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Base Ball Bearを率いる小出祐介が新プロジェクト、「マテリアルクラブ」を始動。それは、Base Ball Bearのようなバンドでもなく、単なるソロプロジェクトでもないという。

では、マテリアルクラブとは、いったい何なのか。小出が盟友福岡晃子(チャットモンチー済)とともに各曲にゲストを迎え制作する。という形態自体は特に珍しいことではないが、確かに、ここにしかなかいフレッシュな空気を感じることができる。

今回はそんなマテリアルクラブの魅力について、“Nicogoly”に参加したパスピエの成田ハネダと“Material World”に参加したRyofu(KANDYTOWN)に話を聞いた。そうして見えてきた「マテリアル」と「クラブ」の意味。なるほど、それはカッコいい作品ができるはずだ。

Interview:成田ハネダ(パスピエ)×Ryohu(KANDYTOWN)

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——集合した時からお二人でいろいろと話をされていましたが、出会いのきっかけを教えてもらえますか?

成田ハネダ(以下、成田) 下北沢GARAGEです。僕はパスピエでよくライブもしてました。それで二人とも自分が出演するしないに関わらず、出入りすることが増えてきて仲良くなりました。

Ryohu 10代の頃から知ってるんで、もう10年近い付き合いになります。当時ここ(下北沢GARAGE)の店長だった人が、よく変わった企画をやってたんです。さっきナリハネ(成田ハネダ)が言ったような感じで、出入りしている人たちに「とりあえず、30分あるからよろしく」みたいな感じで無茶振りしてセッションが始まる、みたいな。

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——普段もよく一緒に遊ぶんですか?

成田 いつも起点はここです。あとは流れで飲みに行くとか。

Ryohu ちょっと話変わりますけど、俺が今も制作で使ってる鍵盤は、そんなノリのなかで、ナリハネに「ちょっと借りるね」って言って持っていったやつ。それで借パクから昇格(笑)。

成田 最初は貸したんだっけ? まあRyohuだから仕方ない。改めてあげとくよ(笑)。

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——パスピエというバンドの成田さんと、ヒップホップ畑のRyohuさんが、まさかひとつのライブハウスで繋がっているとは。

成田 そう思いますよね。やってることも活動の範囲も、ぜんぜん違いますから。

Ryohu オフィシャルでは一度も絡んでないですし。

成田 実は、出演者名も出ない地下で、よく一緒にやってたんですよ。

——では、お二人と小出さんとの出会いは?

成田 簡単に言うと、コイちゃん(小出祐介)も僕らと同じように、ここ集まっていた一人です。Ryohuのほうがコイちゃんと直接絡むのは早かったよね? Base Ball Bearの日本武道館ライブには客演で出てたし。

Ryohu もう6年も前になるのか。Base Ball Bearの“クチビル・ディテクティヴ”って曲を一緒に作った時期。マテリアルクラブでコイちゃんとタッグを組んでるacco(福岡晃子/チャットモンチー済)も“クチビル・ディテクティヴ”のコラボメンバーだったんです。

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——小出さんとコラボすることになる前、最初の出会いは、成田さんと同じく下北沢GARAGEですか?

Ryohu そうです。さっき話した当時の店長がやってた企画の延長みたいな感じで、告知もしない、観てる人が10人いるかいないかくらいのUstreamに呼ばれて。コイちゃんはギターも持ってなかったし、ラップしてるし、俺はヒップホップやっててバンドのことは詳しくなかったから、コイちゃんがBase Ball Bearの人だって知らなかった。それで、別の友達が下北沢の駅から見える、Base Ball Bearの看板を指差して「あれ、コイちゃんだよ」って。ギャップが大きすぎてさすがに「え? すげえ!」ってなったけど、それからも、特に何も変わることなく、飯食いに行ったりセッションしたりしてました。

——下北沢に根付いた小さなライブハウスでの出会いが、Base Ball Bearにゲストとして招かれることに繋がり、成田さんも含めマテリアルクラブへの参加にも。いい話ですね。

成田 多いときは週に1回のペースで通っていて、行けば必ず誰かがいて一緒に何かしてました。今でこそ回数は減りましたけど、やっぱりここに来ると落ち着くし楽しいですね。

Ryohu 俺とナリハネみたいな、まさかの繋がりがたくさんあるから、特集とかしたら面白いかもですよ(笑)。

——興味津々です。小出さんはどんな方なんですか?

Ryohu ラップの上手いお兄ちゃんから始まり、ギターの似合うカッコいいバンドマンだとわかり、曲を一緒に作り、ツアーにも連れて行ってもらい、やっぱり俺にとってはいいお兄ちゃん。今回久々に一緒にやらせてもらって(“Material World”にラッパーとして参加)、改めてめちゃくちゃやりやすいなって思いました。こっちに自由はあるんですけど、ちゃんと決まったものを提示してくれる。

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——小出さんと福岡さんが作り込んだトラックがあって、イメージを伝えられて、それを元にリリックを書いた、ということですか?

