笑)。でもまあ、どういうふうに見てもらいたいかなんて考えすぎてもしょうがないから。自然体の自分のままでやれればいいと思ってる。とりあえず音楽を聴いてくれさえすればOK。

――昨日の東京公演がアジア・ツアーのファイナルだったんですよね。

そう。シンガポール、インド、タイ、フィリピン、香港とやって、残念ながらジャカルタはキャンセルになってしまったけど、それから大阪、名古屋、東京とやってきて。フィリピンは6千人入るアリーナが会場だったし、名古屋は500人くらいでいっぱいのクラブ。まだどうしたってハコの大きさや観客の熱量でパフォーマンスが左右されるところもあるけど、どんな状況でも自分らしくやれるよう心掛けている。けど、やっぱり昨夜みたいにシンガロングが起きると気持ちがアガるよね。

――そうやっていろんな国をツアーで回りながら刺激を受けて、それをすぐに曲にしたりもするんですか?

ツアー中は、曲は書かない。ライブに集中したいからね。でも、行く先々で受けた刺激や感じたことが無意識のうちに自分のなかに貯まっていってるんだろうね。あと、思いついたことや、ちょっとしたメロディなんかはボイスメモに録っている。家で曲を書く際に、そこから発展させていくことはもちろんあるよ。

――去年インタビューしたときに、楽曲制作は家か、またはホテルの部屋にマイクを持ち込んですることが多いと話してましたが、今もそう?

うん。大きいスタジオは逆に落ち着かないんだよね。でも最近、新しい家に引っ越してスタジオも作ったから、そこで制作することが多くなった。そこは自分の居心地のいいように作ったから。置いてある楽器と機材はいたってシンプル。マイクとPCとシンセが2~3台とギターくらいのものだよ。

――楽曲制作において、特にこだわっていることはなんですか?

自分の心に正直であることかな。とにかく、強く心に感じるものじゃなきゃダメだね。たいしたことを感じていないのに、頭で考えて作ろうとしても、残るものにはならないんだ。僕はどちらかというと飽きやすいというか、集中力が長く続かないほうなので、自分の心が動き続けてない限り、曲は断片だけで消えていってしまう。ちゃんと曲として完成させたものは、つまりそれ相応の強い動機があって、それが持続したものってことなんだ。

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――それはメロディに関しての話?

歌詞もメロディもどっちもだよ。そのふたつが合っていないと、無理やり作った感が出てしまう。会話にしてもそうでしょ? 本心と違うことを誰かが言ってたら、それは声色や話し方に出るので、けっこうわかるもんだよね。この人、本当はそう思ってないんだろなって、わかっちゃう。曲も一緒で、本当にその通りのことを強く思っているのかどうかというのは、歌詞にもメロディにも出るものだから。正直じゃなきゃダメなんだ。

――実際、プレイリストとして発表された『アイ・メット・ユー・ホエン・アイ・ワズ・18.』はラウヴの「18歳から23歳までの成長の記録」だったし、そこに自分の恋愛や人生経験をリアルに反映させてました。つまり実体験から書かれた曲が多かったわけですが、もっと物語を描いてみたいという気持ちはないですか?

あるある! 最近は自分の想像力を働かせて曲を書いたりもしてるんだ。想像で書いたものが、正直ではないということにはならないからね。そこにだって自分自身の思いが当然反映されるわけで。以前はそれがうまくできないと思っていたし、それを上手くできる人を羨ましく思っていたけど、最近はできるようになってきたよ。

――質問が変わりますが、以前からいろんな人とのコラボレーションを積極的に行なってますよね。コラボの意義とは?

まず、純粋に楽しいんだよね。ひとつのものに対して、この人はこういう見方をするのか、こういう捉え方もあるのかって、驚きと発見がある。自分からは出てこないものが出てくることの面白さだよね。新しい扉が開かれる感覚というか。

――でも、誰でもいいわけじゃないでしょ?

やっぱり、その人の音楽を自分が好きっていうのが大前提だよね。ジャンルがどうとかっていうのはまったくないけど、好きじゃなきゃできない。ただ、今までを振り返ってみると、“この人とコラボしたい!”と思ってそこに向かって進めていくのではなく、自然な流れで出会って、「一緒に書いてみない?」ってどちらからともなく言い出すみたいなことが多かった。そういう自然な流れのほうがうまくいくんじゃないかな。

――願いが叶うなら、いつか共作してみたい人はいますか?

自分にとっての究極はクリス・マーティンだね。すごく哀しい曲になりそうな気がする(笑)。

――トロイ・シヴァンとのコラボレーション(「i’m so tired…」)は、やってみてどうでした?

実はあの曲、自分で既に書いてあったサビの部分を彼に聴いてもらって、そこから発展させたものなんだ。その前にふたりでゼロから書いたりもしたんだけど、それはうまくいかなかった。で、「こんなのがあるんだけど」って前に書いてあったメロディを聴いてもらったら、すごく気に入ってくれて、その夜のうちにできあがった。そういう作り方をしたのは初めてだったし、いい経験になったね。

――リミックスもこれまでいろんな人がやられてますが、先頃発表された新曲「Drugs & The Internet」はチャーチズがリミックスしてました。あれはどういう経緯で?

