近年は、『台風家族』や『サマーフィルムにのって』といった映画作品でその演技に惹かれた方も多いかもしれない。
2010年代半ば、当時小学生だったMappyはインスタグラム発のファッションアイコンとして注目を集めた。その後、2018年に17歳でジャズピアノ作品『PLANKTON』をリリース。新進ジャズ・ピアニストとして、ビバップへの愛と敬意を存分に込めたその鮮やかな表現にジャズリスナーが沸いた。そして今回、アーティスト名を“甲田まひる a.k.a. Mappy”から“甲田まひる”へと変え、彼女はシンガーソングライターとして再デビューする。ヒップホップを主軸としたビートミュージックをベースに、音楽性は大幅に転換・刷新された。
今回のデビューEP『California』は、自身がいまリスナーとして惹きつけられているというラップミュージックはじめ、USのポップスやJ-POPなどをリファレンスに甲田まひる独自の感性でパッチワークがなされたチャレンジングな作品に仕上がっている。制作にジョインしたのはGiorgio Blaise Givvn。Qiezi MaboのプロデューサーやBIMとの共演で知られ、コアなヒップホップヘッズから熱い支持を得る彼の参加は、予想通り本作を先鋭的なトーンに仕上げている。ベースは新井和輝、ドラムは勢喜遊といったKing Gnuの面々が参加し、ギターは映像作家の山田健人が担った。この作品でしか実現し得ない、面白く意外なチームである。
甲田まひる – 『California』
様々なジャンルがつぎはぎされ、歌とラップが繰り出される表題曲“California”について、甲田まひるは「一人K-POPみたいな感じ」と言う。例えば、2021年に大きな話題を呼んでいるK-POPアイドル・aespa(エスパ)の“Savage”を思い出してみよう。単純なポップスとしての受容を拒否するようなめまぐるしい曲展開に、各メンバーが入れ替わり立ち替わり現れ、情熱的な歌とクールなラップを表現する。先鋭的なヴィジュアルワークによってその音楽性は混沌としたムードを際立たせ、そこに辛うじてポップなフックが通貫することでぎりぎりポップミュージックとしての強度を保つ。
甲田まひるの“California”は、そういったぎりぎりのポップミュージックとして成立しているように思える。執拗に繰り返される《California》というフックは、本人曰く「好きすぎてただ言ってるだけ」の場所とのことだ。意味のないワードが反復されることで、“意味があるような”違和感が立ち上がってくる。
このチャレンジングで、面白いポップミュージックが生まれた背景を本人にじっくりと語ってもらった。ついこの間まで小学生だったMappyは、ジャズピアノを弾いていた甲田まひる a.k.a. Mappyは、二十歳になった大人の女性の甲田まひるとして、“今”のリスナーとしての感覚をベースに率直に胸の内を語ってくれた。途中、同席していたGiorgio Blaise Givvnもインタビューに合流し、貴重な制作秘話を話してくれている。
INTERVIEW:甲田まひる
展開は“一人K-POP”のイメージ
──ジャズ・ピアニストとして2018年にアルバム『PLANKTON』をリリースしましたが、改めて今回シンガーソングライターとしてEP『California』でデビューされます。大きく作風が変わりましたが、まずはここに至るまでの経緯を教えてください。
甲田まひる(以下、甲田) 5歳からピアノをやっていて、9歳からジャズを勉強し始めたんですけど、そこからはジャズ・ピアニストになりたいという気持ちが一番強かったです。ファッションの仕事もやりつつ、ジャズのピアニストとして今後何ができるんだろうっていうことを考えてきました。
でも、『PLANKTON』を出す前にヒップホップに出会って、そこで自分の音楽観が大きく変わったんです。そのきっかけがローリン・ヒル(Lauryn Hill)とかア・トライブ・コールド・クエスト(A Tribe Called Quest)とかの90年代のヒップホップなんですけど、まずはそういった音楽性を自分の演奏に落とし込めないかなと考え始めたんです。ロバート・グラスパー(Robert Glasper)とか、すでにヒップホップを生楽器で演奏するみたいなことをやっている人たちがいたので、そういう人たちに影響を受けました。
同時に、アリアナ・グランデ(Ariana Grande)とかいわゆるアメリカのヒットチャートに入るようなポップスも聴いていたので、自然と自分自身も歌ったりラップしたりっていうことにも興味が湧いてきて。『PLANKTON』を出すタイミングでは、次はそういうことがしたいと思っていました。そこから、3年間くらいずっとデモを作っていましたね。
──聴く音楽と実際にご自身でやりたい音楽が別だったところに、それまで好んで聴いていたヒップホップを「やりたい」と思われた理由って何だったんでしょうか。
甲田 ア・トライブ・コールド・クエストの影響が一番大きくて、ジャズのサンプリングが使われているところに魅力を感じました。家でも、ビートをかけながら自分でピアノを弾くことから始めていって。そうするうちに、段々自分もラップしたいって思うようになりましたね。
──なるほど。となると、今回収録された“California”や“Love My Distance”といった曲はどのような構想から曲作りを始めていったのでしょうか。曲のストックはけっこうあったんですか?