Ryohu そうですね。僕のパートにも、コイちゃんのラップがしっかり入ってました。それがまた上手くて、触らずにそのままでもいいんじゃないかって思うくらい。でも、そこはせっかく呼んでくれたんだし、俺なりに共有されたイメージや、コイちゃんがいろいろ考えたことを想像して、完全に自分の解釈でまったく別の言葉を使ってリリックを書いていきました。

——RHYMESTERのMummy-Dさんも共に参加されていますが、Ryohuさんとはどういう絡みを?

Ryohu 基本的には、コイちゃんが指定してくれたところに、二人それぞれがリリックを書いて別々でレコーディングしました。最後のアウトロは、もともとラップはなかったんですけど、Mammy-Dさんがリリックを書いてきてくれて、そこは二人の掛け合いが面白いんじゃないかってことで、一緒にレコーディングしました。

——“Material World”、すなわち我々が住むこの世界。プロジェクト名の「マテリアルクラブ」は、そのまま解釈すれば仲間たちがいるこの場所ということ。その辺は意識しましたか?

Ryohu そうですね。だから、コイちゃんとaccoと、今回オフィシャルでは初めて一緒にやれたMammy-Dさんがいてこその俺の歴史を素直に表しました。

——ギターの強い、80年代のニューウェーヴや、90年代のオルタナティヴな香りも漂う、作品の中でももっともロック色の強いサウンド。それをファンキーに彩るリズムとラップ、というイメージを持ちました。ラップをどう乗せるか、意識したことはありますか?

Ryohu ロックであろうがヒップホップであろうが、エレクトロニックであろうが、俺はカッコよければ何でも好きだし、ラップを乗せるうえでもあまり差はないですね。それこそこの場所で、いろんな人と交流したことによって培われたスキルでもあると思います。どんなものがきてものノー・ストレスだし、BPMも気にしないですし。

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——成田さんは、この“Material World”に、どのような印象を持ちましたか?

成田 ちょっと誤解を生む言い方かもそれませんが、ここでやってきたことを思うと通常営業というか。やってること自体に驚きはなかったです。

——それだけここ下北沢GARAGEには、いろんな趣味嗜好の方々が集まっていた、ということですね。

成田 そのなかでも、コイちゃんは、とても不思議な存在で、音楽的にいろんな文脈を持ってるし、人との繋がりもあるから、どんなアウトプットもありなのかなと。

——なるほど。では、成田さんが参加した曲“Nicogoly”についても話を聞かせてください。成田さんと小出さんの関係性は、どんな感じなんですか?

成田 僕のコイちゃんに対する最初の印象は、Ryohuとはぜんぜん違いますね。自分でもバンドやってるし、Base Ball Bearは先輩というか、背中を見てきた存在。最初はフランクにいけなかったです。「わ! べボべのボーカルだ!」って。コイちゃんも、そんなに明るく「やあ!」って感じの人でもないんで、徐々にいつの間にか親しくなっていったような感じですかね。

——今回はゲストとして、初めてともにひとつの曲を作り上げていったわけですが、そうなったきっかけとして、お二人のピースがハマった瞬間などはあったのでしょうか?

成田 いや、むしろハマらないからやる、みたいな。そうでないと誘われてないんじゃないかとも思いますね。ミュージシャン同士というよりも、僕がこの下北沢GARAGEという場所で、知り合った仲間であるということに、比重があるんじゃないかと。

——手元にある資料には、「Base Ball Bearの小出祐介が主宰する、ソロでもなくバンドでもなくユニットでもなくグループでもなく新音楽プロジェクト」と記されているんです。別にバンドマンがソロプロジェクトを立ち上げ、ゲストを招いて作品を作るというのは、珍しいことじゃない。じゃあ何なんだ、いう疑問があって。

成田 そうですよね。文字情報だけを見れば。僕もそう思います。

——でも、さきほどRyohuさんとも話した、マテリアルクラブというプロジェクト名があって、この下北沢GARAGEでの出会いの話があってのことなら、と考えると今すごく腑に落ちています。

成田 さっき言ったような関係性や歴史があるからこその面白さは出ていると思います。

——一言でいうと自由な作品。その最初を飾る1曲目に相応しい曲だと思いました。

成田 データでやりとりして、そこに自分なりの要素を加えていったんです。しょっちゅう現場で会って遊んでたのに、制作ではほとんど会ってないっていう(笑)、それもまた面白かった。Ryohuと同じで、基本自由なんだけど軸は指定してくれるし、言ってることとデモの感じも合ってたんで、すごくやりやすかったです。

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——「軸」には何があったんですか?

成田 リファレンスとして、いろんな音源をやりとりして、ブラッシュアップしていったんですけど、さっくりまとめると、90年代感ですかね。コイちゃんは、ずっと等身大を貫いてきた人だと思うんです。90年代はそんなコイちゃんの青春時代。そこで感じたことを、バンドとはまた違うやり方で、バンド以外に興味を持った音楽も含めて吸収してアウトプットしているところは「なるほど!」と思いました。

Ryohu 確かに、90年代感あるよね。Jurassic 5(ジュラシック5)とか、ちょっと思い浮かんだ。

——鍵盤の使い方で意識したことはありますか?