僕は高校の頃からずっとチャーチズのファンだったんだ。でも、これは向こうから「一緒にやろう」って話がきて。すごく光栄なことだよね。

――それから今朝(5月31日)、Spotifyを開いたら、「Sad Forever」という新曲が配信されてましたけど、これもすごくいい曲ですね!

イエ~イ! これは1月の終わりに作り始めて、1週間前に完成したばかりの曲。作り始めた頃、僕は少し落ち込んでいてね。その状態からなかなか抜け出せなくて、早く抜け出したい、このままじゃダメだ、なんて思いながら書いた曲なんだ。

――あと、昨日のライブでは「SIM」と題された新曲も初披露されました。あの曲は……。

アルバムに入れる予定だよ。

――その初アルバムは、今、どのくらいできているんですか?

今のところ40曲くらい書いてあって、そこから選び始めてるところだけど、もう何曲か書き足すつもり。今の自分にとっての最高の曲だけを選んで入れたいんだ。できた瞬間、「これ、最高!」って思っても、少しおいてから聴くと「そこまでではないかな…」って感じる曲もなかにはある。そういうのは入れないようにしたい。長く聴ける曲、耐久性のある曲を選びたいんだ。

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――最近の曲、例えば「Drugs & The Internet」や「Sad Forever」を聴くと、明らかに『アイ・メット・ユー・ホエン・アイ・ワズ・18.』の次の段階に入っているように感じられます。自分ではどうですか?

自分でもそう思うよ。自然に進化してるんだろうね。19や20歳で書いた曲と、24歳の今書く曲とでは、表現の仕方が変わるのは当然なわけだし。ものの見方もやっぱり変わってきてるんだね。今のほうが自分らしい表現ができていると感じるよ。ただアルバムに関しては、恐らく新しい自分も入るけど、“あの頃”の自分らしい曲もいくつかは入ると思う。“今の自分はこうなんだ!”ってことばかりをことさらに主張したいわけではないからね。

――わかりました。では最後にちょっとシリアスな質問を。今、世界は混沌としています。アメリカはトランプ政権になって混迷を極めている。アジアも一緒で、例えば先頃あなたがやるはずだったジャカルタ公演は、大統領選の抗議デモと暴動で死傷者が出たりしてキャンセルになった。そういったなかで、音楽にはどういう力があると思いますか? ミュージシャンは何をすればいいと考えてますか?

まず、ミュージシャンに限らず表現者はみな自分の表現を通して考えをしっかり伝えるのが大事だと思う。僕は僕の経験してきたことを音楽にすることで、同じような経験をするだろう人たちに何らかのヒントを与えることができるわけだし、考えるきっかけを与えることができると思っている。また、音楽にすることだけじゃなく、発言をすることも大事だよね。なかには、ミュージシャンは音楽だけやっていればいいんであって、政治的な発言をするのはどうかという考えを持っている人もいる。ミュージシャンにそういう発言をされると醒めるって言う人もいる。でも僕は僕の考えを持っているし、ミュージシャンが政治的な発言をして何が悪いんだって思うんだ。意見の違う人と会話することを恐れる人もいるけど、ちゃんと会話をして、違う考えを持つ者同士が意見をちゃんと伝えあう、理解しあおうとするのは、とても大事なことだと思う。だから自分の考えはしっかり述べるべきだよね。

――そう思います。

ジャカルタ公演をキャンセルせざるをえなかったのは、僕にとってすごく辛いことだった。でも、どうしてそういう判断をしたかを僕はSNSの動画でみんなに説明した。ファンやスタッフが少しでも危険にさらされるのなら、やるべきじゃないと思ったんだ。安全が第一だからね。もしかしたらそれに対して保守的な判断だと思った人もいたかもしれないけど、僕はそう考えて決断した。

――僕もあの動画を見て、気持ちが痛いほど伝わってきたし、自分の言葉でしっかり伝えているのを素晴らしいと思いました。

ありがとう。

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取材・文●内本順一
Photo by Kazma Kobayashi

I met you when I was 18.(the playlist)

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2019年4月24日(水)
¥2,200(+tax)
*CD:2枚組
解説:内本順一/歌詞対訳付

Tracklist

CDー1

1. I Like Me Better

2. Paris In The Rain

3. Comfortable

4. Paranoid

5. The Other

6. Reforget

7. The Story Never Ends

8. Enemies

9. Come Back Home

10. Question(ft. Travis Mills)

11. Easy Love

12. Adrenaline

13. Chasing Fire

14. Breathe

15 . Bracelet

16. Getting Over You

17. Never Not

CDー2

1. i’m so tired…

2. There’s No Way

3. Superhero

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