甲田 ビートを自分で作って、その上に簡単にコードを乗せて、短いモチーフみたいなものをたくさん用意していました。その中から、一番最初に出す曲はどういう感じのものがいいんだろうと考えて選びましたね。最初に出す曲としては、今までやってきたジャズや、大好きな複雑なヒップホップ、そして今後やりたいポップスをうまく混ぜてグラデーションさせたい、と思ったんです。まだ完成していない曲もたくさんあるんですけど、今後どのタイミングで出すか悩んでますね。
──J-POPやヒップホップ、エレクトロニックなサウンドなど、様々な要素がパッチワークされた面白い曲に仕上がっていますが、それらは初めから狙いとしてあったんですね。
甲田 そうですね。“California”に関していうと、最初はもうちょっとシンプルな構成でした。元の楽曲はEPに収録されている4曲目のデモ版“California_demo@201113”に近いんです。クラブミュージック寄りのサウンドだったのですが、私がとにかくアレンジを重ねていくのが好きなので、「どうせならもうちょっとキャッチーなのが欲しいな」と思ってサビをぶちこんだりしましたね。
一方でK-POPもすごい聴いていたので、そういうアレンジも入れたいなとか。歌詞の世界観でも、《どこで生まれても私だけの勝手》《何が本当か分からないから》の部分はこの曲のジャンル展開の多さとリンクしていると思うし、だったら全部別の人が歌ってるくらいに繋げていった方が面白いんじゃないかと思ったんです。
──そういうことだったんですね。いや、ほんとに曲展開がめまぐるしくて、チャレンジングだなと思いました(笑)。
甲田 そうですよね(笑)。でも、リスナーの方からどういう反応が来るのか本当に分からなくて。若い世代の人たちって、イントロが短い方が飽きないとか、サビが頭に来た方が曲が印象に残るとか、少なからずそういう傾向にあると感じていて。私も同じで、そうではない楽曲に飽きちゃうことが多いんです。新しい色んな展開が次々に来る方がいいなっていうのが若い子たちの感覚としてあるなと。楽曲を作っている時に、ここまでくるともう本当に何でもありなんじゃないかなっていう感覚はすごくありましたね。
──展開の多さという点では、今回ラップにも挑戦されています。
甲田 ラップも好きでこれまでもよく聴いていたんですけど、最近はK-POPがラップをどんどん取り入れてるじゃないですか。1番が「Aメロ→Bメロ→ドロップ」と来て、2番のAメロがラップっていう展開がもう当たり前になっている。なので、そこはもうマストでした。自分でデモを作る時も、仮でなんちゃっての英語とか韓国語を使ってまずフロウから入れていって、それを日本語に変換する作り方をしました。
──リスナーとして聴いている時のパーソナルな感覚を、かなりご自身の曲作りにも反映されていますね。ラップをされる際に、特に意識したことはありますか?
甲田 いやぁ、思った以上に大変でした(笑)。私、AbemaTVの『ハイスクールダンジョン』で審査員をやらせていただいてたんですよ。そういう経験からもすごく影響を受けていますね。今回の“California”はもはや「一人K-POP」みたいな感じになっていて。ラップはAメロ、Bメロとはまた別の人が出てくるイメージなんです。できるだけ地声で強くラップしたいっていうのがあったし、カーディ・B (Cardi B)とかバッド・ベイビー(Bhad Bhabie)とかが大好きで聴くんですけど、ラップするときには彼女たちの自信に満ち溢れてる感も参考にしましたね。
──“Love My Distance”ではラップっぽく歌われているパートもあって、フロウをかなり吸収して自分のものにされていますよね。
甲田 ラップを考えている時が楽しいんですよね! ラップになっただけで、強めのことも何でも言えちゃう感じがする。他のパートとの落差も作れるし、音楽的にすごく広がりますよね。“California”も“Love My Distance”も、もともと英語でリリックを書いている部分が多くて、そこに日本語をあてはめています。でも“Love My Distance”のラップの部分はさすがに日本語に当てはめるのが難しかったので、英語のままにしました。
新井和輝、勢喜遊、山田健人……
繋がりからチームとなったバンドメンバー
──ラップミュージックという観点では、Giorgio Blaise Givvnさんが制作に参加されているのも驚きでした。どういった繋がりがあったんでしょうか?
