キュートで親しみやすいルックスからは想像もつかないような、エネルギー溢れるライヴ・パフォーマンスや、奇抜でユニークなヴィジュアル・センスで、常に新鮮な驚きを与えてくれる新時代のポップ・アイコン、メイリー・トッド。「レディー・ガガmeetsノラ・ジョーンズ」とも海外では評され、あのジャイルス・ピーターソンも注目しラジオでいち早く紹介していることからも、いかに世界中で話題になっているかが理解出来るだろう。そんな彼女の日本デビューとなる最新作 『エスカポロジー』は、いよいよ4月3日(水)にリリース。昨年7インチ・ヴァイナルでもリリースされた『Hieroglyphics』や、奇抜なミュージック・ビデオが話題の“Baby’s Got It”を筆頭に、ジャジーでグルーヴィーなトラックから、深くしっとりと歌い上げるジャズナンバーまで、彼女の魅力がぎっしりと詰まった素晴らしい内容のアルバムとなっている。
Qeticでは、3月後半にアルバムPRのために来日した彼女に直撃取材を敢行! 驚くべき家庭環境から音楽に対する考え方、また拠点とするカナダのトロントでの環境について等、様々な話をすることが出来た。中でも印象的だったのは「自分が体験したことだけを歌詞にして、全ての曲を創り上げている」ということ。そんな言葉からも、メイリーのあるがままの感情を形にした最新作への期待は大きく膨らんでゆく。ホセ・ジェイムズのようなジャズが好きなリスナーはもちろんのこと、ロックからポップスまで幅広い音楽ファンにアピール出来るメイリー・トッドの世界観は、今、是非とも触れておくべきだろう。
Interview:Maylee Todd
―― 2010年リリースのデビュー作『Choose Your Own Adventure』も日本では大きな話題となりましたが、まずは音楽に触れるようになったきっかけや、音楽の道に歩もうと思った経緯等、これまでのバックボーンを簡単に教えて頂けますか?
父親がエルヴィス・プレスリーのモノマネをする芸人だったり、姉もギターやピアノを弾いていたり、とにかく音楽に囲まれた環境で育ったの。そんな影響も強くあって、小さい頃から自然と音楽に馴染んでいたと思うわ。高校を卒業した頃からロックバンドをやったり、エレクトロニック・ミュージックのサイド・プロジェクトをやったりするうちに、自然と音楽の道に進んでいった感じね。
――聞くところによると、おじいさんもマジシャンとして活躍されてたとのこと。おじいさんからの影響も少なからずあったのでしょうか?
祖父はエスケープ・アーティスト/イリュージョニストとして活躍していた人。それが父親を通して私にも、音楽というよりはエンターテインメント~パフォーマーとして影響しているはず。あと面白いのが、祖父はUFOにも興味があったの! そのようなことも、私のコズミックでスペイシーな感覚にリンクしているかもしれないわ。
――作品からは、ソウル、ファンク、ジャズ、ディスコ・・・様々な音楽のエッセンスが感じられますが、これまでにどのような音楽を好んで聴いてきたのですか?
ロバータ・フラック、ダニー・ハサウェイ、スティーヴィー・ワンダー、アル・グリーン、パトリース・ラッシェン、ドロシー・アシュビー、マイケル・ジャクソン、ヒートウェイブ・・・とにかく、いろいろなアーティストの影響が交ざっていると思う。あとは、アシッドジャズも大好きだったわ。ブランニュー・ヘヴィーズやジャミロクワイとか。
――カナダのトロントを拠点にされていますが、トロントの音楽的な環境だったり、クリエイターやミュージシャン同士の繋がりはどのような感じなのですか? また、これからもトロントを中心に活動をされていくのですか?
音楽のシーンはもちろんだけど、アート、ファッション、インスタレーションのクリエイター等、様々な分野のアーティストがお互いとてもサポートし合っているので、すごく健康的な状況に感じるわ。自分にとっても、とても表現をしやすい環境。今はトロントを中心に考えているけど、いろんな旅をする中で沢山のアーティストと出会い、コラボレーションも増えて行くと思う。だから、機会さえあれば拠点を変えてみるのも面白いかもしれないわね!
