もしみんながビジュアル付きで音楽を聴きたいのであれば、
映像のコントロールも自分がちゃんとやりたいなぁって思ったんだよね

――あなたは本作について「electronic music for the soul(魂のためのエレクトロニック・ミュージック)」と語っていますが、この真意について、もう少し具体的に聞かせてもらえませんか?

実は、僕が言ったことではないんだよね。誰かが僕の音楽に関して言ったことなんだ。でもこのことに関して言えるのは、テクノロジーが発達したことで、機械やインターネットが自分たちの意思を勝手に決める世の中になりつつある気がするんだよね。たとえば、グーグルは自分たちが検索した情報を元に、その人が何が好きかを勝手に推測して、それが広告や検索結果にカタチを変えて僕たちに情報が与えられる。そういう世の中が少し怖くて、勝手に自分たちの意見を決められるよりも、人々の気持ちを動かして、それを求めてもらえる音楽を作りたかったんだ。

――毎週1本、計12曲分の映像を公開するというコンセプトはどこからですか? また、現時点で公開されている映像はすべて固定カメラで撮られたものですが、あなた自身が監督・撮影を行っているのでしょうか。

そうだね、僕が全部ディレクションを手掛けているよ。今回作ったMVは好きだけど、実は映像自体、そんなに好きってわけではないんだ。音楽はきちんと「音」として聴いてほしいから。でも、今は音楽を「聴く」時代じゃなくて「観る」時代になってしまっている。今は、YouTubeが人々にとって音楽を聴くプラットフォームになってるよね。そこで気づいたのが、自分で映像をアップしておかないと、誰かが勝手に水着の女性の写真に僕の音楽をつけてアップしちゃったりするんだよ!

――(笑)。

いや、ホントに過去にそういう経験があってさ……(笑)。あれにはすごく腹が立った。だから、もしみんながビジュアル付きで音楽を聴きたいのであれば、映像のコントロールも自分がちゃんとやりたいなぁって思ったんだよね。でも、僕の作った映像はとてもシンプル。電車とか車に乗ってて、停車した場所でワンちゃんが落ちてるアイスを舐めてるのを目撃した瞬間のように、そういうふとした瞬間を表現したかったんだよね。1週間に1つずつアップするっていうのはレコード会社のアイディアだったんだけど、僕もいいアイディアだと思って、その提案通りにやってみてるんだ。

――アートワークについても聞かせてください。ビルの屋上に裸足で立っている人物は、何を示唆しているのでしょうか?

それを僕が説明したら面白くないから、これは見た人の想像におまかせしたい。あれは裸足の僕で、メッセージはそれぞれ好きなように受け止めてほしいな。

ハーバート、最新作『ザ・シェイクス』の謎を紐解く interview150525_mh_2

『ザ・シェイクス』ジャケット

――わかりました。今作は01年の『ボディリー・ファンクションズ』と並べて評価されることになると思いますが、今振り返ってみて、あなたにとって『ボディリー・ファンクションズ』とはどんなアルバムでしたか?

あれは僕にとっての初めての「大人」なレコードだった気がする。今まで気心知れた仲間に参加してもらっていたけど、初めて自分のまったく知らないミュージシャンを起用したりして、そこも大きな違いだったな。時間をかけて、ちゃんと色々とプランを立てて、今までとはやり方を変えて、もっとプロフェッショナルに物事を進めたアルバムだった気がするよ。

――ダンス・ミュージックといえば、近年のEDMの爆発的なムーヴメントについて思うところはありますか?

50%は最悪で、50%はまぁまぁかなと思う(笑)。でも、子どもってすごく趣味の悪い音楽を聴くものじゃないかな。僕もそうだったしね(笑)。

――「最悪」っていうのはどんな部分で?

今のアメリカでは、EDMがいわゆる「ダンス・ミュージック」として定着してしまっているよね。昔はニューヨーク・ハウスやテクノとか、最良のダンス・ミュージックが生まれた国だったのに、その名残すら無くてすごく残念だよ。特に、ヨーロッパの偽物ダンス・ミュージックみたいなのが主流になってて、あれはホントに最悪だと思う。

――では、あなた自身が最近ハマっている音楽、アーティスト、シーンは何かありますか?

この質問は僕にはふさわしくないかも(笑)。音楽は僕の仕事でもあるし、1日中研究してるから、プライベートの時はもっとヒーリング的な意味合いで音楽を聴いくことが多い。最近はピーター・ヒルが奏でるピアノの作品とかが好きかな。ただ、僕だけじゃないと思うけど、エキサイティングなシーンが生まれるのを心待ちにしているよ。ここ最近は「コレ!」といったシーンが無かったし、次の新しい発明を待っているんだ。もちろんテクノロジーだけじゃなくて、音楽的にもね。今は度肝を抜かれるような音楽ってほとんど無いと思う。

――最後に、『ザ・シェイクス』のライヴ・ツアーではどんな構想を練っていますか?

すでにいくつかライヴをやったんだけど、今回のツアーはマニピュレーター、ギター、ドラムス、コーラス2名、ホーン・セクション3名、そして僕を含めた9人編成で回る予定なんだ。みんなで僕の音楽のセレブレーションをするイメージだよ。いったん音楽が鳴り始めたら止まらない、新しい曲を中心としつつ『ボディリー・ファンクションズ』からの曲も織り交ぜた、楽しいライヴになる予定だよ。

RELEASE INFORMATION

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