NITRO MICROPHONE UNDERGROUND、また最近では東京弐拾伍時のメンバーとして活動する傍ら、ソロとしてラップはもちろん、DJや楽曲プロデュースも精力的にこなすヒップホップレジェンドMACKA-CHIN。そして昨年リリースした『CITYGIRL 2015』の7インチが即日完売するなど、現在話題沸騰中のTSUBAME、SIKK-O、JYAJIE、DULLBOYからなるTOKYO HEALTH CLUB

先述の“CITYGIRL”のリミックスをMACKA-CHINが手がけたことを機に邂逅した両者は、今回MACKA-CHINがリリースする“ズラカル/理屈じゃなくて感じるSympathy”収録の“ズラカル feat. TOKYO HEALTH CLUB”を共作。MACKA-CHINが「明るい曲が作りたかった」として制作した本作は、90’Sヒップホップテイスト溢れるクラッシックな楽曲。またTOKYO HEALTH CLUBも“ズラカル”発売同日にニューアルバムからの先行シングルカット“ASA”をIllicit Tsuboiによる完全ネクストレベルなリミックスと共に7インチでリリース。

共に日本語ラップシーンの異端児同士と称される両者による初の対談が実現!

Interview:MACKA-CHIN × TOKYO HEALTH CLUB(TSUBAME、SIKK-O、JYAJIE、DULLBOY)

MACKA-CHIN×TOKYO HEALTH CLUB 日本語ラップシーンの異端児同士による初の対談が実現! music160413_mackachin_1

ーーMACKA-CHINさんとTOKYO HEALTH CLUB(以下:THC)の出会いは、THCの“CITYGIRL”のリミックスをMACKA-CHINさんが手がけられたことが最初ですか?

MACKA-CHIN そうだね。もともと共通の知り合いから「すごいやつらがいる」とは聞いていて、名前もインパクトがあるから知ってはいたんだけど。略してTHCだし、はじめは〈Young Thug〉みたいな怖い系の連中だと思っていたの(笑)。でも実際はそんなこと全然なくて。彼らは言葉のチョイスの仕方が今の日本語ラップの流行りとは違っていて、予想外の言葉が飛び出してくるのが面白いし耳につく。俺は言葉遊びを大事にする世代だったから、そこに通じるものを感じるんだよね。今の子たちって、例えば放送禁止用語的な言葉をそのまま言っちゃうとか……、言葉が直接的でしょ。それが今のトレンドでもあるんだけど、俺らはそれを間接的に想像させるような言葉を選んできたから。ニトロでもとにかくメンバー間でふざけあいながらツーとカーで作品を作ってきたけど、THCにも同じものを感じるし、彼らにしかないオリジナリティもあるのがいいよね。みんな美大出身らしいけど、音と言葉をツールにしながら、アートのフォーマットで音楽をやっているように感じられて面白いんだよ。

SIKK-O MACKA-CHINさんたちが出てきた時代のヒップホップ感は、僕たちも意識している部分はありますね。ただ正直、僕らは後追いでヒップホップを聴いてきたので、ただ単に最新のヒップホップについていけてないんですよ(笑)。

TSUBAME そうね、俺らの中では今まだ2000年くらいかな(笑)。だから最新のトラップとかを理解できない部分があるし、1990年代から2000年代初頭のヒップホップが、僕らの中で“ヒップホップ”という認識なんです。

MACKA-CHIN でも俺はそこが芸術的な感性だと思うんだよ。今TSUBAMEが言った時代のヒップホップって、ジャズからもロックからもサンプリングするし、ジャンル問わず吸収して作品に落とし込んでいったわけ。「ヒップホップ以上に素晴らしいジャンルはない」と言われていた時代でさ。あらゆるものを吸収して自分達の作品にするというスタイルはアートだと思うし、THCとは10歳くらい歳が違うけど、今彼らがそういった部分に共感して活動しているというのは俺にとっては嬉しいことだな。俺はそこに美大生の感性を感じるんだけど。

DULLBOY 自分達では全く意識してないんですけどね。歌詞を書く時にも、いわゆるヒップホップやストリート的なワードが全くでてことなくて、単純に普段使っている感じの言葉になっちゃう。ヒップホップっぽい“ワルさ”ってかっこいいなって憧れはありつつも、こういう言葉しかでてこないからそれを何とか形にしようとした結果なんです(笑)。

JYAJIE でもその分、韻は固めにするように心がけてはいるんです。そうじゃないとただの作文になってしまうので(笑)。

MACKA-CHIN×TOKYO HEALTH CLUB 日本語ラップシーンの異端児同士による初の対談が実現! music160413_mackachin_3

TSUBAME 酒、女、ドラッグ、みたいなヒップホップ的なワードやスタイルではなく、音と言葉で自分達が思うヒップホップを表現しているのかもしれないね。

DULLBOY 人前でライブするようになったばかりの頃は、よく「君らってヒップホップなの?」って馬鹿にされることも多くて(笑)。最初は俺らも意地になって、「自分達もヒップホップだ!」という気持ちでやっていたんですけど、今では逆にヒップホップなのかどうかなんてことはどうでもよくなっています。

MACKA-CHIN でもTHCの作品は本当によく作り込まれているよね。俺達の時代と違って、今や誰もが自分達で曲作りからアートワーク、ビデオの制作まで自分達でやるようになっているけど、作るものが多岐に渡っている分、広く浅いというか、雑な部分が目立つ子達が多いと思うの。その点、THCの“ASA”のビデオとか衝撃的だったもん。「これどうやって撮ってるの!?」って何回も見直しちゃった。そういう意味で、やっぱりTHCは抜きん出ていると思う。真面目に、丁寧にクリエイトしているなと感じるよ。

TOKYO HEALTH CLUB – ASA (official MV)

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