コンスタントに作品をリリースしながら、映画音楽やリミックス(昨年にはD.A.N.を手掛ける)など、幅広い活動の中で確固たる評価を得ているポスト・ロック・バンド、モグワイ(MOGWAI)が英チャート6位を記録した前作『Every Country’s Sun』から3年半ぶり、10作目となる新作『AS THE LOVE CONTINUES』を2月19日(金)に全世界同時リリースする。

モグワイやザ・フレーミング・リップス(The Flaming Lips)らの作品などで知られるプロデューサー、デイヴ・フリッドマン(Dave Fridmann)と共に、2020年初頭からレコーディングはスタート。元々アメリカでレコーディングされる予定だったが、パンデミックの為、そのロケーションはイングランドのウスターシャーへと変更となった。

収録曲“Midnight Flit”“Pat Stains”では、ナイン・インチ・ネイルズ(Nine Inch Nails)のトレント・レズナー(Trent Reznor)と名作曲家コンビとして、多くの映画音楽を担当するアッティカス・ロス(Atticus Ross)をコントリビューターに迎えるなど、多彩な音色を奏でながらも、バンドの源流を継承するハードコアなモグワイサウンドを堪能できる一作が完成した。

COVID-19の影響や映画音楽との関わり、またモグワイというバンドの姿勢についてを訊いた、フロントマンのスチュアート・ブレイスウェイト(Stuart Braithwaite)へのインタビューが到着した。この記事が『AS THE LOVE CONTINUES』の先行シングルから想像を広げ、また作品の理解を深める助けになれば幸いだ。また、2月13日(土)には、アルバムの先行視聴会がウルトラ・ヴァイヴによる新レコード店「ULTRA SHIBUYA」で開催される。詳細は記事の最後にあるので、こちらもチェックしていただきたい。

INTERVIEW:
Stuart Braithwaite(MOGWAI)

──今作は当初アメリカでレコーディングする予定だったのが、COVID-19の感染拡大による影響でロケーションがウスターシャーに変更されたと聞きました。前作『エヴリ・カントリーズ・サン』ではメンバー間でMP3を交換しながら曲のアイデアを練り上げていったと聞きましたが、今回の曲作りは具体的にどのようなかたちで作業は進められたのでしょうか? また、レコーディング地の変更によって他に当初のアイデアや計画の変更や中止を余儀なくされたことはありましたか?

そうなんだよ。最初はニューヨークのアップステイトでレコーディングする予定だったんだけど、海外渡航ができなくなってしまって、国内でレコーディングしないといけなくなった。それで、ウスターシャーのVadaスタジオでレコーディングすることになったんだ。プロデュースはそのままデイブが担当してくれたけど、作業は全てzoomを通してだった。まあそれでも結果全て無事に作業を進めることができたからよかったんだけどね。予定よりも2、3ヶ月作業が遅れる羽目にもなったけど、完成してよかったよ。

──ソングライティングのプロセスに関してはどうですか? コロナの影響はありましたか?

いや、そこまで影響はなかった。僕たちは普段から個々で曲を書いているから、プロセスは同じだったんだ。バリーがベルリンにいたから、彼がグラスゴーにスムーズには帰ってこれなくて、それでちょっと手こずったりはしたけどね。最終的には帰ってこれた。まあ障害はいくつか出てきたけど、全てどうにかなったから大きな影響はなかったと思う。

──コロナがなかったから、アルバムの出来は違っていたと思いますか?

正直、コロナがあったことで、作品はベターになったと思う。何より集中が出来たし、時間も出来たから色々な作業が出来た。あと、コロナのせいで何もすることがない、何も出来ないという人たちも多かったと思うけど、僕たちの場合、アルバム制作というプロジェクトがあった。その作業が出来ること、何か取り組むべきプロジェクトがあるということに感謝を感じて作業することができたのも良かったと思うね。

──前作では、その前のアルバム『レイヴ・テープス』がシンセを作曲段階や演奏に大きく取り入れたこともあって、“よりギターを重視したラウドなサウンド”が求められたと話されていました。対して、今回のレコーディングで重視したこと、新たな試みはどんなことでしたか?

意識していたのは、できるだけ良いサウンドを作ることだけ。ギター重視にするというよりは、電子音と楽器音のバランスがとれたサウンドにしたかったから、シンセとギターのバランスを取るという意味で前回よりもギターが増えたんだよ。そのバランスが今回でのレコードでは一番重要だったと思う。

音楽の可能性は無限──Stuart Braithwaite(MOGWAI)、インタビュー interview210209-mogwai-1

──そのバランスは始めから定めていたゴールだったのですか?

