Michael Kanekoとあいみょんの共通点は、自身がシンガーソングライターであることに自覚的なところだ。
Michael Kanekoは基本的にセルフプロデュースで、楽器演奏からプログラミングまでを一人で行うのに対して、あいみょんはMichael Kanekoと同じorigami PRODUCTIONS所属の関口シンゴ(Ovall)をはじめ、田中ユウスケやトオミヨウといったプロデューサーとともに楽曲を仕上げていて、制作の過程は大きく異なる。
しかし、どちらも「弾き語り」を自分の原点とし、バンドとともにツアーを行うことが増えた今でも、ライブの中に弾き語りパートを挟むなど、強いこだわりを見せている。Michael Kanekoの新作『ESTERO』と、あいみょんの新作『おいしいパスタがあると聞いて』は、それぞれのカラーを明確に反映させつつ、同じ時代を生きるシンガーソングライターとしての矜持を強く感じさせるもの。今回はそれぞれの信念について、2人に語り合ってもらった。
Interview:
Michael Kaneko × あいみょん
──Michael Kanekoさんはあいみょんさんのファーストアルバム『青春のエキサイトメント』に収録されている“RING DING”にサウンドプロデュースとアレンジで参加されていますね。
あいみょん 制作がとても楽しかったことを覚えています。キャラクターとして、マイキーさん(Michael Kanekoの愛称)ってすごく印象に残る方じゃないですか? とりあえず、英語が話せるから、とにかく発音を教えてもらいました。「マクドナルドって言って」とか(笑)。
Michael Kaneko 英語の先生みたいになってました(笑)。
あいみょん 逆に「漢字は難しい」って言ってましたよね? すごく覚えてるのが、“RING DING”は元のタイトルが「元気が出る歌」だったんですけど、レコーディングのときに譜面を見たら「THE GENKI SONG」って書いてあって、それが忘れられないです(笑)。
あいみょん – Ring Ding
──Michael Kanekoさんはあいみょんさんに対してどんな印象を持ちましたか?
Michael Kaneko まず歌がとても上手いなって思っていました。レコーディングのときって、僕の場合だとパート毎に分割して歌って、気になるなって思ったらパンチインしたりするんですけど、あいみょんさんは一曲通してガーッと歌って、それを5テイクくらいやって終わり。それがとても印象的で。
あいみょん それは未だに変わらなくて、何ならもっと減りましたね。今回のアルバムだと、3テイクだけの曲もあります。
Michael Kaneko その中から選ぶの?
あいみょん 選ぶし、ほとんど直してないのもあります。
Michael Kaneko すごい……。でも、昔のアーティストはパンチインとかできなかったわけですもんね。最近、歌録りは家でやっちゃうんですよ。その方がリラックスできるし、時間もかけられるので。
──“RING DING”のアレンジに関しては、どんなやりとりがあったんですか?
あいみょん 割とお任せでしたよね?
Michael Kaneko そうですね。「青春ロック」みたいなイメージだけあって。
あいみょん 直接お会いしたのはレコーディングが初めてで、「お若いんですね」って……私の方が若いですけど(笑)。
Michael Kaneko 〈origami PRODUCTIONS(以下、origami)〉にいる他の人は結構上ですもんね。
──あいみょん作品ではお馴染みの関口シンゴさんは、もう少し歳上ですよね。
あいみょん 関口さんとは私が19歳の頃からご一緒していますね。インディーズの頃からなので、〈origami〉にはずっとお世話になっております。今年の外出自粛期間が明けて、一発目のレコーディングも〈origami〉のスタジオで、「ただいま!」って感じでした(笑)。
━━最初にあいみょんさんから送られてくるのは弾き語りのデモなんですか?
