INTERVIEW

MOURN

Text by Takanori Kuroda
Photo by Kodai Kobayashi

     

2015年に10代でデビューし、瑞々しいバンド・アンサンブルとエクスペリメンタルなギター・サウンドでシーンを賑わせているスペインはバルセロナ出身の男女4人組、Mourn(モーン)が待望の初来日を果たした。昨年6月にリリースしたサード・アルバム『Sorpresa Familia』は、これまで同様Sonic youth(ソニック・ユース)やHüsker Dü(ハスカー・ドゥ)辺を彷彿とさせる、ヒリヒリとしたサウンドスケープを引き継ぎつつも、より立体的で躍動感あふれるグルーヴを内包。デビューから5年経ち、精神面でも演奏面でも大きく飛躍を遂げた4人の姿がそこにはあった。

MOURN // Barcelona City Tour

「日本では、郊外の特別な場所でライブを行いたい」という本人たちのたっての希望により、神奈川県・江ノ島オッパーラにて羊文学とのツーマン・フロアライブを敢行するなど、滞在時間を大いに満喫した彼ら。本インタビューは、東京・新代田FEVERでのツアー・ファイナル直前に行われたものである。新作のこと、カタルーニャ自治州で起きた抗議デモのこと、フェミニズムのことなど、多岐にわたるトピックについて真摯に話してくれた。

Interview:MOURN

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──私たちQeticは、モーンをデビュー当時からずっと記事にしていたんですよ。なので、今日は実際にお会いできるのを楽しみにしていました。過去記事一覧

全員 ありがとう。

──まずは、昨年リリースされたサード・アルバム『Sorpresa Familia』についてですが、過去の2作との違いはどの辺りですか?

Jazz Rodríguez Bueno(以下、ジャズ) もっとも大きな違いは、前の2枚を作っているときの私たちはまだアマチュア同然だったということかな。あれから5年くらい経って、ライブもたくさんやったし演奏も上達して、様々なことを学んでから臨んだのが、今作『Sorpresa Familia』だったと思う。それと本作を作る前に、もともと契約していたスペインのレーベルと揉めてしまって法廷にも立ったの。その間、私たちの周りで何が起きていたかを公の場では言えなかったから、それがものすごくストレスで。フラストレーションを全て歌詞にぶつけていたところも、これまでのアルバムとは大きく違ったかな。

MOURN // Fun At The Geysers(Official Video)

──なるほど。曲作りはいつもどんな風に行なっているのですか?

ジャズ それも今作でだいぶ進化した。まずは私とカーラの2人で、とにかく無心で音を出してそれを楽しんでみるのね。そこである程度アイデアが固まってきたら、もう少しプロフェッショナルに取り組んでいく。特に歌詞を付けていく作業は慎重にね。そこで曲はグッとまとまるし、歌詞がつくことでよりパーソナルなものになると思う。私とカーラ、それぞれのパーソナリティが曲ごとに反映されていると思うわ。

Carla Pérez Vas(以下、カーラ) 今回はそういう曲作りのために、家から少し離れたスタジオを借りて行ったことも大きかった。そのおかげで作業に集中できたと思う。アルバムの50パーセントくらいはそこで作り込んだのかな。

ジャズ そうだね。Pro Toolsを持ち込んで、携帯もオフってひたすら作業してた。とにかく最初のデモ作りがすごく重要だったと思う。「この曲には何が必要で、何が必要でないか?」を見極めるまで、何度もアイデアを練ってからアントニオと妹のレイアに加わってもらったから、その先の作業もすごくスムーズだったと思う。もちろん、2人のアイデアにも触発されて、どんどん曲のスケールが広がっていったしね。

Antonio Postius Echeverría(以下、アントニオ) 曲作りって「ドミノ崩し」にも似ている気がするんだ。デモの段階でしっかり作り込まれていれば、それを聴いて僕らもイメージがしやすいし、アイデアもどんどん湧いてくる。今回はデモのクリティがすごく良かったので、それに触発されながら自分なりのスタイルのドラムを入れていくことが出来たと思うよ。

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──これまでのインタビューであなたたちは、PJハーヴェイやスリーター・キニー、パティ・スミス、キム・ゴードンをフェイヴァリットに挙げていました。今回は、メンバーそれぞれの音楽的ルーツを教えてもらえますか?