いや、作業していくうちにそうなったんだ。作業を始めた時、ゴールは全く定まっていなかったからね。自然にバランスが重視されるサウンドになっていったんだ。

──今回試した新たな試みは何かありましたか?

色々あるよ。でもその中でも難しかったのは“Ceiling Granny”。あの曲はめちゃくちゃ早かったから、作っていくうちにどんどんスピードが上がっていって、自分たちが演奏できくなるまでスピードアップしたんだ(笑)。

──今作では前作に引き続きデイヴ・フリッドマンがプロデューサーに起用されています。フリッドマンとは旧知の間柄ですが、今回の制作に際してはどんな話し合いが持たれましたか? バンドとフリッドマンとの間で共有していたプランやアイデア、また前作からの変化や違いという部分で意識されてたことはなんしょう?

デイヴは、今回のレコードをこれまでのどのレコードとも違う作品にするために、僕たちに曲ごとに違うこと、新しいことに挑戦させたんだ。さっき話した“Ceiling Granny”のスピードも、その試みの中の一つ。挑戦したことの中には、成功したものもあれば、失敗したものもある。それを採用するしないにかかわらず、とりあえず他の曲ではやっていないことを各曲で挑戦してみたんだよ。

──今作にはアッティカ・ロスやコリン・ステットソンをゲストに迎えています。彼らは映画音楽を数多く手がけてきた作家として知られています。モグワイもこの10年、同じく数々の映画音楽を手がけてこられましたが、そうした映画音楽の作家として二人の活動や作品をチェックしたり、また刺激やインスピレーションを受けたりしてきた部分もありますか?

そうだね。モグワイも映画音楽を手がけてきたから、映画音楽にもっと興味を持つようになったし、学ぶ姿勢が強くなっていった。その過程で、彼らはもともと素晴らしいミュージシャンたちだけど、彼らの音楽の素晴らしさに更に気づくようになったというのはあるかもしれない。

──モグワイとしては、今作と前作の間にサウンドトラックを2作品、『Kin』と『ZEROZEROZERO』をリリースされています。そうした映画音楽の制作が今回のアルバムに与えた影響、フィードバックされた部分についてはいかがでしょうか? また、今のモグワイの活動において、スタジオ・アルバムの制作と映画音楽の制作はどんな関係性にあるのか、教えていただけますか?

影響しているとは思う。どんな作業でも、自分たちが何かを気に入れば、それを次の作品で使ったりすることはあるから。でも、サウンドドラックを作るのと自分たちの音楽を作るのとではプロセスが全く違うから、そこまで意識した影響はないかもしれない。モグワイの音楽を作る時は、もっとパーソナルだからね。それに、アルバム制作でもデイヴやエンジニアと作業したけど、テレビや映画のために音楽を作るときは、それとは比にならないくらい沢山の人たちが制作に関わるんだ。この2つの作業は、本当に異なるんだ。

MOGWAI『KIN』(2018)

MOGWAI『ZEROZEROZERO』(2020)

──逆に何か一つでも共通するものは思いつきますか?

レコーディングを初めてしまえば、流れは似ているかなとは思う。でもインスピレーションやプロセスはやっぱり全然違うね。正直、自分たちがより楽しめるのは自分たちのレコードを作る方かな。ダメ出しをされることがないから。ジャーナリストからはされるけど(笑)。でも、映像音楽の場合は、大変なぶん達成感はかなり大きい。

──以上の話を踏まえた上で、自分たちのアイデアやプランが思い通りにはまったと思える楽曲、あるいはあなたの個人的なベスト・ナンバーでもいいので、できれば理由も合わせて教えてもらえますか?