Michael Kaneko そうです。曲自体がよかったので、アレンジしてても楽しかったですね。曲が自分にガシッと来ないと、アレンジが難しいこともあるんですけど、“RING DING”はすぐイメージが見えました。
あいみょん ファンのみんなもすごく大好きな曲です。
Michael Kaneko ライブであの曲を演奏してるのを初めて観たときに、お客さんがとても盛り上がっていて、すごく感動しました。
あいみょん アップテンポの楽曲は他にもあるんですけど、ああいうポップで、青春感のある曲って、当時は他になかったんです。なので、自分にとって新しい音楽のジャンルを開いてくれたというか、「ありがとうございます!」って感じでした。
Michael Kaneko 僕の方こそ、資料に「あいみょんをプロデュース」って書けるから、ホントにありがとうございます(笑)。
──Michael Kanekoさんはプロデュースの仕事もやりつつ、もちろん元々はシンガーソングライターなわけで、あいみょんさんから見たシンガーソングライターとしてのMichael Kanekoさんの魅力をお伺いしたいです。
あいみょん やっぱり、シンプルに歌声がすごくないですか? この歌声は自分には絶対出せないなと思います。私は声色を使い分けたりするタイプなんですけど、マイキーさんはそういうタイプではなくて、「ずっとマイキー」みたいな(笑)。歌声が柔らかいですよね。もしかしたら、英語が日本語より柔らかい発音なので、そう聴こえるのかもしれませんが、とにかく自分にはない歌い方だし、情緒の出し方をしてるなって思います。
Michael Kaneko 何を歌っても自分っぽくなっちゃうっていうのはあって、日本語の曲をカバーしても、「マイキーだね」とは言われます。
あいみょん 今回のカバーアルバム(限定盤に付属されているカバーEP『Sounds From The Den EP vol.2:Acoustic Covers』)を聴いても、やっぱりマイキーですもん(笑)。生まれ持った才能だと思うし、いいなと思いますよ。
━━でも、Michael Kanekoさんがちゃんと歌い始めたのは大学生になってからなんですよね?
Michael Kaneko もともとバンドでギターだけをやっていて、アコギで曲書いて歌おうかなって思ったのは大学に入ってからです。19歳の時のデモを聴くと、すごく恥ずかしいんですよ。今の歌い方はブレッシーなんですけど……さらにブレッシーで(笑)。
あいみょん あははははは。でも、みんなそうですよね。私の昔のデモもめっちゃひどいですよ。iPhoneで録ってたんですけど、気合い入れて近づき過ぎて音割れてるし、歌い方も元気過ぎて……、恥ずかしいですよね。
──お二人の共通点はシンガーソングライターであり、「弾き語り」をベースにしていることだと思うんですけど、改めて、弾き語りの魅力をどう感じていますか?
あいみょん 私は原点に弾き語りがあって、歌詞も、自分の歌声も、一番素直に届くものだと思ってます。最終的に自分がバンドを背負えなくなっても、これさえあればできるんだぞっていう、意思表示にも近いと思います。
Michael Kaneko 僕も一緒です。本当に弾き語りが原点だし、そこがベースです。でも、フェスとかに出演すると、周りがみんなバンドで、僕だけ弾き語りになったりするんですよ。
あいみょん わかるー!
Michael Kaneko 昔はそれがすごく寂しくて、物足りないというか、盛り上がらないなって思っていました。けど、最近はそんな言い訳はせずに、バンドに負けないくらいのパフォーマンスを残そうって考えるようになりましたね。
あいみょん 私もフェスだと一人だけ弾き語りで、すごく追いやられたようなステージだったりして(笑)。当時はアコギを持って歌うことがコンプレックスでもありましたが、だからこそ、もっと磨こうとも思えました。
──ある種の反発心があったと。
あいみょん ありましたね。今よりMCも尖ってました。フェスで人の気を引きたくて、大声出したりもしてましたし……、いろいろ鍛えられましたね。
Michael Kaneko 僕も別のバンドがとても盛り上がってる中で、セットリストにわざとバラードをたくさん入れて、「こっちは聴かせてやる」とか思ってましたね。
あいみょん バンドを背負ってる今でも当時の悔しさみたいなのって残ってますか?