カーラ やっぱりパティ・スミスかな。彼女の自伝を読んで感銘を受けたのが聴き始めたきっかけなのだけど、音楽だけじゃなく生き方や考え方も、全てひっくるめてリスペクトしている存在よ。

ジャズ 私はスローイング・ミュージズのクリスティン・ハーシュが大好き。私も彼女の『Rat Girl』っていう自叙伝を読んで、自分のパーソナリティとすごく似通ったものを感じた。それでスローイング・ミュージズを聴いてみたら、「これこそ私が聴きたかった音楽!」って思ったの。

アントニオ 僕はドラマーだからなのか、誰か特定のバンドとか音楽に影響を受けるというよりも、いろんなプレイを聴いて、それを参考にしながら自分のスタイルを確立していったという感じかな。最初はポップパンクを聴いていたのだけど、80年代のメタルミュージックに衝撃を受けた。そして、もちろんオルタナティヴ・ロック。とにかく色んな音楽を聴いて、自分の肥やしにしているよ。

Lore Nekane Billelabeitia(以下、ローレ) 私はモーンだけじゃなくて、他にもいくつかのバンドを掛け持ちしいてるの。ベラコというバンドで、2017年に来日したこともある。だから、私もアントニオと同じく誰か特定のミュージシャンに影響を受けた、っていう感じじゃないかも。ただ、強いて挙げるとしたら、やっぱりキム・ゴードンかな。彼女の自伝『GIRL IN A BAND』を読んで感動したし、ベーシストとしてだけでなく1人の女性として、アーティストとして憧れている。

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──10代でデビューしたモーンも、いまや全員20代に突入しましたよね。歌いたいこと、世の中の関心事なども変わってきましたか?

カーラ 根っこの部分は変わってないけど、経験値が上がって成長したことは音楽にも表れていると思う。自分たちのことをもっと表現できるようにもなったかな。何か起きた時に、どう解決すべきか、自分に自信が持てない部分と、どう向き合い接していくか、バンドをどうやって続けていくべきか、そういう葛藤みたいなものが、そのまま音楽に表れていると思う。

ジャズ 曲作りのプロセスも変わったわ。ファースト・アルバムの頃はまだ自分自身が経験不足だったから、自分のことと言うよりも人から聞いた話や、創作したストーリーで歌詞を書いていたし、演奏はどうあれ「ファースト・テイク」の瑞々しさみたいなものを大切にしたの。セカンドアルバム『Ha, Ha, He.』の頃は、アイデアを「オーガナイズ」する術を覚えたから、いつもノートブックを持ち歩いて、思いついたアイデアを書き溜めるようにしていた。例えば、愛する人のことや、自分を傷つけた人のことについて……。よりパーソナルな要素が増えたと思う。

おかげで自分自身と向き合うようにもなれたのは良かった。ティーンエイジャーの頃は、自分が何にイラついているのすら分からず混乱していたけど、ノートブックに書き連ねることで、自分の感情を客観的に眺められるようになったわ。

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──モーンは「パンクバンド」だと僕は認識しているんですけど、社会情勢にはどのくらい関心があります?

ジャズ 今話したように、私は自分の人生に起きた出来事について歌詞にしているから、社会情勢や政治にも大きな影響を受けている。ちょうど一昨日、3月8日は「国際女性デー」だったでしょう? スペインでも大規模なフェミニズムのデモがあったし、そのことへのシンパシーはもちろん感じてる。不当に虐げられている女性や、セクシャル・マイノリティーを自分たちなりの方法でサポートしたいって思っているわ。

でも同時に、あまりにもフェミニズムに寄りすぎないようには気をつけてはいるの。中にはエクストリームな人もいるしね。そういう人たちも含め、全員が相手との違いを尊重できる世の中になるべきだとは思う。世の中にはびこる「不当なタブー」は出来る限り無くしていきたいし、それを音楽でも表現したいと思っているわ。

カーラ 残念なことに、一部のフェミニストの中にはトランスセクシャルの女性を排斥するような動きもあるじゃない? 「国際女性デー」では、そのことに対する抗議デモも起きていたけど、私もそれを全面的に支持する。全てのセクシャリティが平等である世の中になって欲しいから。

──昨年起きた、バルセロナのデモ(昨年2月、カタルーニャ自治州の独立支持派元指導者の公判を受けて、州都バルセロナで起きた20万人規模の抗議デモ)についてはどう思っています?