甲田 (OKAMOTO’Sのオカモト)レイジくんが事務所の先輩で、ビートミュージックで歌をやりたいっていう相談をずっとしてたんです。で、レイジくんと(Giorgio Blaise)Givvnが仲いいので、紹介してもらって。Givvnは私の本とかも読んでくれていて、私がやりたいことを伝えたらすぐに理解してくれたので、サウンド面で協力してもらえることになりました。ラップもして、ビートプロデュースもしてビデオも撮る人なので、なんか一緒にやれたら面白そうだなって。そこからずっと一緒に作っています。
──ご自身の曲がアレンジされて仕上がっていく過程ではどのようなことを感じましたか?
甲田 アレンジは一緒にやっていて、ずっと細かくパスのやりとりをしていましたね。「ここはこういう音の方がいいね」とかを常に投げ合って。結局、最後はそこにGivvnが近づけてくれるみたいな。
Giorgio Blaise Givvn(以下、Givvn) やりたいことを叶える役割でしたね。
甲田 イントロからエンディングまで、私がキックとスネアのパターンやベースライン、ピアノとストリングスなどを全部自分で入れて、それを渡してました。そこからミックス含め自分にできない音の再現などを、細かく伝えて叶えてもらいました。
やりたいことが伝わらなかったりとか、感覚がちょっとずれたりするとできないけど、Givvnには何でも伝わりました。あまり人と一緒に曲を作っていくことがなかったので、難しいと思っていたんですが、すごくスムーズにいきましたね。
──ともに制作を進める中で、思い出深いシーンはありますか?
甲田 二人で色々いじって「これ合うよね! いいよね!」って言って作りながら、できる度に「やばいね!」って言い合ってた。
Givvn 「いいね」ってなって作るんですけど、次の週とかにはそれがめちゃくちゃ変わってるんですよね。今、「いいね」ってなってても、あぁ変わっちゃうのか……と思いながらいつもやってました。
──終わりがない感じですね(笑)。
Givvn 応援しながら、けど最後はもう説得しながらっていう感じですよね。できた後も作り続けるっていう。
甲田 そう、“California”だってすでにアレンジしたいんですよ! いまの楽曲で納得してるんだけど、一生“California.1”とか“California.2”とかやってたいんだよね(笑)。
Givvn なんか、J-POPとかロックっぽいサビとかがいきなり送られてくるんですよ。
甲田 「まじ、何?」みたいになるよね(笑)。
Givvn 組み合わせる作業がハマっていって、なんとなく今の完成している雰囲気が見えてきた時にはアガりましたね。J-POPっぽいところは、サビ転調させたら? っていう提案をして、じゃあそのパートをバンドで表現しようってなって。そこまでいった時にはアガった。
──バンドについても、今回強力なメンバーが揃っていますね。
甲田 (新井)和輝さん(King Gnu/Ba.)と(勢喜)遊さん ( King Gnu/Dr.)はミュージシャン繋がりですね。和輝さんは『PLANKTON』にも参加してくれたんですけど、その時にドラムは石若駿さんに叩いてもらったんです。で、駿さんは元々、King Gnuの皆さんと一緒にされていたので(※石若駿はKing Gnuの前身バンド・Srv.Vinciの元メンバー)、そのあたりはみんなSNSで繋がっていました。そして、駿さんに和輝さんを紹介していただいた時にウッドベースでジャズをめちゃくちゃ勉強されてることを知って。『PLANKTON』は若いメンバーでやりたかったので3人で作ったんです。
そこから次の作品でもまた一緒にやろうって話していて。今回の楽曲がちょうどロックな感じになったので「これは和輝さんにお願いしよう」と。そして、普段からいつも一緒に演奏されている遊さんにもお声がけしました。
ギターの山田健人さんは、元々Givvnとかレイジくんが普段から仲良くて紹介してもらったんです。会うたびにデモを聴かせてたんですけど、リリースする曲を“California”で行こうって決まりそうなタイミングでMVを撮っていただくことになって。
もともとデモ音源ではサビのギターを私がピアノで弾いてたんですけど、そこは味のある歪んだギターだったり、情熱的なギターを入れたいなと思っていたんです。それで、MV監督だけでなくギターもお願いしたら、「めっちゃ練習した!」ってすごく一番やる気になって弾いてくれました(笑)。実際、最高なギターを弾いてくれたので、サビでも一番核となる楽器になっていると思います。
──オカモトレイジさんや石若駿さんと繋がることで広がっていったコミュニティがあって、「これ楽しそうだからやってみよう」っていう感覚のもと音楽ができている、その関係性がすごくいいですよね。今回の音楽にもその自由なフィーリングは反映されていると思います。ちなみに、いまファッション関連や俳優など幅広い活動をされていますが、そういったところでも様々なコミュニティに自ら進んで顔を出す方なんですか?