Michael Kaneko 今はもうないかなあ。ありますか?
あいみょん 私はいまだにちょこっとあるんですよね。今は自分もバンドを背負ってツアーを回ってるんですけど、やっぱりシンガーソングライターとして見てほしい気持ちもあって。「弾き語りでも私は強いんやぞ」って、改めて見せたくなるんですよね。
Michael Kaneko それはすごくわかる。「俺はギター1本でもできるぞ」みたいな気持ちっていうか(笑)。
あいみょん だから、私バンドのツアーでも絶対に弾き語りパートを設けていて。
Michael Kaneko 自分もワンマンのときは絶対入れます。
あいみょん シンガーソングライターとして、アコギ一本でやっていたことを忘れたくない気持ちはありますよね。
──あいみょんさんは初めての日本武道館でのワンマンを弾き語りでやってるくらいですからね。
Michael Kaneko あれはめちゃくちゃかっこいいなって思っていました。あんなことやる人他にいないじゃないですか?
──あれも明確な意思表示でしたよね。
あいみょん やっぱり、シンガーソングライターであることを忘れたくないんです。
──同じシンガーソングライターでも、曲の作り方はそれぞれですよね。Michael Kanekoさんは基本セルフプロデュースで、アレンジから楽器演奏まで一人でやるのに対して、あいみょんさんは分業制というか。
あいみょん 一人でやるってすごいですよね。私は作詞作曲にすべてを注ぐタイプです。あとはそれこそマイキーさんだったり、関口さんだったり、自分にない知識や才能を持ってる方が近くにいらっしゃるので、その人たちの力を借りて、いい音楽を一緒に残すっていう方法が自分には合っていました。でも、一人で全部できるのは本当にすごいと思います。どうやってやってるんですか?
Michael Kaneko 部屋に籠ってやってます(笑)。でも今回一人でやった理由は、一人でやらないと進まないから、録音とかアレンジも勉強したって感じなんです。今後は海外のアーティストみたいに、自分でもプロデュースするけど、ちゃんとしたプロデューサーにも別で入ってもらって、アレンジを一緒にやったりする形でもやってみたいなと思っています。
──関口シンゴさんをはじめ、〈origami〉の人たちは基本セルフプロデュースですよね。
Michael Kaneko その影響はすごくありますね。〈origami〉に入って、音楽で食べていくには、シンガーソングライターとしての活動以外のこともできた方がいいよっていうのは言われました。
あいみょん いい環境ですよね。ある意味、スパルタな感じもありつつ、実際、周りのみなさんのご活躍もすごいですし。
Michael Kaneko セッキー(関口シンゴ)さんとかすごく真面目じゃないですか? だから、僕ももっとやらないとっていう気持ちになるんですよ。
あいみょん いいことですよね。向上し合ってるというか。やっぱり、同じシンガーソングライターでも作り方はそれぞれ違いますね。
──あいみょんさんはアレンジや演奏を他の人にお願いすることで、自分の中のイメージとのずれを感じたりすることはないですか?
あいみょん そういう場合はもちろん話し合いますし、でもそれこそ〈origami〉のチームもそうですし、田中(ユウスケ)さんもそうですけど、長く一緒にやらせてもらってるので、私の癖もわかってるし、言わなくても伝わるようになっていたり、関係性ができています。
──さきほども言っていたように、関口さんとはインディーズ時代からですもんね。いろんなアレンジャーさんがいる中で、関口さんはどんな存在だと言えますか?
あいみょん 関口さんはとりあえず優しいです。〈origami〉のあの空間って、本当に居心地がいいんです。もちろん、切羽詰まるときもありますけど、でも、みなさんニコニコしてくれていて、「すごくいいのができたね」って言ってくれるあの感じって、私にとってはすごく大事。ピリついた中ではやりたくなくて、関口さんと一緒にやっていてピリついたことは全くないですね。そういう空間でできることが第一で、〈origami〉の空間に甘えているのかもしれないけど……、一緒にやるチームって大事じゃないですか?
