Interview:LULU X(IMALU)×今野里絵(Havit Art Studio)×吉村界人
ものすごい透明感のある声だなと。とにかく声のトーンが印象的でした。その声の圧倒的な透明感のあるニュアンス、あと女の人の危うさ、繊細な感じを映像にしてみたいなと思いました。 今野
もちろんIMALUさんのことは知っていましたけど、ああいう局面でお手紙を書いて人に渡すって、むちゃくちゃかっこいいなって。自分に置き換えて考えたんですよ。俺はやるだろうかって。絶対やらないだろうなって。 吉村
あの曲はさっきみなさんが言ってくださったように「切なさ」というのがまさにテーマで。10代の時に一番最初に付き合った人、はじめて恋愛というものを教えてくれた人のことを出発点に、過去の恋愛を思い出しながら書いたんです。 LULU X
——この3人が集まるのは、撮影以来でしょうか?
LULU X 実は私が撮影の現場に行けなかったので、3人集まるのは今日がはじめてなんです。今回、界人さんに出演していただいたのも私が勝手に熱烈にお願いして実現させてもらったものだったので、撮影に行けなかったのは本当に悔しくて……。
LULU X どういう映像にするかとチームで打ち合わせをしている時に、最初から今回、私は出演しないですと言っていて。アーティストを全面に打ち出すものではなくて、何かひとつの世界観を持っていて作品として完結しているような映像がいいなと。そんな時にLick-Gさんの“Trainspoptting”のミュージック・ビデオを観て、すごい素敵だなって思って。願わくばこれを作った方にお願いしたいということで、ダメ元で今野さんにオファーをさせていただいたんです。しかもスケジュール的にはかなりギリギリという、すごいお願いだったんですけれど(笑)。
Lick-G – Trainspotting (Official Music Video)
「Havit Art Studio」今野里絵(以下、今野) かなりギリギリでしたね(笑)。
LULU X ですよね、すみません(笑)。
——今野さんは最初に楽曲を聴いて、どのような印象をお持ちになったのですか?
今野 ものすごい透明感のある声だなと。とにかく声のトーンが印象的でした。その声の圧倒的な透明感のあるニュアンス、あと女の人の危うさ、繊細な感じを映像にしてみたいなと思いました。実際に映像になっている白ホリのところのライティングのイメージは、すぐに浮かびました。でも1回目の打ち合わせの時に、私は行けなかったんです。その時に大橋(Havit Art Studio所属)からIMALUさんがご覧になっているというミュージック・ビデオの共有を受けたんですけれど、私も全部観たことがあるもので。わ、一緒だって(笑)。
LULU X そうだったんですね! こういう感じのイメージで撮ってほしいという参考のミュージック・ビデオをいくつかお伝えさせていただいたんです。それをすでにご覧になっていたということですよね。その話は知りませんでした。すごい(笑)。だからこその目線や写し方が沢山ありますよね。
——今回、吉村さんに出演をオファーした理由はどういうところだったのでしょうか?
LULU X すごいお洒落なカップルという絵面が頭の中にあって、じゃあ誰がよいのかと考えた時に、強烈に自分の世界観を持っている方がいいなと漠然と思っていて。で、いろんな人に「いまイケてる人って誰ですか?」って聞き込みをしている中で、『NYLON JAPAN』の宇都宮さんという編集者の方に、界人さんのことを教えていただいて。その他にもいろいろな方にアイディアを頂いていたんですけど、界人さんの写真を見た時に絶対にこの人にお願いしたいって思ったんです。他の候補はありませんでした。会ったこともなかったんですけど、自分の勝手なインスピレーションでオファーをさせて頂きました。絶対に出てもらいたいなって。
——どうですか、吉村さん(笑)?
吉村界人(以下、吉村) とても嬉しいですね。でもちょっと荷が重いというか……(笑)。最初に曲を聴かせていただいて、これは僕じゃ無理なんじゃないだろうかって思ったくらい、繊細というか、壊れそうなガラスのようなイメージがあったんです。僕は正反対の性格というか、大雑把というか、かなり雑なんですよ。正直、焦ってました。
LULU X そうだったんですか(笑)。1日目の撮影に立ち会えなかったので、界人さんとジュリアさんにお手紙を書いたんです。
吉村 あのお手紙は本当に嬉しかったです。いまでも部屋の真ん中に置いてありますから。
LULU X 絶対に置いてないでしょ(笑)!