甲田 いやぁ……それがしてないんですよ。ガツガツ行くのが好きじゃないですし、人にどう思われるか気にしちゃうので。友達が一緒にいる時に紹介してくれて仲良くなることはあるんですけど、できるだけ外に出たくない。怖いから(笑)。
ジャズだと、一緒に演奏する人がいないとできないので頑張ってセッションに顔を出して、自分から行動して駿さんとかKing Gnuのメンバーとかと交流を深めていったんです。そういう人たちとはインスタで先に私のことを知ってくれている人が多いので、会うとその話になってなんとか打ち解けられたりします。あまり意識的ではなくて、やってたことがたまたま繋がっている。今回は、意図的に誰かとコラボしようという気持ちでは制作してないです。もちろん、結果的に色んな方が関わって良いものができるのは素晴らしいですけどね。
──その一方で、リリックではインスタグラムについての複雑な気持ちを綴られているようにも感じました。作詞はどういったところからインスピレーションを得ていったのでしょうか。
甲田 まず、《California》は私が行きたい場所ナンバーワンなんです(笑)。小学校の頃から、そのカルチャーや雰囲気に憧れていて、その想いが強すぎて《I was born in California》っていう一節が勝手に出てきてるんですけど、デモの時点で元々この歌い出しはありました。フロウのためだけに入れてて、後から全然違う日本語に直すつもりだったんですよ。でもGivvnとかレイジくんが「いや、これが面白いんじゃん!」って言ってくれて、これを残しつつそこから歌詞を広げて書いていきましたね。
好きすぎてただ言っているだけのことが意外に深いかもしれないなって思い始めたんです。本人が好きで言っていたら、それが真実であれ嘘であれ別にもういいんじゃないかって。インスタで写真投稿してピンを立ててどこかの場所を入れる時も、そこが全然違う場所だったとしても「カリフォルニア」って書いてたら信じちゃうじゃないですか。自己紹介の文を書く時も「カリフォルニア生まれ」って書いてたら本当にそう思われちゃう。
どう見られるかって自分でコントロールできてしまう時代だし、それって面白いことなのかもってずっと思ってたので、今回はしっかり言ってみたんです。あと、SNSで憧れの人を見つけて真似してみることって自分も経験があって、もっと自分のカラーを出していきたいのにどうすればいいか分かんなくなったりもするじゃないですか。そういったリアルなメッセージも込めています。
──確かに、リアルなこととリアルではないこと、真実と真実ではないこと、それらの境目が分からなくなるようなことってどんどん増えていて、そういった部分を指摘するような歌詞は面白いですね。あと、《California》って何度も何度も歌われてるじゃないですか。何度も聴いていると、「なぜカリフォルニアなんだろう」って思ってくる。でも、実はただただ好きなだけの場所なんだという(笑)。
甲田 でも、本当に展開も多くてごちゃごちゃしている曲なので、究極「California」っていう音だけ残ればいいやって思ってました。意味わかんないけど、耳に残れば嬉しいなって。
ジャズ・ピアニスト、モデル、役者
多方面の経験が音楽に与えた影響
──“Love My Distance”の方のリリックはいかがでしょうか。こちらも元々は英語詞だったんですか?