Michael Kaneko とても大事ですね。ケミストリーが重要だから、音楽のことだけじゃなくて、普通に一緒にいるときに楽しくいれるかとか、そういうこともすごく大事なんですよ。
──Michael Kanekoさんの新作『ESTERO』について、まずはあいみょんさんに聴いた感想をお伺いしたいです。
あいみょん 特に好きな曲が2曲あります。まず一曲目の“Breakdown feat.Daichi Yamamoto”が最高。あと“Voices”もすごく好きでした。全体的にはアップテンポな曲は少なめで、わりと柔らかい楽曲が多い印象で、それがマイキーさんの今のモードなのかなって思いました。私のマイキーさんのイメージって、一曲目みたいな、ちょっとノリノリな感じなんです。前作の”Lost In This City”もそうだったので、この感じはやっぱり好きですね。
Michael Kaneko “Voices”が好きって言ってくれたのは嬉しいです。僕の中で、一番日本っぽさのある曲だと勝手に思っていて。特別意識したわけじゃないんですけど、書いた後に、日本っぽさがあるメロディーだなと思っていました。
Michael Kaneko – ESTERO
──Michael Kanekoさんの影響源としては、ジョン・メイヤー(John Mayer)だったり、海外のアーティストの名前が挙がることが多いと思うんですけど、日本のアーティストで影響を受けた人とかっていますか?
Michael Kaneko どうだろう……、シンガーソングライターでいうと、ハナレグミさんや、大橋トリオさんは結構聴いているので、無意識に影響されている可能性はありますね。ただ、ジャーニー(Journey)とかカーペンターズ(Carpenters)って、洋楽だけど日本っぽさがあるじゃないですか? “Voices”もそういったイメージなんです。
──逆に、あいみょんさんの影響源としては日本人アーティストの名前が挙がることが多いと思うんですけど、海外のアーティストからの影響というとどうですか?
あいみょん 一番聴いたのはマイケル・ジャクソン(Michael Jackson)……マイキーなんですよ(笑)。
Michael Kaneko 今回のジャケット、ちょっとマイケル・ジャクソン感あるでしょ?
あいみょん 『This Is It』っぽい!
Michael Kaneko そうそう、80年代感あるよね。
あいみょん マイケル・ジャクソンがポール・マッカートニー(Paul McCartney)と一緒に歌ってる”Say Say Say”とか”The Girl Is Mine”でポールのことを知って、そこからビートルズ(The Beatles)を聴いて。その後にハマったのはジャクソン・ブラウン(Jackson Browne)。少しテイストが近いですよね。
Michael Kaneko ウェストコーストサウンドだからね。
あいみょん あとはボブ・ディラン(Bob Dylan)とか。やっぱり、アコギと男性の声の組み合わせが邦楽でも洋楽でも関係なく好きなんですよ。
──今挙がった名前は、Michael Kanekoさんにとっても大事な名前ばかりですよね。
Michael Kaneko そうですね。でも、ジャクソン・ブラウンはそこまでメジャーなアーティストじゃなくないですか?
あいみょん ジャクソン・ブラウンは私が好きな浜田省吾さんの曲の歌詞に出てくるアーティストで、”Late For The Sky”を初めて聴いて、なんていい曲なんだって思ったんです。
──お二人が感覚を共有する部分が垣間見えた気もします。マイキーさんには『ESTERO』というタイトルの由来もお伺いしたいです。
Michael Kaneko 20歳くらいのときに、交換留学でカリフォルニアに帰ったことがあるんです。当時は周りが就活を始めていて、でも自分は将来何になりたいのかがよくわからなくて。そんな気持ちのままアメリカに行ったんですけど、むこうで仲良くなった友達が遊びで音楽をやっていたんです。
しかも、ルームシェアをしている一軒家の中にたくさん楽器が置いてある部屋があって、そこでほぼ毎日セッションをしていたんですよね。そのゆるい感じがすごく楽しくて、やっぱり音楽をやりたいなって思い、日本に帰っても音楽を頑張ろうって決めたんです。その一軒家がカリフォルニアのサンタバーバラにある「ESTERO ROAD」の道沿いにあったので、そこからタイトルにしました。ファーストアルバムなので、「自分の原点」みたいな意味合いですね。
Michael Kaneko – Tides
──あいみょんさんの新作『おいしいパスタがあると聞いて』に関しても、まずはマイキーさんから感想をお願いできますか?