アントニオ 以降も各地で度々デモが起きているけど、今のスペインでは表現の自由がとても脅かされていると思うんだ。

ジャズ 去年の11月にも選挙があって、カタルーニャ自治州の独立問題も争点となった。街には武装した憲兵が溢れていて、独立容認派と反対派の激しい衝突もあり、投票所が3時間も閉鎖される事態まで起きていたのよ。私自身は投票へ行く気でいたのだけど、そうした騒動に巻き込まれるんじゃないかと母と姉がものすごく心配して……それで諦めざるを得なかった。とんでもない状況だったんだけど、あろうことかサンチェス首相は「今日は絶好の投票日和です。みなさん安心して一票を投じてください」なんて言ったのよ。

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──信じられないですね。

アントニオ セクシャリティの問題にしても、カタルーニャ州独立問題にしても、今はみんなが同じ意見じゃないといけないという「同調圧力」を、とても強く感じる。だからこそ「自分がなりたいものになる」「言いたいことを言う」「やりたいことをやる」という姿勢がとても大切だし、そのためのメッセージを発するべきだと思ってるんだ。

──さっき、キム・ゴードンやパティ・スミス、クリスティン・ハーシュからの影響も話してくれましたけど、彼女たちのような「自立した女性」になるためには、あるいはそうした女性がもっと増えるためには、社会はどうなっていくべきだと思います?

カーラ そのためには、女性じゃなくて男性が変わらなきゃダメだと思う。最近はよく「女性がもっと活躍すべき」「女性がもっと自立すべき」みたいなことはが言われているけど、「なんで私たちが変わらなきゃいけないのよ?」って思う(笑)。だって、例えば今の音楽業界なんて完全な男性社会で、変えるべきはそんな社会の方なのに、私たち女性が「男性社会」に合わせて変えなきゃいけないなんておかしいじゃない?

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──全くその通りですね。

ジャズ 社会の中で「これは男性の役割」「これは女性の役割」みたいなものを、もっと無くしていくべきだと思う。私は「女」である前に「人間」だし、それは男性であっても同じじゃないかな。 1人の人間として、社会で居場所を見つけていけば、自ずと「女性の自立」なんて考えなくてもいい社会になっていくと思うのだけど。

アントニオ 男の立場からすると、確かに変化を強いられることってすごく怖いことだとは思う。今の「男性社会」を変えていくのは、男にとってとても勇気が要ることなのは分かるんだ。ただ、今はその「変化」が求められている時なんだろうね。

ローレ 実際に社会を変えるためには、私はまず「教育」を見直すべきだと思う。家庭の中でもそうだし、学校の中でもそう。まだ感受性が柔軟な子供のうちに、しっかりとした教育を受けることは、とても大切なことだと思うわ。

──教育の大切さについての意見も同感です。最近は、IDLES(アイドルズ)やSHAME(シェイム)のような、オーセンティックなパンクバンドがシーンを賑わせていますよね。そのことについてはどう思います?

ジャズ アイドルズの新しいアルバム(『Joy as an Act of Resistance.』)は大好きよ! 聴くたび興奮する。

カーラ 最近、自分たちが好きなテイストを持つバンドってすごく減ってきている気がしてたし、一時シーンがトラップ一色になってしまった時は、すごく疎外感があった。なので彼らのようなギターバンド、リアルなパンクスが再び登場したことはとても需要なことだし個人的にも嬉しいことだわ。

IDLES – DANNY NEDELKO

──ところで、レイア以外の皆さんは日本に初めて来たんですよね。楽しんでますか?

ジャズ もちろん。昨日は江ノ島のあたりを散歩したの。それで「生しらす丼」を食べた。

アントニオ マジで「しらす」は最高の味だったな。

ジャズ 大阪ではタコ焼きも食べたしね。

カーラ 私、スペイン料理がダメでタコも食べられなかったんだけど、タコ焼きは全然オッケーだった。自分でもびっくりしたわ(笑)。

アントニオ 景色のギャップにも驚いたよ。大阪はとても大きな街で楽しかったし、江ノ島の街はコンパクトでビーチも近くにあって。

ジャズ 今夜は東京を散策する予定なので、今からとっても楽しみ!

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Text by Takanori Kuroda
Photo by Kodai Kobayashi

『Sorpresa Familia』

Tracklist

1.Barcelona City Tour
2.Skeleton
3.Strange Ones
4.Fun At The Geysers
5.Candleman
6.Thank You For Coming Over
7.Doing It Right
8.Orange
9.Bye, Imbecile
10.Divorce
11.Epilogue
12.Sun

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