甲田 そうです。作詞では、最初の《ひっぱると簡単に切れそうな》の「ひっぱると」とかを、日本語にするのが難しかったですね。でもそれでも「赤い糸」が思いついてからは早かったです。引っ張りすぎちゃうと糸は離れちゃうし、近づきすぎてもまっすぐに保たれなくて。ちゃんとした距離を保ちたいっていうことを歌いました。
──英語詞から日本語詞に変換していく時って、バッチリハマる日本語の音をとことん探していきつつも、リリックの意味やストーリーも作っていかないといけないわけですよね。そこには音と意味のせめぎ合いがあると思うんですが、どうやって折り合いをつけていったのでしょうか。
甲田 先にフロウがあって、一つテーマが決まると伝えたいことがどんどん出てくる。それをフロウに合わせてどれだけ短くできるかとか類義語を出せるかとか、ずーっと考えてますね。例えば「糸」から連想して、フロウ関係なく言葉をたくさん書いていくという時もあります。ストーリーを書いてからフロウにあてはめていくこともある。でも、どうしても言いたいワードが思いついてしまったら、そこでもうフロウも変えちゃいますね。
あと、コーラスもめちゃくちゃこだわってるんです。私、コーラスを考えるのが一番楽しいんですけど、レコーディングの当日にコーラスを考えすぎて、「この人いつまでやるんだ」みたいになっちゃってた……。あり得ないコーラスの多さ(笑)。
──やりたいことがとめどなく出てきてしまうと(笑)。
Givvn レコーディングの最中に、次やりたい新しいコーラスが出てきちゃうんですよね。
甲田 そう。次これやろう! みたいな。それにめげないで付き合ってくれるから、一生できちゃう。
──無限に沸いてくるんですか?
甲田 湧いてくる。自分でコードを一から作ってたりすると、このコードにはこういうコーラスが合うよね、って全部思いついちゃうんです。歌は日本語なんだけど、コーラスはゴスペルとかちょっと難易度の高い声が裏で鳴ってるとかっこいいかな、とか。そこのアンバランスさにこだわるのは楽しかったです。
──色んな時代の様々な音楽を聴かれているので、そこでのインスピレーションのストックがたくさんあるのかもしれないですよね。近年、新たに始められた映画俳優としての表現活動や、引き続きされているファッション関連のお仕事も含めて、それらが音楽に与えている影響というのはどのくらい自覚されていますか?
甲田 影響はありますね。元々、ライブはかなり緊張するタイプなんですが、演技のお仕事をやることで克服した感じはあります。他にも、ラジオとかそれこそ審査員のお仕事とか、自分のポテンシャル以上のオファーも多いんですけど、いい機会を与えてもらってると思ってやっていますね。
自分の実力以上のことをどうにかやるために必死に勉強したりしました。でも、インスタでファッション界に入ったことで、いま音楽でも色んな人との繋がりができているし、ピアノでめちゃくちゃ苦労してきたから、いま時間をかけて作品を作ることもできているし、たくさんやってきたことが無駄ではなく実っているな、とは思います。
──二十歳とは思えない、多くの経験をされてきてますもんね。ちなみに、同世代のシンガーソングライターで気になる方や刺激を受けている方はいらっしゃいますか?
甲田 ラッパーのYINYOくんですかね。私よりちょっと年齢は上なんですけど、よくみんなで集まります。人としても好きだし、めちゃめちゃラップかっこいい。あとkvi babaさんとかも、どうやって曲を作ってるのか訊いてみたいですね。
石若駿さんとKing Gnuの世代ってほんとに最強だと思うんです。私は神世代って呼んでる。ほんとに尋常じゃない天才が集まってて、そういう人たちでコミュニティができているのは羨ましいですよね。だから、これからが楽しみ。自分の世代もすごい人たちでつながっていければいいなって。
──最後に、未来への展望を教えてください。
甲田 海外フェスに出たいです。大きいステージで、ステージ自体が作品として成り立つような音楽を作っていきたいですね。
甲田まひる – California
Text:つやちゃん
Photo:Maho Korogi
PROFILE
甲田まひる
沖縄県生まれ 東京都育ち。20歳。
小学6年生の時に始めたInstagramをきっかけにファッションスナップサイトでブロガーデビューし、ファッションアイコンとして業界の注目を集め、ファッション誌の連載やモデルとして活躍。そして、幼少期から都内ライブハウスを中心にジャズピアニストとしての活動も行い、2018年にジャズアルバム『PLANKTON』を発表。2019年には映画『台風家族』を皮切りに俳優としての活動もスタートするなど多方面で活躍している。2021年、今年シンガーソングライターとしてワーナーミュージック・ジャパンよりデビュー。
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INFORMATION
California
2021年11月05日(金)
デジタル配信
甲田まひる
収録内容:
M1. California
M2. Love My Distance
M3. California.pf
M4. California_demo@201113