Michael Kaneko 全曲シングルみたいな、いい曲ばかりですね。一曲目の“黄昏にバカ話をしたあの日を思い出す時を”からかっこよくて、ちょっとマンドリンが入っていたり、いわゆるロックでもないし、ジャンル的にも面白いなと思いました。あと全体的に、洋楽っぽい音楽をやってる自分からしたら、絶対書けないメロディーだなと。
あいみょん それはきっとお互い、ないものねだりしちゃうところかもしれないですね。私は絶対にマイキーさんの作るメロディーは出てこないです。「こうやって動くの?」みたいなのあるじゃないですか?
Michael Kaneko そうそう。コード進行も「こういくんだ」とか、全曲通してそんな感じでした。あと、やっぱり弾き語りを大事にしているからか、きっとアレンジを全部抜いても成り立つ曲だなと思いました。今ってトラックメイカーが作るトラックがあって、その上にメロディーを書くこともわりと一般的ですよね。それはそれでいいんですけど、この場合はメロディーがそこまで強くなくても、トラックで成立させる、みたいな曲もあって。でも、ギターで曲を書いていると、メロディーがよくないとそもそも曲として成り立たなくて、それは全曲通して感じたことです。
あいみょん 嬉しいです。私は歌詞とメロディーを同時進行で作るので、メロディーに上手く言葉が乗らないと気持ち悪くて。ある程度弾き語りの時点で曲を完成させるっていうのは、意識してるというよりも、そうじゃないと作れないんですよね。
あいみょん – おいしいパスタがあると聞いて
──Michael Kanekoさんが言った「全曲シングル」みたいなことは意識してますか?
あいみょん いや、ないですないです。
Michael Kaneko 逆にここからどうやってシングルを選ぶのかなって。セッキーさんがプロデュースした曲も、全然シングルっぽいなって思いました。
あいみょん “裸の心”は初めてストックの中から選んだシングルだったんですけど、普段のシングルは書き下ろすことが多いんですよね。今回のアルバムの曲もストックの中から選んでいて、とにかく自分が今一番いいと思う曲を選んだだけなんです。2~3年前の曲でも、今聴いて一番いいと思える、届けたいと思える楽曲を選んでいるので、今思う最強メンツ、神メンツを集めてる、みたいな感覚ではあります。
──現時点でストックって何曲くらいあるんですか?
あいみょん 400曲くらいです。
Michael Kaneko まだ出してない曲で? すごいな。
あいみょん でも、いつかはストックが尽きますし、全部が表に出るわけじゃないと思うので、ずっと作り続けてはいます。
Michael Kaneko エド・シーラン(Ed Sheeran)も同じ感じらしくて、めちゃくちゃ曲がたくさんあるらしいです。
あいみょん エド・シーラン、同世代なんですよね。
Michael Kaneko タメだと思う。
あいみょん エド・シーランとタメ、なんかすごい(笑)。
──さきほどMichael Kanekoさんが挙げた“黄昏にバカ話をしたあの日を思い出す時を”は《余裕のある生き方がしたい でも鐘のなる方へは行かないぞ〉や《もっと刺激を もっと混乱を もっと人生を〉といった歌詞も印象的で、意思表示的な一曲目だなと思いました。
あいみょん 2~3年前にできていた曲なんですけど、今の自分が言いたいことを昔の自分が言ってくれてるなって思って、絶対一曲目にしたいと思いました。《鐘のなる方へは行かないぞ》っていうのは、煌びやかな方、お金がある方へは行かないぞ、だまされたくない、みたいな意味ですね。アーティストとして活動していて、キラキラした世界だなって思うけど、どこかに落とし穴がある気がしていて。
もう少し自分を不幸にししなければというか、自分にちょっとしたトラブルが起これば、10代のデビュー前の頃みたいに、「まだまだやってやるぞ!」って、燃え上がれる気がするんです。捻くれてるとも思うけど、それを3年前の自分が言ってくれてたので、その気持ちは大事にしたいなって思いました。「あいみょんのこと知らない人なんていないよ」みたいに言われたりもして、嬉しいけど、その状況に甘えてはいけないので、常に「こんなのは今だけ」って思いながら、落とし穴に落ちないように進んでいかなきゃなっていうのは思ってますね。
──Michael Kanekoさんも前作からの3年で活動の幅がグッと広がったと思うんですけど、そんな状況に対してどう向き合っていらっしゃいますか?