――いよいよ4月3日(水)には、最新作 『エスカポロジー』がリリースされます。 『エスカポロジー』は、手品等における「脱出芸」という意味合いがあるそうですが、なぜこのタイトルをつけようと思ったのですか? また前作との違いや特にコンセプトがあれば教えて下さい。
祖父がカナダでNo.1のエスケープ・アーティストだったこともあるけれど、「何かから脱出する、逃げる」というよりは少し違った意味合いがあって。私は、人生の中で起きた出来事を題材にして歌詞にしてるのだけど、それを自分から抜けて客観的に見る、違う角度から見たりするという意味での「エスケープ」というニュアンスね。そして、前作では割と自分中心で制作していたのに対して、今回はよりコラボレーションを広げた作品になっていると思う。コンセプトやテーマというよりは、日々起きたことを日記のようにドキュメントしてる感じ。自分にとっては全て体験談なのよ。
――いろいろなタイプの曲が聴かれますが、特に、“Hieroglyphics”は、Kon & The Gangによるディスコ・ブギー・リミックスが7インチでリリースされたりと、今のクラブシーンの空気にもばっちりとはまるサウンドだと感じます。日本でも多くのDJがプレイしてとても話題になっていましたが、クラブシーンへのアプローチも意識されたりはしますか?
クラブシーンに対して意識しているってことは無くて、自分が聴きたい音楽を作っているだけ。でも実際に日本のクラブでもプレイされているって、もの凄く嬉しいわ!
――今作の曲作りでは、何を一番大切に考えましたか?
オーガニックに、生の音をそのまま残したいという気持ちが強くて、60年代から80年代辺りのサウンドを創り出すことをすごく意識してたと思う。音の反響をそのまま残したり、シンセサイザーの音も加工せずにそのままの状態で使ったり、レコーディングのピッチシフトもあまりいじらず、とにかくストレートに作り込んでいったのよ。
――メイリーさんのヴィジュアル面にも、多くの人が興味を持っています。『Choose Your Own Adventure』のジャケットでは怪獣の着ぐるみを着ていたり、“Aerobics In Space”のMVでは、アニメと実写が入り乱れて犬にまたがって宇宙に飛んでいくシーンがあったり、“Summer Sounds”のMVでは、ボサノヴァのリズムで涼しげに踊る場面から、宇宙を舞台にしてグルーヴィーでファンキーなダンスをする場面にいきなり展開されていったりと、とにかく奇抜でユニークで面白い(笑)。このようなイメージも、全てあなたのアイデアから生まれているのですか?
ヴィジュアルはすごく大事よね! 元々のコンセプトは私が持ってきて、そこからディレクターのイメージやアイデアも入れて話し合っていくのよ。“Aerobics In Space”で出てきたあの犬はオーティスという名前で、そのビデオで使ったスタジオはどの作品にも必ずオーティスを入れるの。面白いでしょ(笑)?! 極端にひっくり返したりするのが、自分好みのやり方ね。
――最新作“Baby’s Got It”のミュージック・ビデオもとても話題になっています。今回は、どのようなイメージ/コンセプトで制作されたのですか?
“Baby’s Got It”は、これまでに貯めてきたアイデアの集大成。トロントでいつもそばにいるアーティストやダンサー、デザイナー、あとはスタジオから見える風景だとか・・・トロントのいろいろな場所のショウケースであり、それらを散りばめたイメージだわ。
――このビデオのディレクターは、トロントを拠点とするフォトグラファー、レナード・リーが手掛けていますね。彼の写真作品も、あなたの世界観と凄くマッチしていてとても興味深いです。
彼は“Eyes+Ears”という映像シリーズのショウケースを続けていて、その時に私も撮ってもらって作品を作ったのが、知り合ったきっかけ。そこから、一緒にトロントの風景を撮ったりしているうちに徐々に仲良くなって。そんな経緯もあって、今回のミュージック・ビデオをディレクションしてくれたの。彼の作品は本当に素晴らしいと思うわ。
――これまでには、ジャネル・モネイ、リー・フィールズ、アロエ・ブラック、リトル・ドラゴン等と共演されてきたとのことですが、これまで共演された中でアーティストとして特に印象に残ったのは誰ですか?
敢えてあげるとすれば、リー・フィールズは最も印象深かったわね。凄いエネルギーがあってパフォーマーとしても素晴らしくて、バンドのジ・イクスプレッションズも皆才能があって上手い人たち。中でも“Ladies”という曲は最高で、ライブでやった時は忘れられないほど(笑)!
――最後に、音楽を表現する上で一番大切に考えていることは何でしょうか? また、どのようなことを思い描いてこれから活動して行きたいか、メイリーさんの夢を教えて下さい。
ライブで一番大事にしているのは、エネルギーを常に上げて行くということ。笑う事やエネルギーって人に伝染していくものだと思うから、そこだけはどんなに疲れていても常に意識している。また、音楽をずっと続けて行くこと。そして、いろんなアーティストともどんどんコラボレーションをして、世界中を回ってみたいわね。夢といっても少しずつ現実になりつつあるから、この夢を必ずかなえたいと思っているわ!
text&interview by Yasumasa Okada[DESTINATION MAGAZINE]
“Baby’s Got It”
Release Information
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