吉村 いやいや、本当ですよ(笑)! ああいうお手紙をもらったことがないので。すごくかっこいい方だなって思いました。『A-Studio』(TBS系テレビトーク番組)が大好きだったので、もちろんIMALUさんのことは知っていましたけど、ああいう局面でお手紙を書いて人に渡すって、むちゃくちゃかっこいいなって。自分に置き換えて考えたんですよ。俺はやるだろうかって。絶対やらないだろうなって。
LULU X ありがとうございます。
——今野さんはこういう吉村さんを撮りたいといったイメージはあったんですか?
今野 今回のミュージック・ビデオは抽象的な感じで、何かをしているという動作的なことよりも、心象描写というか……、言葉にするのが難しい部分なんですけれど、刹那的な感じを撮りたいなと思っていました。いまは愛し合っているんだけど、ずっと続かない悲しさや不安だったり、どこか影があるというか。
吉村 それは撮影中もおっしゃっていましたね。
——たしかに、このミュージック・ビデオには、いろいろなカップルが出てきますが、みんなどこか影がありますよね。そのニュアンスを具体的に映像に落とし込むために、どのような技法を使われているのですか?
今野 エンディングに向かって決して上がっていくわけではなく、切ないまま、低空飛行でいくという流れはイメージとしてありました。自分がそもそも暗い人間なので(笑)、その感じはわりと自然に出せたんじゃいかなと。ホリのシーンは色彩で切なさを感じてもらえるように撮影しました。
LULU X いやぁ、すべてをキャッチしてくれてますね。すごい。ちなみに暗いんですか?
今野 たぶん、暗いと思います(笑)。家からあんまり出ないですね。
LULU X 家で何をやってるんですか?
今野 猫と遊んでます。
LULU X 界人さんは休みの日は?
吉村 僕も基本、ひとりで家にいることが多いです。考えていることとか、パソコンに書いたり。
LULU X 日記みたいな?
吉村 思ったこととか、頭にあることを、徒然と書く感じです。僕たちの仕事って誰かが書いたものを喋るじゃないですか。だから仕事では自分の言葉を喋れない。それがフラストレーションになるわけではないんだと思いますが、自分の言葉を書いているとなんか気持ちがいいというか。
LULU X なるほど。それは誰かに読ませるためのものではなく?
吉村 そうですね、あくまで個人的な。だからいろいろ赤裸々に描いています。IMALUさんは作詞をするときどのようにされるんですか?
LULU X 私はメロディをいただいてから書くので。言葉が先に出てくるという感じとはまた違いますね。
吉村 《自分のパズルのピース 間違ってないよね》という歌詞がありますけど、あれはどういう意味なんですか?
LULU X あの曲はさっきみなさんが言ってくださったように「切なさ」というのがまさにテーマで。10代の時に一番最初に付き合った人、はじめて恋愛というものを教えてくれた人のことを出発点に、過去の恋愛を思い出しながら書いたんです。その時は、こんなに人のことを好きになれるんだってくらい好きになるんだけど、終わりがあって、そんなことを繰り返すわけですよね。もちろんそうじゃない方もいると思いますけど。でもそんなにすごく好きになって、最高に楽しい時間を過ごすのに、なぜ人って別れてしまうんだろうって思って。いったいどこでパズルのピースを間違ってしまったのか? 間違ってないよね? って自分に言い聞かせながら書いた歌詞です。
吉村 なるほど。すごく腑に落ちました。
——吉村さんはどうしてそこの歌詞が気になったのですか?
吉村 何度も出てくるし、すごく印象に残ったんですよね。僕も文字を書くのが好きで、歌詞ではないけど、それに似たようなものも書くので、印象に残る言葉が出てくると、その真意のようなものが気になりますね。
LULU X いまおいくつでしたっけ?
吉村 24歳です。
LULU X お仕事はいつから?
吉村 3年前ですね。
LULU X それまでは何をされていたんですか?
吉村 それまでは……、家にいました。
LULU X 家に(笑)。家で何をされていたんですか?
