――マッシヴ・アタックのレーベル〈Melankolic〉より、2000年に『Ordinary Man』で鳴りもの入りでデビューを果たしたフェリム・バーンとマシュー・ハードウィッジの2人によるユニット、デイ・ワンの秘話を中心にお話を聞きたいと思います。デイ・ワンを3枚連続、全面的にプロデュースすることになった経緯を教えてください。
確か〈ヴァージン・レコーズ〉から連絡があって、デイ・ワンの共同プロデュース、ミックスを依頼されたんだ。デイ・ワンは既にレコーディングを開始していて、トラックを聞かせてもらったらとてもユニークだったし、リリックに感銘を受けて。音楽的にもスペシャルなもので、ビートが特にかっこよかったし、今まで聴いたことがない方法で、様々なサンプルや音色を組み合わせていた。それを聴いて僕も関わりたいと思ったんだ。マシューとフェリムはLAに来てレコーディングしたんだけど、すぐに意気投合したよ。それがきっかけでセカンドも手がけることになった。確かセカンドは、日本で先にリリースされて、ヨーロッパではビョークのレーベルからリリースされた。とてもユニークでエクレクティックなアルバムだったよ。その後も彼らは新曲のデモを送り続けてもらって、それがサードになったんだ。数年前にこのアルバムの制作を続けて、一緒にアレンジして、完成させた。やっとリリースされるから嬉しいよ。彼らはとてもスペシャルでユニークなビジョンをもっていて、それを世界に広められるのは嬉しいね。彼らはヒップホップ、フォーク、初期ロック、サイケデリック・ミュージックを融合させて、それをユニークなリリックと組み合わせているんだ。デイ・ワンは大好きだし、彼らと仕事ができて光栄だよ。
Day One – Who owns the rain
――ブリストル・ミュージックの持つヘビーなベースラインと美しいストリングスサウンドと西海岸の乾いたビートとファンクネスをも見事に融合させた、どこにも存在しえない独自のサウンドを作り出すことに成功していると思います。あなたのプロデューサーとしての貢献を教えてください。
マシューが主に音作りをしていて、幅広い音楽的要素を取り入れている。フェリムがそこに色々なアイデアを注入していて、彼のリリックがサウンドの要になっている。僕はそこに更に色々なアイデアを提供して、バランスを取っているんだ。だからサウンドは彼ら自身が作り上げているんだけど、僕がそれを補って、第三の目として作品を完成させることに貢献している。だからユニークなサウンドに仕上がったんだと思う。ビースティーズと仕事をしたときに似ているんだけど、彼らがサウンドの土台を作って、僕は客観的な目でそれを補って、完成させるんだ。更にマニー・マークも素晴らしい貢献をしたから、ビースティーズ周辺のチームワークが素晴らしかったんだ。
――ストリングス・オーケストラはマリオがブッキングしたそうですね? ミゲル・アットウッド・ファーガソンのことを教えてください。
僕らはストリングスが大好きで、マシューとフェリムはファーストでもストリングスを使っていた。セカンドにもストリングスの要素が入っていたから、今回も使おうとういことになったんだ。ミゲルとは友達で、デイ・ワンの曲を聞かせたら気に入ってくれて、2曲に参加してもらって。ミゲルは“Just Believe”、“Near Life”に参加している。
――デイ・ワンが「レコーディングはいつも自分の家で始まり、現実世界の本物のスタジオへと移り、そしてマリオのスタジオで完成する。」、「アルバムは時間が経てば経つほど、良いと思えるアルバムだと思う」とも言っています。さらに、メンバーが2人とマリオの3人で作品を生み出して実験的なことをするのはとてもエキサイティングな作業だと語っていました。マリオとデイ・ワン2人の関係性はどのようになっているのでしょうか?
僕は彼らの曲を聴いて、そこに思いついた要素を組み込むんだ。みんなでアイデアを話し合って、それぞれのアイデアをブレンドさせるんだ。色々試してみて、相性がいいアイデアを使う。彼らの音楽的バックグラウンドをよく理解して、プロデューサーとして手を加えすぎないことも大事なんだよ。シンプルにしておいたほうが、彼らの元々のアイデアを生かせるんだ。それはプロデューサーとしての僕の大事な仕事の一つでもあるね。
――セッションはどうでしたか? アルバムの出来には満足していますか? 通算3枚目ですが新しい境地を開くことができましたか?
ベーシックなトラックは、マシューとフェリムがイギリスでレコーディングをして、それをLAにもってきてもらったんだ。ボーカルをレコーディングし直して、さらに色々な音楽的要素を追加して、ミックスする。みんなでアイデアを出し合って、新たな方向性を冒険したり、色々なサンプルを取り入れたりするんだ。彼らとのレコーディングは楽しいよ。
――デイ・ワンの作品はストーリー性があって、サウンドトラックのようにドラマチックですよね? あなた達の音楽は、映画や他の体験に影響されたのでしょうか? まさに時代に関係ない「素晴らしい曲」だと思います。また歌詞はどのようなことを言っているのですか?
彼らの音楽はもともとすごくシネマティックで、それがサウンドの特徴でもあるね。様々な音楽や映画にも影響されていて、リリックはフェリムが担当している、そこに僕は何もタッチはしていないよ。
――このアルバムを作り終えたときどんな気持ちでしたか? 客観的に聴いてどう思いますか? ファースト・アルバム、セカンド・アルバムから時間がたってその分プレッシャーはありましたでしょうか?
このアルバムを今聴くと、今でも新鮮に聴こえる。それはとても大事なことだし、何度聴いても飽きないね。とてもユニークな世界観のある作品だよ。時間をかけて制作できたから、特にプレッシャーはなかった。準備が整ったときにリリースしたわけだし、それが今なんだ。
――最後に今後の活動について教えて下さい。また日本のファンへメッセージを!
これからも楽しみながら仕事を続けて、まだまだ長年活動したいと思っている。そして、もしかしたらデイ・ワン関連で日本にいけたら嬉しいね。日本には素晴らしいアーティストやリスナーがいるし、日本人をとてもリスペクトしている。長年サポートしてくれてありがとう。
RELEASE INFORMATION
INTELLECTUAL PROPERTY
2016.09.21(水)
デイ・ワン
¥2,500(tax incl.)
RUSH! PRODUCTION
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interview by Hashim Bharoocha