対談

今年10月に最新作『Quality Over Opinion』をリリースしたばかりのルイス・コール（Louis Cole）が、約4年振りの来日ツアーを敢行。追加販売分まで瞬く間にソールドアウトする盛況ぶりで、日本のファンがどれだけ彼のライブを待ち望んでいたのかが伺える。

15歳にして新しい地図 join ミュージックへ“#SINGING”を楽曲提供するなど若くして注目を集め、19歳となった現在は音楽制作の継続はもちろん、東京2020パラリンピック閉会式出演、音楽制作を担当するなど活躍の場を広げるシンガーソングライター／トラックメイカー／DJ／フィンガードラム奏者・SASUKE。彼もまたルイスの来日ツアーを待ちわびたファンのうちの1人と言って差し支えないだろう。兼ねてよりルイスの影響を公言しており、前回の来日ツアーの時（2018年）にはルイスへのリスペクトを込めたオマージュ曲をSNSに投下したことでも話題を集めた。今回のツアーも、名古屋公演（ツアー初日）と東京公演の2日目（ツアー最終日）の2度に渡ってルイスのビッグバンドセットによるライブを堪能したという。

拍手が鳴り止まず、おそらくは予定していなかったであろうダブルアンコールも行い、たくさんの笑顔とともに締めくくられた＜LOUIS COLE BIG BAND for JAPAN TOUR＞最終日の翌日、二人の対話に立ち会った。

Louis Cole　今は19歳？

SASUKE　そうです！　久々にライブを観ることができて嬉しかったです。2回も観れたのがまた良くて、その日によって少しずつフィーリングが違っていて、すごく贅沢な時間でした。

Louis Cole　ありがとう！

SASUKE　やっぱり生のドラムがすごく身体に響きました。

Louis Cole　そう言ってもらえて嬉しいよ。

──実際にツアー中に意図して変更を加えた部分などはあったんですか？

Louis Cole　曲そのものをどこか変えたというのはなくて、基本的には一貫性があるものだと思うんだけど、一番の大きな違いは自分の歌声にまだ慣れていなかったってことかな。マイクを通してスピーカーから自分の歌声を聴くっていうのは、普段話していたり歌っている声を内側から聴くのとは全然違う感覚だから、まだそれに慣れない感じ。名古屋のときはすごく声がうわずっていたような気がするよ。

SASUKE　僕は名古屋公演と最終日の東京公演をどちらも観ていて、個人的には名古屋の方が緊張感はあったんですけどベストテイクだなと思いました。最終日の方は弾けているというか思いっきり全員が楽しんでいて、幸福感があって良かった。

Louis Cole　その通りで、昨日はもっとリラックスしていたね。

SASUKE　衣装も変わっていましたよね。

Louis Cole　昨日は「スーパーマリオカート」風だったね（笑）。

──衣装にこだわりはあるんですか？

Louis Cole　あのスケルトンのスーツはかなり長いことステージ衣装として使っているんだ。元々はすごく安くて手に入りやすかったというだけの理由で着始めた。でもせっかくの東京公演だし「スーパーマリオカート」風にしたいなと思ってね。「スーパーマリオカート」の音楽は自分にとってすごく影響の大きいものだから、それを示したかったのさ。

SASUKE　それこそ、ルイスが何に影響を受けたのかはずっと気になっています。歌詞や世界観にまだ謎な部分があると思いまして。

Louis Cole　子供の頃から任天堂のゲームをプレイしてきていて、特に「スーパーマリオカート」や「スターフォックス」、「ストリート・オブ・レイジ（ベア・ナックル）」は好きだったよ。ゲーム音楽は子どもの頃から親しんできたから、自分のサウンドのどこかにあるものだと思う。この音楽を構成しているのは主にシンセサイザーのシンプルなサウンドやノイズだったりするけど、よく聴くとコードやハーモニー、メロディ、ビートにしてもクオリティが高いんだ。