Michael Kaneko めちゃくちゃハングリーですよ。自分の音楽も、仕事としてやる音楽も、できるだけのことをやろうと思ってます。
あいみょん 満たされた瞬間とかってありますか?
Michael Kaneko ないですね。ありますか?
あいみょん ないですね。ゴールがない世界じゃないですか? たまに「燃え尽きた」みたいなことを言う人もいますけど、その感覚はまだわからないです。
Michael Kaneko 今のゴールってありますか? 「こうなりたい」とか。
あいみょん 「家族に自慢されたい」とか「甥っ子が喜んでくれるようなことをしたい」とか、結構身近なところですね。「天下取るぜ!」みたいな大それた感じじゃなくて、家族とか身近な人が喜んでくれたらそれが嬉しい。さっき、マイキーさんが「あいみょんプロデュースって書ける」って言ってくれましたけど、そうやって自分が誰かの力になれたり、身近な人がそういうことを言ってくれるのが嬉しくて。その積み重ねの先にゴールがあるのか……、それもわからないですけどね。マイキーさんはゴールありますか?
Michael Kaneko ないかなあ。きっとそのゴールを達成しても、またすぐ次の目標がきて、きっと納得しないんでしょうね。
──Michael Kanekoさんとしては3年ぶりの新作が遂に完成したわけですけど、それでもできてしまえばすぐにまた次へ向かうというか。
Michael Kaneko そうですね。もう「次はこういう感じでやりたいな」とか考えていますね。
あいみょん 作品を作り終わったらもう次のこと考えちゃいますよね。できちゃったら、この子は旅立つだけなんで、あとはこの子の実力と、スタッフさん次第(笑)。スタッフさんが日々やってくれていることに対して、「ありがとうございます!」って思いながら、私はもっといいものを作るための作業に入る。きっとその繰り返しなんです。
Text by 金子厚武
Photo by Asami Nobuoka
Michael Kaneko
湘南生まれ、南カリフォルニア育ちの日本人シンガーソングライター。
2015年、TOYOTAのCMにシンガーとして起用されYouTubeで740万回以上の再生回数を記録。
その後 Panasonic、Nissan、Pioneer、SHARP、BACARDIなどのCMに起用され問い合わせが殺到。
自宅でレコーディングし、パソコンで焼いて販売していたデモCD『Sounds From The Den EP』は1日50枚ものバックオーダーが来るようになり、パソコンはクラッシュ。累計2,000枚を販売し、iTunesシンガーソングライターチャートで1位を獲得。
CDデビュー前にもかかわらず、FUJI ROCK FESTIVAL、SUMMER SONIC、朝霧JAM、GREENROOM FESTIVAL など数々のフェスに出演。
また、タワーレコード“No Music, No Life?”キャンペーンに大抜擢。CDが店頭にないまま大型のポスターに登場するという異例の盛り上がりを見せる。
さらにはJ-WAVEのジングルを歌い、デモCD収録の楽曲が「テラスハウス」の挿入歌として使用される。
プロデュース、コーラス、ギター、楽曲提供などで さかいゆう、あいみょん、SING LIKE TALKING、藤原さくら、Rude-α、足立佳奈、majikoなどとコラボ。
また、映画「サヨナラまでの30分」「ママレード・ボーイ」、フジテレビ系ドラマ「僕たちがやりました」、アニメ「メガロボクス」などの音楽も手がける。
そして、その声はついに海外へ。覆面ユニットAmPm (アムパム) にボーカルで参加した楽曲がSpotifyで3,900万回を超える再生回数を記録 (しかも再生は90%が海外!)。インドネシアのフェスでは1万人規模のオーディエンスが大合唱。