成田 キーボードってレンジが広くていろんな雰囲気は出せるんですけど、一方でバンドや曲のバランスを変えてしまう楽器でもあるから、そこの抜き差しはいろいろ話し合いました。

——強い低音と流麗な鍵盤のマッチングが、すごく新鮮でした。

成田 福岡さんのベースラインに、僕が上ものでリフみたいなのを乗せたり、バッキングで下からから押し上げるのもいいな、と思ってやってみたり。対低音というベクトルで考えていたこともありましたね。

——ここまではお二人が参加した曲について話していただきましたが、作品全体を通して感じられた魅力についてはいかがでしょうか。

成田 難しいですね。魅力が出てこないんじゃなくて……。

Ryohu その質問は最終的にくると思って考えてたんですけど、難しいなあ(笑)。コイちゃんの頭のなかはわからないけど、俺らはその破片を見せてもらって参加した立場で、仲間と夏休みの自由研究やってるようなワクワクする感じでした。

成田 あ! でも、トラックメイカー小出祐介の魅力っていうのはあるかと。バンドと違って、すっと彼がメインじゃないところで見えるセンスや面白さ。

Ryohu それがわかりやすいと思います。

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——小出さんが率いるバンドのBase Ball Bearと、小出さんが主宰するプロジェクトであるマテリアルクラブの違いとなると、Base Ball Bearはギターとベースとドラムという担当楽器があること。マテリアルクラブは、コンピューターなので、あらゆる音の抜き差しが自由。そして、後者の進歩によってバンドが水を開けられたわけではないにせよ、現在、世界を見渡すと、商業的にバンドは難しい位置にあります。そこについて、バンド編成のライブもありますがバンドではないRyohuさんと、バンドマンの成田さんの話が聞きたいです。

Ryohu Base Ball Bearは、ギターとベースとドラムで鳴らしていることがすべて、という美学が基本にあると思います。それがBase Ball Bearのカッコよさ。それに対してマテリアルクラブは「こういうのもいいでしょ?」っていうことをやってる。それらがコイちゃんのすべてではないと思いますけど。学校の部活はバスケだけど、地域のサッカークラブにも入ってるみたいな。そうやって好きだと思う音をいろいろ発信するのは、すごく意味のあることだし、俺もそういうスタンスでありたいです。今はいろんな音楽の境界線がないとか、かたやバンドは数字的なことで言うと厳しいとか、確かにいろんないいこともあれば、そうでないこともあると思います。でも、結局自分がカッコいいいと思うことをやっているのがすべて。その表現手段をたくさん持っているって、めちゃくちゃいいですよね。

成田 作る側とその外とでは、もしかしたら見方がちょっと違うかもしれないですね。バンド以外の音楽に目を向ける人は昔より増えてると思います。逆側からみると、例えばヒップホップの場合、サンプリングで曲を作ってるその時点で、バンドとかいろんな音楽を聴いてるわけです。要するに、何かに影響を受けてカッコいいと思ったことを、自分たちの今やれる方法でアウトプットしたのが現時点、というだけなのかなと。それが僕ならパスピエというバンド、RyohuにもKANDYTOWNやソロ。みんなそれぞれの「家」があって、毎回新しいことをしようと試みたり、実験的なことをしたりしてるんです。

Ryohu うんうん。そうだね。

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成田 そこでマテリアルクラブは「ザ実験」っていう感じ。バンドだけでなく、新しいやり方を切り開いて音楽について考えるとか、「音楽をやるってこうじゃない?」って提案しているようで。まさにミュージシャンとしてコイちゃんが持ってる、実験的部分を体現した作品だと思ったんです。まだ全体を聴いたばかりで咀嚼できてない部分もあるし、コイちゃんが何を考えてるかもわからないけど、僕がコイちゃんから感じた姿勢は、これからの自分に影響してくるように思います。

Ryohu その実験的で何でもありなかでも、自分なりの制約を付けてやってるわけで。「マテリアルクラブ」っていう新しい概念をバンドとしてやったっていいとも言えますよね。でも、あえてDTMをスタートにして打ち込みでいろんな音を出して、客演を迎えるコイちゃんに同意する俺たちがいる。そして、コイちゃんも制作に参加した俺たちも、それを聴いてくれた人たちも、みんなそれぞれ、これまでに感じていた「マテリアル(素材)」という言葉の意味に、また新たな感覚が芽生える。そこで出会って飲みに行く人たちもいるだろうし、そこで受けた刺激を持って帰って何かを始める人もいるかもしれない。そういうひとつのライフというか、それが「マテリアルクラブ」の意味のような気もしてきました。あれ? 俺何言ってんだ? ちゃんと話になってますか?

——はい、むしろグッとくる話です。今日はありがとうございました。

Ryohu そういう魅力がある作品なんじゃないかということで(笑)、ありがとうございました。

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RELEASE INFORMATION

『マテリアルクラブ』

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2018.11.07(水)

01.Nicogoly
02.00文法(ver.2.0)
03.閉めた男
04.Amber Lies
05.告白の夜
06.Kawaii
07.Material World
08.Curtain
09.WATER
10.New Blues
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text by TAISHI IWAMI

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