──SASUKEさん的に今回観た2度のライブパフォーマンスの中で高まった瞬間をしいてあげるなら、どこになりますか？

SASUKE　タイミングから何からめちゃくちゃ自由にやっていると思うんですけど、最後は絶対に完璧に締まるんですよね。それはルイスにしかできないものというか。あと曲順的に、最後に“When You’re Ugly”で終わったりと、盛り上げ方にグッときました。ルイスのライブを観ていると、そこから学ぶというよりも自分を磨けと言われているような気がするんです。オリジナルを磨け、と。それに触発されて「頑張ろう！」って思いますね。

Louis Cole　これからどんなことをステージでやってみたいと思ってる？

SASUKE　今は自分がやりたいことがいっぱいあって、持て余しているような気がしています。なんというか、オリジナルな、自分にハマるようなものを見つけていきたいなと思っています。まだ見つかっていないんですけど、ルイスを見るとそれがはっきり分かっているなっていう感じがして。そういうところにも憧れています。

Louis Cole　どうやって自分のやりたいことや方向性が見つかったのか、自分でもよくわかっていないんだけど、とにかく音楽をたくさん聴くことによってクリアになった部分がすごく大きい。何が好きかというのは自分でよく分かっていると思うんだけど、何が嫌いかなのかを探して、どんな音楽が嫌いで絶対にやりたくないものを見つける努力をしたかな。そうすると自分自身に正直でいられる。好きなものが本当の自分であるのは間違い無いけど、嫌いなことややりたくないことを決めていくことも大事なのかなと思う。

あと僕は考えを巡らせることが多いから、とにかく頭の中をクリアにすることを心がけていて、例えば1日7～8時間も動画や携帯をダラダラ見ないというのを決めてる。シャワーを浴びているときや散歩をしているとき、料理をしているときに急に頭の中がクリアになって、ぐちゃぐちゃっとしていた考えがまとまったりするから、そういった時間を大事にしているよ。人によってはいろんな情報が入ってくることにメリットを感じる人もいると思うけど、僕の場合は雑音になって頭の中がすごくこんがらがってしまうから、クリアな状態を保てるように心がけてる。ただSASUKEの場合は才能もあってとても若いから、何事にもオープンでいた方がいいんじゃないかなとも思う。好きなものは好きでいいし、僕のように嫌いなことまで限定する必要は全くなくて、もっとオープンでいた方がいいんじゃないかな。

SASUKE　ありがとうございます。

──たくさん他にも話したいことがあるかと思うんですが、次の質問が最後になってしまいそうです。

SASUKE　聞きたいことはいっぱいあるんですけど……とにかく最新作『Quality Over Opinion』がすごく良い作品なんです。アルバムにはストックしてあった素材を完成させた曲もあったと思うんですけど、新しい曲でも過去のご自身のオマージュをやっているような気がして。そういった意識はあったんですか？　もしもあったならファンとしては完璧というか、参りましたという感じです。

Louis Cole　ありがとう！　その通りで、いくつかの曲の中には過去の自分や自分の作品を投影した部分があると思う。ただそれは意図してやったわけではなくて、過去の自分が自然に新しい曲の中に現れているような気がするかな。

SASUKE　ああ、あとジャック・コンテ（Jack Conte）の影響がどういったところにあるか、聞きたいです。

Louis Cole　彼なしでは今の僕はいないと言っても過言ではないよ。僕は音楽が大好きだったけど、音楽を作る側になれるとは思ってもいなかったし、クリエイターや音楽を作っている人はずっと雲の上の存在だった。それでも自分で音楽を少しづつ作り始めていたときに、彼が「君は絶対に音楽を作った方がいい。YouTubeでもなんでも音楽をリリースした方がいい」と背中を押してくれたんだ。本当に真剣に僕に向き合ってアドバイスをくれた人で、彼なしでは今の僕はいないから、彼にはものすごく感謝しているよ。

SASUKE　ありがとうございます。YouTubeも本当にめちゃくちゃ昔から観ていました。

Louis Cole　メールアドレスはあるかい？　ぜひ作ったものを送ってよ。

SASUKE　もちろんです！