吉村 家で本を読んでいました。
LULU X 学校は?
吉村 少し行ってやめてしまって……。
LULU X そこからどうやって俳優さんの道に?
吉村 なんでしょうね。やっぱり映画とか好きだったからでしょうかね。
LULU X ずっと家にいても俳優さんになれないじゃないですか。道はどうやって切り開いていたんですか?
吉村 いろいろな会社を調べていたら、たまたま今の事務所のワークショップオーディションがあるというのを見つけたので、そこに参加しました。
LULU X すごい。界人さんと今野さんは以前にもお仕事されているんですよね?
今野 そうです。他のミュージック・ビデオ(タイプライター&YMG “Let me Know feat AK-69 & KOHH”)でご一緒させていただきました。その時に界人くんに泥棒、というか強盗に入る役をやってもらったんですけど、アドリブで靴の臭いをかぐ動作を入れてきたんです。強盗なので靴を盗むんですけど、その「盗んだ靴が最高だ」という表現として、アドリブで臭いを嗅ぐんですね。その発想というか、センスがすごいなって思って。
吉村 本当ですか、そのアドリブは覚えてないです(笑)。
今野 じゃあ、自然と出てきた動作なんでしょうね。もっとすごい(笑)。
LULU X 映画やお芝居とミュージック・ビデオって演じ方に違いはありますか?
吉村 基本は一緒かなあと思うんですけど、言葉がないのは独特というか、難しいですね。例えば「うるせえんだよ」っていう台詞を、言葉を使わずに、表情やアクションや雰囲気で表現しなくてはいけないわけで。台詞に頼らない芝居というか。
LULU X なるほど。界人さんの演技はもちろんですが、今回、今野さんが撮ってくださった映像って、寡黙でありながらも、世界観や物語を持っているというか。あの独特の映像の世界観はどのように作り出すんですか?
今野 今回、ハンディカムを使って撮影したんです。あれって自分の彼女をかわいいって思って撮ったり、親が自分の子供を撮る感じのカメラの動きなんですよね。ものすごくパーソナルでリアルというか。だからごまかしがきかなかったです。それっぽく映るかどうか検証したり、結構練習したんですよ。今回は私的にも発見の多い撮影でした。普段は見えてこないものが見えてきたというか。
LULU X どういうものが?
今野 間に機材とかテクニックとかをいろいろ介してしまうと、対象の生の魅力や想いがだんだん薄まってしまうことがあって。今回はカメラを手で持って、その手振れの感じさえもダイレクトに伝えようとしているので、非常に生々しいというか。プロの撮影では削られてしまったり、映さないようなニュアンスが出ていると思います。
LULU X なるほど。今回はLGBTのカップルにも出てもらっていて。みんな本当のカップルで。現場で今野さんは「こういうのを撮りたかったんです」って言ってくださったじゃないですか。あれってどういうところに共感してくださったんですか?
今野 カップルというとやっぱり男女の若いカップルをイメージする方が多いと思うけど、世の中にはいろいろなカップルがあるし、性別だけではなく、年齢もそうだし、もともともっといろいろなカップルを撮りたいって思っていたんです。その辺ってこちら(撮影チーム側)から提案することでもないので、今回はIMALUさんが提案してくださって、我が意を得たりという感じでした。
LULU X 私も今野さんがそう言ってくださって、すごく嬉しかったんですよ。それも無理やりな感じではなくて、とても自然な形で入れることができて、さすがだなあと。
——最後になりますが、IMALUさんに。このミュージック・ビデオをご覧になっての感想は?
LULU X 最高です。自分のイメージにあったものよりも、はるかに素晴らしいものが出来上がり、感無量です。みなさんに本当に感謝です。今回おふたりにこうやって話を聞いて、かなり深いところで楽曲からいろいろと汲み取っていただいていたんだなというのがわかり、さらに感激してます。本当にありがとうございました。
RELEASE INFORMATION
LULU X ミニアルバム『Do I』
2017.06.20(金)iTunes 配信限定リリース
LULU X
¥1,050(Single:¥250)
M1:Do I
M2.Everything’s A Blur But You
M3.Be Mine
M4.Original
M5.You Ain’t Gonna
M6.Where Are You Now(4.28(金)先行配信)