フェス、ネット、CM、ラジオ、TVドラマ、全てを累計すると5,000万人に声を届けることに成功。
そんな中、2017年10月にデビューEP『Westbound EP』をリリース。
先行シングル「Lost In This City」は全国21のラジオ局でパワープレイを獲得。
J-WAVE「Spotify TOKYO VAGABOND」のマンスリーパーソナリティやFMヨコハマ「FUTURESCAPE」に“小山薫堂氏の今一番会いたいアーティスト”として出演依頼を受けるなど各局の番組に登場。
また、スペシャルゲストに藤原さくらを迎えたLINE LIVEの視聴者数は約26万人を突破。
テレビ朝日系「関ジャム 完全燃SHOW」、西野亮廣(キングコング)がMCを務めるフジテレビ「ハミダシター」など、数え切れないほどのメディア出演を果たす。
その話題は日本にとどまらず、Spotifyではアジアやヨーロッパを中心に15の国と地域の“New Music Friday”プレイリストにもピックアップされ、各国のバイラルチャートにもランクイン。さらにハリウッド女優クロエ・グレース・モレッツがお気に入りとしてSNSに投稿、瞬く間に世界中へ拡散される。
ウィスパーながらも芯のあるシルキーヴォイスが話題となり、活躍の場を世界規模で広げている。
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あいみょん
兵庫県西宮市出身シンガーソングライター。
16年11月にシングル「生きていたんだよな」でメジャーデビュー。17年5月に2ndシングル「愛を伝えたいだとか」、8月に3rdシングル「君はロックを聴かない」 を発表し、9月にリリースした1stフルアルバム「青春のエキサイトメント」は現在もロングセールスを記録中。6月には初の海外公演を台北Legacyにて行いSOLDOUT。11月からは札幌を皮切りに全国ツアー「AIMYON TOUR 2018 -HONEY LADY BABY-」を開催、即日ソールドアウト。2018年紅白歌合戦への出演も果たした。
2019年2月には2ndアルバム「瞬間的シックスセンス」を発売。同月には初となる武道館公演を開催。5月からは対バンツアー「AIMYON vs TOUR 2019 “ラブ・コール”」、10月からは自身最大規模のワンマンツアー「AIMYON TOUR 2019 -SIXTH SENSE STORY-」を開催。2019年は「Billboard 2019年年間TOP ARTISTS」を獲得し「オリコン年間ストリーミングランキング 2019」でも1位を記録し”2019年 1番聴かれたアーティスト”となった。
2020年、日本テレビ「news zero」の1月からの新テーマ曲して書き下ろした楽曲、「さよならの今日に」を2月14日に配信限定でリリース、そして6月17日にはTBS系 火曜ドラマ「私の家政夫ナギサさん」主題歌10thシングル「裸の心」をリリース、9月9日(水)には3rdアルバム「おいしいパスタがあると聞いて」の発売も決定。
RELEASE INFORMATION
ESTERO(エステロ)
2020.08.19(水)
Michael Kaneko
origami PRODUCTIONS
通常盤:¥2,200(+tax)
限定盤:¥3,000(+tax)
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おいしいパスタがあると聞いて
2020.09.09(水)
あいみょん
ワーナーミュージック・ジャパン
通常盤:¥2,800(+tax)
初回限定盤:¥4,000(+tax)
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