——マーカスは十代の頃に、ジャズ理論について学校に通って学んだそうですね。音楽を体系立てて学ぶというのは、どういう経験でしたか?

マーカス スティーブンと俺は同じインストラクターに師事して、グリーンヴィルにあるファイン・アーツ・センターで6年間のプログラムを受けた。スティーヴ・ワトソンっていう名前の先生で、80年代にセッション・ギタリストとして『マイアミ・バイス』や『特攻野郎Aチーム』のサントラとか、ブレッカー・ブラザーズの作品に参加していた人なんだ。その頃の俺は、技術はあるんだけどボキャブラリーが足りなかったから、そういった知識を教えてくれた。大半の高校生は、学校を退屈なものだと思って過ごしていると思うんだけど、俺にとってあの学校生活はとても有意義だった。

——2014年には、デビュー・アルバム『ソウル・インサイト』を自主リリースしています。この作品で、あなたは作曲からプロデュースまで全てを自分で行ったわけですが、初めてアルバムを作ってみて、どう感じましたか?

マーカス 当時はデモテープを作っているのと同じような感じで、後からこれがセルフ・プロデュースということなんだって気づいたくらいの感覚だったね。その頃のメンバーは俺とジャックがいて、ベースとキーボードは別のプレイヤーだった。レーベル契約もなくて、マネージャーすらいなかったから、完全に自由なクリエイティブ・コントロールができたのは良かったと思う。サンディエゴにあるプール付きの家で、ハイになって作ったんだ!(笑)。

The Marcus King Band – “I Won’t Be Here” (Lyric Video)

——ははは! 良い経験ですね。

マーカス セルフ・プロデュースということになっていて、曲は全て俺が作ってるんだけど、ジャックの存在もかなり大きかったよ。ここにブリッジを加えようとか、このアレンジを変えようとか、そういった話し合いをジャックとしながら作っていったんだ。当時も今も、マーカス・キング・バンドにとって、ジャックは欠かせない存在だと思う。

ジャック 最初は本当にインディペンデントなリリースで、限定1,000枚だった。ジャケットも今出ているものとは違って、僕らと当時のベース・プレイヤーが3人並んでる写真なんだけど、気づいたら今そのオリジナルはAmazonで200ドルくらいのプレミアが付いているんだよね。実は、クレジットをよく見ると、ジャック・ライアンのスペルが間違ってるんだ(笑)。

——その後2015年には、ウォーレン・ヘインズのレーベル〈イーヴィル・ティーン・レコーズ〉を通じて、『ソウル・インサイト』を再リリースすることになります。彼とはどういう経緯で出会ったのですか?

マーカス ウォーレンはノースカロライナの音楽業界でずっと仕事をしていて、とても顔が広いから、共通の知り合いを通じて出会ったんだ。マーカス・キング・バンドっていう凄い奴らがいるっていう話を耳にして、『ソウル・インサイト』のオリジナル版を聴いて連絡をくれた。ジョージア州のアセンズでガヴァメント・ミュールがライブした時に招待してくれて、彼らの“ジーザス・ジャスト・レフト・シカゴ”のセカンド・ヴァースを一緒に演奏したのが初めての共演だね。

——今年リリースされた2ndアルバム『マーカス・キング・バンド登場!』は、そのウォーレン・ヘインズがプロデュースを手掛けることになりました。彼にプロデュースを依頼した経緯や理由を教えてください。

マーカス ウォーレンと出会ってすぐ、音楽へのアプローチの仕方とか物事の決め方が自分と似ていると思ったから、俺の方からぜひプロデュースして欲しいって申し出たんだ。実は、当初デレク・トラックスとウォーレンの2人で共同プロデュースしてもらいたいと思ってた。でも、デレクはツアーで忙しいようだったからプロデュースには参加してもらってないんだけど、その代わりにゲストとしてギターを弾いてくれたよ。

——あなたはデレク・トラックスの後継者とも言われていますよね。あなたにとって、彼はどういった人ですか?

マーカス デレクとは、受けてきた音楽的影響にとても似たところがあると思う。彼はフロリダ州ジャクソンヴィルの出身なんだけど、どちらも南部の街で、文化とか家庭環境にも共通するものがある。彼はインド音楽にも精通していて、そういった影響もギター・プレイに感じられるよね。色んな物事をよく知っていて、賢明なミュージシャンだと思うよ。もちろん、一人の人間としても素晴らしい。だって、たった一日しかないオフを使って、俺達のアルバムでギターを弾くためにわざわざスタジオに来てくれたんだからね!

——最後に、次のアルバムや今後の活動について教えてください。

マーカス ソウライヴやレタスのギタリストをやっている、エリック・クラズノーと一緒にデモを作っている最中なんだ。このまま順調に行けば、アルバムのプロデュースもエリックにお願いすることになると思う。10年近く前にリリースされたレタスの『ライヴ・アット・ブルーノート東京』っていうライブ・アルバムを聴いた時から、ずっと彼のファンだったから、一緒に作品を作れるのは本当に嬉しいよ。

Soulive – “Whipping Post” – June 16, 2017

RELEASE INFORMATION

マーカス・キング・バンド登場!

【インタビュー】マーカス・キング・バンド、<フジロック>で示したサザン・ロック継承者としての実力 marcuskingband_1-700x700
マーカス・キング・バンド
UCCO-1180
¥2,700(tax incl.)
[amazonjs asin=”B06XJ1V3JZ” locale=”JP” title=”マーカス・キング・バンド登場!”]

text by 青山晃大