“Ritchie Sacramento”にはかなり満足している。実際曲として形にできるかわからなかったアイディアの数々を、ちゃんと合わせて曲にすることが出来たから。アルバムを代表する一曲として選ぶのは、“Dry Fantasy”かな。あの曲には本当に沢山の音楽的要素が含まれていて、昔のモグワイの曲とは全然違うだんだけれど、どこかこれまでのモグワイにも聴こえる。その両方を含んだサウンドを達成できたのが“Dry Fantasy”だと思う。昔のサウンドと今のサウンドを組み合わせてバランスをとるのが難しいわけではないかもしれない。でも長い時間をかけて曲を作っている中で自然にそれが起こると、すごく達成感を感じるんだ。リスナーには新しいサウンドも提供したいし、これまでのモグワイサウンドを聴きたいという期待にも答えたい。その両方が出来る曲が出来上がるのは嬉しいことだね。

Mogwai – Ritchie Sacramento(Official Video)

Mogwai // Dry Fantasy(Official Video)

──どのようなサウンドがバンドを特徴づける定番の“モグワイ・サウンド”だと思いますか?

なんだろうな。僕たちが頻繁に使うサウンドがそのサウンドになるとすれば、ドローン・サウンドはその一つ。あと、何か特定の音というよりは、エモーショナルになるという部分はモグワイのサウンドの特徴の一つだと思う。

──「As the Love Continues」というタイトルはどうやってつけたのか、込められた意味と合わせて教えてください。

ドラマーのマーティンの娘が言った言葉なんだ。まだ5歳で、彼女が何を言おうとしてたのかはわからないんだけどね(笑)。本人自身もわかってなかったかも(笑)。でもメンバー全員がそれを気に入って、レコードのタイトルにすることにしたんだ。

──このタイトルとアルバムの内容、もしくはサウンドに繋がりは?

あまりないと思う。このアルバムは暖かい雰囲気を持ったレコードだと思うから、そことは繋がっているかもな。でもアルバムにはダークな面もあるから、やっぱり違うかも(笑)。

──今作はスタジオ・アルバムとしては10作目になります。いわば節目を飾る作品と言えるわけですが、その辺りの感慨がありましたら教えてください。

そうだね。やはりスペシャルに感じる。バンドを結成して25周年の記念アルバムでもあるから、それも合わさって特に意義深く感じるよ。10作目になっても、自分たちが納得のいく“グッド・サウンド”を作るのは未だに難しいものだね。音楽の可能性は無限。だから、これからも挑戦したい新しいことが、間違いなくまだまだ沢山でてくるはず。自分自身でもそれが何かはわからないけど。

──COVID-19以降の音楽活動については、どんな考えや展望をお持ちですか? 特にライヴやツアーが行えないことは、ビジネス面においてもそうですが、クリエイティヴの部分においても大きな影響をもたらすことが想像できます。その辺りの率直な思いを教えていただきたいです。

今はライブ・フィルムを完成させようとしているところ。あとは、ドキュメンタリーも製作中。それ以外は、とにかくワクチンが普及してライブができるようになることを祈るのみ。それがやはり、僕たちが一番楽しみにしていることだからね。自分たちのクリエイティヴィティにコロナが影響しているとはあまり思わないんだ。逆に、よりクリエイティヴになる機会を与えられているような気がする。だって、音楽を作る以外他に何もすることがないからさ(笑)。今のこの状況が、バンドの状態を左右しているとはあまり感じていないね。

写真/Antony Crook
インタビュー(質問作成)/天井潤之介
通訳/原口美穂

音楽の可能性は無限──Stuart Braithwaite(MOGWAI)、インタビュー interview210209-mogwai-2

MOGWAI
1995年にグラスゴーで結成されたロック・バンド。現在のメンバーはStuart Braithwaite(G/Vo)、Barry Burns(G/Piano/Syn/Vo)、Dominic Aitchison(Bass)、Martin Bulloch(Dr)の4人。1997年にデビュー・アルバム『Mogwai Young Team』をリリースし、続く1999年のセカンド・アルバム『Come On Die Young』はUKトップ30ヒットを記録した。2011年の7枚目のアルバム『Hardcore Will Never Die, But You Will』より、バンドはグラスゴーをベースとする自身のインディペンデント・レーベル、Rock Action Recordsより自らのアルバムもリリース。2014年の8枚目のアルバム『Rave Tapes』はUKチャートの10位/スコットランド・チャートの2位を記録。2017年の9枚目のアルバム『Every Country’s Sun』はUKチャートの6位/スコットランド・チャートの2位を記録した。
TwitterInstagram

MOGWAI『AS THE LOVE CONTINUES』

音楽の可能性は無限──Stuart Braithwaite(MOGWAI)、インタビュー music210113_mogwai-02

MOGWAI
2021.02.19(金)

1. To The Bin My Friend, Tonight We Vacate Earth
2. Here We, Here We, Here We Go Forever
3. Dry Fantasy
4. Ritchie Sacramento
5. Drive The Nail
6. Fuck Off Money
7. Ceiling Granny
8. Midnight Flit
9. Pat Stains
10. Supposedly, We Were Nightmares
11. It’s What I Want To Do, Mum

『AS THE LOVE CONTINUES』2640円(税込)
『AS THE LOVE CONTINUES(2CD)』【限定盤】3080円(税込)
『AS THE LOVE CONTINUES(2LP)』4620円(税込)
『AS THE LOVE CONTINUES(2LPカラー盤/黄)』【限定盤】4950円(税込)
※輸入フォーマットは数に限りがございます。

MOGWAI『AS THE LOVE CONTINUES』先行試聴会

開催日時:2021.02.13(土)
OPEN 16:30 START 17:00
場所:東京都渋谷区東1-28-9 ULTRA SHIBUYA
参加方法:お電話にて事前予約をおすすめいたしますが、空きがある場合はご予約なしでもご来場可能です。(ご予約人数が定員に達し次第、受付締め切りとさせていただきます。)
※ご入場時、受付にてドリンク代700円を頂戴いたします。
イベント予約受付開始日時:2021年2月1日(月)12:00~
電話窓口は平日12:00から19:00までの受付です。TEL:03-5485-2302(※電話受付のみとなります。)

『AS THE LOVE CONTINUES』をご予約いただくと特典のステッカーが付きます。ご予約の際に代金を頂戴いたします。
商品・ステッカーの受取方法は店頭受取、または郵送からお選びいただけます。(郵送の場合は別途送料を頂戴いたします。)

【感染防止の注意事項】
新型コロナウイルス感染拡大に伴い、予防対策として細心の注意を払いイベントを実施致します。
感染拡大防止の趣旨をご理解いただき、下記対応とご協力をお願い 致します。
※入場の際、検温・アルコール消毒・マスクの着用は必須となります。
イベント中も飲食時以外はマスクを外さずにご参加ください。マスク着用の無い方はご参加できませんので、予めご了承下さい。
※当日お客様に非接触体温計での体温測定を実施させていただきます。
体温が37.5度以上のお客様、発熱や咳、風邪などの症状があるお客様のご入場はお断りいたしますので、予めご了承ください。
※飛沫予防ため、会場内での会話はお控えいただきますようお願い致します。
※イベントはスタッフに指示された位置でご観覧ください。

【イベント注意事項】
※開場時間前の入口および周辺での待機はお控えください。
※手荷物や貴重品はお客様ご自身で管理をお願い致します。会場にはロッカーやクロークはございませんので、大きいお荷物もお預かりいたしかねます。
※会場内には当店販売商品以外の飲食物のお持ち込みはご遠慮ください。
※会場内はカメラ、ビデオカメラ、カメラ付携帯電話等でのアーティスト及びイベント会場の撮影、録音録画のすべての行為はスタッフの指示がない限り
一切禁止とさせていただきます。
※危険行為及び迷惑行為が見受けられた場合にはイベントの中断、もしくは中止となることがございます。
※他のお客様のご迷惑となる行為、また係員の指示に従わずに生じた事故に関しましては、当店は一切責任を負いかねます。
※会場内・外で発生した事故・盗難等は主催者・会場・出演者は一切責任を負いません。
※災害や今後の新型コロナウイルスの感染拡大状況等諸事情によりイベントの内容に変更が出る場合や、イベント自体が延期または中止になる場合がございますので ご了承下さい。その場合は、イベント開催までに当店 Twitter(@ultra_shibuya)等にてご案内をさせて頂きます。
※イベント中止・延期の場合、旅費などの補償につきましては主催者では一切責任を負いかねます。

【お問合せ先】
ULTRA SHIBUYA
〒150-0011 東京都渋谷区東1-28-9
TEL:03-5485-2302

ULTRA SHIBUYA

As The Love Continues|Live Performance Premiere – 13th February 2021 – Tickets on sale now!

アルバムのリリースを前に、Mogwai は2021年2月13日(土)8:00PM(GMT)に全世界に向けオンライン・ライヴを行う。ショーはグラスゴーのTramwayで撮影/レコーディングされ、アルバム『As The Love Continues』をフルで初めて聴くことができる機会となる。ディレクターはバンドの長年のコラボレーター、Antony Crookで、チケットはバンドのWEBサイト(mogwai.scot)で購入することができる。

MOGWAI